ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
修行が終わって帰る道中のツナ、ベル、アイズ、ヘスティア。現在4人は都市北西部のある裏通りにいた。
(視られている)
(嫌な予感がする……)
裏通りに着いて早々、アイズは誰かの視線を感じ、ツナは超直感にて違和感を感じていた。一方でベルとヘスティアは何も違和感を感じておらず普通に談笑していた。
「ツナ……」
「うん……」
アイズとツナは歩みを止める。アイズは愛刀であるデスペレードの鞘に手をかけ、ツナは27と書かれた手袋を装備する。
2人が急に止まったことでベルとヘスティアは慌てて止まる。
「ベル、ヘスティア。動くな」
「ど、どうしたのツナ?」
「な、何かあったのかい?」
「敵だ」
「「っ!?」」
「出てこい。そこにいるんだろ」
ツナは建物と建物の間にある路地から暗色の防具にバイザー、暗色のインナーと長槍を装備した猫耳と尻尾のつい人型の人物が現れる。
この人物の種族は
そして目の前にいる
「強いな……誰かわかるか?」
「ううん。わからない」
気配を察知されても一切、動揺せず堂々と現れたことで相手が相当な実力者の人物だと理解したツナは、相手の情報を知っているかもしれないアイズに相手のことを尋ねた。だがアイズは心当たりがないのか首を横に振りながら答えた。
「アイズ。ベルとヘスティアを頼む。ここは俺がやる」
「え……でも……!?」
「お前は俺との戦いで疲れてる。はっきり言って万全な状態じゃない。だから頼む」
「な、何言ってるんだ綱吉君!! これはどう考えても狙いはヴァレン某君だろ!! 僕たちの出る幕じゃない!! 逃げよう!!」
有名人であるアイズを狙った襲撃だと推測したヘスティアは、敵の標的ではない関係のない自分たちは逃げた方がいいと進言する。
「無理だ。俺たちはすでに囲まれてる。奴らの思惑通りな」
「「囲まれてる!?」」
ツナは敵が目の前にいるアレンだけでなく、他にもいることを気配を察知していた。
ベルとヘスティアは自分たちが囲まれていると知って驚きの声を上げる。
「それによく見ろ。明かりを灯す魔石灯が壊されてる上に、奴は暗闇に紛れる装備をしている。これは明らかに綿密に練られた計画だ。しかも俺たちがいるタイミングで狙ってきたということは、俺たちを人質にしてアイズを無力化する可能性がある。だから逃げるのは無理だ」
「そんな……」
「とにかく2人は動くな。アイズは2人の護衛。周囲の警戒を怠るな」
「わかった」
周囲の状況とアイズのコンディションからツナはこの状況を乗り越える為の最善策を提示する。
するとアレンがツナの方に向かってゆっくりと歩いて行く。ツナも同じくアレンに向かってゆっくりと歩いて行く。
先に動いたのはアレン。地面を蹴ったと同時に、一瞬にして姿が消え、アレンは一瞬にしてツナの頭上に移動する。
「くたばれ」
アレンはツナの頭上から長槍の先端を向け、容赦なく串刺しにしようとする。
(反応しやがった!?)
ツナは動揺することなくその場から飛び引いた。その後、アレンの長槍は地面に突き刺さる。
ツナの反応速度にアレンは驚きのあまり目を見開くがアレンは瞬時に槍から手を離す。そして地面に刺さった槍の持ち手を左足で蹴って一瞬にしてツナの間合いに移動。長槍を足場代わりにして加速し、右足の真空飛び膝蹴りを放った。
(こいつ!?)
だがツナは臆することなくジャンプするとアレンの頭を足場の代わりにして、そのまま上空へと飛んだ。
自分の頭を踏み台代わりされたことにアレンは苛立ちを見せる。
「っ!?」
(だが甘ぇ)
ツナが上空に飛び出た瞬間、アレンと同じ格好し、槍、槌、剣、斧を持った小柄な4人の人物がツナを取り囲む。
この4人は
この4人は4つ子で槍を使うのが長男のアルフリッグ、鎚を使うのが次男のドヴァリン、斧を使うのが3男ベーリング、剣を使うのが4男のグレールである。兄弟による連携が得意であり、兄弟合わせて【
「避けたつもりだろうが愚策」
「愚策だな」
「愚策過ぎる」
「愚策過ぎて笑えんな」
ツナが空中に飛び出たことを4人は酷評。そして容赦なくそれぞれの武器を振り下ろした。
「「「「っ!?」」」」
ツナを取り囲み万全体勢でいた4人。しかしツナの姿が一瞬にして消える。突然の出来事に4人は目を見開いて驚く。
(炎を逆噴射させて攻撃が当たる前に移動しやがった!?)
