ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
【黄昏の館】から帰ったツナが最初にした事は、2人から教えてもらった【イシュタル・ファミリア】の情報について命に話す事だった。
「変わった魔法を使う人がいるらしいって噂があることはわかったんだけど……それが命の探してる春姫って人かどうかまではわからないみたい」
「な、なんと……」
夕食の時間にツナは【ロキ・ファミリア】から得た情報を命に伝えた。
まさか自分の個人的な事情の為だけに
「……どうしたのみんな?」
「どうしたのじゃありませんよ!! 何で都市最大派閥に当たり前のように行ってるんですか!?」
「いや……何か情報を知ってるかと思って……」
リリからすれば【ロキ・ファミリア】は雲の上のような格上の存在。そんな場所に友達の家に行くような感覚で行けることが正直信じられなかった。
「色々聞いたけど、【イシュタル・ファミリア】にあんまり関わらない方がいいって言ってたよ……なんかあんまり良くない噂があるらしくて……」
「……」
ツナもこんなことを言いたくはなかったが、それでも
命はツナの気持ちを察しているのか怒ることこそなかったが春姫のことがどうしても諦められず、暗い表情を浮かべ俯いてしまう。
命は春姫を探しており、命の昔の友人だということもこれまでの話で知っているからこそ、そんな命の姿を見たメンバー達は何とも言えない気持ちになる。
「お前が春姫と友達だってことはわかった。だが春姫は高貴な身分の人物なはずだ。そんな奴と友達ってことは、お前は春姫に仕えていたのか?」
その場が静まり返る中、リボーンが珍しく気を遣い春姫について尋ねた。
「いいえ……元々自分は幼い頃に両親を失った孤児で、【タケミカヅチ・ファミリア】を始めとする神々の方が住まう社で育てられました」
「社?」
命の言う社が何のことかわからず、ツナは首を傾げる。
「タケミカヅチ様を始めとする神々が身寄りのない子供たちを集め、社で引き取っていたんです」
「孤児院みてぇなもんか」
「はい。千草殿と桜花殿も同じ社で育った仲間です」
(あの二人とはそういう関係だったんだ……)
ツナはてっきり彼らとはオラリオに来てから出会った仲間だと思っていたが、そんな前からの関係だと知り少し驚いていた。
「春姫殿は社の麓にあるお屋敷に住んでいました。ある時、春姫殿は裕福な自分と違いその日を生きるのが精一杯な自分たちのことを噂で知り、父上殿に頼んだそうです。神様たちに食料を分けてあげて欲しいと。そして自分たちを救ってくれた春姫殿のことを知った自分は、彼女に会いにいきました。しかし彼女は屋敷から出ることを許されず、いつも屋敷の中から空を見上げていました。そんな彼女を見かねたタケミカヅチ様は言いました。「お前ら、あの
「えっ……それって不味いんじゃ……」
「はい……1度バレてしまい、それ以降
「よく無事でいられたな」
いくら子供のやったこととはいえ、高貴の位にいる者にそんなことをすれば処刑されてもおかしくない。今こうして無事命が生きていることが不思議でならなかった。
「自分たちの行いがバレた時、春姫殿の父親が激怒したんですが、その度にタケミカヅチ様が土下座し、なんとか許してもらっていたんです」
(土下座で許してもらえるんだ……)
1度だけならまだしも、何度もやらかしているにも関わらず土下座で許してもらえるという事実がツナには信じられなかった。
「自分たちは何度も交流しました。野山を駆け、田端を巡り、川辺ではしゃぎ……そして今まで笑顔を見せなかった春姫殿が笑顔を見せたんです。自分は恩に報いることができたと思っていました。ですが終わりは唐突でした……」
「春姫が家を追い出されたんだな」
「はい……それに社が財政難に陥り、自分たちは日銭を稼ぎに出るようになった為屋敷に行けなくなってしまいました。そしてしばらくして屋敷を訪れた時、春姫殿が家を追い出されたことを知ったのです……そこから春姫殿の行方を捜しましたが、行方を掴むことはできず、自分たちは社を救う為にオラリオにやって来たんです……まさか春姫殿がオラリオにいるかもしれないということも知らずに」
自分と春姫の関係について話し終えた命は、再び暗い表情を浮かべ俯く。
「なんとかならないのかな……」
「ベル様。間違っても春姫様を助けようと思わないで下さい」
「「っ!?」」
「何言ってるの、リリ!?」
命が落ち込んでいる中、リリは非情な言葉を放つ。この状況でまさかこんな発言をすると思わず、命とベルはリリの方を顔を向け、ツナはそんなことを言う理由が全くわからず、動揺を隠せない。そんな中でリリは言葉を続ける。
「
春姫が【イシュタル・ファミリア】にいるかもしれないということは、助け出す為には戦いは避けられないという事でもある。リリの言い分は正しく、誰も反論ができない。
「
「幸い綱吉様だけは全ての情報を知られていませんが、自分の力を知られることを望んでいない……仮に【イシュタル・ファミリア】程の派閥の前で力を使えば、綱吉様の全ての情報がオラリオ中にバレてしまいます」
「それは……」
【イシュタル・ファミリア】の主神であるイシュタルを崇める者は多いと聞く。【ソーマ・ファミリア】と違いそういった横の繋がりが強い派閥であるのなら、オラリオ中に自分の存在が大きく知られるのはツナとしても出来るだけ避けたい所だった。
「そして何より、ヘスティア様に膨大な負担をかけることになるでしょう。あの方はまだ自覚はないのかもしれませんが都市の勢力図に頭を食い込ませた事には、少なからず一部の神様たちに疎まれているはずですから」
リリは今日も残業中のヘスティアの名を出した。
実際、少し前まで【ヘスティア・ファミリア】はほぼ無名の零細【ファミリア】だった。そこから先の
「らしくねぇことしてんじゃねぇぞ。素直に仲間が危険な目に遭うのが怖いって言えばいいだろうが」
「なっ!?」
リボーンはリリがなぜこんなことを言ったのか、その理由を全て見透かしていた。そしてそれは図星だったのか、リリは動揺する。
「【ファミリア】の一員としてなら俺はリリスケの言い分に賛成だ。でもお前たちが何がしたいっていうなら、俺は手伝ってやる。最後まで付き合ってやるさ」
ヴェルフは今までの話を聞き、笑みを浮かべながら自分の覚悟を示した。
「にしてもせっかくわざわざ悪役を演じてたのに、これじゃ型無しだなリリスケ」
「リリはそんなことは思ってません!! リボーン様が勝手なことを言ってるだけです!!」
リボーンに心を見透かされ慌てるリリを見て、ヴェルフがニヤニヤしながらからかう。しかしリリはそれを認めようとはしなかった。
「やれやれ。これだから近頃のガキは……」
「リボーン様にだけは言われたくありません!!」
赤ん坊であるリボーンに子供扱いされる事にリリは憤慨する。そしてこのやり取りを見て、ツナたちに活気が戻った。
しかし、まだツナたちは知らなかった。まさか【ヘスティア・ファミリア】が思わぬ形で【イシュタル・ファミリア】と関わることになることを。
捕捉しておきますが、本来であればベルと春姫が出会ってることになっているのですがこの小説では出会っていない世界線で書いています。
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