ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)158 晴()()者vs重傑(ガレス)

 

 

 

 

 

 

 

───ヴェルフ、命、椿サイド

 

「笹川了平推参!!」

 

((((だ、誰だ……?))))

 

 自分の名を叫びながら現れた男に、ヴェルフ達は唖然としてしまっていた。

 笹川了平。ボンゴレ晴の守護者。座右の銘は極限。守護者の中で一番のパワーを持ち、死ぬ気弾を撃たれずとも常にリミッターを解放している事から、リボーンからは常時死ぬ気男と呼ばれている。

 

「お前達が沢田の仲間か?」

 

「な、何でツナの事を知ってんだ……?」

 

「俺は笹川了平。沢田にお前達を助けるように言われてやって来た」

 

「「なっ!?」」

 

(ヴェル吉達が知らされていない……!? 何を考えておるツナ吉……!?)

 

(成る程のう……フィンを警戒しての事か……しかしそんな事をするとはちと想定外じゃのう……)

 

 ヴェルフと命の反応を見て椿はツナの意図が分からず動揺していた。一方でガレスはツナの意図を理解をしていたが、ツナがこんな真似をするような人間だとは思っていなかった為、驚きを隠せないでいた。

 

「そんな話、聞いておりません!! 一体どういう事なのですか!?」

 

「すまんな。何でも敵のボスが頭のいい奴だと言う事で沢田も言えなくてな。だが極限によく頑張ったな。ここは俺に極限に任せて先に行け」

 

「1人で任せられる訳ねぇだろ!! 俺達も……」

 

「お前達はすでに消耗しているではないか。それに俺のスタイルは1対1の方がやりやすい」

 

 ヴェルフが制止するも、了平は怯む事なくガレスの前に出た。

 

「お、おい、待てって!! せめて武器を……」

 

「いらん!!」

 

 武器を持たずガレスと戦おうとしている了平にヴェルフは武器を渡そうとするも、了平はヴェルフの申し出を拒否した。

 

「たとえ相手が誰であろうと、どんな戦闘方法であろうとも俺は己の拳で戦う。それがボクサーとしての俺の誇りだ」

 

 【ファミリー】を襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪。それが晴の守護者の使命である。

 

(ちょっと待て……!?)

 

(それって……!?)

 

(さっきの攻撃は……!?)

 

 了平の発言を聞いて、ヴェルフ、命、椿は先程の一撃は拳だけで発生した一撃だという事を理解し、衝撃のあまり言葉を失っていた。

 【極限太陽(マキシマムキャノン)】。了平がヴァリアーとの戦いの際にて、コロネロとの修行によって体を休め続け、さらにコロネロから撃たれた特殊弾による技の伝承により習得したパンチ技である。細胞1つ1つのエネルギーを拳に集中させることで圧倒的な破壊力を生み出す。肉体だけでなく、細胞そのものが何億人に一人というバネとしなやかさを持つと言われる了平だからこそ、威力を発揮する技である。リング争奪戦においては、死ぬ気の炎がないにも関わらず、学校の体育館を吹き飛ばす程の威力を見せた。

 

「ここからは俺が相手だ。正々堂々、1体1で決着をつけようではないか」

 

(この感じ……あの時と同じ……)

 

 一方でガレスは了平の拳の威力を知って、自身の心と体が震え、熱くなっている事を知覚していた。そして同時に思い出していた。20年以上前に初めてフィンとリヴェリアと共に戦った時の事を。

 ガレスはかつてロンザという集落の鉱夫であった。力の強いドワーフの中でもガレスの力は特別であり、ガレス自身も熱き戦いと自分より強い者を求めていた。しかしロンザは貧困であった。しかも貧困になった原因は自分のせいだった、故にガレスは皆を養う為に夢を諦め、発掘作業に勤み、なけなしの金を稼ぐ日々を過ごしていた。そんな日が続き、ガレスは自分の夢が何だったのか忘れてしまう程であった。