今の光景を見ていたアレンだけはツナがどうやって一瞬にして移動できたのか理解していた。
(あの野郎!! あいつらを誘き寄せる為に俺を利用しやがった!!)
ツナは敢えて上空に飛び出して隙を作って、アルフリッグたちを誘き寄せたのである。アレンはアルフリッグたちを誘き寄せる為に踏み台にされたことに苛立ちを覚えていた。
「愚策なのはお前らの方だ」
「「グハッ!?」」
ツナは上空から急降下し両足でグレールとベーリングを蹴り飛ばす。そのまま2人は地面に叩きつけられる。
「次」
「がっ!?」
ツナは槍を持ったアルフリッグの槍を右手で掴むと、アルフリッグを武器代わりにして振り回してドヴァリンにぶつける。ドヴァリンはそのまま地面に叩きつけられる。
「次はお前だ」
「ちっ!!」
ツナを仕留めようとアレンが上空へ一直線に飛んで来る。ツナは槍を持ったアルフリッグをアレンに向かって投げ飛ばす。アレンは舌打ちしながら、一直線にやって来るアルフリッグを迷うことなく前方に蹴り飛ばし、蹴りの反動で後ろに下がると同時に地面へと着地した。
「ガハッ!?」
「ドハッ!?」
アレンが蹴り飛ばしたアルフリッグはツナの方へ飛んでいくも、ツナはアルフリッグを回し蹴りで地面に落下したドヴァリンに向かって蹴り飛ばした。
アルフリッグが蹴り飛ばされたことでドヴァリンはアルフリッグの下敷きになる。
「あいつ……殺す……!!」
いくら自分が油断したのが悪いとはいえ、アレンに蹴られたことに対してアルフリッグは何も思わないはずがなかった。
「後はお前だけだ」
ツナはベルたちのいる場所に視線を向ける。そこにはアイズによって倒された人たちが地面に倒れていた。
「お前たちの目的は一体何だ?」
「警告だ」
「警告だと?」
「ああ。だがお前じゃなくて【剣姫】にな。なのにてめぇが邪魔しやがった。手間かけさせんじゃねぇ」
「そっちから襲撃しておいてよく言えたもんだな」
「てめぇに用はねぇ。そこをどけ」
「無理な相談だな」
「なら死ね」
するとアレンは再び地面を蹴る。するとアレンの姿が一瞬にして消え、アレンの移動する音だけが響き渡る。
(俺の速度に対応できようがいつかはボロを出す。それがてめぇの最後だ)
アレンは加速した状態で攻撃し続ければ、いつかはツナが反応が遅れる。その隙を狙うのがアレンの作戦だった。
「大したスピードだな。だが高速移動はお前の専売特許じゃないぞ」
「っ!?」
するとツナは炎を逆噴射させて一瞬にしてアレンの背後を取る。ツナの速さにアレンは目を見開いて驚きを隠せないでいた。
(こいつ!? さっきより速ぇ!!)
アルフリッグたちの攻撃を避けた時よりもツナの速度が上がっていることにアレンは気づいていた。
「俺のスピードを甘く見るな」
「調子に乗るんじゃねぇ!!」
ツナの言葉に気に障ったアレンはさらに加速する。だがツナもさらに速度を上げていく。
(引き剥がせねぇ!!)
ツナよりも速く移動しようとするアレンだったが、ツナは涼しい顔でアレンの速度について来る。ツナの速度が予想外だったのかアレンは驚きの表情を見せる。
死ぬ気の炎は破壊力と機動力に優れている。その中でも大空の炎は7属性ある死ぬ気の炎の中でも随一の機動力を誇る。故にツナより速く動ける者はそうはいない。それが都市最速の冒険者だとしても。
「どうした? それがお前の限界か?」
(舐めやがって!! 俺は都市最速の冒険者!! 何よりあの方の戦車だ!! 絶対に負けられねぇ!!)
ツナにプライドを刺激されたアレンは躍起になり、さらに加速していきアレンのスピードは最大まで加速する。そしてツナもさらに加速していく。
(俺の最速にもついてきやがった!?)
