ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
そして場面は対ラキアの為に作られた拠点に戻る。
「随分と気合いが入っているね」
「フィン……」
ツナの剣呑な雰囲気に誰もが近付こうとする勇気がない中、フィンが話しかけて来た。
「気合いが充分なのは構わない。だけど肩の力が入り過ぎだ、もっと力を抜いた方がいい。いくら相手のLv.が低いとはいえ空回りするし、周囲に緊張が伝播してしまうよ」
「―――っ!?」
フィンの言葉にツナは我に返り周囲を見渡す。そこには不安そうな
「す、すまない……自分のことばかりで、周りのことが全然見えてなかった」
「……君がそんな風になるなんてね。何かあったのかい?」
「……俺の捜していた人物がラキアにいるかもしれなくてな、つい肩の力が入ってしまった」
もしチェルアが暗躍するのならフィン達にも被害が及ぶ可能性が高い為、ツナは正直に話す。
「もしかして今回のラキア迎撃に参加したのは自分の意思なのかい? よく許可が取れたね」
「ああ、ウラノスの許可をもらって参加させてもらった」
「驚いたね……神ウラノスとまで面識があるのかい?」
「実は数百年前、俺の先祖が当時治安の悪かったオラリオを救ったらしくてな。俺がその子孫だということに気づいたウラノスが面会を求めてきたんだ。それ以来、連絡を取り合う関係にある」
ツナはここで誤魔化すより素直に答えた方が良いと判断し、フィンに自分とウラノスの関係を明かした。
(しかし許可を与えたとは……神ウラノスは沢田綱吉の強さも知っているということか……?)
いくらウラノスとの交友があるとはいえ、あの神が単なる私情でラキア迎撃の許可を与えるとはフィンには到底思えなかった。ならばウラノスもツナが規格外の強さを持っていることを知っているのではないかと推測した。
(もしそうだとしたら、ウラノスは彼のことを黙認しているのか?)
Lv.1とはいえど、ウラノスからすればあれ程の強さを持つツナはダンジョン攻略や黒竜の討伐において、喉から手が出る程欲しい人材。そんな人材を遊ばせておく理由などない。なのにそれを黙認する理由がフィンにはわからなかった。
本来、冒険者が【ランクアップ】した場合ギルドに申告しなければならない。もし申告しなかった場合はギルドから
実は【ヘルメス・ファミリア】は団員が【ランクアップ】したことを申告していない。理由としては【ランクアップ】したことでギルドの等級が上がると同時に納める納税額が上がったり、遠征の義務が発生する為である。
(彼が自身のことを知られたくない理由と何か関係があるのか……?)
ウラノスがツナのことを黙認していること、ツナが自分のことを知られたくないことには何か関係があるのではないかとフィンは推測する。だがその理由は流石の彼ですらわからなかった。
「それで? 君の探している人物とは何者なんだい?」
わからないことを延々考えていても意味がないし、かと言ってツナに聞いても答えてくれるとは思えず、フィンは話題を切り替えた。
「……曰く付きの品を作る科学者であり、それを流している闇商人でもある。俺はこいつを何としてでも捕まえたいんだ」
「なぜその人物がラキアにいると?」
「少し前に起きたグラン・カジノの事件を知っているか?」
「確か本物の
「俺は【ガネーシャ・ファミリア】に依頼されて、あの事件の現場にいたんだ。シャクティと一緒に幻覚で潜入し
「何があったんだい?」
「俺とシャクティが正体を明かしたら、捕まることを恐れたテッドはボディガードに更に命令をした。パワーアップと引き換えに理性を失わせるリングを装備するようにな」
「
「ああ」
フィンは指を顎に当てながら呟いた。
事前にツナはもしあのリングの事を聞かれることがあったら
「俺はすぐにそれが奴の仕業だと気づいた。その後ボディガードを倒しテッドを逮捕することに成功し、あのリングをどこで手に入れたかをテッドに問い詰めた。そうしたらテッドはラキアで女の商人から試作品だと言われもらったと言っていたんだ」
「それが君の捜している人物がラキアにいるという根拠か。だがそれだけでは……」
「わかってる、だけど手がかりはこれしかない。それに奴は表立って現れず、裏から他者を操るタイプだ。だからこの戦場に来たのは奴に繋がる手がかりを得る為なんだ」
「……確かにそれは厄介だね」
話を聞く限り、試作品と言って
「その人物の特徴はわかるかい?」
「悪いが特徴まではわからない。分かっているのは幻術を使う術士である事。俺のように自分の姿を変えられる上、潜入してもすぐに気づかれるだろう。チェルア・ラストルという名前はわかっているが、奴がわざわざ本名を晒すような真似をするとは思えない。ラキアの兵士達に聞き出しても無駄だろうな」
「成る程ね……だから敵陣に潜入しなかった訳か」
「とはいえ、フィンの言う通りチェルアがラキアがいる保証はどこにもない。仮にいたとしても今回の進軍で何かしてくるとも限らない。正直、俺の私情にお前達を巻き込みたくはなかったんだが……」
「いや、ラキアを裏で操ろうとしている人物がいるとなれば話は変わってくる。当然僕らも無関係じゃないし、その黒幕が何もしなかったとしても君がいるのは正直ありがたい。Lv.が低いとは言っても、相手は3万もいるしね。今までの5度の進軍も手間がかかって仕方がなかったんだ」
「ずっと疑問に思ってたんだが、何で何回も攻めて来れるんだ? お前達とまともに戦えば相当な被害が出ると思うんだが……」
仮にも戦争を起こせば大勢の死者が出るのは当たり前の筈。なのに何故何度もラキアがオラリオに進軍できるのか、その理由がわからなかった。
「理由は単純。敗走したラキアの兵士達に
「商魂逞しいな……」
仮にも戦争だというのに敵を相手に商売しにいく【ファミリア】の逞しさに驚くと同時に、誰も殺す必要がないと知りツナは安堵した。
「とにかく、このことは皆に伝えるよ。グラン・カジノでの事件の証人であるシャクティもいるから、君の言うことは信じてもらえる筈だ。念の為、君の強さを知られないよう配置は考えておこう」
「悪いな、疲れているお前に負担をかけるような真似をさせて……」
「……やはり君には隠せないか」
ツナの超直感は見抜いていた。最後に会った時よりもフィンが少し痩せ、精神的に疲弊していることを。
「
「そうか……」
これ以上聞くのはフィンに良くないと思い、ツナは追及することはしなかった。
「もし力が必要なら言ってくれ。出来れば戦いたくはないが、友達が死ぬかもしれない状況を黙って見てなんかいられない」
「沢田綱吉……」
「すまない……【ロキ・ファミリア】の団長相手に……」
「いや、肩書きとか関係なく君とは友でいたい。気にしないでくれ」
「フィン……」
「とにかくまずは目の前の戦いに集中だ。気持ちを切り替えよう」
「ああ」
一方ラキアの方では。
「いよいよだ……あの日から
「ラキアが
「言っただろ、彼女はそれを望まない。それに
(彼女に対して狂信者なお陰で利用するのは簡単だけど、こういう所は面倒くさいわね……)