 ある時、ロンザにフィン、リヴェリア、ロキ、リヴェリアの従者であったアイナが現れた。最初は衝突し、いがみ合っていた。だが鉱山に強大な怪物(モンスター)が現れた。ガレスは立ち向かうも、歯が立たず死を覚悟したが、絶対絶命の窮地にフィンとリヴェリアが現れ、2人と共に怪物(モンスター)と対峙する姿を見て、心と体が熱くなり、気づけば2人と共に戦っていた。

 怪物(モンスター)を倒した後、ロンザの貧困問題を解決する糸口をロキが見つてくれ、住人達の後押しもありガレスは、【ロキ・ファミリア】に加入。そして熱き戦いを求めてオラリオにやって来たのである。

 

(すまんのうフィン……)

 

 都市の緊急事態である事は分かっている。優先すべきは武装した怪物(モンスター)を討伐する事だという

事も。しかし自身の熱を抑える事などできる筈もなかった。

 心の中でフィンに謝ると、傷を回復するポーションを頭から被った後、体力を回復するポーションを一気に飲み干した。

 

「その勝負、受けて立ってやるわ!!」

 

 そしてガレスは満面の笑みを浮かべ、戦闘体勢を取り高らかに宣言。そんなガレスを見て、了平もまた満面の笑みを浮かべ、拳に炎を灯し戦闘体勢に入った。

 

「【ロキ・ファミリア】幹部、ガレス・ランドロック!!」

 

「【ボンゴレファミリー】晴の守護者、笹川了平!!」

 

「「熱き戦いを!!」」

 

 互いに自己紹介するとガレスと了平は同時に飛び出した。

 余計な口上でなどいらなかった。互いの熱き闘志を拳に乗せ、ぶつけ合えばいい事を知っていたのだから。

 

「【極限太陽(マキシマムキャノン)】!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 了平とガレスの右拳がぶつかり合う。しばらくの間、拳は拮抗していたが2人の体はそのまま後方に吹き飛び、建物に激突した。

 すると2人は同時に建物内から何事もなかったかのように現れた。

 

「何じゃ今のパンチは。蚊が刺したかと思うたぞ」

 

「貴様こそ。全然大した攻撃ではないではないか」

 

 悪態をついてはいるものの、ガレスも了平も好敵手を見つけ、嬉しくて仕方がないという表情を浮かべていた。

 

(わ、笑ってやがる……!?)

 

(なんという力の応酬……!?)

 

(化け物か……!?)

 

 戦いは小細工なしの純粋なパワー勝負。しかしあまりの次元の違い過ぎる戦いに、ヴェルフ、命、椿は驚愕を禁じ得なかった。

 

「悪いな。お前達を巻き込まずに戦える自信はない。先に行ってくれ」

 

「わ、わかった……」

 

 先程の夢かと思う程の衝撃的なの光景を見て、自分達がいたところで足手まといにしかならないと、理解させられたヴェルフ達はその場から去って行った。

 

()(りゅう)!!」

 

 了平のボンゴレギアである、晴のバングルからカンガルーが飛び出した。

 晴カンガルー(カングーロ・デル・セレーノ)。了平の(ボックス)兵器であり、了平は(かん)()(りゅう)と名付けた。

 

形態変化(カンビオ・フォルマ)!!」

 

 我流と了平が一体化すると、ボンゴレの紋章が浮かび上がる。そして拳にパンチグローブが装備され、両腕と足と両足にアーマーのような物が取り付けられた。

 極限(マキシマム)ブレイク。肉体にのみ直接作用する晴の炎で、神経と筋肉を活性化させる事で何十倍ものパワーを手に入れるというものであり、【ボンゴレファミリー】の初代晴の守護者、ナックルの逸話を再現した形態である。

