ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)156 雨()()者vs剣姫(アイズ)

 

 

 

 

 

 【ボンゴレファミリー】の歴代のボスにはどの時代においてもボスを護る守護者達が存在した。歴代のボスは大空になぞらえられ、守護者となる部下達は嵐の守護者、雨の守護者、雷の守護者、晴の守護者、雲の守護者、霧の守護者という風に大空を染めあげる守護者達は天候になぞらえられた。

 そして歴代のボスと守護者は【ボンゴレ】に危機が訪れた際には必ず集結し、どんな困難をも乗り越えてきた。

 そして今、【ヘスティア・ファミリア】と異端児(ゼノス)達を護らんと10代目【ファミリー】の守護者達がオラリオへと集った。

 

 

 

 

 

 

 

───山本&ベルサイド

 

「今、こいつらの幹部達を俺の仲間が抑えている。だからその子を無事に帰す事だけ考えろ」

 

 山本は今の状況を簡潔に説明すると同時に、ベルのこれからの行動について指示する。

 

「勝手で悪いけど選手交代だ。ここからは俺が相手になるぜ」

 

 山本武。10代目【ファミリー】の雨の守護者にして、【ボンゴレ】の2大剣豪の1人。ボンゴレ随一の運動神経を持ち、リボーンからは生まれながらの殺し屋と呼ばれている。

 

(何でその子ばっかり……!!)

 

 ベルに続いて山本が現れた事で、アイズの内心ではありとあらゆる負の感情が渦巻いていた。

 

(ずるい!! ずるい!! ずるい!!)

 

 なぜ自分ではなく人類が敵にして、自身が最も憎む存在である怪物(モンスター)に救いの手が差し伸べられるのかアイズは分からなかった。

 自分が泣いても、叫んでも、怖くても、苦しくても、寂しくてもアイズを助けてくれる者。英雄は現れなかった。だから自身で剣を執り、自分で戦う道を選んだというのに。

 そしてアイズはデスペレードを壊さんばかりの強さで握り締めると、そのままウィーネを仕留める為に駆け出した。

 アイズの行動に対して、山本はベルとウィーネを護る為に立ち塞がる。

 

「─────どいて!!」

 

 普段の自分では考えられない程、大声を上げながらアイズはデスペレードを薙払った。山本はアイズの右薙を姿勢を低くして躱すと、竹刀が再び刀へと変化し刀身に雨の炎が灯すと、そのままアイズの足に向かって同じく右薙を放った。アイズは空中に逃げ、山本の一閃を躱した。

 

(刀がない!?)

 

 山本の右手に握られていた筈の刀が視界から消えており、アイズは瞠目する。

 

「【時雨(しぐれ)蒼燕流(そうえんりゅう)攻式五の型】───【()()(だれ)】」

 

「ガハッ!!」

 

 いつの間にか刀は左手に握られており、山本はそのまま斜め右方向に刀を振るった。そして右切上はアイズに右脇腹に直撃した。

 時雨蒼燕流。戦乱の世に余多の人間を闇へと葬った殺人剣にして完全無欠の流派である。自ら最強を謳い、それを狙う刺客から守り抜くことを宿命付けられ、攻型四式、守型四式の状況に応じた8つの型が存在する。ただし師から弟子への技の継承は1度きりという掟が存在し、それ故に気と才能のある者が途絶えた際には滅ぶ事も仕方なしとした滅びの剣とも呼ばれている。

 そして今、放った技は【五月雨】。一太刀の間に刀の持ち手を入れ替え、軌道とタイミングを入れ替える変幻自在の剣である。

 山本はアイズの足を狙うように見せかけ、アイズを空中に逃げるように仕向け、そのまま空中にいるアイズの右脇腹に斬撃を喰らわせたのである。

 

「くっ!!」

 

 山本の斬撃を喰らったものの峰打ちであった為、アイズは痛みに耐えながら左手で鞘を握り、そのまま山本に向かって薙ぎ払った。

 

