ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
レヴィスの元へと歩みを進めるツナ。
(体が⋯⋯!?)
重力の檻から抜け出そうと足掻くレヴィスであったが、今まで受けたダメージが深いせいで、まともに動くことすらままらなかった。
(ダ、ダメだ、ツナっち⋯⋯!!)
他の者も同じだった。怒りのままにレヴィスをも一方的に追い詰めるツナを見て、誰も声すら上げることすらできないでいた。
その時だった
「さ、沢田さん⋯⋯」
「っ!?」
意識が戻ったレイがか細い声でツナの名を呼んだ。その瞬間、ツナは瞠目すると同時に歩みを止めた。
「⋯⋯ありがとうレイ」
そう言うとツナは右の拳を自身に向け、そのまま額を殴った。その場にいた者達はツナの行動の意味が分からず、唖然としてしまう。
その時だった
「っ!?」
「沢田綱吉!!」
ツナが爆発に巻き込まれた為、フェルズは反射的に叫ぶ。だが数秒後にツナは爆炎から飛び出し、フェルズの心配は杞憂に終わり、他の者も安堵していた。
(あいつか⋯⋯)
爆発が収まった後、倒れていた筈のレヴィスの姿が忽然と消えていた。火炎石が爆発する前、一瞬ではあったが18階層で戦った仮面の人物の姿が見えた。爆発が発生し、重力の檻から解放されたレヴィスを仮面の人物が回収したのだと推測する。
(奴も
あの爆発の中でレヴィスを回収したのだとしたら、普通の人間ならできない。だが再生能力を持っている為、爆発の中に自ら特攻することも可能。故に仮面の人物もレヴィスと同じ
「⋯⋯すまない、逃がした」
「い、いや⋯⋯気にしないでくれ⋯⋯」
フィンの真横に止まり、レヴィスを逃がし、敵の情報を入手する機会を失ったことをツナは謝罪。フィンからすればレヴィスという一番の脅威を去れただけでも、充分過ぎる戦果である為、責めることなどできよう筈もなかった。
謝罪を終えるとツナはレイの元へと移動する。そこには再び意識を失っているレイの姿があった。
「ありがとうレイ。お前のお陰で我に返れた」
レイが自分の名を呼んでくれたことで、怒りのままに暴れる我に返れたことに対してツナは感謝の意を伝える。
「聞きたいことは色々とあるが、まずはレイの治療が先だ。フェルズ。回復魔法は使えるか?」
「あ、ああ、できるが⋯⋯」
「レイの治療を頼んでいいか?」
「わ、わかった⋯⋯」
ツナの言葉に困惑しながらも、フェルズは右手の掌をレイに向けて、詠唱を始める。
「【ピオスの
レイの下に白い
【ディア・パナケイア】。対象の疲労や負傷、そして
「憎いか?」
レイの治療を終えると、ツナは【ロキ・ファミリア】の団員達の方を振り返る。そこには未知の
「俺はお前達と違って
レヴィスという脅威が去ったばかりだというのに、今からそれ以上の脅威と戦わねばならないかもしれないと知り、団員達にかつてない程の緊張が走る。
「総員、武装を解除しろ」
だがフィンは団員達に警戒を解くよう指示。団員達はフィンの真意が分からなかったが、それでも何かしらの意図があるのだと推測し武器を降ろした。だがそれでも警戒心を解くことはできないでいた。
「沢田綱吉。もう悪役を演じる必要はない」
「悪役⋯⋯!? どういうことだフィン・ディムナ!?」
「簡単だよ。かつての
「───っ!?」
フィンの口から、ツナの本当の目的を聞き、その場にいた者は衝撃のあまり言葉を失ってしまう。
(なんてことを⋯⋯)
(だからか⋯⋯)
了平と戦った際、了平は複雑な感情を浮かべていた。あれはツナが罪人となることを知っていたからだと、ガレスは理解する。
「このことを知っていたのは神ウラノス。そして主神である神ヘスティアあのリボーンという赤ん坊ってところじゃないかな」