 ナックルは最強を欲しいままにした無敗のボクサーであったが、強すぎた為に試合で相手を殺めてしまい、拳を封印して神に仕える仕事に就いた。それ以降、ナックルがリングに上がる事はなかったが、【ファミリー】に危機が訪れた際には、己に3分間の時間制限を課し、その拳で【ファミリー】を救ったと言われている。

 かつては3分しか効果を持続できなかったが、ボンゴレリングをボンゴレギアに進化させてからは、時間制限は無くなり3分以上戦えるようになった。

 

「それが貴様の本気という訳か」

 

「そうだ」

 

 必要最低限の言葉だけ交わすと、ガレスと了平は再び拳を構え、戦闘体勢を取った。

 

「いざ……」

 

「尋常に……」

 

「「勝負!!」」

 

 2人は地を蹴ると、そのまま真っ直ぐ走ると、再び右ストレートを放った。

 

「「ガハッ!!」」

 

 今度は互いの拳が顔面に直撃。ここで初めてダメージが入るも、了平もガレスの笑みが崩れる事はなかった。

 

「「うぉおおおおおおおおお!!」」

 

 そして2人は同時にラッシュを繰り出した。技も駆け引きもない、ただの殴り合いが始まる。

 

(楽しいのう!! 血が湧き、肉が踊っておるわ!!)

 

 ガレスは今までの生きてきた戦いの中で、この戦いが一番楽しい戦いだと自覚していた。

 オラリオに来てから【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】から洗礼を受け、そして両派閥に勝負を挑み何度も敗北した。神時代が始まって以来、最強の【ファミリア】との戦い。楽しくはあったが、それ以上に屈辱の方が大きかった。さらに両【ファミリア】も本気ではなく、戦いとは呼べるものですらなかった。

 【ロキ・ファミリア】と同じく肩を並べる【フレイヤ・ファミリア】。【フレイヤ・ファミリア】とは何度も衝突し抗争をしている。しかし【フレイヤ・ファミリア】の眷属は誰もが過激であり、殺意に満ちた目で向かって来る為、決して清々しい戦いとは言えかった。

 同じ【ファミリア】で対等な存在であり、友であるフィンとリヴェリアとは何度も戦っているが、フィンは槍術と自慢の頭脳を組み合わせた戦闘スタイル、リヴェリアは圧倒的な魔力による遠距離支援。強さは互角でも戦闘スタイルが違う。後続達も育っているが、それでもガレスと真っ向勝負を挑める存在はいない。

 しかし今、目の前にいる了平は違った。真正面から拳だけで立ち向かい、殺意ではなく、自分と同じく熱き闘志を拳に乗せ、自分と同じ土俵で全力で戦う存在。ガレスに取ってこれ以上の好敵手などいなかった。

 

(思い出すな!! 沢田と戦った時を!!)

 

 そして了平はガレスとの殴り合いをしながら、ツナと戦っていた事を思い出していた。

 ツナとの出会いはボクシング部にツナを勧誘しようとした時。その際に死ぬ気モードになったツナと戦った。まだ死ぬ気の炎はおろか、【極限太陽(マキシマムキャノン)】も覚える前。試合形式であった為、その後の命を賭けた戦いに比べれば小規模の戦いではあったが、それでもあの戦いが了平の中で一番、熱い戦いであった。そして今、ツナと戦った時と同じくらい心が熱くなっていた。

 

「どうした木っ端!! その程度か!?」

 

「貴様こそ、へばっているではないか!!」

 

「ぬかせ!!」

 

 すでに10分以上殴り合いを続けていながらも、2人の笑みが崩れる事も、攻撃の手が緩む事もなかった。

 そしてさらに殴り合いは続き、2人の打撃音だけが響き渡る。

 そして殴り合いを始めてから20分が経過する。

 

「「はぁ……はぁ……」」

 

 ついに殴り合いが止まり、了平とガレスは互いに疲弊を見せ始めた。

 

「ここまでできるとは……正直、思わんかったぞ……」

 