「時雨蒼燕流守式七の型───【繁吹(しぶ)き雨】」

 

 すると山本は炎を回転するかのように巻き上げると、炎の竜巻が発生。そしてアイズの鞘による一撃を弾いた。そしてアイズの体は回転しながら後方へと吹き飛んでいく。

 【繁吹き雨】。水を回転するように巻き上げ攻撃を防ぐ技である。今は周囲に水がない為、山本は死ぬ気の炎を使って再現した。

 さらにアイズの鞘にいる右薙に対して、竜巻の回転を利用する事で、アイズを後方へ弾き飛ばしたのである。

 

(速い!!)

 

 空中に飛ばされたアイズ。前方にいた筈の山本がアイズの後方へすでに移動しており、アイズはあまりの山本の移動速度に瞠目しつつも、アイズは回転した勢いを逆に利用して、そのままデスペレードを薙払った。山本はアイズの右薙を防御できず斬られた。

 

(水!?)

 

 しかし想定以上に手応えはなく、自分が斬ったのは水であった事にアイズは遅れて気づく。

 

「【時雨蒼燕流攻式九の型】───【うつし雨】」

 

「かっ……!?」

 

 アイズの上を取った山本が刀を振り下ろす。山本の放った唐竹はアイズの背中にが叩き込まれ、アイズはそのまま地面にうつ伏せの状態で倒れる。

 うつし雨。水面に己自身を反射させ、相手を誘き寄せた隙を襲撃する技にして、山本が作った型である。

 時雨蒼燕流の継承者は技と共に時雨金時という、時雨蒼燕流以外では変形しない刀を継承する。そして新たな型を開発する事が最終試練。それができぬ者には完全無欠の流派を継ぐ資格はない事を意味する。これが時雨蒼燕流が滅びの剣と呼ばれるもう1つの要因である。

 常に流派を越えようとする流派。それが時雨蒼燕流の完全無欠、最強無敵と呼ばれる所以である。

 

「俺に気を取られて、上に気がいってなかったみてぇだな」

 

(上?)

 

 山本の言葉に聞いて、ベルは視線を上を向けた。そこには雨の炎を纏った燕が旋回していた。そして燕は降下し山本の周囲を旋回していく。

 雨燕(ローンディネ・ディ・ピオッチャ)。山本の(ボックス)アニマルである。山本は小次郎と名付けた。

 【繁吹き雨】による炎の竜巻を発生させた際に、山本のボンゴレギアである雨のネックレスから小次郎を呼び出し、炎の竜巻をブラインドにしてそのまま上空に移動した。そしてアイズの背後の上空に移動し、水と同じ性質を持つ、雨の炎の波を降らせ、山本の姿を反射させたのである。

 

(凄い……)

 

 自分が捨て身で特攻してもダメージとは程遠い攻撃しか浴びせる事ができなかったのに、山本がいとも簡単にアイズにダメージを与えた事に禁じ得なかった。

 

「ここは俺に任せて先に行け」

 

「は、はい!! ありがとうございます!!」

 

 山本は程、ベルが落としたナイフを拾って投げ渡した。

 自分がいたところで助けにならないどころか、足を引っ張る事しかできない。ここは山本の厚意に甘え、異端児(ゼノス)をダンジョンに返す事を優先する事を決め、ウィーネを連れて行く。

 

「ありがとう!!」

 

 ウィーネもお礼を言うと、山本は返事代わりにサムズアップした。

 

「ま、待って……っ!!」

 

 すぐに起き上がって追おうとするも、脇腹に痛みが走り片膝をついて左手で右脇腹を抑える。そしてベルとウィーネの姿がアイズの視界から消える。

 

「……どうして?」

 

「ん?」

 

「どうして怪物(モンスター)を助けるの……?」

 

「ツナが護りたいって言ったからな」

 

「それだけ……!?」

 

「ああ。そうだぜ」

 

怪物(モンスター)によって多く者が死んだ……そのせいで多くの悲劇が生まれたんだよ……!?」

 

