ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)121 新たなる仲間(ニューメンバー)

 

 

 

 

 

 

 

 フェルズと別れた後、ツナは本拠(ホーム)である【竈の館】に戻った。

 

「―――という事で殺生石はもうギルドに渡ったから、もう俺たちと春姫が狙われることは無いよ」

 

 ツナは【イシュタル・ファミリア】の本拠(ホーム)に乗り込んだ際に起きた出来事について全て話した。

 

「だから春姫が犠牲になる必要はないよ。もう自由なんだ」

 

「自由……」

 

「えっ!? ちょっと!? 大丈夫!?」

 

 ずっと逃れることの出来なかったイシュタルの呪縛から解放されたと知った春姫は両手で口元を覆い、嬉しさのあまり両目から溢れんばかりの涙を溢した。

 いきなり泣き出した春姫の姿を見て、ツナは慌てふためく。

 

「申し訳ございません……嬉しくてつい……」

 

「春姫殿……」

 

 嬉し涙を流す春姫の姿を見て、命はそのまま春姫を抱き寄せた。

 

「命ちゃーん!!」

 

 そして今まで抑えていた感情が爆発し、春姫は子供のように泣き出す。その光景をベルたちは温かい目で見守っていた。

 

「沢田殿……春姫殿のことを助けてくれて……ありがとうございました……」

 

 ずっと行方不明だった春姫とこれから共に生きていけると知った命は涙目になりつつも、笑顔を浮かべながらお礼を言う。

 

「うん……」

 

「……」

 

 事が落ち着いたにも関わらず、ツナは浮かない顔をしていた。そんなツナをヘスティアを黙ったまま見つめる。

 

「しかし、送還の光が上がった時は気が気じゃなかったよ……てっきり僕はツナがついに神殺しをしたんじゃないかって思ったよ……」

 

「前にリリ助を助けに行った時、ぶちキレて【ソーマ・ファミリア】の倉庫の庭に大穴開けてたしな……」

 

「何なら【ソーマ・ファミリア】をぶっ壊してやると言っていましたね……お陰でリリは助かりましたが……」

 

「ご、ごめん……」

 

 流石にツナが神殺しをするとは思えなかったが、タイミングがタイミングであった事もあり、絶対とは言い切れなかったのも事実だった。

 ベル、ヴェルフ、リリの言い分にツナは反論できず、萎縮しながら謝ることしかできなかった。

 

「それで春姫、お前はこれからどうすんだ? 命から聞いた話じゃ実家から勘当されたんだろ?」

 

「そ、それは……」

 

 リボーンが質問すると春姫は頬を赤く染め、尻尾を左右に振りながらツナの方をチラチラと見る。

 その仕草を見てツナとリボーン以外の全員は春姫がツナに惚れていると察し、同時に衝撃を隠せなかった。

 

「成る程な。つまり【ヘスティア・ファミリア】に入りたいって訳か」

 

「わ、私は……!!」

 

 春姫の想いを見抜いたリボーンが口元をニヤニヤしているのを見て、春姫の顔がどんどん真っ赤になっていく。

 

「よし!! それなら春姫君の入団を記念して、盛大な歓迎会といこうじゃないか!!」

 

「ちょっとヘスティア様!? 借金があるという自覚あるんですか!?」

 

 2億ヴァリスの借金があるにも関わらずヘスティアは考え無しに散財しようとするが、【ファミリア】の財政管理を担っているリリが黙っている訳もなかった。

 こうして紆余曲折ありながらも【ヘスティア・ファミリア】に新たな団員が増えることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後は春姫に神の恩恵(ファルナ)が刻まれ、改宗(コンバージョン)が完了。リリの反対を押し切る形で歓迎会が行われた。

 

「……綱吉君」

 

「何? ヘスティア?」

 

「ちょっと話があるんだけど、いいかい?」

 

「え? うん」

 

 ツナは少しだけ困惑しながらも、ヘスティアと共に彼女の部屋に向かう。

 

「また無茶をしたね綱吉君」

 

「ごめん……でもどうしても許せなかったんだ」

 

「別に責めたい訳じゃないんだ。確かに君がイシュタルの所に殴り込みに行ったと聞いた時は驚いたけど、それでも君の行動でベル君達や春姫君が救われたのは事実だ。だから、そこは気にしないでくれ」

 

「ヘスティア……ありがとう……」

 

