ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
巧みな戦法で【イシュタル・ファミリア】を翻弄し、返り討ちにしたツナ。
「くっ……!?」
アイシャは地面に叩きつけられたものの、辛うじて意識を繋いでいた。だが、先程の踵落としによって右肩を負傷し、片膝をついた状態で右肩を押さえている。そしてアイシャを纏っていた光が消えていく。
そんなアイシャとやられた団員たちを見て、被害を受けていない周囲の仲間たちはこの戦況を覆すのは到底無理だということを察し、戦意を失っていた。
その時だった。
「いつまで時間かかってんだい!」
分かれ道の奥から2
「フリュネ……」
(こいつが……)
アイシャが忌々しそうに睨みながら呟き、ツナは目の前にいるこの人物こそが前に【ロキ・ファミリア】の団員から聞いた【イシュタル・ファミリア】の団長だということを知る。
(ということはこいつらが【イシュタル・ファミリア】か……)
そして同時に自分たちを襲った敵が【イシュタル・ファミリア】であるということも理解した。
(あれは……)
そんな中、ツナの視界にフリュネの背後に立つ白いローブを纏った存在が映る。
「何だいこのザマは? こんな雑魚共を遅れを取ったっていうのかい?」
「馬鹿言うんじゃないよ……私らはどうやら、とんでもない化け物に喧嘩売っちまったみたいだよ……」
「化け物ぉ?」
「私ら全員、その男1人にやられた……
「見苦しい言い訳するなんて、情けないったらありゃしないねぇ。これだから不細工な連中は」
アイシャの言葉を聞いても尚、フリュネは怯むどころか蔑むような発言をする。
フリュネ自身人間離れした醜悪な容姿なのは言うまでもない事だが、本人は自分が美の神であり、イシュタルやフレイヤさえも上回る美貌の持ち主だと本気で思っている究極のナルシスト。それに加え協調性が皆無である事から人望も皆無であり、アイシャを始めとした他の団員達からは陰でヒキガエルと蔑まれている。
「あんな奴、アタイがすぐにぶっ潰してやるよぉ」
まさか自分が負けると微塵も思っていないのか、フリュネはニタニタした表情を浮かべながらツナの元へ向かって行く。
「……大人しく引け。不毛な争いはしたくない」
「あんたに無くても、アタイにはあるんだよ!!」
ツナが穏便に終わらせようとするも、フリュネは問答無用で斧を縦横無尽に振り回しながらこちらに向かって来る。フリュネの特攻によって周辺の地面は抉れていく。
「―――何っ!?」
だがツナはフリュネの戦斧を難なく両手で受け止める。まさか斧を受け止められると微塵も思っていなかったのか、衝撃を隠せない。
「命、絶対にスキルを解除するな。みんなも
「こ、こいつ……!!」
この状況で涼しい顔をしながら自分よりも仲間のことを心配している余裕に対し癇に触ったのか、フリュネは顔を歪ませながら斧に更に力を入れるが、それでも戦斧は微塵も動くことはなかった。
「最後の警告だ、大人しく引いてくれ」
「誰がそんな事聞くと思ってるんだい、調子に乗るんじゃないよ!!」
「仕方のない奴だ……」
これだけ言ってもなお引かないと判断したツナは、炎の属性を大空から雷に切り替える。
「【
「ぎゃぁあああああああ!!」
ツナが雷の炎を放出したことによって斧に伝導し感電、さらにそのままフリュネの纏っていた鎧にも感電。高圧の電気によってフリュネのつんざくような絶叫が木霊する。
このままではずっと感電し続けることになる為、そう考えたフリュネはすぐに斧を手離した。
「このっ!!」
頭に血が上ったフリュネは右手を上空に掲げ、そのまま一気に振り下ろす。しかし―――
「ぎゃぁああああああ!!」
(あの馬鹿……)
ツナは即座に斧を捨て、雷の炎を纏ったグローブでフリュネの拳を受け止める。それによってフリュネは再び感電し、激痛に叫ぶ。
先程感電した時点で全く引こうせず攻撃に転じ、同じ過ちを繰り返すフリュネをアイシャは内心見下していた。
(やはり、デンドロ・キラムと同じタイプだな……)
ツナは未来の世界においてメローネ基地で戦ったデンドロ・キラムの姿が脳裏に浮かんでいた。デンドロ・キラムはフリュネと同じく自身の力に絶対の自信を持っているがその反面、屈辱を味わうと逆上し周りが見えなくなる短気な性格だった。
「よくそれで団長が務まるな。本当に【イシュタル・ファミリア】の団長なのか?」
「こ、このガキィイイイイ!!」
「遅い」
「ゴハッ!?」
ツナの言葉でさらに逆上し、攻撃しようとしたフリュネだったがそれよりも早くツナの左ストレートが鎧を砕き、フリュネの腹部に深く突き刺さる。
雷の炎の特徴は硬化。その硬化によりグローブの強度はより増し、その拳は凄まじい力を秘めていた。これに加えてツナは炎をコントロールし、一点に集中することでその威力を増加させたのだ。硬化の特徴を持つ雷の炎を一点集中したその拳はフリュネの鎧を破壊する事程度、雑作もなかった。
あまりの威力にフリュネは両膝を地面につき、腹部を両手で押さえ苦悶の表情を浮かべていた。
「これでわかったか? お前と俺の実力差が」
「このガキ……!?」
自分を見下ろしているツナに対し、フリュネは射殺さんばかりの勢いで睨みつける。
「
「なっ!?」
「えっ!?」
(余計なことを言うんじゃないよヒキガエル!! それにインターバルが終わってないんだから、まだ春姫の魔法は使えないだろうが!!)
フリュネは後方にいた人物に向かって叫ぶ。まさかフリュネの口から春姫という言葉が出て来るとは思わず、命とベルは驚愕した。
逆上するあまり、決して口外してはならないことをフリュネがバラしてしまった事で、アイシャは心の中で悪態をつく。
「頭を冷やせこのヒキガエル!!」
「アタイに命令すんじゃないよぉ!!」
逆上するあまり、大事なことをすっぽり抜け落ちているフリュネに向かって叫ぶアイシャだったが、当の本人はアイシャの言葉を聞き入れないどころか、さらに逆上する結果にしかならなかった。
「腕っぷしだけで団長になった訳か……どうりで簡単に冷静さを欠いている訳だ」
「この、クソガキァアアアア!!」
ツナはさらに言葉の追い討ちをかける。完全にブチ切れているフリュネは目の前にいるツナを捕らえようと右腕を伸ばすが、ツナの姿が一瞬にして消えた。
「どこに消えやがった!?」
フリュネは周囲を見渡すも、ツナの姿はどこにも見えない。だがそれはフリュネだけでなく、この場にいる者たちも同様だった。
「こっちだ、木偶の坊」
「上!?」
上から声が聞こえる。声のする方を向くと、そこには上空に向けた左手の掌から大空の炎を噴射し、右手の掌を地上にいるフリュネに向けているツナの姿があった。
「【
そしてその掌からは膨大な炎が解放され、放たれた炎はまっすぐフリュネに向かっていく。
【
「あぁあああああああああ!!」
上空から放たれた炎に対し抵抗出来るわけもなくそれは直撃し、フリュネは断末魔を上げながら下の階層へと落下するのだった。