ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)163 大空(ツナ)vs怒蛇(ティオネ)

 

 

 

 

 

────ツナサイド

 

(あそこがいいな⋯⋯)

 

 ティオネの顔面を掴んで上空を飛んでいたツナは、戦いの邪魔されない場所を見つけると、地面に向かってティオネを投げ飛ばした。

 ティオネは空中に体勢を立て直すと、そのまま地面に着地。その後、ツナも急降下し地面に降り立った。

 

「ここなら誰の邪魔も入らない。これでおもいっきりやれる」

 

 ツナがそう告げるもティオネはどういう訳か攻撃を仕掛ける様子がなかた。

 

「先程までの威勢はどうした? 俺を殺すんじゃないのか?」

 

「あんた⋯⋯一体何を考えてんのよ⋯⋯?」

 

「何がだ?」

 

「とぼけんじゃないわよ!! わざわざ冒険者を怒らせて何がしたいのよ!?」

 

「この状況で敵の心配か? それとも時間稼ぎのつもりか? どちらにしろ随分と余裕だな」

 

 いつものティオネであれば怒りを爆発させ襲いかかっていた。しかし骸の異様さと冒険者のプライドを刺激し、争わせた事を知り冷静さを取り戻していた。そんなティオネに対しツナは淡々していた。

 

「戦場を乱すのは戦術の基本。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「これ以上【ヘスティア・ファミリア】を窮地に追いやるような真似をして何になるって言ってんのよ!?」

 

「別に。あいつらの役目はすでに終わった。どうなろうと俺には関係ないの話だ」

 

「役目⋯⋯!?」

 

「今オラリオ中は悪い意味でベルに注目が集まった。そのお陰で俺はようやく目的を果たす事ができる。お前達に復讐する事がな」

 

「復讐⋯⋯!?」

 

 ツナの口からなぜ復讐という言葉が出るのか分からず、ティオネの思考が停止した。

 

「7年前にお前達に敗北してからこの日が来るをずっと待っていた。お前達の戦力が分断されるこの時をな」

 

「何を言って⋯⋯⋯!?」

 

暗黒期(7年前)にいなかったとはいえ鈍いな。俺が闇派閥(イヴィルス)生き残りだという事に気づかないとはな」

 

闇派閥(イヴィルス)⋯⋯!?」

 

 ツナが闇派閥(イヴィルス)だと知ってティオネは混乱し立ち尽くす事しかできないでいた。

 

「何言ってるのよ⋯⋯あんたが闇派閥(イヴィルス)な訳ないでしょ⋯⋯!?」

 

「なぜそう言い切れる? 一体、お前は⋯⋯お前達は俺の何を知っている?」

 

「だからって⋯⋯」

 

「信じる信じないはお前の自由だが、俺は最初からお前達復讐する為だけにオラリオにやって来た。お前達と共に深層に行ったのもお前達の情報を得る為。といってもフィンから遠征の誘いを受けたのは偶然だったがな。リスクは大きかったが、お陰でお前達から信頼を得る事ができた。お陰で何かあっても俺が疑われる事が無くなった」

 

「そんな事信じられる訳ないでしょ⋯⋯!? 第一、それだ本当なら【ヘスティア・ファミリア】の眷属になれる訳がないじゃない⋯⋯!?」

 

 人類は神に嘘はつけない。ツナが闇派閥(イヴィルス)だというのであれば、神格者であるヘスティアがツナを眷属にする訳がないのである。

 

「簡単な話だ。俺は7年前の戦いで敗北した後、都市外の【ファミリア】の眷属となった。そしてベルを人質にし、ヘスティアを脅迫し、周囲に【ヘスティア・ファミリア】の冒険者だと思わせた。神格者のヘスティアは俺に従う事しかできなかった上に、当のベルは自分が人質になっているとは微塵も気づいていなかったがな」

 

「⋯⋯!?」

 

 感情もなく淡々と喋るツナを見て、ティオネは衝撃のあまり言葉を失ってしまっていた。

 

「ベルが急激なスピードで【ランクアップ】したせいで【ヘスティア・ファミリア】の名が知られるという事態になったが、戦争遊戯(ウォーゲーム)で俺がLv.1幻術使いかつ、相手を騙す程度の実力しかない奴だと、オラリオ全土に思わせられた。後は簡単だ。幻覚で【イケロス・ファミリア】を操り、武装した怪物(モンスター)を地上に進出させ、ベルを操って、他の冒険者を攻撃させる事で名声を地に落とし、世間の目を武装した怪物(モンスター)とベルに注目させる事に成功した。そして黒いミノタウロスの脅威を知ったお前達は戦力を分散させた。俺の計画通りにな」

 

「⋯⋯私達の戦力を分散させる為だけにベル・クラネル達を利用したっていうの⋯⋯!?」

 

「俺は闇派閥(イヴィルス)だぞ。お前達を潰すのに手段を選ぶと思うか?」

 

「ふざけんじゃないわよ!!」

 

 今まで消えていた怒りが再び発露し、ティオネは殺意に満ちた視線でツナを睨む。

 

