ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)119 屈辱(デデクス)

 

 

 

 

 

 

 バーチェとアルガナとの戦いを制したツナ。【カーリー・ファミリア】の最高戦力である2人が倒されたことにより、残った団員たちは驚愕と同時に戦意を失っていた。

 

「こ、これは!?」

 

「ほう……」

 

 すると破壊された階段の上に多くの団員が倒されている光景を見て、動揺を隠せない様子のイシュタルと逆に興味津々の様子のカーリーがいた。

 

「どうやら遅かったようじゃのうイシュタルよ。せっかく面白い戦いが見られたかもしれんというのに」

 

「呑気なことを言ってる場合か!!」

 

(あいつがイシュタルか……)

 

 この状況で尚自分の眷属とツナとの戦いが見れなかったことを残念がるカーリーに対して、イシュタルはもの凄い剣幕で睨みつける。

 2人の会話からツナは長身の女神がイシュタルだということを理解する。

 

(やっぱり闇派閥(イヴィルス)なのか……?)

 

 ツナはカーリーの方を見て彼女が闇派閥(イヴィルス)の主神なのではないかと推測する。

 イシュタルの計画をアイシャから聞いた時、ツナは少なからずイシュタルに協力している勢力がいるだろうということは理解していた。

 何故なら春姫の【階位昇華(レベルブースト)】は1人しか【ランクアップ】出来ない。もし仮に【階位昇華(レベルブースト)】が全員使えるようになったとして、2人の団員がフリュネに【階位昇華(レベルブースト)】を使ったとしてもLv.を2段階上げることは流石にできないと思っていたからだ。

 ならば自分より強力な戦力を有している【ファミリア】と協力し、その戦力を【階位昇華(レベルブースト)】で【ランクアップ】させるしかない。

 【イシュタル・ファミリア】と協力関係にある闇派閥(イヴィルス)なら目的の邪魔になる【フレイヤ・ファミリア】を疎んでいる為、利害は一致する。

 ただツナは闇派閥(イヴィルス)の構成員に関しては仮面の人物しか知らない。故にこの女神が闇派閥(イヴィルス)なのかは確信を持てないでいた。

 

「貴様……こんな真似をしてタダで済むと思っているのか!?」

 

「よくそんなことが言えたな……商会に俺たちへの依頼を出すよう指示し、ダンジョンに向かうように仕向けベルを拐おうとしていたお前が。それも【フレイヤ・ファミリア】に嫌がらせする為だけに」

 

「な、なぜ私の計画を知っている!?」

 

「勘が鈍いな。俺がここにいる時点でわからないのか?」

 

「っ!?」

 

 ツナの言葉の意味にイシュタルはようやく気づく。なぜツナに自分の計画がバレたのかを。

 

「私の眷属はどうした!?」

 

「俺が全て撃退した。死んではいない筈だ」

 

「な、なぜだ!! なぜ貴様ごときに!!」

 

 格下だと思っていた相手に自分の眷属がやられたと知り、イシュタルはその顔を歪ませる。

 するとその隙を突こうとツナの背後からゆっくりとタンムズが襲いかかろうとする。

 

「がっ……!?」

 

 だがツナはとうにタンムズの存在に気づいており、地を蹴って上空に飛ぶと同時にタンムズの顔面に飛び回し蹴りを喰らわせる。

 

「き、消え……かっ!?」

 

 顔面に蹴りが直撃したことによりお視界が遮られ再び目を開けたタンムズだったが、前方にはすでにツナの姿はなかった。そして背後から首筋に手刀を叩き込まれ、タンムズは即座に気絶する。

 

(クソッ!! だが……)

 

 イシュタルはツナが再び自分の方を見上げたのを見計らいツナを無力化、そしてなぜ殺生石について知っているのか吐かせる為魅惑を使う。

 美の神は相手を魅惑したいと思った時点でその相手が神だろうと人間だろうと関係なく、操り人形にすることできるのだ。例えその姿を目にしていなかったとしても。

 

「……俺を魅了しようとしても無駄だ。生憎俺にはお前の魅了は効かない」

 

「なっ!?」

 

 魅了できたと確信し口元を緩ませたイシュタルだったが、ツナに魅了が効いていないとわかった瞬間、その笑みが消え動揺の表情を見せる。

 ツナはイシュタルが笑みを浮かべたのを見て、自分を魅了しようとしていたことを超直感で見抜いていた。事前にアイシャがイシュタルに魅了され、逆らえなくなったことを聞いていた事から、イシュタルがもし自分と接触すればほぼ間違いなく魅了を使ってくるであろうことは予測済みであり、自分に魅了は効かないことも確信があった。

