ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)12 大空(ツナ)vs剣姫(アイズ)

 

 

 

 

 

 アイズの押しに負けて、ツナはアイズと修行することとなった。

 

「準備はいい?」

 

「う、うん……」

 

(まさかツナとアイズさんが戦うことになるなんて……)

 

 アイズがそう尋ねるとツナはポケットから27と書かれた手袋を取り出して装備する。ツナとアイズが戦うことになることに驚いてもいたが、同時にどういう戦いになるのか気になってもいた。

 

「ふぅ……」

 

 ツナはゆっくりと目を閉じると、空気を吸い込み深呼吸する。

 すると27と書かれた手袋が赤いグローブに変貌。さらにツナの額にオレンジ色の炎が灯り、ツナの瞳の色がオレンジに変わる。

 

「始めるぞ」

 

「えっ……!?」

 

 ツナの雰囲気があまりにも変わったこと、グローブが変わったこと、額に炎が灯ったこと。アイズは色々とツナの姿にツッコミきれずその場で呆然と立ち尽くしてしまっていた。

 

「どうした?」

 

「い、いや……頭が燃えて……」

 

「問題ない。これが俺の力だ」

 

「そ、そう……」

 

 色々と言いたいことはあったが、ツナ本人が大丈夫だと言っているのでアイズは首は横に振って気持ちを切り替えると、アイズは剣を鞘から解き放ち、両手で剣を握ると剣を体の真正面に構える。

 この構えは中段の構え。剣術や薙刀で用いる五つの構えの1つである。攻撃するにせよ防御するにせよ、この構えを基点とすることで戦闘中に発生する様々な状況の変化に対して咄嗟に対応できる構えである。攻防共に隙が少ないことから、現代では剣道の基本として教えられる構えである。

 戦いが始まるもツナもアイズも攻めず相手の出方を伺っていた。

 

(隙がない……)

 

 本当は攻めずツナが攻めて来るのを待つはずであったアイズ。しかしツナに一部の隙もないことに気づく。

 

(この子……強い……)

 

(アイズさんが汗を!?)

 

 アイズの頬を一筋の汗が伝う。アイズが汗をかいていることにベルは驚きを隠せないでいた。

 そしてアイズはツナに向かって一直線に向かって行く。

 

(アイズさんの方から攻めた!?)

 

 ツナの修行であるのにも関わらず、アイズの方が先に仕掛けたことにベルは驚きを隠せないでいた。

 まるでこの光景はアイズがツナに修行をつけてもらっているかのようであった。

 

「はぁあ!!」

 

 ツナの前まで移動した。アイズは剣を左斜め下から右斜め上に斬り上げる。剣術における9つの斬撃の1つ。右切上である。

 

「っ!?」

 

 右切上を繰り出したアイズ。しかしアイズの前方にいたツナは忽然と消え、アイズの一閃は空を切る。

 

(消えた!?)

 

 一瞬にしてツナの姿が消えた為、アイズは驚きを隠せずにいた。

 

「こっちだ」

 

「っ!?」

 

 アイズの背後から動きがツナの声がする。アイズは即座に後ろを振り向くと同時に神速の刺突を連続で繰り出した。

 

「くっ……!!」

 

(アイズさんの攻撃を全部、避けてる!?)

 

 神速で襲いかかる刺突をツナは最低限の動きだけで全て躱す。攻撃が当たらないことにアイズは焦りの表情を見せていた。ベルはツナがアイズの神速の刺突を避けていること、自分が戦った時はずっと無表情だったアイズが焦りの表情を見せたことに衝撃を受けていた。

 

「まだまだ……!!」

 

 刺突が当たらないと判断したアイズは今度が攻め方を変え、あらゆる斬撃を繰り出す。

 

(これでも……!?)

 

 神速で繰り出される無数の斬撃。だがそれでもツナはアイズの猛攻を両手を使って防御していく。

 

(だったら!!)

 

「っ!?」

 

 無数の斬撃を繰り出していたアイズであったが、途中で剣を寸止めする。神速の斬撃が急に止まったことでツナの顔色が変わる。

 

(今!!)

 

 アイズは即座にしゃがみ込み、ツナの足元に向かって遠心力を加えた一閃を放つ。アイズの一閃をツナはジャンプして躱す。

 

(躱された……けど!!)