トップギアになったアレン。しかしツナはそれでも余裕でついて来る。流石のアレンも焦りを表情を見せ始めた。
(な、何だ!? 追い付けねぇ!!)
自身のスピードは落ちていないのにも関わらずアレンはツナに追い付けないことに気づく。
(まさかこいつは俺よりも速いっていうのか!?)
アレンは気づいてしまう。ツナが徐々にスピードを上げていたことに。そして都市最速の自分よりもツナの方が速いという事実に。
(まだ俺はいい……だがこのままじゃあ俺のせいで力をくれたあの方に恥をかかせることになる!! それだけは絶対にできねぇ!!)
アレンにも意地があるのか、ツナに追い付こうと必死になる。だが追い付こうとするも距離が縮むどころか、アレンが一方的に引き剥がされるだけだった。
「そろそろ終わりだ」
「がっ!?」
するとツナの姿が一瞬にして消える。そしてアレンの背中にツナの拳が背中に叩き込まれる。アレンの体が逆くの字に曲がる。
「クソが!!」
「遅い」
「ゴフッ!?」
アレンは咄嗟に体を捻って槍を薙ぎ払うもツナはしゃがんで躱す。そしてアレンの顎にアッパーを喰らわせる。
「はぁ!!」
「ガハッ!?」
さらにツナはアレンに遠心力を加えた裏拳を脇下を喰らわせる
(こいつ!? 顎と脇を的確に……!?)
顎と脇下は人体急所。顎はダメージを受けると脳震盪を起こす部分、脇下は神経が通っておりダメージに敏感な部分である。
人体急所を喰らって意識を失いかけるアレンだが、舌を噛んで目を覚ます。
「今、眠らせてやる」
アレンの腹部に右ストリートが叩き込まれアレンの体がくの字に曲がる。
「っ!?」
だがアレンは槍を捨て、ツナの右手を両腕で掴んで離さなかった。
するとツナの背後から先程やられたアルフリッグたちが空中から襲いかかる。
「はぁ!!」
「「「「「っ!?」」」」」
ツナを倒す為に躍起になる5人。だがツナは動揺することなく炎を解放する。解放された炎は暴風のように放たれ、アルフリッグは吹き飛ばされ建物に激突し再び地面に倒れてしまう。
「は、離さねぇ……!!」
だがアレンは吹き飛ばされることなく、意地と執念だけでツナの右腕を両腕で掴む。そしてツナの腕を粉砕する勢いの握力を発揮する。
(このまま折れちまいやがれ!!)
ツナの腕がミシミシと音を立てる。アレンは不敵な笑み浮かべながらツナの右腕の骨を折ろうとする。
「【
「っ!?」
ツナはアレンに掴まれた右腕を開くと掌からゼロ距離で炎の弾丸を放った。ツナの炎によってツナもアレンも爆煙に包まれる。
「「ツナ!!」」
「綱吉君!!」
ツナが爆煙に巻き込まれたことでベル、アイズ、ヘスティアはツナの名前を叫ぶ。
すると爆煙が晴れツナとアレンの姿が露になる。
(こいつ……自分を巻き込むと知ってなお、躊躇なくぶち込みやがった……!?)