「らしいな。けどツナを助ける事の方が俺に取っては大事だ」

 

「何でそこまでするの……!?」

 

 怪物(モンスター)を護ったという事が知られればこの先恨まれ、疎まれる。いくらツナが助けたいとはいえ、なぜ楽観的でいられる理由がアイズには分からなかった。

 

「何言ってんだよ。本当に困ってる時に助けてやれるから友達なんじゃねぇか」

 

「っ!?」

 

 笑顔で自身の問いかけに答えた山本。決してふざけているのではないと知って、アイズは瞠目する。そしてベルと同じく、分かり合えないと判断したアイズは立ち上がり、剣を構えた。

 

「次郎」

 

 衝突は避けられないと山本は判断。今度は雨のネックレスから雨の炎を纏った犬が現れる。

 雨犬(カーネ・ディ・ピオッチャ)。山本のもう1匹の(ボックス)アニマル。次郎と名付けた。

 

「次郎、小次郎。形態変化(カンビオ・フォルマ)

 

 すると次郎、小次郎が山本と合体。山本の背中に【ボンゴレ】の紋章が浮かび上がる。

 

「ここからは本気でいくぜ」

 

 山本の服が和服になり、左手には長刀となった次郎、右手には時雨金時と合体した小次郎も長刀へと形態へ変化した。それぞれの刀の柄の先端に小次郎の翼と、次郎の装飾が施されていた。

 そして先程までとは顔つきと雰囲気が変わり、乱れていたアイズの心が完全ではないものの、冷静さを取り戻した。

 

(ツナと似てる……!?)

 

 ツナも炎を纏った動物を使役し、新たな武器へと変化させた事にアイズは驚きを隠せないでいた。

 

「【時雨蒼燕流特式十二の型左太刀(さだち)】────【霧雨(きりさめ)】」

 

「っ!?」

 

 山本は次郎の刀を右の鞘に納刀し、小次郎の左の鞘に納刀すると、次郎の刀を左手で引き抜きそのまま居合いで刃と化した刃を飛ばす。

 距離を殺して斬撃を飛ばした事はアイズは想定外だったが、それでも正確無比の太刀筋で炎の刃を周囲に弾き飛ばす。弾き飛ばした斬撃が地面や建物に着弾した事によって、煙幕が発生する。

 煙幕が視界を遮る中で、山本は右手で小次郎の刀を握った。すると山本の体を燕と化した炎が纏っていく。

 

「【時雨蒼燕流攻式十二の型右太刀(うだち)】───【斬雨(きりさめ)】」

 

「っ!?」

 

 炎の燕が煙幕を散らしながら突き進み、アイズのいる場所へ、ピンポイントで向かって行く。

 まさかこの煙幕の中で正確に攻撃を当てに来るとは思ってみなかった為、アイズは驚愕を禁じ得なかった。

 【霧雨】と【斬雨】。【霧雨】の通った空間を次郎の嗅覚で空間を把握。そして【斬雨】によって嗅ぎ分けた敵を斬雨で捉える技。本来は対幻覚奥儀であるが、山本は煙幕の中のアイズを正確に捉える事に利用した。

 

「【テンペスト】!!」

 

 アイズは咄嗟に魔法を発動。全身に風を纏う事で、燕の特効を防いだ。

 

(風が!?)

 

 だが雨の炎の特徴である鎮静によって、風が徐々に弱体化していく。このままでは貫かれると判断したアイズが、弱体化した風を利用しアイズは山本の上へと高速移動した後、デスペレードを振り下ろす。

 山本は頭の上で刀をクロスさせ、アイズの一閃を防いだ。そしてアイズは飛び引いて一旦、距離を取った。

 

「【時雨蒼燕流攻式三の型】───【()らずの雨】」

 

 アイズが着地する前に山本は右足で次郎の刀を柄の先端を蹴り、アイズに向かって飛ばした。

 【遣らずの雨】。刀を手以外操る奇襲技である。

 アイズはデスペレードを振るって刀を上空へ弾いた。

 

「【時雨蒼燕流攻式一の型───【車軸(しゃじく)の雨】」

 

 アイズに動かれる前に、小次郎の刀を両手で握ると、山本は突進しながら突きを放ったが、アイズは建物の壁を走って山本の突きを躱し、再び地面に着地した後、後方から奇襲をかける。

 山本が咄嗟に背後を向くと、両者共に刀を振り下ろした。

 

(体が……!?)

