ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)110 調査(リサーチ)

 

 

 

 

 

 

 命から春姫のことを聞いてから次の日。

 

(いるかな……?)

 

 ツナは現在【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)である【黄昏の館】に向かっていた。

 昨日命から春姫のことを聞いて、なんとか命の力になれないかと考えたツナは【ロキ・ファミリア】なら何かしら春姫に繋がる手がかりがあるのではないかと考えたのだ。ギルドに聞く手もあったが、そっちですら掴めていない独自の手がかりを掴んでいるかもしれないと思い、【ロキ・ファミリア】を訪ねる事にした。

 そして【黄昏の館】の門が見え、門番として立っていた2人の団員がこちらにやって来るツナに気づく。

 

「あ、綱吉さん」

 

「こんにちは」

 

 門番に立っているのはどちらもかつての遠征でポイズン・ウェルミスの毒に犯されていた人間(ヒューマン)の女性とエルフの男だった。

 

「いきなり来て悪いんだけどさ……今、フィンっている?」

 

「団長ですか? 現在は留守ですよ」

 

「そっか……」

 

 男性の団員からフィンの不在を知り、ツナは少しだけその表情が暗くなる。

 

「もしかして、団長に何かご用ですか?」

 

「フィン自体にというか……実は【イシュタル・ファミリア】って【ファミリア】について知りたくてさ。【ロキ・ファミリア】なら何か知ってるんじゃないかと思って来たんだけど……」

 

「「っ!?」」

 

 女性の団員がツナの要件について尋ねる。しかしツナの要件を詳しく聞いた直後、2人の表情が一転驚愕の表情へと変わる。

 

「あ、あの……どうして【イシュタル・ファミリア】について知りたいんですか?」

 

「実は俺の仲間が故郷の友達を探してるんだけど、もしかしたらその友達が【イシュタル・ファミリア】にいるかもしれないらしくて……」

 

「そういうことでしたか……」

 

 女性団員が警戒心を露にするが、【イシュタル・ファミリア】を知りたい理由が仲間の友人の為と知り、ツナの事情を聞いた団員はその警戒心を解いた。

 

「え、えっと……聞いちゃ不味かった?」

 

「いえ……ちょっと色々ありまして……そういうことでしたら大丈夫ですよ。入って下さい」

 

「フィンが不在なのに、勝手に俺を入れて大丈夫?」

 

「はい。綱吉さんには解毒をしてもらった恩がありますから」

 

「もし団長がいても同じことを言ったと思います」

 

 フィンはいないにも関わらず、二人の団員は門を解放し、ツナを快く中へと入れた。

 

(人がいない……もしかして闇派閥(イヴィルス)の捜査?)

 

 中に入ったツナが見たのは、都市有数の大派閥にも関わらず人が本拠(ホーム)内にほとんどいない状況だった。この状況からツナはフィンたちが闇派閥(イヴィルス)の捜査をしているのではないのかと推測する。

 そしてツナはそのまま書庫に案内された。沢山ある本棚の中から男性の団員が1冊の本を取り出す。

 

「これが【イシュタル・ファミリア】の情報です」

 

 男性の団員が本をテーブルに置きページをめくっていくと、【イシュタル・ファミリア】の情報について書かれたページを見せられる。そこには【ロキ・ファミリア】が現時点で掴んでいる【イシュタル・ファミリア】の情報が載っていた。

 

(春姫っていう人の名前はないな……)

 

 ツナは【イシュタル・ファミリア】の構成員の欄に目を通すも、春姫という名前は一切ど書かれていなかった。

 

「あのさ、春姫っていう狐人(ルナール)の人が【イシュタル・ファミリア】にいるって聞いたことはない?」

 

「春姫……」

 

狐人(ルナール)……」

 

(心当たりなしか……)

 

 ツナは直接女性の団員と男性の団員に尋ねるも、二人の反応から思い当たる節は無さそうだった。この調子では春姫に繋がる情報を得ることができない。

 

(いや、待てよ……確か……)

 

 そう諦めかけていたツナだったが、ここであることを思い出した。

 

「じゃあ、珍しい魔法を使う人がいるとか聞いたことない?」

 

「「……!!」

 

 ツナは命が狐人(ルナール)はエルフとは違う独自の魔法を使うと言っていたことを思い出し、その方面から質問をすれば何か情報が得られるのではないかと考えた。

 そして、2人は何か心当たりがあったのか、顔を見合せる。

 

「もしかして心当たりがあるの?」

 

「あるというか……十中八九あれっていうか……」

 

「でも……これを勝手に言っていいのかな……」

 

