ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
ラキアが進軍してから5日が経過した。
今回の進軍が始まってから、ラキア軍の動きが妙なことにフィンは気づいた。そして敵の狙いがオラリオにある可能性があると推測したフィンは、戦線を【フレイヤ・ファミリア】に任せ、団員達を引き連れてオラリオへと戻って行った。
一方でツナはオラリオに戻らず、チェルアの動向について調べる為に戦場に残ることになっていた。オラリオにチェルアが現れる可能性がある為、リボーンはオラリオにフィン達と共にオラリオに向かった。
「それでフィンにお前から命令を仰げと言われて来たんだが」
「あの忌々しい
ツナは現在、ヘディンの元に訪れていた。ツナの話を聞いたヘディンは苛立ちを見せていた。
「まぁいい。貴様のような奴が1人がいてくれた方が都合がいいのも事実だ」
「都合がいい?」
「簡単な話だ。この【ファミリア】には協調性というものが皆無な上に、団員のほとんどが真正面から突撃することしかない馬鹿共の集まりだ。貴様であればそのような心配はない。こちらとしても手がかからなくて済む」
「そ、そうか……」
淡々と言ってはいるものの、青筋が浮かべていることに気づいたツナは、ヘディンが苦労人なのであるということに気づいて同情する。
「最初の指令の前に貴様に聞きたいことがある」
「何だ?」
「フレイヤ様を見て何を感じた?」
「なぜここでフレイヤのことを聞く?」
「いいから答えろ」
「……誰もが虜になる美貌の持ち主だということと、器の大きな女神だと感じたな」
ヘディンがどうしてこのようなことを聞くのかわからなかったが、ツナはフレイヤの印象について素直の感想を述べた。
「ただ……」
「何だ?」
「女王のような雰囲気を
「そうか……」
「これで満足か?」
「ああ。最初の指令ここから先にある北西にヘグニという
「わかった」
ツナは炎を逆噴射させると、ヘディンの指示された場所へ飛んで行く。
(やはりあの男は
───北西の戦場
「……」
褐色の肌にマントを纏い、薄紫にも見える銀の髪と若葉色の瞳の男のエルフが、無表情で向かって来るラキア軍を目にも止まらぬ斬撃でで斬り裂いていた。
この男の名はヘグニ・ラグナール。【
(みんなが見てるー!! もう帰りたい!! フレイヤ様にナデナデされたい!!)
オラリオの中でも数少ない第1級冒険者であり、【フレイヤ・ファミリア】の幹部という肩書きを持つヘグニではあるが実は極度のあがり症と対人恐怖症なのである。相手がいくら弱いとはいえ、何日にも渡って大勢の視線が自分に向けられるこの状況はヘグニにとっては拷問以外の何者でもなかった。
(もう無理……魔法を使おう……)
ヘグニには【ダインスレイヴ】という人格を改変する魔法がある。人格に作用するという点ではフィンの戦意高揚の魔法と類似するが、能力上昇の効果はなく人格のみに作用するという一見地味なもの。但し、その精神作用に特化した改変効果は自己暗示を超えた自己改造であり、彼本来の性格の気弱さが消え去り、冷酷で無慈悲な戦士へと変貌するのである。
「え……!?」
ヘグニが魔法を行使しようと思った矢先、ヘグニの前方にいたラキアの兵達が慌てて撤退していく。
ヘグニは自分が何もしていないのにも関わらず、敵が撤退し始めたのかわからず困惑してしまう。
「やっぱり難しいな……」
背後から声のする方を向くとそこには大量の芋虫型の
ラキア軍の進軍初日にゴライアスを創造したが燃費が悪く止めてしまったが、深層で遭遇した芋虫型の
(え!? 何であいつがここにいるの!?)
【フレイヤ・ファミリア】の担当する戦線になぜツナはいるのかわからずヘグニは困惑する。
「お前がヘグニでいいか?」
この場にいる
「……ク、ククク……そうだ。よくぞ見破ったな。我こそこが迷宮都市に君臨せし銀色の女神のを護りし闇の狩人。ヘグニ・ラグナールだ」
ヘグニは不敵な笑みを浮かべ、右手の掌で顔を覆いながら返答した。
ヘグニは口下手過ぎるあまりこじらせ発言をしてしまうという癖がある。それ故に周囲からは痛々しい奴という認識されている。
「今、俺はヘディンの命令でここにやって来ている。しばらくの間、お前らと共に戦うことになったからよろしく頼む」
「ふっ。忌むべき敵を前にして宿敵との共同戦線。これも天が定めし宿命という訳か」
「……」
(な、何!? 何で黙ったままこっちを見てるの!? 俺、何か悪いことした!?)
急に黙り込んで自分の方をジッと見つめられてヘグニの内心は激しく動揺していた。
「お前、もしかして人と関わるのは苦手か?」
「なっ!?」
「やっぱりか。どうりで喋り方に違和感があった訳だ」
ツナの超直感はヘグニの本質を見抜いていた。僅かな時間で自分のことを見抜かれたことにヘグニは動揺を隠せないでいた。
『無理に話さなくていい。意思表示だけしてくれ』
(俺の為に……!?)