 

 ツナを空中に追いやったアイズは再び、空中に向かって神速の刺突を繰り出す。空中では避けることはできない。今度こそツナを捕らえたと確信する。

 が、

 

「えっ……!?」

 

 しかし再びツナ姿が一瞬にして消える。空中で避けられるとは思っていなかった為、アイズは驚きを隠せずにいた。

 

「流石だな」

 

「っ!?」

 

 再び背後を取られたことに気づいたアイズは即座に右薙を放つが、ツナはアイズの斬撃が当たる前に飛び引いてアイズの一閃を躱す。

 

「はぁ……はぁ……」

 

(あのアイズさんが疲れてる……)

 

 自分と何時間も戦っても疲れてた表情を見せなかったアイズが、戦い始めてから数分も経過していないツナ相手に息切れを見せた。

 

(ようやくわかった……どうやって移動したか……)

 

 アイズはようやく理解した。ツナが一瞬にして消えたのは、炎を逆噴射させ推進力にしたのだということを。

 

「君は一体、何者なの……!?」

 

 アイズ・ヴァレンシュタイン。現在のオラリオの最大派閥の一角を担う【ロキ・ファミリア】の眷属。(けん)()という二つ名を持ち、1年という期間でLv.2に【ランクアップ】するという最速記録の持ち主。オラリオ内に数ある【ファミリア】の中でも数少ないLv.6の第一級冒険者。オラリオの中でアイズの存在を知らない者はほとんどいない程の凄腕の冒険者なのである。

 そんな冒険者(アイズ)がオラリオに来たばかりの少年に全く歯が立っていない。アイズはツナが本当にオラリオに来たばかりの少年なのかということを信じられないでいた。

 

「その質問に答える必要はないな。それでどうする? ここで終わりにするか?」

 

「まだ……!!」

 

 ツナの提案を聞いてもアイズは諦める気は毛頭なかった。

 アイズは上級冒険者だからと言って、決して慢心せず他者を見下すような真似はしない。常に高みを目指す為に努力を惜しまない人間である。

 それでもここまで歯が立たない状況に対して、悔しいという気持ちが芽生えないはずがなかった。

 

(でもどうしよう……このままやっても勝てそうにない……魔法を使う? でも人間相手にそこまでやるのは……)

 

 アイズは魔法を使わないで勝てる相手ではないと理解していた。しかし魔法に問題があるのか魔法を使うかどうか迷ってしまっていた。

 

「迷う必要はない」

 

「えっ……!?」

 

「死ぬ気でこい。お前の全力を見せてみろ」

 

「っ!!」

 

 自分の心の内を見透かされて動揺したアイズであったが、ツナの言葉で迷いが払拭され魔法を使うことを決意する。

 するとアイズは剣を鞘に納めると腰に携えていた剣を外す。

 

(手数で攻めても無駄……)

 

 今度は腰を低くし右足を前に出すと左手で鞘を握り、右手の剣の柄を握る。

 

(これで決めるつもりか)

 

 ツナはアイズの構えから抜刀術による一発勝負にて決着を決めようとしていることを確信する。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 アイズが静かに呟くと風がアイズを護るように纏わり付く。

 

「【エアリエル】」

 

 これがアイズが唯一使える魔法【エアリエル】である。体や武器に風の力を纏わせることで攻撃を補助し、速度を上げる付与魔法(エンチャント)である。

 超単文詠唱である上に消費魔力も少いのにも関わらず、攻撃、防御、速度を上昇させることのできる使い勝手の良い魔法である。しかし肉体や武器への負荷がかかるというデメリットがある。故に大抵の武器はアイズの魔法に耐えられず壊れてしまう為、アイズの愛刀であるデスペレードには不壊属性(デュランダル)という決して壊れることのない特性が備わっている。それでも使い続けば切れ味が悪くなるので、デメリットを完全に無くすことはできない。【エアリエル】は使い勝手が良い反面、デメリットも大きい魔法なのである。

 そして抜刀術の構えを見せていたアイズの姿が一瞬にして消える。

 

(速すぎて全く見えない……!?)

 

 Lv.6の脚力をフル活用し、魔法によって強化された速度。ベルの目には全くアイズの姿が映っておらず、地を走る音だけが聞こえていた。

 一方でツナは動揺することなく目を閉じてアイズの気配を常に探っていた。

 

(後ろ!!)

 

 ツナは背後から超直感でアイズの殺気をいち早く察知し、即座に背後を向いた。背後を振り向くと空中で加速したアイズが一直線に突っ込んでくる。

 

「っ!?」

 

 するとアイズの姿が消え、一瞬にしてツナの背後を取った。【エアリエル】の力があればツナのように空中で高速移動が可能なのである。

 

(剣を抜いていない!?)

 

 虚を衝いて背後からツナに向かって抜刀したかに思われたが、アイズは納刀したまま(・・・・・・)ツナに刺突を繰り出していた。死角から抜刀術による1発勝負だと思っていたツナは虚を突かれるも、左手でアイズの鞘を握って受け止めた。

 アイズは土壇場でかつ抜刀術の構えを取ることで抜刀術で勝負を決めるとツナに思わせたのである。

 

(本命はこっち!!)

