奇妙な怪物に囲まれたツナ達。
すると一番、最初に襲いかかってきた蜥蜴人が雄叫びを上げた。雄叫びを聞いた途端、地上にいた怪物達が走って向かって襲いかかり、空中からは弾丸と化した半人半鳥達の羽根がツナ達に降り注ぐ。
「【Xブラスト】」
ツナは炎の属性を霧から晴に切り替えると、炎を纏った掌を叩いた。晴の活性の力によって何倍にも強化された音が衝撃波となり、地上にいた怪物達と、弾丸と化した羽根と上空にいた半人半鳥が吹き飛んだ。
すると吹き飛された怪物の1体が所持していた盾が空中から落ち、ツナは左手でキャッチ。そして晴の炎を纏わせた盾を回転しながら放った。
遠心力に加え、晴の炎の特徴である活性によって弾丸を越えるスピードになった盾は一直線に進み、広間の壁に激突しクレーターが発生する。
あまりの破壊力であった為にその場にいた者達の意識と視線がクレーターに向いた。
「空中の怪物と蜥蜴人は俺がなんとかする!! 皆は他の奴の相手を頼む!!」
敵の意識を別の方に向かせ、ツナが吹き飛したことで戦力は分散した。ツナの言葉を聞いてベル、ヴェルフ、戦力が再び集合しないよう立ち回れというツナの意図を察し前に出る、命は非戦闘員であるウィーネ、リリ、春姫を護る為に護衛に徹する。
怪物達が吹き飛んだことで晴から大空に切り替え、ツナは蜥蜴人に向かって行く。
「っ!?」
蜥蜴人の口から火炎が放たれた。火炎を吐くことのできない筈の蜥蜴人は火炎を吐いたことに対して、ツナは驚きのあまり目を見開くも、右手から炎の盾を展開して火炎を防ぎきる。
その隙に背後から石竜が爪をツナに振り下ろすが、ツナは振り向くことなくそのまま左手の炎を地面に向かって噴射し上空に移動し、石竜の攻撃を躱した。
空中に逃がれたツナであったが、再び半人半鳥の羽根が放たれる。それでもツナは空中を自由自在に飛びながら、羽根を躱していく。
(俺の推測が正しければ……)
一定時間、空中で躱し続けるとツナは地上に急降下する。
(予想通りだな)
地上に急降下すると、半人半鳥は羽根による攻撃を中断した。しかしツナがどういう訳か攻撃が中断されることを予測していた。
そこからツナは炎の属性を大空から霧に切り替え、煙幕を創造する。広間内が煙幕が包まれるもすぐにツナは煙幕を解除した。
「これは……!?」
春姫達の視界には、この場にいる者達全員の幻覚が創造された光景が映っていた。
(攻撃を止めた……!?)
幻覚でできた自分達が出現してから、どういう訳か怪物達が攻撃の手を止めた。その理由がわからず、ベルは困惑する。
そんな中、1人の怪物が蜥蜴人に向かって行く。そして蜥蜴人の間合いに移動した瞬間、怪物がツナの姿に変化。そしてツナの炎が霧から大空に変化し、同時に幻覚によって作られたベル達が消える。
蜥蜴人は咄嗟に長刀を薙ぎ払うもツナの姿は消え、長刀は空を切る。
「こっちだ」
すると蜥蜴人の背後から声がする。そこには蜥蜴人の背中に、右手の掌を向けているツナの姿があった。
「まだ続けるか?」
ツナはどういう訳かすぐに攻撃せず、怪物である筈の蜥蜴人に問いかけた。
「はは……はははははははははは!!」
ツナが問いかけると蜥蜴人は人語で高笑いを上げた。
「凄ぇよ!! こんな冒険者会ったことねぇよ!!」
「やっぱりか」
高笑いを上げる蜥蜴人の存在にベル達は衝撃のあまり思考が停止する中、ツナだけは冷静さを失っていなかった。
「なぁ。いつから気づいていたんだ? 俺が喋れるって?」
「最初にお前の刀を受け止めた時だ。あまりにも太刀筋がしっかりしてるから違和感を覚えた」
ただ適当に剣を振るっているだけなら、知性の高い怪物というだけで話で終わる。