 ツナは調和の特徴を持つ大空の炎の持ち主。調和とは矛盾や綻びがないこと。魅了を調和によって相殺する事でツナが魅了の影響を受ける事がなかったのだ。

 

「大人しく殺生石を渡せ。自ら罪を認めればギルドも罪を軽くしてくれる筈だ」

 

「私に指示するんじゃない!! 下級【ファミリア】の分際で!!」

 

「……子は親に似るというが、全く持ってその通りだな。お前はあの団長とよく似ている」

 

「あの化け物と一緒だと!? 私はこの下界において一番の美を誇る女神だぞ!! あんな化け物と私がどこが似ているというのだ!?」

 

「プライドが高く自分に絶対の自信を持っている一方で、自分の思い通りにならないと非を認めず逆上するところがだ」

 

「プッ……ハハハハハハハハ!!」

 

 一方でカーリーがツナの発言を聞いてツボに入ったのか両手で腹を抱え、涙目になりながら大笑いする。

 

「カァアアリィイイイ!! 貴様ァアアアアアア!!」

 

(し、しまった……妾としたことがつい……)

 

 敵であるツナだけでなく、味方である筈のカーリーにまでプライドをズタズタにされイシュタルは激昂する。

 よりによって魅了の力を持つイシュタルを怒らせてしまった為、流石のカーリーも危機感を覚える。

 

「お前を護ってくれる者もいなければ、お前の力も通じない。春姫も俺たちが保護している。もうお前は終わりだ、イシュタル」

 

(……こうなったら神威を解放するしかない!!)

 

 肝心の魅了が効かない以上、イシュタルに残された方法は神の力である神威を使うしか残されていない。

 神は下界では全知零能だが、一度神威を解放すればどんな屈強な者であっても対抗できず、ただただ従うことしかできなくなる。神威を解放した神に対抗できるのは神以外に存在しない。

 しかしこれを実行した場合、数百年は他の神々から後ろ指を刺されるのは必定である為、神々は余程のことがない限り神威の解放をすることはしない。

 

「―――ナッツ!!」

 

「GURURU……GAOOOOOOOO!!」

 

「「くっ!?」」

 

 超直感によってイシュタルが何かとてつもない力を行使しようとしていることを察知したツナは、すぐに炎の属性を大空から霧に切り替え、ナッツの咆哮によって目も開けていられない程の光を放つ。その場にいた者たちは咄嗟に目を覆う。

 ツナは霧の炎の構築の力で光を作り出し、怯ませる事でイシュタルによる神威の解放を強制的に中断させたのである。

 

「い、いない!?」

 

 イシュタルが目を開けるとすでにツナはどこかに消えており、周囲を見渡すもその姿はどこにもなかった。

 

(まさかあいつ、殺生石を!?)

 

 ツナがここにいないということはすでに殺生石を奪いに行ったのではないかと考えたイシュタルは。このままではギルドに自分の計画がバレてしまうことを恐れ、殺生石をツナから護る為1人で殺生石の元に向かって走る。

 

(これが潮時かの……)

 

 カーリーは殺生石を護る為に向かったイシュタルと共に行こうとはせず、むしろイシュタルを見限ろうとしていた。

 フレイヤへの勝手な私怨でイシュタルの眷属はおろか自分の眷属にまで甚大な被害が及んだだけでなく、フレイヤを逆恨みするあまりこのような失態まで犯すような相手に協力したところでデメリットしかないとカーリーは判断したのだ。

 

(このような機会またとないだろうが、致し方あるまい……)

 

 仮に自分が神威を解放したとしてもツナはそれをいち早く察知し、逃げることを先程の行動からカーリーは察していた。そうなれば殺生石は奪われ、【フレイヤ・ファミリア】に対抗する術を失う。これでは【フレイヤ・ファミリア】に勝つどころか自身の【ファミリア】が壊滅させられ、本末転倒になる恐れがある。カーリーは強者との戦いを求めてはいるが、戦の引き際もわからない程愚かでもなかった。

 元々イシュタルとは【フレイヤ・ファミリア】と戦うという利害が一致していたから協力していただけであり、別にイシュタルがどうなろうがカーリーに取ってはどうでも良いことであった。