 色々と心配させるようなことをしたにも関わらず、全く責めないヘスティアにツナはお礼を言った。

 

「それよりも問題は君だよ綱吉君。仕方がなかったとはいえ、今回の件でまた君の力を知る者が増えてしまったんだから」

 

「それなら大丈夫だよ」

 

「え? どうしてだい?」

 

「ごめん、ちょっとそれは言えないんだ……」

 

「まぁ君がそう言うなら信じるよ」

 

 フェルズも自分と同じく表立って存在を知られたくない事を知っている為、ツナはフェルズのことを言及しないようにした。

 ヘスティアはツナが嘘をついていないだけでなく、何か訳ありだということを察した事でこれ以上追及することはしなかった。

 

「とりあえずこの話はこれで終わりだ。君をわざわざ呼んだのは別の話さ」

 

「え?」

 

「イシュタルから狙われることがなくなって一件落着したっていうのに、君が浮かない顔をしていたからね。何かあったんじゃないって思ったんだ」

 

(やっぱりバレてたか……)

 

 春姫やベルたちが助かったもののフェルズからラキアがオラリオに進軍の準備を開始、最悪オラリオが滅びる可能性が近づいている事を聞き、とても喜んでいられる状態ではなかった。

 

「一応、僕は君の主神だからね……何か悩み事があるなら聞くぜ。勿論、無理にとは言えないけどね」

 

「いや……話すよ」

 

 この際ヘスティアには言っておく必要性があると感じたツナは、全てを話すことに決めた。

 

「―――っていう訳なんだ……」

 

「……つまり君達の世界の人間がラキアにいるかもしれない、しかもその人間は綱吉君の使っている炎を利用して進軍して来るかもしれないってことかい?」

 

「うん……絶対ラキアにいるっていう証拠がある訳じゃないし、そうなるって確証もある訳じゃないからまだなんとも言えないんだけど……今はウラノス様が例のリングを回収してくれて、そのリングをリボーンが9代目に頼んで情報を調べてくれてる最中なんだ」

 

「僕の知らないところがそんなことが……しかも君が言ったことがもし本当に起こるなら、なんとしてでも阻止しなければならないけど……かと言ってこのことを知られれば君の正体が公にバレてしまうし……まだ何もわかっていないから対策のしようがないって訳か……」

 

「うん。だから悪いけど、このことはベル達には黙っていて欲しいんだ……まだ起きるかどうかわからないことで心配させたくないから」

 

「うん、わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 春姫が入団してから数日が経過した。

 【フレイヤ・ファミリア】によって【イシュタル・ファミリア】が壊滅させられたことは瞬く間にオラリオ中に知れ渡り、たださえ恐れられていた【フレイヤ・ファミリア】はより畏怖されるようになった。

 イシュタルは天界に送還されたものの眷属に死者は出ず、一方で歓楽街はその機能を失っており、現在復旧作業が続けられている。

 これだけの事態を起こした【フレイヤ・ファミリア】にはギルドから相当の厳罰が下ったが、主神であるフレイヤは意にも介しなかったという。

 

「わかってはいたが、本当に【イシュタル・ファミリア】を壊滅させるとはねぇ」

 

 そして現在、アイシャは春姫を別れを告げる為に【竈の館】の門の前にやって来ていた。アイシャが横に視線を移すと、そこには同郷である【タケミカヅチ・ファミリア】の面々と春姫が話している姿があった。

 

「それより元【イシュタル・ファミリア】の眷属だった人達はどうなったの?」

 

「ギルドの遣いだという奴は私の元にやって来てね。今回の1件に関する全てのことを他言しなければ特に罰は与えない、って言われたよ」

 

(良かった……)

 

 フェルズが上手いことを立ち回ってくれたと知り、ツナは安堵する。

 

(にしても何の罰もないなんてねぇ……)

 

 アイシャ達戦闘娼婦(バーベラ)はオラリオにおいてかなりの実力者揃い。故にどこの【ファミリア】に所属することができなければ結果的にオラリオが得られる利益は減ってしまう。だから敢えてこの1件は公表せず、【フレイヤ・ファミリア】の事のみを公表することをギルドは判断したのだとアイシャは解釈した。

 

(まるでギルドがこいつのことを庇っているような……)

 