するとツナはヘグニの為に幻覚で宙に
人見知りのことがバレても、痛々しい発言をしても特に何も言わどころか自分に配慮してくれたことにヘグニに驚きを隠せないでいた。
ヘグニは人見知り故にメンタルが弱く、周囲からはクソ雑魚エルフと呼ばれてしまっている。逆に痛々しい発言をすれば白けた視線に見られ、神々からは厨二病と呼ばれ、ヘディンには残念な奴と言われる始末なのである。
「な、何で俺が人が苦手だって……わかったの……?」
ツナの前では安心感を得られたのか、ヘグニは普通に会話することができるようになっていた。
「普通に話してるだけなのに、とてつもなく全身が強ばっていたこと。それとお前のあの話し方が本心じゃないと感じた。それだけだ」
「じゃ、じゃあ……何で俺の為にそこまで気を遣ってくれるの……?」
「何でって……人と関わるのが苦手な奴に無理に喋らせるような真似はできないだろ」
(え……もしかしてこいつが唯一無二の友?)
自分の本性を知ってなおここまで優しくしてくれる者などフレイヤくらいしかいなかった。しかしフレイヤは護るべき王であり、ヘグニはフレイヤを護る臣下。友達という対等な関係にはなれない。しかしツナが相手であればヘグニは友達になれるのではないかと思ってしまっていた。
「とりあえず指示をヘディンの元に戻ろう。俺の足に捕まれ」
「う、うん……」
ツナは炎を霧から大空に切り替えると少しだけ宙に浮いた。ヘグニは少し躊躇いつつも地を蹴ってツナの右足を掴んだ。
────【フレイヤ・ファミリア】の拠点。
「北西の敵は撤退させた。次の指示をくれ」
(あのヘグニの心を開かせただと?)
極度の人見知りであるヘグニと短時間で打ち解けたことにヘディンは内心驚きを隠せないでいた。
(
ヘグニと対等の関係になったことから前々から薄々、感じていた違和感がヘディンの中で確信へと変わる。
「貴様。王の資質を持っているな」
「何の話だ」
「とぼけるな。この阿呆は腕は確かだが重大な欠陥を抱えている。それをこの短時間で打ち解けた者などフレイヤ様以外にいない。少なくともそういう立位置の者でない限り、この短期間でこの阿呆と打ち解けられる筈がない」
「……周囲からは望まれてはいるが、俺は王になんてなるつもりなんてない。穏やかな日々を過ごせれば俺はそれでいい」
ヘディンの目を誤魔化し切れないと判断したツナは素直に白状した。
「まぁいい。次は南西の敵を撤退させろ」
「わかった」
「それと言い忘れたが、
「……」
「何だ? 言いたいことがあるならさっさと言え」
「いや……わざわざ正体をバレないように襲撃して来たのに、それをあっさりバラしたから意外だと思ってな」
「貴様らが戦えば、ただでさえ時間の無駄な戦いがさらに長引く。第一、私がこのことを言わずとも貴様は奴らが襲撃したことも、離れた場所から私があの戦いを見ていたことも気づいているだろ」
「まぁな」
「そういう貴様の方こそよく襲撃した我々と戦うことを決めたな。いくら貴様が返り討ちにしたとはいえ、我々に対して恨みを持っていてもおかしくない筈だが」
「俺の仲間を危険に遭わせようとしたことは今でも許せない。けど恨んだ先にあるのは破滅だけだ。ここで俺がお前達を恨めば、また仲間に危険に及ぶかもしれない。それだけは絶対に避けなければいけない。それに俺にはこの戦いを最速で終わらせる方法が思いつかない。けどお前はこの戦いを何度も経験しフィンが認める程の頭脳の持ち主だ。そんなお前ならこの戦いを最速で終わらせ方法を熟知している。だったらいがみ合うよりも、手を取り合う方がいいと思っただけだ」
「あの忌々しい
ヘディンはツナが感情に振り回されず、冷静に状況を把握できる人物だということを理解する。
話を終えるとツナはヘディンの指示した場所へと飛んで向かって行く。
「……なぁヘディン。あんな王になれてたら何か変わってたのかな……?」
ヘグニは【フレイヤ・ファミリア】に所属する前の頃のことを思い出していた。
ヘグニとヘディンはその昔、かつては
ヘグニは生まれ持った戦闘能力の高さ故に勝手に戦王として担がれ、王とは名ばかり奴隷の如く戦場で戦わされ、成果を上げなければ罵られ、酷使されるという人生を送っていた。
ヘディンは生まれながらにして頭脳明晰だった故に、勝手に理王として担がれ、愚かしく思いながらもそれで王としての責務を全うしていた。
そんな地獄のような日々の中で2人は互いを宿敵と認め、ヘグニはヘディンをヘディンはヘグニを倒すことを目標にしていた。
そんなある時、ヒャズニングのあり方が酷いと感じたフレイヤがヒャズニングを滅ぼし、ヘグニとヘディンは忌々しい王の責務から解放された。その恩から2人はフレイヤに忠誠を捧げることになったのである。
「……さぁな」
フレイヤ・ファミリアの幹部の中でヘグニの出番だけなかったので出してみました。中二病の台詞って難しい……
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