「たったそれだけの為に仲間を裏切って!! 私達の仲間を殺したっていうの!?」

 

「お前達が戦った闇派閥(イヴィルス)とは俺は何の関係はない。かつては仲間だったかもしれないが、今回は奴らの協力した事もないし、協力する気は毛頭ない」

 

「7年前に罪のない人達を殺したのは本当の事だろうが!!」

 

「罪のない人達を殺しただと? ならお前は⋯⋯お前達姉妹は闘国(テルスキュラ)で罪のない人間を殺さなかったとでも言うのか?」

 

「っ!?」

 

 ツナの言葉を聞いた途端、ティオネの顔が殺意に満ちた表情から恐怖の眼差しに変わった。

 

「知っているさ。お前達が【カーリー・ファミリア】の元眷属な事も。5年前に【ロキ・ファミリア】に改宗(コンバージョン)した事もな」

 

「な、何で⋯⋯!?」

 

「敵を知る事は戦術の基本だろ」

 

「そうじゃないわよ!! 何であんたがその事を知ってるって聞いてん⋯⋯っ!?」

 

 【ファミリア】内でしか知られていない筈の自分の過去をツナが知っている事にティオネは動揺するも、ラキアの侵攻の際に現れたバーチェがツナの事を知っていた事を思い出す。

 

「確かに奴らとは過去に1度だけ面識はある。だがその時はお前達姉妹と【カーリー・ファミリア】だった事は聞いていない。そもそも繋がりがあるなんて夢にも思ってもみなかったからな」

 

「じゃあ何で⋯⋯!?」

 

「敵であるお前にわざわざ教えると思うか?」

 

「くっ!!」

 

「話が逸れたな。それで? お前達姉妹は闘国(テルスキュラ)で罪のない人間を殺さなかったのか?」

 

「私は⋯⋯!!」

 

「俺達と違って生まれながらにして殺し合いを強制させられた環境に置かれたからとでも言うつもりか? 確かにお前達姉妹が俺達と違って生き残る為に相手を殺すしかなかったかもしれない。だがそれでも同胞を殺した事は紛れもない事実。その中に罪のない同胞が1人もいなかったと言い切れるか?」

 

「っ⋯⋯!?」

 

 ツナの言い分にティオネは何も言い返す事ができなかった。そして脳裏には自分に殺されそうになり、恐怖に支配されている同胞の姿が浮かんでいた。

 

「それとも同胞達を⋯⋯セルダスを殺した事が正しかったとでも言うのか?」

 

「っ!?」

 

 セルダスという名前がツナの口から出た瞬間、ティオネの思考と体が停止する。

 セルダス。かつて【カーリー・ファミリア】にいたアマゾネス。当時、ティオネはセルダスを姉のように慕っていた。だが儀式によってセルダスは殺された。それもティオネの手によって。

 闘国(テルスキュラ)では儀式が行われる際、眷属達は仮面を被って戦う事が義務付けられている。それ故にティオネは戦いが終わるまで相手がセルダスだと知らずに戦っていたのである。カーリーによって仕組まれたとはいえ、この出来事はティオネの人生の中で一番のトラウマとなった。

 

(ありえない⋯⋯!? 何でセルダスの事を⋯⋯!?)

 

 セルダスがティオネによって殺されたのは今から12年前。ティオネが5才の時の出来事。アルガナやバーチェのように世界に名が知られる程のアマゾネスだった訳ではない。セルダスの事を知っていたアマゾネスはほとんど殺され、セルダスの存在を知っているのはカーリー、アルガナ、バーチェの3人だけ。しかしツナが【カーリー・ファミリア】の接触した際には自分達と【カーリー・ファミリア】との繋がりを知らなかったと言った。であればセルダスの存在に辿り着ける訳がないのである。

 

「話は終わりだ。お前を生贄にし、オラリオに宣戦布告する」

 

「生贄⋯⋯!?」

 

「倒されたお前をオラリオに見せつけ、オラリオの民を絶望に陥れ、今度こそオラリオを壊滅させる。そして数え切れない同胞を殺しておきながらその事実を隠し、民衆を欺き、人格者のごとく振る舞っているお前達、偽善者の所業を告発する」

 

「なっ!?」

 

世界最速兎(レコードホルダー)とまで呼ばれ、都市中から期待されたベルでさえ都市中から非難され名声に地に落ちた。なら都市最大派閥にして都市内だけでなく、都市外からの支持の厚い【ロキ・ファミリア】。それも次期英雄候補と呼ばれたお前達であれば、ベルよりもさらに失望され、【ロキ・ファミリア】の名も地に落ちる筈だ」

 

「や、止め⋯⋯!!」

 

「俺は事実を公表するだけだ。英雄候補と名高いお前達姉妹が、過去にが同胞を殺したと知ってもなお、お前達に失望するのかしないのか。それを決めるのは民衆。成功すれば俺に利があるし、失敗してもデメリットはない。ただお前達に勝つ確率を少しでも上げる為の策の1つに過ぎない」

 

「っ!?」

 

 公の場で自分の過去を公表されるという最悪のシナリオ。ティオネの頭の中は真っ白になっていた。

 

「口封じの為にを俺を殺すか? 自分の過去を知られない為に」

 

「っ⋯⋯!?」

 

「信じる信じないはお前の自由だが、この事実を知るのは俺だけだ。俺を殺せばお前達の過去を知る者はいなくなり、お前は英雄候補のままでいられる」

 

(ク、クソ⋯⋯!!)