 

 刀がぶつかった瞬間、アイズの体の動きが鈍くなる。必死に動かそうとするも、思うように体が動なくなっていた。

 

「【鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)】つってな。しばらく麻痺して動けねぇぜ」

 

 【鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)】。渾身の一撃を振動波に変えて、相手の感覚を奪う剣である。従来の威力に加え、雨の炎を流し込む事で強化されている。

 元々は【ヴァリアー】のスクアーロの技であったが、山本が未来でスクアーロの戦いを収めた映像、剣帝への道を見て会得した技である。

 

「【テンペスト】!!」

 

 山本を攻撃される前にアイズは魔法で能力を強化。自分の肉体に負荷をかけ、衝撃波によって麻痺した体を強制的に動かし、その場から脱却し窮地を脱した。

 その後、宙に弾き飛ばされた次郎の刀が回転しながら落下するも、山本は難なく刀をキャッチした。

 

(魔法を2度も使わされた……!!)

 

 再び魔法を解除するアイズ。基本的に対人戦闘で魔法を使わないと決めている。例外はツナともう1人のみ。しかしツナとの特訓の際も、殺す事を恐れ、加減していた。

 

(しかも相性が悪い……!!)

 

 アイズの風は能力の強化。山本の雨の炎は鎮静。どれだけ強化しようと、弱体化されてしまえば魔法を発動しても意味がない。故にアイズは山本に取って、天敵だという事を理解させられた。

 

(それにこの感覚は一体何……?)

 

 山本の剣からは、衝撃波とは違う重圧がデスペレードを通じて全身に流れ込んだ。

 今まで放たれた山本の斬撃。山本よりも自身の方が純粋な力は上なのは理解していた。それでも山本の圧倒的に重たい剣の圧の正体が分からず、アイズは困惑していた。

 

「やっぱ昔の俺と似てるな」

 

「?」

 

「あんたは剣士になりきれてねぇ」

 

「どういう意味……?」

 

「峰打ちで戦ってる俺が言うのもアレなんだけどさ。なんていうか、あんたの剣は怖くないっていうか……死ぬ気がしねぇんだよな」

 

「っ!?」

 

 スクアーロと幻騎士。山本が戦った2人の剣から恐怖と圧迫感がビシビシと感じていた。しかしアイズからはあの2人のような恐ろしさを感じなかった。

 特訓の際にツナにも同じように言われた事をアイズは思い出した。ツナに自身が対人戦闘が得意としていない事を指摘されてからは、その弱点を克服せんと鍛練に勤しんではいたが、それでも克服できていないと知ってアイズの心は動揺した。

 

「それに心が乱れてるせいで、実力を出し切れてないぜ」

 

「っ!?」

 

 リド達がダイダロス通りに進出した際、共に庇い合う姿を見て、少し前に死んだ仲間達と姿が重なり、アイズの心を乱した。だが破壊の化身たるアステリオスを見て、自分の知る怪物(モンスター)だと知り、安心感を覚え、迷いは晴れた。

 しかしリューとの戦いが終わった後。アイズはベルと春姫がウィーネと再会し喜び合っているところを見ていた。なのにアイズがすぐにベルに追いつかれなかったのは、アイズが迷っていたからであった。

 

「……大切な人を怪物(モンスター)に奪われた……そんな存在に憎しみを抱く事の何が悪いの……?」

 

「間違ってるとは思わねぇよ。けどウィーネ(あの子)は違うだろ」

 

「違わない!! だってあれは……!!」

 

「心の底なんてそう簡単に分からねぇよ」

 