 

(そうと決まれば、さっさと撤退せねばな)

 

 撤退することを決めたカーリーは残った団員に撤退命令を出し、団員たちは撤退の準備を始める。

 もし殺生石がギルドにバレれば【イシュタル・ファミリア】が【フレイヤ・ファミリア】を壊滅させようとしていることはすぐにバレ、協力していた自分の【ファミリア】まで罰則を受けることになる。ならば今すぐにオラリオから去り、闘国(テルスキュラ)に帰ってしまえばペナルティを避けられるだろうとカーリーは考えた。

 ギルドは基本的に冒険者をオラリオ外になるべく出さないようにしている。特に高レベルの冒険者や等級の高い派閥の【ファミリア】ともなれば尚のことである。【カーリー・ファミリア】にはLv.6がいるが、これらに対抗できるのはオラリオ内でも【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】、そして今しがたバーチェとアルガナを倒したツナくらいのもの。そんな高レベルの冒険者達をペナルティを与える為だけに都市の外に出す訳がないことをカーリーは知っていた。

 

(しかしイシュタルも間抜けよのう。大した年月を生きていない人間に、ああも振り回されるとは……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で殺生石を取りに行ったイシュタルは―――

 

「―――あった!! まだ奴の手に渡ってはおらん!!」

 

 殺生石のある部屋にやって来ていた。殺生石はこの世界の中でも最高クラスの固さを誇る上、アダマンタイトの金庫に厳重に保管されており、確認の為に金庫を開けるとそこには血のような紅い石が丁重に保管されている。

 

(どうやら殺生石がどこにあるかまでは聞いていなかったようだな……!!)

 

 速さではどう足掻いてもツナには勝てない。それなのに自分の方が速く殺生石に辿り着いたことから、殺生石がどこにあるかまでは把握していないとわかり、イシュタルは口元を緩ませた。

 

(後は抜け道を使ってクノッソス(・・・・・)にでも保管してしまえば、殺生石が渡ることはない……!!)

 

 流石にこの女主の神娼殿(ベレート・バビリ)の内部構造についてはツナは知らない。ならば抜け道を通って逃げてしまえば、殺生石がツナの手に渡ることはないとイシュタルは確信する。

 

(それにまだ計画は実行できる!!)

 

 殺生石が無ければ【フレイヤ・ファミリア】壊滅の証拠はなくなり、ギルドが動くこともない。イシュタルはツナを自分たちに抗争を仕掛けた罪人として訴え、さらにはツナたちに春姫を奪われた被害者を演じる事で春姫を奪還し、計画を続行しようと画策していた。

 そしてイシュタルは金庫のある部屋を飛び出し、抜け道へと向かおうとする。

 

「なっ!?」

 

 だが部屋を出た瞬間、自分の持っていた筈の殺生石が消えてしまう。

 

「―――こうも簡単に引っ掛かるとはな」

 

「き、貴様!? な、なぜこの場所がわかった……!?」

 

 なぜ殺生石の場所を知らない筈のツナがここにいるのかわからず、イシュタルは動揺する。

 あの時イシュタルが神威が解放した後、ツナは身を潜めた。同時に殺生石を護れるのが自分しかいないことを思い出したイシュタルは殺生石をツナに奪われることを恐れ、自ら殺生石を取りに向かった。

 だがそれこそがツナの狙いだった。表向き殺生石を取りに行ったと思わせ、こっそりイシュタルの後を尾けることで殺生石の在りかを見つけたのだ。

 

「いずれギルドから罰則が下されるだろう。覚悟しておくんだな」

 

 また神威を解放されては敵わない為ツナはイシュタルの言葉を無視し、炎を逆噴射させ一瞬にしてその場から消えた。

 

(クソがぁああああああ!! どこまでも私をコケにしやがってぇえええええ!!)

 

 自分の眷属を倒され、自分の美貌は全く効かず、殺生石まで奪われ計画が潰された。ここまで徹底的にプライドをズタズタにされたイシュタルは、怒りのあまり理性を失いかけていた。

 

(こうなったら【フレイヤ・ファミリア】に使う筈だった天の雄牛(・・・・)を使って奴を殺してやる!!)

 

 もう今のイシュタルの頭の中はツナを殺すことしか頭になかった。

 

 しかしイシュタルはまだ知らなかった。自分にとっての脅威が近づいていることを。

 

 

 




なんか地の文が多くて自分でもびっくりしています。

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