だがこの蜥蜴人は剣の握り刀や、振り方も正確。いくら知性が高いと言っても、剣術を会得するとなると話は変わってくる。
剣術は人類が産み出した技術。人類の敵たる怪物に剣術を教える者などまずいない上に、いたとしても意思疎通の取れない怪物が黙って従う訳がない。
冒険者の戦いを見て剣術を学んだとしても、剣術を会得するには弛まぬ鍛練がいる。知性が高くても、本能の赴くままに行動する怪物が剣術を会得するまでひたすら鍛練し続けるとは考えにくかった。
「そして俺が空中から地上に移動した際に半人半鳥は攻撃を中断した。さらに俺の作った幻覚を見た瞬間、全員攻撃を止めた。攻撃の手を緩めた理由があるとすればお前達に仲間意識があると確信した」
怪物同士が殺し合うことは基本的にないが、乱戦になった際に周囲に怪物同士が巻き込まれないよう配慮できない。そんな弱点があるのであれば、冒険者はその弱点を突いて戦う筈だからである。
「凄ぇな。今まで色んな冒険者に会ってきたけど、あんたみたいにオレっち達の正体に気づいたのは初めてだよ。しかも気づいた上でオレっち達を殺そうとしないなんてよ」
「殺す気がないのはわかってたからな。本気で俺達を殺す気なら、アカリゴケで周囲を照らする前に一斉に襲いかかっている筈だからな」
アカリゴケで照らす前は魔石灯で自分達の周りしか照らされていない状況。知能が低い怪物であれば自分達の姿を捉えた瞬間に即座に一斉に襲撃、知能が高ければしばらく様子見した後で一斉に襲撃する筈。しかし襲撃してきたのが蜥蜴人だったことから、相手は殺す気がないと悟っていた。
「仲間意識があるとわかれば後は簡単だ。この中で一番強いお前さえ降伏させてしまえば戦いは終わる。それが戦いを終わらせる為に一番有効かつ最短な方法だからな」
(この短期間でそこまで……)
(なんという冷静さと洞察力……)
(やっぱ伊達じゃねぇ……)
リリ、命、ヴェルフはその場を凌ぐことで精一杯だった。そんな中でツナは敵の正体を見抜き、自分達を魔を方法を思いついていたことに驚愕を禁じ得なかった。
「その仲間っていうのはあそこにいる竜女もか?」
「ああ。ウィーネは俺の仲間だ。だったら俺の誇りにかけて護る。死ぬ気でな。それに俺でなくともベル達だってそうする筈だ」
「誇りにかけてか……」
ツナの言葉を聞いて蜥蜴人は嬉しそうな笑みを浮かべると、ゆっくりとツナの方を向き、ツナも戦闘体勢を解いた。
「怪物の為に命を賭けてるなんて……こんな気持ち初めてだ」
「────だから言ったでしょウ、リド、彼等ハ違うト」
「ああ、お前の言う通りだレイ!! この冒険者達は違う!!」
そんな中、喋る歌人鳥が空中から現れる。
「その声……」
「おい、まさか……」
「あの時の……」
歌人鳥の声を聞いて、ベル、ヴェルフ、ツナはこの前に19階層に会った歌人鳥と同じ声だということに気づく。
「まずは謝らせてくれ。あんた達をずっと試していた。同胞を匿う冒険者が本当なのか見てみたかったんだ。危なくなったら見捨てないか……」
「やはり俺達が来ることは知っていた訳か……」
「ああ。それと同胞を護ってくれてありがとう」
頭を下げる蜥蜴人を見て、先程から言っている同胞というのがウィーネのことを言っているのだとツナ達は理解すると同時に、この場にいる怪物が本当にウィーネと同じ存在なのだということを理解する。
「オレっちはリド。見ての通り蜥蜴人だ」
「俺は沢田綱吉だ。気軽にツナって呼んでくれ」
「ああ。よろしくなツナっち」
「こちらこそよろしくリド」
リドが手を右手を差し伸べると、ツナも右手を差し伸べ固い握手を結ぶのであった。