ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
フィンの指示通り、ツナは様々な戦場で幻覚を構築していく。ゴライアスの出現によりただでさえ冷静な判断力を失っていた所に、オラリオの第1級冒険者だけでなく今まで見たことのない
「ふぅ……」
「お疲れ。面倒な役割を押し付けてすまなかったね」
そして進軍1日目の夜。幻覚を作り続けた影響によって大量の炎を消費し、流石に少し疲れを見せるツナにフィンに労いの言葉をかけた。
「とりあえず今日はもう休んで、明日に備えてくれ」
「うん」
「―――休んでる暇なんてねぇぞ」
「ぶっ!?」
フィンの言葉に甘え、ツナは拠点に設置されたテントに向かおうとした瞬間、何者かに蹴り飛ばされた。
「お前は修行だぞ」
「「「「─────!?」」」」」」
突如、テント内に設置された机の上に現れたのはリボーンだった。仮にもオラリオの中で屈指の精鋭が揃っている中、ここまで誰にも感知されることなく現れたことに、フィン達は衝撃を隠せなかった。
(こ、こいつ……!? あの時の!?)
そしてロキは思い出す。そこにいるのは
「リボーン!! お前何でここにいるんだよ!?」
「決まってんだろ、しばらく
「しゃ、喋ってる……!?」
「何なのこの子……!?」
見た目はどう見ても赤ん坊なのに流暢な言葉で喋るリボーンを見て、レフィーヤとティオネは衝撃を隠せない。
「リボーンって……まさか……!?」
「この子のことを知ってるの、アイズ?」
「確か……ツナの師匠の名前……」
「ええ!? この子が!?」
アイズは以前1度だけツナの口からリボーンという彼の師匠の名を聞いており、その事を思い出していた。この赤ん坊がツナの師匠だと知り、ティオナは驚きの声を上げる。
今目の前にいる奇妙な赤ん坊がツナの師匠だと知った他の団員達も、驚きのあまり声も出せない状態だった。
「つー訳だ。これから向こうで修行してくるから、こいつに何か用があったら来てくれ」
「つー訳だ、じゃないだろ!! 何でこんな時まで修行しなくちゃならないんだよ!!」
「チェルアの奴が来るかもしれねぇ以上、備えておくに越したことはねぇだろが。それにチェルアの脅威が終わったとしてもお前にはダンジョン攻略、ひいては黒竜の討伐が待ってんだ。休んでる暇なんてある訳ないだろ」
「黒竜の討伐……どういう意味だい?」
フィンは戦うことが嫌いなツナが黒竜の討伐を自ら望む訳がないことを知っていた。故になぜツナが黒竜を討伐するのかという話の、その真意が気になった。
「どういう意味も何も、そのままの意味だぞ。俺はこいつに黒竜を討伐させるつもりだ。こいつを強くするのが俺の使命なんでな。使命を果たすには黒竜は丁度いい修行相手だと思ったんだ」
「「「「「「なっ!?」」」」」」
人類を滅亡させるだけの力を持つ黒竜を修行相手と言ってのけたことに、その場にいた者達は言葉が出ない。
「修行相手やと!? 意味わかっとんのか自分!? 黒竜っってのはな……」
「オラリオの歴史上最強と言われた【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】ですら討伐できなかった化け物。こいつを討伐できなければ人類に後はもうない。だろ?」
「なっ!?」
ロキはリボーンが黒竜のことをわかっていないと感じ説明しようとするも、その前に彼が先に答える。リボーンが全て理解しての発言だという事がわかり、ロキは絶句する。
(このガキ……全く隙がありやがらねぇ……!?)
一方で表面上
「そんな化け物を討伐できれば、こいつは更に強くなる。面白ぇじゃねぇか」
(面白いだと……!?)
(本気で言っているのか……!?)
(一体、何なんじゃ此奴は……!?)