 ギルドが利益が減ることを恐れたのは嘘ではないだろうが、それよりもツナの存在を知られないようにする為にギルドが自分達に罰を与えなかったのではないかとアイシャは感じていた。

 

「ただフリュネの野郎はもう冒険者として再起不能になったけどね」

 

「え……ま、まさか俺のせいで……!?」

 

「あんたのせいじゃないよ。あんた達と別れた地上に戻った後、どうやら今回の計画が【フレイヤ・ファミリア】にバレてたみたいでね。【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】に徹底的に痛めつけられたのさ」

 

「ヒルド?」

 

「【フレイヤ・ファミリア】の白妖精(ホワイトエルフ)の幹部、ヘディン・セルブランドのことさ」

 

(もしかして……)

 

 エルフと聞いてツナは思い出す。ダンジョンを出る前にいた、ただ者ではないエルフのことを。あのエルフがアイシャの言うヘディンのことなのではないかと推測する。

 

「【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】の制裁を受けたことがトラウマになって、あいつはもう外に出るのが怖くなったのかずっと引きこもっているよ。幸い私らは見逃されたけどね」

 

 ヘディンは無駄を嫌う合理主義者。故に【ファミリア】内一番の実力者であるフリュネを見せしめにすることでアイシャ達の戦意を失わせ、自分達に逆らえないことを理解させたのである。

 

「イシュタルに協力してた【ファミリア】がいたんだけど、あの人達は?」

 

「あいつらなら逃げたよ。大方、あんたが殺生石を奪われた時点で計画が失敗することを予見して、罰を受ける前に逃げたってところだろ」

 

(やっぱり……)

 

 送還の光が1本だった時点でおそらくカーリーは送還されていないとわかってはいたが、それでもツナはカーリー達がどうなったか確認しておきたかったのである。

 

「これからどうするの?」

 

「心配ないさ。自分で言うのはアレだが私らを団員に欲しがる【ファミリア】が声をかけてくる。どこかしらの【ファミリア】には所属できる筈さ」

 

 【イシュタル・ファミリア】の戦闘員はオラリオでもかなりの実力者であることは有名。そんな人材を欲しがる【ファミリア】が多くいることをアイシャは知っていた為、今後の心配はしていなかった。

 

「本当はあんたらの【ファミリア】に入りたかったんだけどねぇ……」

 

 【イシュタル・ファミリア】が壊滅した次の日。【竈の館】にアイシャ達戦闘娼婦(バーベラ)が【ヘスティア・ファミリア】を入団せんと押し掛けて来たのだ。

 アマゾネスは強い男に惚れる性質があり、自分達を完膚なきまでに倒したツナを自分達のものにせんと【竈の館】に殺到したのである。

 入団者がいる事自体は嬉しかったのだが、このままでは【ファミリア】の風紀が乱れることを恐れた処女神(ヘスティア)は彼女達の入団を断固として拒否した。

 ちなみにツナが幻覚を使う際、ヴェルフに化け戦闘娼婦(バーベラ)の一部を倒したせいでヴェルフもとばっちりを受けた為、今後アマゾネスと戦う時は無暗に他人に化けるのは止めようとツナは心の中で誓った。

 

「アイシャさん。今までお世話になりました」

 

「辛気臭い挨拶すんじゃないよ。これが今生の別れじゃないんだ。ま。何かあったら相談くらい乗ってやるよ」

 

「ありがとうございますアイシャさん」

 

「それと自由になれたんだ。気になった男がいたら食っちまいな」

 

「ア、アイシャさん!!」

 

 春姫がツナに惚れたということを見透かされて春姫は顔を真っ赤にしながら動揺する。

 

「く、食うって……狐人(ルナール)って人間を食べるの……!?」

 

「ち、違います!! そういう意味ではございません!!」

 

 春姫が怪物(モンスター)のように人間を食べるのだと勘違いしてツナは顔を真っ青にし恐怖してしまう。

 

「じゃあどういう意味?」

 

「へっ……!?」

 

 純粋な瞳で尋ねるツナ。まさか詳細を求められると思っていなかったのか春姫は顔だけでなく耳までも真っ赤になり、気絶してしまう。

 

「春姫!? どうしたの!? 大丈夫!?」

 

(こりゃ前途多難だね……)

 

 なぜ春姫が気絶したのかわから慌てるツナの姿を見て、アイシャは呆れ果てるのであった。

 

 

 

 

 




次回からラキア進軍篇です。

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