ツナの両腕を掴んでいたアレンだったが、全身が焦げていた。だがすぐにアレンの体は後ろへ倒れる。
一方でツナはあまりダメージはなかった。ツナの今着ている服は元の世界にてリボーンとの修行で使っていた服。この服はリボーンの相棒であるレオンの糸で構成されている。レオンの糸は死ぬ気の炎でも簡単には燃えない。その為、ツナの方にはダメージが少なかったのである。
「まだ意識があったか」
「イカれてやがんのかてめぇ……!?」
ツナはこれだけやってもなお意識を失わないアレンに驚きを隠せないでいた。
アレンは自分が巻き込まれるのをわかってなお、迷うことなく攻撃できるツナの異常性に畏怖を覚えていた。
「それが俺の覚悟だ。現にお前は俺の覚悟に負け倒れている」
『本当の死ぬ気ってのは体がぶっ壊れようと食らいつく覚悟』
ツナは思い出していた。虹の代理戦争にて自分に戦い方を教えた謎の男の言葉を。ツナはその男の教えがあったからこそ、迷うことなく撃てたのである。
「それに
「迷いだと……!?」
「そうだ。お前の中にある迷いがお前の本来の力を発揮できず蓋をしてしまっている」
「っ!?」
ツナの言葉を聞いた途端、アレンの脳裏に自身と同じ
(違う!! 俺は強くなる為に
何か心当たりがあるアレンであったが、認めたくないのかその事実が目を反らしていた。
「どうやら心当たりがあるようだな」
「るせぇ!! てめぇには関係ねぇ!!」
「……」
明らかに心当たりがあることは一目瞭然だったが、ツナはこれ以上、何も言わなかった。
「警告だ。これに懲りたらもうアイズに手を出すな。もし手を出すようなら容赦はしない」
そう言うとツナは振り返り、ベルたちの元へとゆっくり歩いて行く。
「待ちやがれ……」
「何だ?」
「てめぇ……何ですぐに決着をつけなかった……?」
認めたくはないがツナは都市最速と呼ばれる自分よりも速く動け、なおかつ戦闘力も上。すぐに決着をつけようと思えば簡単にできたはず。アレンはツナがそうしなかった理由がわからなかった。
「すぐに決着つけてもお前の闘争心を折れないと思ったからだ。だったらお前の得意分野の速さで真正面か戦って勝った方がお前の闘争心を折れると思ってな。まぁ心は折れなかったが、それでもこれで余程のことがない限りアイズに手を出せないと思わせることができたがな」
(クソッ!? あの挑発は俺と速さで勝負させる為か!?)
速さでの勝負になった際にツナが自分を挑発してきたのは自分との速さで勝負に持ち込み、力の差を見せつける為だとアレンは理解する。アレンは最初からツナの掌の上で踊らされてたいたのである。
「あの4人も同じだ。完全に俺を仕留められる圧倒的に有利な状況で仕留め損なわせて、そこから一気に形勢を逆転させる。力の差を見せつけるには充分だ」
(俺だけじゃなくてあいつらにまで……)
自分だけでなくアルフリッグたちまでツナの掌の上だったということに、アレンは驚きを隠せないでいた。
「話は終わりだ。これに懲りたら大人しくすることだな」
そう言い残すとツナはベルたちの元へ戻って行き、別ルートから帰路に就いたのだった。
時はツナたちが完全にいなくなった後。
「まさかこんな結果になるとはな」
倒れているアレンの側に真っ白な肌に眼鏡をかけた金髪のエルフが現れる。
「ヘディン……見てやがったのか?」
「貴様らは我々の中でも何をしでかすかわからないからな。だから監視が必要だと思ったまでだ。まぁ中々に面白いものが見れたがな」
「てめぇ……!?」
「何を勘違いしている。私は貴様の倒される姿を見て面白いなどと思いはしない。まぁこの世から消えてくれたなら話は別だが」
「殺すぞ……!!」
ヘディンは弁明するどころかさらに辛辣な言葉を浴びせる。ヘディンの辛辣な言葉を聞いてアレンはヘディンを殺意を向ける。しかしツナにやられている為、ヘディンを睨むことしかできなかった。
「私が面白いと言ったのはお前と戦っていたあの男。あの男は私が監視していることに気づいていた。そして貴様らと戦いながら私の警戒も一切、怠っていなかった。私が手を出していれば間違いなくやられていた」
「何だと……!?」
アレンとアルフリッグたちを戦いながら、ヘディンにまで警戒できるだけの余裕がツナにあったと知って、アレンは驚きを隠せないでいた。
「私が手を出していなかったとはいえあの男は実質、6対1で我々に勝った。そんな真似ができる者など私は知らない。そしてこんなことができる者の名が一切、知られていない。これは明らかにおかしい。だからこそ面白いと思った」
「てめぇの興味なんざどうでもいい。それよりあの方の命令を達成できなかったことの方が問題だ」
「それに関してはありのままを伝えるしかあるまい。あの男を敵に回すのは得策ではない。そうなればあの方の願いは果たされなくなる。それに【剣姫】は【ロキ・ファミリア】の人間。奴らも【剣姫】と関わっていることを周囲を知られたくないはずだ。だからこの先、頻繁に修行をすることはないだろう」
「ちっ!!」
どうすることもできないと知ってアレンは舌打ちすることしかできなかった。
(しかしあれ程の戦闘力……あの方を救うのに利用できるかもしれないな)
ヘディン視線の先には天に向かって伸びるバベルが映っていたのだった。