ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
最強の
「サポーター君、春姫君!?」
顔面を青ざめながら、リリと春姫は気絶した事にヘスティアは慌てふためく。
一方でヴェルフと命は片膝をついた状態に動けなくなってしまう。
また近くにいた住民達もリリと春姫と同じく意識を失っていた。
(
【ロキ・ファミリア】との遠征の途中で、リリからベルがミノタウロスに襲われた際にアイズから教えてもらった事をツナは思い出した。
通常、ミノタウロスの
(あのミノタウロス……)
ツナの超直感がミノタウロスに再び反応するが、今はその事を考えている事態ではない為、首を横に振ってあのミノタウロスについて考える事を止めた。
「ティオネ避けろ!!」
するとミノタウロスがティオネに襲いかかり、フィンは咄嗟に叫んだ。
「───調子に乗ってんじゃねぇぞ牛野郎!!」
だがすぐに瓦礫の山を吹き飛し、そのままミノタウロスへと立ち向かって行く。
「挽き肉にしてやる!!」
一方的にやられた事でティオネの怒りが頂点に達し、怒涛の徒手空拳をミノタウロスに浴びせる。しかしミノタウロスは怯むどころか、真向勝負で迎え撃つ。
途中でティオナとベートが加勢に入るも、それでも形勢が逆転しなかった。
(なんて奴だ……!!)
【ロキ・ファミリア】の中でもガレスの次ぐ、体術とパワーの持ち主の3人を相手取る戦闘力。そして何よりも、3人の攻撃をまともに喰らってもなお、ものともしない圧倒的な耐久力にツナは驚愕を禁じ得なかった。
「体が……!!」
「動く……!?」
ツナは両手の人差し指に大空の炎を灯すと命とヴェルフの額に当てた。すると重りを装備したかのように、重くなっていた全身が一瞬にして軽くなった。
大空の炎の特徴、調和によって
リリと春姫は気絶している為、治療を諦めざる得なかった。
「ここから離れて、リリと春姫を安全な場所に移動してくれ」
このままこの場に留まれば、再び
するとミノタウロスは背中に携えていた大斧を手に取った。
「───逃げろ!!」
ヴェルフがあの大斧の危険性に誰よりも気付いた。ツナはヘスティアを、ヴェルフはリリを、命は春姫を抱え、その場から離脱した。
そしてミノタウロスが大斧を地面に向かって振り下ろすと、広範囲に渡って電撃が放たれた。
(魔剣……範囲が広い!!)
電撃の射程が広く、このままでは全員、電撃の餌食になるとツナは理解させられる。
「俺が吸収する!!」
「わ、わかった!!」
端的に説明するとツナはヘスティアを降ろすと、雷撃の前に立ち止まり、ヘスティアはツナの意図を即座に理解し全力で走り抜ける。
そして魔剣から放たれた雷撃がツナの体に直撃する。
「【死ぬ気の零地点突破改】」
構えた両手の中に雷撃が吸収され、ツナの炎圧が上昇する。ツナが吸収したお陰でヴェルフ達には被害は及ばなかった。
一方でティオネ達は、全てではないがベートが
(ヴェルフがいて助かったな……)
全てを見透かす超直感。しかし超直感が働くのは生物のみ。無機物である魔剣には働かない為、あの大斧が魔剣だとツナは気づけなかった。
一方、ヴェルフは
『ヴォオオオオオ!!』
ツナが安堵したのも束の間。ミノタウロスの右腕が一瞬にして切断され、腕と鮮血が宙を舞う。
ティオネ達がいくら攻撃を加えても、ダメージを負う事のなかったミノタウロスの体が斬り裂かれるという光景にその場にいた者達は驚愕のあまり、言葉を失っていた。
(アイズ……!!)
その場にいたほとんどの者が、何が起きたか分からず唖然とする中、ツナは|魔法【エアリエル】によって強化されたアイズが、一太刀でミノタウロスの右腕を斬り裂いた光景を目にしていた。
その後、風を纏ったアイズが高速移動でミノタウロスを翻弄しながら、次々に斬撃を放つ。流石に防戦一方のミノタウロスであったが、途中から反撃に転じ、アイズと斬り結ぶ。
右腕を斬り裂かれ劣勢になるかと思われたが、ミノタウロスは残った左腕で、デスペレードに付与されていた風を力だけで破壊した。デスペレードで拳を受け止めた為、肉体への直接、拳を叩き込まれる事はなかったが、それでも剣を通じて、とてつもない衝撃が右腕に伝わりアイズの右腕は痺れ、動かなくなる。
「挟めアイズ」
「……ガレス、私は」
「そんな手で危ない橋を渡らせられるか。我が儘はいい加減にしておけ。のう、フィン?」
「流石にね。まぁ、ガレスが来たなら僕が来る必要はなかったかな」
アイズ1人では荷が重いと判断し、ガレスとフィンも戦闘に加わる。
(不味い……)
片腕を失ったところに、ガレスとフィンが加わった事でついにミノタウロスは片膝をついてしまった。
すると、どこからか黒い煙が戦場に充満し視界が薄れていく。
(煙幕……味方か!?)