ウラノスがツナに協力関係にあるのはツナの口から聞いていた。
神の前では嘘はつけない。であればツナの主神であるヘスティア。それとツナと強い信頼関係で結ばれているリボーン。この2人には話していたのだとフィンは推測していた。
「といってもベル・クラネルと黒いミノタウロスの戦いによって、ベル・クラネルへの非難も消え、沢田綱吉が悪役になることも無くなった。君達の仲間の
ツナが罪人になったのだと思い込んでいる者の為にフィンの捕捉する。それでも誰もが言葉を失ったままであった。
「今の話、本当なのかよツナっち⋯⋯」
「⋯⋯」
今の話が信じられず本人に直接、確認するリド。だがツナは肯定も否定もせず、視線を逸らすだけであった。
「どうして⋯⋯どうしてだよツナっち!!」
「よせリド!!」
リドはツナの胸ぐらを掴むも、ツナは敢えて抵抗しなかった。フェルズが止めようとするも、ツナはフェルズの方に右手を向けて制止した。
「俺にはベル達やお前達みたいな夢はない。それに帰る場所もある。だから俺がやるしかなかった」
「オレっち達はそんなこと望んでねぇよ!!」
この
ヘルメスの交渉にフェルズは勿論、反対した。しかし自分達を護る為に都市中から非難された事実を知るリド達は、ヘルメスの言葉を無視することなどできなかった。
そんな中でグロスと数人の
そんな自分達のことを棚に上げ、ツナの取ろうとした行動に対して怒る権利などない。頭では分かっているものの、それでも感情を抑えることはできなかった。
「第一、ベルっち達だってツナっちが悪役になって喜ぶ訳ねぇだろ!!」
「だろうな」
「知ってたんなら何で⋯⋯!!」
「俺は
「っ!?」
「目の前にいた仲間すら救えなかった⋯⋯ただの弱い人間だ」
ツナは知っていた。どれだけ強くなろうとも自分はベルのような英雄にはなれないことを。目の前にいたユニとγを救うことのできなかった弱い人間であるということを。
悲しい瞳で告げるツナを見て、リドは我に返り、ツナを離した。
「それで⋯⋯一体、何があったんだ?」
「それは⋯⋯」
なぜ【ロキ・ファミリア】と
ヘルメスの取り引きに応じたこと。そしてヘルメスから教わった別ルートからダンジョンに帰還途中、リヴェリア達と遭遇し、フェルズが交渉を持ちかけるも交渉は決裂。そしてその隙に
「⋯⋯」
フェルズからの話を聞いて、ツナは何も言葉を発せず、何かを考えていた。少しするとツナは
「ウラノス。聞こえているか?」
『ああ。聞こえている』
「
『事態は落ち着いている。ベル・クラネルも重傷ではあるようだが、命に別状はない。【ヘスティア・ファミリア】への非難も払拭されるだろう』
「そうか。なら俺をまたオラリオに滞在させてくれないか?」
『どういうことだ?』
「やりたいことができた」
『何だ?』
「
『っ!?』
オクルス越しではあるがウラノスの動揺が伝わる。同時にツナが
「
「それにあのレヴィスという
ツナはレヴィスを一番の危険人物であることを身を持って知った。正直、フィン達があそこまでの危険人物と戦っていたのはツナに想定外だった。
リド達とフィン達を死なせない為には、レヴィスは避けては通れない相手だということも。
「俺っちも協力するぜツナっち」
「リド⋯⋯」
「オレっちもツナっちと同じだ。オレっち達を苦しめたこの空間は許せねぇ」
今回、同胞達がこの
「また仲間を失うかもしれない。何ならさっき俺が戦った奴を相手にするかもしれないんだぞ」
「オレっち達の為にツナっちが命を懸けてるのに、オレっち達が何もしねぇ訳だろ。第一、今回だってツナっち達はオレっち達の為に命を懸けてくれたんだ。今度はオレっち達も命を懸ける番だ」