 山本と同級生にして、【シモンファミリー】のメンバーの水野(みずの)(かおる)。厳つい見た目で周囲からは恐れられてはいるが、実際は内気で引っ込み思案な性格であった。【ボンゴレ】を打倒する自分達と敵対したが、内心では優しくしてくれた山本達を裏切った事を激しく後悔していた。

 

「だからこそ剣じゃなくて、対話を交えないといけないねぇって俺は思う」

 

 薫ともっと分かり合っていれば、互いに敵対する事はなかったかもしれなかった。最終的に丸く収まったが、それでも山本は後悔していた。

 

「そんな事できる訳ない……!!」

 

「かもな。俺は怪物(モンスター)に大切な人が殺された事はがある訳じゃねぇから、あんたの気持ちは分からねぇ。けどさ、相手の話を聞かずに殺すって、それじゃあ怪物(モンスター)と同じなんじゃねぇのか?」

 

「っ!?」

 

 山本の言葉は事実。しかしそれをすぐに割り切れる訳もなかった。アイズはどうしていいか分からなってしまい、山本に斬りかかる。

 

「【時雨蒼燕流守式ニの型】───【(さか)()く雨】」

 

 山本は瞬時に刀で視界を遮るほどの分厚いの炎の柱を3本程、巻き上げた。アイズは柱に向かってデスペレードをデスペレードを薙ぎ払うも、山本は姿勢を低くしして防御体勢を取っていた為、アイズの斬撃は当たらなかった。

 【逆巻く雨】。水を巻き上げて姿を隠し、体をかがめることにより攻撃を躱す防御技である。

 

「次郎」

 

 山本は次郎をネックレスの中へと戻すと、代わりにネックレスから刀身のない、柄だけの状態の3本の小刀が飛び出し、山本は指と指の間に挟んで状態で握ると、小刀に炎を灯すと山本の姿に一瞬にして消える。

 (あさ)()()(げつ)の変則四刀。【ボンゴレファミリー】の初代雨の守護者、朝利雨月が使っていた3本の小刀である。

 朝利雨月は天下無双の剣の腕を誇る剣士であったが、戦いを好まず音楽を愛していた。しかし異国の友であるプリーモが窮地を知った時、命より大事な楽器を売り、そのお金を武器と旅費に変え、助けに向かった。楽器と引き換えに作った武器は3本の小刀と1本の長刀だったという。

 ボンゴレリングをボンゴレギアにパワーアップさせた際に、小刀は無くなってしまった。機動力を失った事で虹の代理戦争にて、家光と戦っているツナの援軍に向かう際に、自転車に乗った状態で獄寺のダイナマイトで加速する羽目になってしまった。そこで山本は小刀の製作をリボーンに依頼。山本もツナと同じく、自身を死なせない為に戦ってくれた。故にリボーンは山本の依頼を承諾。【ボンゴレ】に小刀の製作の依頼と、ネックレスに小刀を収納できるように【ボンゴレ】の彫金師であるタルボに依頼し、その際にかかった費用を負担してくれたのである。

 

「【時雨蒼燕流守式四の型】───【()(ふう)(じゅ)(うう)】」

 

 山本は小刀に纏った炎を逆噴射させ高速移動を実現。次々に放たれるアイズの神速の斬撃を躱していく。

 【五風十雨】。相手の呼吸に合わせて攻撃を躱す、回避奥義である。

 呼吸が乱れているせいでアイズの攻撃は読みやすくなっている。故にアイズの斬撃は掠りもしなかった。

 

(飛んでる……!?)