 

 アイズは目にも止まらぬ速さで剣を引き抜くと同時に遠心力を加えた一閃を放った。

 

「っ!?」

 

 ツナの虚を突き、Lv.6のステイタスと魔法を使った渾身の一閃。しかしツナはアイズの右薙を左手に持ったデスペレードの鞘で防いだ。デスペレードの鞘にはツナの炎が纏われていた。

 【死ぬ気の炎】は普通の炎と違い炎自体が破壊力を持った超圧縮エネルギー。武器に炎を纏うことで殺傷力を高めたり、防御を高めることも可能なのである。

 

(風が!?)

 

 アイズの一閃が鞘にぶつかった瞬間、デスペレードに纏っていた風が消える。

 【死ぬ気の炎】には大空、嵐、雨、晴、雷、雲、霧の7つの属性がある。大空はオレンジ。嵐はレッド。雨はブルー。晴はイエロー。雷はグリーン。雲はバイオレット。霧はインディゴという内訳になっている。

 さらに【死ぬ気の炎】にはそれぞれ特徴がある。嵐は分解。雨は鎮静。晴は活性。雷は硬化。雲は増殖。霧は構築となっている。

 そして大空属性の特徴は調和。調和とは矛盾や綻びがない状態。ツナはアイズの(魔法)を周囲の空気と調和させて剣に纏う(魔法)を打ち消したのである。

 

「これで終わりだ」

 

 ツナはアイズに炎を纏った右ストレートを繰り出した。ツナの放った右ストレートによってアイズを護っていた風が消え去り、魔法を打ち消したツナの拳に向かっていく。

 

「勝負ありだ」

 

(負けた……!?)

 

 しかしツナの拳はアイズには直撃せず、アイズの顔の前で止まっていた。自分が負けたという事実を突き付けられてアイズはショックを受けていた。

 

(アイズさんに勝った……!?)

 

 一方でベルはツナがアイズに勝ったことに信じられないでいた。

 実はベルが憧れ、目標にしている人物とは実はアイズのことなのである。ちなみにベルはアイズに対して恋愛感情を抱いている。

 

「返すぞ」

 

「どうやったの……?」

 

「ん?」

 

「どうやって私の魔法を消したの……?」

 

 デスペレードの鞘をアイズに返そうとしたツナであったが、アイズは受け取る仕草すら見せず、自分の魔法をどうやって打ち消された方法を尋ねる。

 

「俺の炎には調和という特性がある。お前の魔法を周囲の空気と調和させて無力化した。それだけだ」

 

「調和……」

 

 ツナがアイズの魔法を無力化した方法を説明し終えると、(ハイパー)死ぬ気モードを解いた。

 

「ふぅ……じゃあ俺の修行は終わりってことで」

 

 本来であればアイズはベルの為の修行。本来であればツナとアイズが戦うことはなかった。なので後はベルの修行の時間に使って欲しいと考えていた。

 

「終わってない……」

 

「はい……!?」

 

 アイズが不吉な一言を漏らす。ツナはアイズの言葉を聞いてツナは嫌な予感を感じていた。

 

「まだ……私は戦える……」

 

「え……あの……」

 

「このままじゃ終われない……」

 

「い、いや……俺はもういいからベルの修行を……」

 

「次は勝って見せる……」

 

(ダメだーー!? 全然、会話が成り立ってない!?)

 

 実はアイズはかなりの負けず嫌い。現在、アイズの脳内はツナに勝つことしか頭になかった。

 この後、アイズの体力が尽きるまでツナとの戦いは続いた。

 が、

 

「明日は……はぁ……勝って……はぁ……みせる……!!」

 

「いや……明日はもう……」

 

 結局、ツナに一太刀も浴びせることは叶わず肩で息をしていた。それでもアイズの勝利への執念は微塵も衰えていなかった。

 ベルのことが心配して来たのでツナ。全く問題がなかった訳ではなかったが、自分が心配するようなことではなかったとわかったので、明日以降は来るつもりはなかった。

 

「まず最初は……」

 

(なんか戦略を練り出したんだけど!?)

 

 もうアイズはツナとの戦いを脳内でシミュレーションしながらブツブツと呟き始める。ツナはアイズのあまりの執念に恐怖を覚えてしまっていた。

 

結局、ツナは明日も来なければならなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「あの……アイズさん……どうしたんですか? 疲れてるみたいですけど……?」

 

「次はそこで……いや敢えて……でもそれだと攻撃が読まれて……」

 

「ひっ!!」

 

 自分と同じ【ファミリア】の後輩に修行をつけていたアイズであったが、ツナに勝つ方法を考え過ぎて後輩から恐怖されてしまうのであった。

 

 

 

 




最後の人物についてわかりましたでしょうか?

まぁすぐに登場させる予定なのでお楽しみに。


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