この状況で煙幕で視界を遮るメリットはない。それがメリットになるのは
するとリドが口から火炎を吐き、近くの建物に引火させた。そして炎は燃え広がっていき、その隙に傷ついた
そして煙が消えるとミノタウロスも姿を消していた。
(地下に逃げたのか)
先程、地面を突き破って、現れた謎の人形。その時に空いた穴を利用し、地下へと逃げたのだとツナは即座に理解した。
「俺はウィーネを追う!!」
フィン達はリド達の捜索よりも、消化活動に力を入れていた。絶対ではないが、それでもリド達は逃げ切れると信じ、ツナは暴走状態のままどこかへと行ってしまったウィーネの元にむかう事を決意。そして霧の炎で他の冒険者に成り済まし、ウィーネとベルが向かって行った方向へと走って行く。
(だがウィーネに会えたとしてどうする……!?)
ウィーネを追うのは良かったが、ウィーネは今、暴走状態にある。魔法によって理性を失い、暴走させられているのであればツナの調和に炎で元に戻す事ができる。だが今ウィーネが暴走しているのは、額の宝石を失ったのが原因。つまりヴィーヴルの持つ習性である為、ツナの炎でも元に戻せない。
強力な幻術でウィーネを操る、あるいは実体のある宝石を創造する事ができればまだ望みはあったが、どちらも術師ではないツナの力では到底不可能だった。
(何か手はある筈だ!!)
走りながらウィーネを救う手段を考えるツナ。しかし考えても考えても何も思い浮かばなかった。
「【
「この状況で利益を独占する為に俺達に魔法を撃ちやがった!!」
「ふざけやがって!! 今度、会ったらブチ殺してやる!!」
(ベル……!!)
ヴィーヴルの額の宝石、ヴィーヴルの涙はドロップアイテムとして高値で取引される。ヴィーヴルの涙を独占する為に自分達を攻撃したと思い込み激怒している、冒険者達の会話がツナの耳に入った。
ウィーネを護る為に取った行動だという事は重々、理解はしてるいるが、すでに取り返しのつかない事態になってしまった後だと知り、ツナは苦渋の表情を浮かべたが、それでも止まる事なく走り続けた。
(あっちか!?)
ツナの耳が凄まじい轟音を捉えた。あそこにウィーネがいると確信したツナは、轟音のする方へと向かった。
すると逆方向から多くの冒険者が逃げ惑うが、上手く避けながら進んで行く。
(あれは……)
逃げ纏う冒険者を乗り越えた先にいたのは、グロスとレイの姿があった。
「グロス、レイ!!」
周囲に誰もいなかったが、万が一誰かに見られているかもしれない事を考慮して幻覚を解かず、ツナは自分の正体に気づいてくれる事を心の中で祈りながら、2人の名を叫んだ。
初対面の人間が自分の名を知っている事に困惑するも、ツナが前にダンジョンで姿を変えていた事を思い出し、すぐに正体に気づく。
「この先の広場の大穴の中ニベルさんトウィーネが!! 急いデ!!」
「わかった!!」
情報を得たツナはレイの言われた場所に向かう。レイの言った通り、広場には大穴が開いており、ツナは躊躇わずそのまま穴の中へと飛び降りる。
「ベル、ウィーネ!!」
ツナが降り立ったのは下水道だった。どこにいるか分からないかと思われたが、すぐに2人を見つけ出すことができた。
「ツナ!! ウィーネが!!」
「っ!?」
涙目になりながら叫ぶベル。するとベルに抱きかかえられている、ウィーネの体から少しづつ灰が溢れ落ちている光景が視界に入り、ツナは瞠目する。
「ベル……ツナ……?」
するとウィーネの瞼がゆっくりと開き、2人の名を呼んだ。
「……ごねんね……」
「大丈夫!! 大丈夫だから!! 僕は平気だから!!」
ウィーネを安心させようと、ベルは笑顔をるも、お世辞にも笑顔とは呼べるものではなかった。
「夢を、見るの……だれもたすけてくれない……怖い夢……」
少しづつ体が消滅していく中、ウィーネは右手を伸ばしベルの頬に触れた。
「でもね……こんどはたすけてくれた人達がいたんだよ?」
ダンジョンで他の
街中で住民達に罵声と投石を浴びせられる中、助けに来てくれたツナ。
そしてヘスティア、リリ、ヴェルフ、命、春姫、リボーン、そして自分と同じ
ウィーネの脳裏には1人ぼっちだった自分に居場所をくれた者達の姿が浮かんでいた。
「嬉しい……」
両目から涙を流しながらも、満面の笑みを浮かべウィーネ。
「……大好き」
そしてウィーネの体が崩れ去り、大量の灰が流れ落ちるのだった。
ウィーネを死なせないという選択肢も考えましたが正直、その方法が思いつかなかったのと、ウィーネの死があったからこそ、この後のベルは大きく成長したというのもあったので、この結末にしました。
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