 

 高速での移動できるようになるだけでなく、小刀の炎を逆噴射させて飛べるようになった。そのせいでスピードで翻弄する事も難しくなった為、アイズは苦渋の表情を浮かべる。

 

「隙だらけだぜ」

 

 山本は刀を逆手に持ち変えると、そのまま下へと振り下ろす。そしてアイズの放った片手平突きを(つば)でデスペレードの軌道を反らした。

 

「がっ!?」

 

 そしてそのまま、刀の柄による突き放つ。柄の先端が額に直撃し、アイズはおぼつかない足取りで後方に数歩下がった。

 

「【時雨蒼燕流特式十一の型】───【燕の嘴(ベッカタ・ディ・ローンディネ)】」

 

 アイズが怯んだ瞬間、山本は連続の突き攻撃を放った。

 【燕の嘴(ベッカタ・ディ・ローンディネ)】。連続で突きを放つ技であり、元々はスクアーロの使っていた、【鮫の牙(ザンナ・ディ・スクアーロ)】を見て真似た技である。

 

(速い!!)

 

 アイズはデスペレードを水平に構え、表面で山本の突きを防ぐも、後ろに吹き飛んでしまう。

 アイズは捨ててあった木箱を蹴って山本に向かって、蹴り飛ばし、山本の追撃を阻止。山本は刀を振り落とし、木箱を真っ二つにした。

 

「【テンペスト】!!」

 

 するとアイズは魔法を発動。そこから地を蹴って空中に飛ぶと、一気に風の力を利用して加速し、山本に突っ込んで行く。

 このまま時間をかけても戦況が好転しないと判断し、アイズは勝負に出た。それに対して山本も小刀の炎を逆噴射させると、小次郎の合体を解いた。山本は次郎を前衛に構え、炎の壁を作りながら加速する小次郎の後を飛んでいく。

 【燕特効(スコントロ・ディ・ローンディネ)】。雨燕を前衛に構え、水をえぐるように巻き上げながら突進する技。スクアーロの【鮫特攻(スコントロ・ディ・スクアーロ)】を真似た技である。

 

「【リル・ラファーガ】!!」

 

「【時雨蒼燕流特式十の型】───【燕特攻(スコントロ・ディ・ローンディネ)】」

 

 風の加護を得たアイズの突きと、雨の炎の加護を得た山本の渾身の一閃がぶつかる。2人の攻撃の余波で大量の爆煙が発生する。

 

「ガハッ……!?」

 

 爆煙の中から攻撃に押し負けたアイズが吹き飛び、地面を落下。地面をバウンドしながら勢いよく転がっていく。

 そして山本は上空から一気に、地面にいるアイズの元へと一気に加速していく。

 

(回避しないと……っ!!)

 

 なんとか回避行動に移ろうとするアイズ。すると上空から目も開けられない程の集中豪雨がアイズを襲い、視界が遮ぎられる。

 上空では小次郎がアイズに向かって、集中豪雨を降らせていた。これもまた小次郎の能力の1つである。

 

「【時雨蒼燕流攻式八の型】───【(しの)()く雨】」

 

 集中豪雨で回避行動が遅れたアイズの懐に山本が侵入。そして無数の斬撃がアイズを襲い、アイズは宙を舞った。

 【篠突く雨】。山本の父、山本(つよし)が友を助けるために開発した型。相手の懐に飛び込み鋭い斬撃で突き上げる技である。

 

(つ、強過ぎる……)

 

 対人相手に魔法を使わないという誓約を破り、さらに自身の持つ、最高の技を繰り出したた。にも関わらず、敗北した事にアイズは衝撃を受けると、意識を失い、地面に落下した。

 雨の守護者の使命。戦いを清算し、流れた血を洗い流す鎮魂歌(レクイエム)の雨。その使命を山本は体現した。

 

「悪いな。あんたにも譲れないもんがあるんだろうけど、こっちも譲れねぇもんがあるんだ」

 

 倒れているアイズにそう告げると、山本は小次郎をネックレスの中に戻した。

 

「これは……!?」

 

 するとなんとか役目を果たそうとやって来た、リューが現れ、アイズが倒されている光景を信じられないものを見るかのような目で見ていた。

 

「あんた、こいつの仲間か?」

 

「い、いえ……それよりあなたは一体……?」

 

「話すと色々と長くなれるんだけど、俺はこいつを足止めするように頼まれてさ。あ、峰打ちで気絶させただけだから殺した訳じゃねぇから。そこんところ、誤解しないでくれよな」

 

(【剣姫】に勝った……!?)