「……俺もだ」

 

「もっと拳を交えたいところじゃが、流石にはしゃぎ過ぎたわい……どうじゃ? お互いに満身創痍……次の一撃に決めるというのは……?」

 

「いいだろう……丁度、フルチャージになったところだからな……」

 

「フルチャージ……?」

 

 フルチャージの意味が分からない様子のガレスに、了平はバングルを見せた。そこには形態変化(カンビオ・フォルマ)によって、変化したバングルに10個の炎が灯っていた。

 

「俺の武器、ボンゴレギアはダメージを蓄積すればする程、炎エネルギーをチャージする。俺の肉体が喰らったダメージの分だけバングルの炎は1つずつ灯っていく。10個全ての炎が灯り、日輪の形になった時フルチャージとなり、最強の一撃を放つ事ができる」

 

(ダメージによる強化……まるでベートのようじゃのう……)

 

 了平のボンゴレギアの性能を聞いて、ベートの魔法の事が脳裏に浮かんだ。

 ベートの魔法。魔法名は【ハティ】。魔法が発動すると四肢に炎が付与され、魔力由来のものを吸収する魔力吸収(マジックドレイン)損傷吸収(ダメージドレイン)の属性があり、炎に触れた魔力を見境無く吸収し、傷を負えば負うほど攻撃力が際限なく高まるというものである。

 

(じゃが……!!)

 

 この土壇場で今までにない最強の一撃を放たれると知って、ガレスのボルテージがさらに上がり、ガレスの右拳に己の残った全ての力を込める。

 

「いくぞ!! ガレス・ランドロック!!」

 

「こい!! 笹川了平!!」

 

 同時に駆け出すと、そのまま最後の一撃を繰り出した。

 

極限(マキシマム)サンシャインカウンター】!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおお!!」

 

 お互いの渾身の一撃がぶつかり、その余波で周囲のありとあらゆる物が破壊されていき、大爆発が発生する。

 

「ハハ……ハハ……ハハハハハハハハ!!」

 

 煙幕が晴れると、黒焦げになりながらも、高笑いを浮かべるガレスの姿があった。

 

「お主の勝ちじゃ……」

 

 するとガレスは満面の笑みを浮かべ、そのまま後方にゆっくりと倒れた。

 

「我流」

 

 了平が形態変化(カンビオ・フォルマ)を解くと、我流は体から晴の炎の照射し、ガレスの負った傷を活性の力で治していく。

 

「すまんのう……」

 

「俺達は同じリングで、己の全てを賭して拳を交わした戦友だ。友である以上、謝る必要など極限に必要などない」

 

「そうか……」

 

 了平の男気にガレスはこれ以上、何も口を挟まず傷が回復するまで大人しくしていた。

 そして傷が治るとガレスはゆっくりと起き上がり、座ったまま了平の方を向いた。

 

「楽しかったぞ。儂の生きてきた中で一番、楽しい戦いじゃった」

 

「俺もだ、こんなに熱くなれたのは沢田と戦った時以来だ」

 

「沢田綱吉と同じか……お前程の男がそう言うのだから、やはり相当に強いのだな彼奴は」

 

「当然だ。あいつは俺が戦った中で最も強い男だ」

 

「そうか」

 

 ツナと同じくらい楽しかったと言わせられ、ガレスは嬉しくて仕方なかった。

 

「またお主とは拳を交わしてみたいわい」

 

「……そうだな」

 

(何じゃ?)

 

 ここにきて、了平がしんみりとした表情を浮かべた事が気になったが、ガレスはなぜそんな表情を浮かべるのか聞く事はできなかった。

 

 

 




前回が頭脳戦だったので、今回は小細工無しでの殴り合いになりました。ガレスに魔法以外に技があれば、もっと技と技のぶつかり合いとかできたんですが……

次回は天才同士の戦い。雲雀vsフィンです。



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