 

 このままツナを殺せば、自分の過去を公表される事を防ぐ事ができる。だがこの先、罪悪感に苛まれながら生き続けなけなればならなくなる。だがここで負ければ【ファミリア】が危機が晒される上に失脚する。選択の放棄が出来ない強制的な2択を突きつけられ、ティオネの頭はグチャグチャになっていた。

 

「ま。それは俺に勝てればの話だがな」

 

 ツナは走り出し、ティオネの元へ向かって行く。感情はグチャグチャになり決断もできていなかったが、ティオネは咄嗟に右ストレートを放った。

 

「っ!?」

 

 だが右手の手の平と左手の手の甲を相手に向けて組み合わせ、四角形を作ったのを視認した途端、拳をティオネは止めた。

 

「隙だらけだ」

 

「ガハッ!?」

 

 ツナは構えを解き、左アッパーをティオネの顎に叩き込んだ。

 

「単純な手に引っ掛かったな」

 

 【リスト・イオルム】。ティオネの持つ唯一の魔法。魔力で具現した光のムチで対象を捕らえ、一定確率で強制停止(リストレイト)の状態にする。成功率は魔力のアビリティに依存する。ティオネは魔導士ではないので熟練度は低いが、幾度の【ランクアップ】で魔力の値は高く、階層主に対しての成功率は10回に1回である。

 この魔法の存在を知っていたツナは魔法吸収の構え取り、ティオネを警戒させ、その隙に左ストレートを叩き込んだのである。

 

(魔法の事まで知られてる⋯⋯!!)

 

 自分の過去だけでなく、ツナの前で使用した事のない魔法の事まで知られている事にティオネは動揺する。

 

「お前達の過去を知っているんだ。自分のスキルや魔法の事が知られていると思わなかったのか?」

 

「クソッ⋯⋯!!」

 

 ティオネは右ストレートを放つも、ツナは右手の掌で受け止められた。

 

「どうした? 黒いミノタウロスと戦った時のようにスキルが発動させないのか?」

 

「黙れ!!」

 

 ティオネは拳や蹴撃によるラッシュを叩き込むも、ツナは容易く回避または防御していく。

 【憤化招乱(バーサーク)】。ダメージを負う度に攻撃力が上昇するティオネのスキル。ティオナの持つ【狂化招乱《バーサーク》】と同質のスキルだが、こちらはさらに怒りの丈によって効果が向上する効果を持つ。

 いつものティオネであれば怒りを爆発させ、怒りの戦士と化していた。だがツナが与えた強制の2択。この選択肢がティオネの精神を乱し、怒る事ができなくなっていた。そして動揺しているせいで、攻撃が先読みしやすくなっていた。

 

「隙だらけだ」

 

「ゴフッ⋯⋯!?」

 

 ツナは右手に炎を1点に集中させると、ティオネの腹部に右アッパーを叩き込んだ。そしてティオネは膝から崩れ落ちる。

 

「いくぞ」

 

 するとツナの(ハイパー)化が解かれ、グローブが元の27と書かれた毛糸の手袋へと戻るも、すぐにグローブだけが元に赤いグローブへと戻る。そして両手でティオネの両腕を掴む。

 

「【死ぬ気の零地点突破初代(ファースト)エディション】」

 

(しまっ⋯⋯!?)

 

 ティオネが気づいた時には、すでに遅くティオネの両肩から氷がティオネの全身を徐々に侵食していく。

 

「え⋯⋯!?」

 

 だが次の瞬間。ティオネの時が止まる。なぜならティオネの視界には唇を噛み締め、両目から涙を(こぼ)すツナの姿があったのだから。

 

「⋯⋯ごめん」

 

 ツナが呟くと、ティオネの全身は氷で覆われティオネは氷像と化した。

 そしてツナは再び(ハイパー)死ぬ気モードに戻り、右腕で涙を拭った。

 

「これで本当に良かったの?」

 

「⋯⋯ああ」

 

「⋯⋯分かった」

 

 するとツナの背後に炎真が降り立つ。ツナは炎真の問いに振り返る事なく答えると、炎真はそれ以上、聞く事はしなかった。

 

「首尾は?」

 

「作戦通りだよ。他の幹部はみんなが倒した」

 

「⋯⋯分かった。後を頼む」

 

 戦況を聞いたツナはそのまま上空へ飛び、炎真は氷像と化したティオネの前で待機する。

 

(ツナ⋯⋯あんた何を考えてるの⋯⋯?)

 

 

 

 

 




誤解した方もいるかもしれませんが、僕はダンまちアンチではないという事だけをご理解して下さい。

さて。フィン達との戦いも終わり、物語は佳境に入ります。


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