 二人は命の恩人相手とはいえど、果たして自分たちの判断だけでこの情報を開示しても良いのかわからず、迷っていた。

 だが思案の末、ツナであれば問題はないと判断した2人は話すことを決めた。

 

「……実は少し前、メレンに行った時なんですけど」

 

「メレン?」

 

「オラリオの都市外にある港町です。そこになぜか【イシュタル・ファミリア】がいて、僕たちに抗争を仕掛けてきたんです。その時、妙なことがあったんです」

 

「妙なこと?」

 

「【男殺し(アンドロクトノス)】の二つ名を持つ【イシュタル・ファミリア】の団長、フリュネ・ジャミールが何故か一時的に【ランクアップ】していたんです」

 

「一時的に?」

 

「はい。おそらく【イシュタル・ファミリア】に一時的に【ランクアップ】をさせることができるスキルを持つ冒険者がいるじゃないかって話です……ただ、その人物が狐人(ルナール)かどうかまではわかっていません」

 

「そっか……ありがとう。二人とも」

 

 男性団員の話から珍しい魔法を使う者がいたことは判明したものの、それを扱う人物が春姫だという確証は出来なかった為ツナは残念そうな表情を浮かべるも、情報の提供に対し礼を言う。

 

「あの……このことは決して他人に口外しないで下さいね。確証もない噂を流されたら最悪、【イシュタル・ファミリア】に目をつけられるかもしれないので……」

 

「そんなにヤバいの? 【イシュタル・ファミリア】って?」

 

「実は……【イシュタル・ファミリア】は闇派閥(イヴィルス)と裏で繋がっているみたいなんです……」

 

「え、ええっ!?」

 

 女性の団員が小声で衝撃的に情報を伝え、それにツナは驚きの声を上げた。

 

(そうか……だから……)

 

 先程、ツナが【イシュタル・ファミリア】の名を口にした途端二人警戒したのは、【イシュタル・ファミリア】が闇派閥(イヴィルス)と繋がっているという事からだったことを察する。

 

「とはいっても、まだ明確な証拠がある訳じゃないんですけど……それに闇派閥(イヴィルス)と繋がっていることを抜きにしても、【イシュタル・ファミリア】を相手するのは得策じゃありません……」

 

「どういうこと?」

 

「これを見て下さい」

 

 女性団員が【イシュタル・ファミリア】の恐ろしさについて説明を始める。それに応じるように男性団員がオラリオの地図をテーブルに広げて見せる。

 

「……この範囲全てが【イシュタル・ファミリア】です」

 

「え!? これ全部!?」

 

 男性団員が指で円を描きながら【イシュタル・ファミリア】の範囲を示した。あまりにもその範囲が広い為、ツナは驚きで声を上げた。

 

「【イシュタル・ファミリア】はオラリオ南東部にある歓楽街を統治する【ファミリア】なんです。ここは都市の中でも重要な役割を持つので、ギルドでも強く出られないのが現状です」

 

「……ねぇ、その歓楽街って何なの?」

 

「「え!?」」

 

「前に【ファミリア】のみんなにも聞いたんだけど、結局誰も教えてくれなくって……」

 

((マジか……))

 

 ツナが本当に歓楽街のことを知らないとわかり、2人は開いた口が塞がらない。

 

「し、知らないならいいんです!! とにかくここは【イシュタル・ファミリア】が運営してる街で、オラリオの経済基盤の1つなんです!! だから下手な真似ができないんです!! なっ!?」

 

「そうなんですよ!! しかも主神であるイシュタルを崇める者も大勢いるらしくって、もし【イシュタル・ファミリア】を敵に回すとその人たちも敵に回すことになるんです!!」

 

「そうなんだ……」

 

((な、なんとか誤魔化せた……))

 

 【イシュタル・ファミリア】の恐ろしさを前面に出しアピールすることで、二人はなんとか歓楽街のことを掘り下げられないように立ち回り、上手く誤魔化すことに成功した2人は心の中で安堵した。

 

「なので綱吉さんの仲間には悪いですけど……【イシュタル・ファミリア】には関わらない方が得策ですよ……」

 

「……」

 

 女性の団員が忠告をするも、ツナはそれに対し何も返事を返すことができなかった。

 色々あったもののどうにか【イシュタル・ファミリア】の情報を得ることができたツナは、【黄昏の館】を後にした。

 

(どうしよう……)

 

 ただでさえ厄介な【ファミリア】であるだけでなく、闇派閥(イヴィルス)が関わっている可能性があるのなら迂闊なことはできない。ツナは、暗い表情を浮かべながら【竈の館】へ戻っていくのだった。

 

 

 

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