フィン、リヴェリア、ガレスは【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】がいる頃の古参であり、彼らから洗礼を受け続け、オッタルと同じく幾度も屈辱と敗北を味わってきた。故に両【ファミリア】の団員達の強さと恐ろしさは嫌という程に理解している。だがそんな英雄達の力を持ってしても黒竜を討伐することは叶わず、結果的に両【ファミリア】は崩壊の一途を辿った。そのことを知っていながら、リボーンは面白いと言い放ったことに驚くしかなかった。
「黒竜を討伐する為に修行すんのは勝手やけどなぁ!! 英雄の座を手にすんのはウチの
犬猿の仲であるヘスティアの眷属に英雄になられるのは面白くないと感じたロキは、リボーンに宣戦布告する。
「英雄? 馬鹿かお前」
「あぁ!?」
「こいつが英雄になんてなれる訳ねぇだろ。第一、俺は英雄の座なんて興味はねぇ」
「きょ、興味がないやと!?」
「言った筈だぞ、俺はこいつを強くするのが使命だってな。俺が欲しいのは英雄の称号じゃねぇ。黒竜を討伐した際にこいつが至るだろう力だ。それ以外は何もいらねぇ。英雄になりてぇなら好きにしやがれ。俺は俺の使命を果たすだけだ」
(こいつ……真意が全く読めへん……!?)
リボーンの言ったことの真偽が見分けることができない初めての経験に、ロキは困惑を隠せないでいた。
(やけど……)
嘘を見抜けない神相手ですらロキはその真偽を察することができる勘の鋭さを持ち合わせている。その鋭さを以てしても、彼が嘘をついているように見えなかった。故にリボーンが本当にツナを鍛える為だけに黒竜を討伐しようと考えているのだと、ロキは理解せざるを得なかった。
「話が長くなったな。とっとと行くぞツナ」
「ひっ!? わ、わかったよ!!」
そうこうしている間にリボーンが懐から愛銃を取り出し、銃口をツナの方に向ける。そして修行をさせる為脅しを掛け、そのままツナと共にどこかへ行ってしまう。
とんでもない発言の数々を残したリボーンが去り、その場は静まり返る。
「お、面白い冗談を言う子でしたね……ハハハ……」
静まり返った場をなんとかしようと、レフィーヤは無理やり笑いながら言葉を発する。
「……嘘やない」
「えっ……!?」
「どういう訳か、ウチにはあいつの嘘が見破れんかった……それでもわかってもうた……あいつが何1つ嘘をついてないってことが……」
神々は未知を求め、下界へと降りてきた。神々は下界の住人達と違い、内心では混沌を楽しむ者も多い。ロキもその1人であるが、それでもリボーンの考えは常軌を逸していると言わざるを得なかった。
ロキの発言を聞いて、リボーンが本気で黒竜をツナの修行相手にしようとしているのだと、団員達は理解してしまい、唖然とする。
「それだけではない。あのリボーンという男、おそらく強さは沢田綱吉と同等……あるいはそれ以上……」
「う、嘘……」
「あんな赤ん坊が……」
リヴェリアを始めとした幹部陣はベートと同様に気づいていた。一見隙だらけに見えて、リボーンには全くと言っていい程に隙がなく、仮に襲撃しようものなら全員返り討ちに遭っていたということを。
一方でただ者ではないことはわかってはいたが、あんな幼い赤ん坊がツナと同等かそれ以上の力を持つ存在だという事がアキとラウルには信じられなかった。だが遠征の際、ツナがリボーンのことを何よりも恐れていた
(沢田綱吉があのリボーンという赤ん坊の弟子であるのなら、確かにあの強さにも納得がいくが……だとすれば一体、あの赤ん坊は何者なんだ?)
今まで謎だったツナの圧倒的な強さの理由は判明したものの、今度はそんなツナを強くしたというリボーンの存在がフィンは気になり始めていた。
一方その頃。
「……騒がしいわね」
「そうですね……」
ここは【ロキ・ファミリア】の拠点から離れた場所にある、【フレイヤ・ファミリア】の拠点。
その近くから大きな音がフレイヤと側にいたオッタルの耳に届いた。
「様子を見てきましょう」
「問題ないわよオッタル。気にしなくていいわ」
「いえ、フレイヤ様の身に何かあってはいけませんので」
この場には団員が勢揃いしている為、万が一自分に危害を加えてこよう者がいたとしても何の問題もないことをフレイヤは理解していたが、忠誠心の高いオッタルはフレイヤに万が一の事があってはいけないと思い、音のする方へと向かって行く。
「全く、心配性ね……」