「⋯⋯わかった」
リド達を巻き込みたくはない思いがなかったと言えば嘘になる。だがリド達の動機も最もであり、何より覚悟を決めているリドの思いを無下にすることなどツナにはできなかった。
「その作戦。僕も協力させてもらっていいかな?」
「フィン⋯⋯」
ツナとリドの会話を聞き、フィンが右手を挙手しながら協力を申し出た。
「【
ツナだけならともかく、リド達が戦うことを知ってもなおフィンが協力を申し出たこと予想外過ぎて、何か裏があるようにしかフェルズには思えなかった。
「沢田綱吉と武装した
フィンが視線を移すと、そこにはリヴェリアと共に一緒にいた女性エルフ達が複雑な表情を浮かべていた。
「もし我々との繋がりが露見した時、君の名声が地に堕ちることを理解しているのか? 一族の再興を望む、君の野望に潰えることになるぞ?」
「なら全てを失った後、また英雄に返り咲くさ。今度は人工じゃない⋯⋯そうだな、
右手の親指と人差し指を当て、満面の笑みを浮かべながらフィンは迷うことなくフェルズの問いに答えた。フィンの言葉にガレスとリヴェリアは笑みを浮かべ、他の団員達は驚きを隠せないでいた。
「オラリオの崩壊が迫っている今、僕は私情を⋯⋯
笑みを消し、真剣な眼差しをしながら告げるフィン。
理想の為に
「1つだけ聞かせてくれ。【
「なに。子供心を取り戻しただけさ。本当にそれだけ。答え1つしかない⋯⋯そんな風に決めつけるのは止めにした」
「⋯⋯わかった。君達と契約を結ぶ」
フィンへの疑念が解消され、フェルズはフィンと協力することを決める。
「ウラノス」
『どうした?』
契約が結ばれたのを見計らって、
「俺のことを話しても構わないか? 今回ばかりは話しておきたい。勿論、俺の正体をバラさない人だけに限定する」
『⋯⋯お前がそれでいいのであれば私は何も言うつもりはない』
「それともう1つ聞きたい。
『⋯⋯そういった前例は今だかつてないが⋯⋯問題はないだろう。そもそもお前が【
「わかった」
「【ファミリア】を脱退したというのは、どういうことだ沢田綱吉⋯⋯!?」
「そのままの意味だ。俺はこの作戦が始まる前に【ヘスティア・ファミリア】を脱退した。つまり今の俺に神の恩恵《ファルナ》はない」
「──っ!?」
動揺しながらツナの言葉の真意を尋ねるフェルズ。ツナは言い淀むことなく、冷静にフェルズの問いに答えた。
一方でツナの正体を知らない者達は、しれっと、ツナがとんでもない発言をした為、衝撃のあまり思考が停止していた。
(
(考えられるのは精霊の加護⋯⋯だがもしそれなら
王国を巣食うミノタウロスを倒し、次代に数多の英雄を生むきっかけを作った始まりの英雄アルゴノゥト。
大穴から這い出た単眼の王、バロールを己の命と引き換えに討伐した、
黒竜の片目を奪いオラリオから遠ざけた、英雄史上最強と謳われるアルバート。
神々が降臨する前に神々が地上に送った精霊の加護を受けたことで人知を超えた力を手に入れ、後世に名を残した者は少なからずいる。
しかしツナが精霊の加護を受けているのであれば、遠征にて
という訳で
後は守護者の戦いも大変でした。特に大変だったのは山本と獄寺です。
山本は時雨蒼燕流の技の解説を書くのが思ってより大変だったのと、どうすれば雨の守護者の使命を体現できるかを考えるのが大変で、獄寺は頭脳を生かした戦闘を書くのが大変でした。
正直、ツナが自分の名声と引き換えにベル達を救う展開は批判殺到だと思っていた為、この章は本当に読者からの反応が怖かったのです。
次回から新章、第一次
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