 

 自分でも全く歯が立たなかったアイズを、全く知らない冒険者が勝った事にリューは衝撃を隠せないでいた。

 

「なぁ。あんた、こいつの仲間がどこにいるか知らねぇか?」

 

「い、いえ……生憎と私は知りません……」

 

「そっか。峰打ちとはいえ、傷を負わせたから手当てしてもらいたかったんだけどな」

 

「回復なら私ができますが……」

 

「そうなのか? 悪いんだけど頼めるか?」

 

「は、はい……」

 

 リューは困惑しながらアイズの元へ訪れた。そして右手をアイズの前へと出す。

 

(息はある……)

 

 リューは首に手を当ててアイズの状態を確認。山本の言う通り、気絶しているだけと理解する。

 

「【今は遠き森の歌。懐かしき生命(いのち)の調べ。汝を求めし者に、どうか癒しの慈悲を】───【ノア・ヒール】」

 

 するとリューの手が魔力の光が灯り、アイズの傷が塞がっていく。

 【ノア・ヒール】。リューの持つ回復魔法。地形効果があり、使う場所が森林地帯の場合、回復効果に強力な補正がかかる。体力の回復と並行して傷さえ塞ぐが、効果が高い反面、ポーションのように即効性は無く、消費する精神力(マインド)の効率は悪いというデメリットがある。

 

「サンキュー。じゃあ俺はこいつを仲間の所に運ぶわ」

 

「運ぶって……【剣姫】の仲間の居場所を知らないのでは……?」

 

「その辺を歩いてたら、こいつの仲間と出会えるかもしれないだろ。それにこのままここに置いておくのも悪いしな」

 

 そう言うと山本はアイズをおぶって、そのままアイズの仲間を探しに行く。

 

(彼は一体……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、アイズの仲間を探していた山本は。

 

「アイズさん!?」

 

 山本が歩いていると、山本の前方からエルフィがアイズに気づいた。

 

「お、あんたこいつの仲間か?」

 

「誰ですかあなた!? アイズさんに何してるんですか!?」

 

「安心しろって。気絶させたから、仲間の所まで運んでただけだ」

 

 そう言うと山本はアイズを降ろし、そのまま地面に寝かせると、すぐに離れた。そしてエルフィはアイズの元に慌てて駆け寄った。

 

「悪いけど、そいつが起きたら伝えといてくれねぇか。もしまた戦う事があったら、その時はちゃんとした形で手合わせしようってな」

 

 それだけ伝えると山本はアイズをエルフィに託し、そのまま去っていく。

 しかしアイズをこんな目に遭わせた山本が許せず、エルフィは杖を山本に向ける。

 

「止めて」

 

「アイズさん!?」

 

 するとアイズが右手でエルフィの杖を掴み、エルフィを止めた。

 

「あの人はツナの仲間……だから大丈夫……」

 

「綱吉さんの……!?」

 

「うん……卑怯な手は一切、使ってない……あの人、凄く強かった……峰打ちじゃなかったら私は確実にやられてた……」

 

「アイズさん……」

 

 アイズは杖から手を離すと、右腕で目元を覆った。今にも泣き出しそうなアイズ見て、エルフィは杖を降ろした。

 

(誰か私を助けて……)

 

 

 

 

 




長くなったー……というか時雨之化以外、全部出した……ここまで出すつもりはなかったのに……というかボンゴレギア出したけど結局、ダメージ与えてない……

朝利雨月の変則四刀は勝手に設定を作って出しました。流石にアイズと戦うんなら必要だと思ったので。

正直、リル・ラファーガは出すつもりなかったけど山本の技とぶつけかり合うのはやりたくなったので、出しました。

次回は柄の悪い者達の戦い。獄寺vsベートです。


4/18 登場人物をレフィーヤからエルフィに修正しました。



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