ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)17 勇者(ブレイバー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ツナたちが襲撃された次の日。早朝

 

「行ったか……」

 

 ここは【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)である黄昏の館の玄関口。現在フィンは玄関の扉を少しだけ開けて、本拠(ホーム)から出て行くアイズを扉の隙間から見ていた。

 

「さてと……」

 

 フィンは音を立てないようにゆっくりと扉を開閉すると、気配を消して足音を立てないようアイズを尾行して行く。

 

(不味い!!)

 

 尾行し始めて少しすると突如、フィンの右腕の親指が疼き始める。フィンは疼きを感じると瞬時にフィンの姿が一瞬にして消える。

 

(気のせい……)

 

 振り向いた後、気配が消えていた為、アイズは自分の気のせいだとわかる。

 

(考え過ぎだったみたい……)

 

 アイズは再び歩みを進める。特訓のことは【ファミリア】のメンバーにバレる訳にはいかなかった為、警戒は怠っていなかった。だが昨日、急に襲撃を受けた為、いつもよりアイズは周囲への警戒を強めていたのである。

 

「ふぅ……」

 

 フィンは現在、民家の屋根の上におり、アイズが歩みを進めているのを見ながら安堵していた。

 

「やれやれ……この力がなかったら危なかったな……」

 

 フィンは右手の親指を見つめながら安堵していた。

 フィンの親指は自分に何かしらの危険が迫ると親指が疼き、危険を知らせるのである。故にフィンはアイズが振り向く前に危険を察知し、屋根の上に移動しアイズの感知から逃れることができたのである。

 

(早朝にアイズの尾行……これは骨が折れるな……)

 

 昼間や夜間であれば人が溢れ、人に紛れて尾行しやすいのだが、今は早朝。人がほとんど歩いていない為、人に紛れて行動することができない。なので尾行はフィンと言えども細心の注意を払わねばならなかった。

 フィンは建物と建物の間の路地に降り立つと、路地の出口から顔を少しだけ出すと、アイズの動向を伺う。幸いにもアイズは気づいておらず、フィンは再び尾行を開始した。

 

(市壁か……)

 

 フィンの視界にはアイズが市壁の階段を登っている光景が見えていた。

 

(確かにここなら人が来ない……安全でかつ人目を忍ぶにはもってこいの場所だな……)

 

 アイズが市壁の上に登って行くのを建物と建物の間の路地から見て、フィンはアイズが後ろめたいことがあるということを理解する。

 

(あれは……)

 

 アイズが市壁の上を登った後、フィンはアイズと同じく市壁の階段に向かっているベルとツナを視界に捉える。

 

(あの白髪の少年……あの時の……!?)

 

 フィンはベルのことを見たことがあるのか、ベルの姿を見て目を見開いて驚いていた。

 

(もう1人は誰だ? 彼の【ファミリア】のメンバーか?)

 

 ベルの横にいるツナを見るフィンだったが、心当たりがなかった為、正体はわからず仕舞いだった。

 するとベルとツナはアイズと同じく市壁の上へと続く階段を登って行く。

 

(どうやら彼らとコソコソと会っていたいみたいだね……しかし何の為に……?)

 

 アイズが早朝。わざわざ市壁の上に向かっていたのはベルとツナと会っていたからだということをフィンは理解するも、何の目的で会っていたのかまではわからなかった。

 

(ま。ここまで来れば後は直接、尋ねばいいだけか)

 

 アイズの向かっている場所がわかった以上、後はアイズに直接聞けば全ては解決。フィンは市壁の上へと向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市壁の上

 

「アイズさん。おはようございます」

 

「おはよう」

 

「おはよう。ツナ。ベル」

 

 修行5日目ということもあって、アイズとも完全に打ち解け、緊張せず挨拶を交わす3人。

 

「体の方は大丈夫?」

 

「大丈夫。特にこれといって問題ないよ」

 

(普通もっと大事になっていてもおかしくないはずなんだけど……)

 

 昨日、至近距離でアレンに向かってダメージ覚悟で攻撃したツナ。普通にあんなことをすれば体のどこかに問題があってもおかしくないはずなのだが、全く問題がないことにアイズはツナのタフさに驚いてしまっていた。

 

「っ!?」

 

 ツナのタフさに驚いたアイズ。だがすぐに目を見開き驚くことになる。アイズの表情を見てツナとベルは慌てて後ろを振り向いた。そこには笑顔のフィンが立っていた。

 

「やぁ。アイズ」

 

「フィン……!?」

 

 フィンがここにいることに驚きアイズはその場で固まってしまっていた。

 

「フィンって……この人があの……!?」

 

「ゆ、有名な人なの……?」

 

勇者(ブレイバー)の異名を持つ【ロキ・ファミリア】の団長だよ……」

 

「ええ!?」

 

 フィンがアイズと同じく【ロキ・ファミリア】の人間だと驚くと同時に、今の状況がとても不味いということを理解する。

 

「何でここに……!?」

 

「簡単な話さ。最近、君の様子がおかしいと聞いてね。だから調べに来たまでだよ」

 

(あの時、感じた違和感は気のせいじゃなかった……!?)

 

 先程、自分が感じたのだが違和感。それがフィンが尾行していたのだということを理解する。

 

「それで? どうしてこんな所で何をしているんだい?」

 

「そ、それは……」

 

「誤魔化すのは無しだよ。事によっては君の処遇を決めなければならないからね。だから正直に話してくれ」

 

「うん……」

 

 誤魔化すことは無理だと悟ったのか、アイズは観念したのか正直に話すことを決めた。

 

「前に遠征の帰りにミノタウロスの群れと遭遇したのを覚えてる?」

 

「勿論だよ」

 

「その時、ミノタウロスが私たちを恐れて本来の出現場所から逃げて。そのせいで上の階層にいたこの子が襲われそうになってて……私が助けたんだけど、あの後の打ち上げで酔ったベートさんがこの子を笑い話にして……」

 

「そういうことか……」

 

「……」

 

(な、何の話……?)

 

 アイズから事情を聞いてフィンは全てを理解し、申し訳なさそうな表情をしていた。ベルは嫌な思い出だったのか黙ったまま食い顔をし、ツナは何のことがわからず困惑してしまっていた。

 

「だからお詫びに遠征に行くまでの間、特訓してあげることになって……」

 

「事情はわかったよ」

 

 アイズから全てを聞いたフィンは、今度はベルの方を向いた。

 

「僕らのせいで君に迷惑をかけてしまって本当に申し訳なかった。【ファミリア】を代表して謝罪させてもらうよ」

 

「あ、頭を上げて下さいフィンさん!!」

 

 フィンは頭を下げてベルに対して謝罪の言葉を述べた。謝罪するフィンの姿を見て、ベルは慌ててしまっていた。

 

「ダンジョンはイレギュラーな事態がつきもの。しかし我々が悪くないかと言われればそれは違う。それに部下が君に迷惑をかけたのは事実。部下の責任は教育がなっていなかった団長たる僕の責任だ。謝るのは当然のことだ」

 

「フィンさん……」

 

 都市最強の【ファミリア】の団長や【勇者(ブレイバー)】という肩書きを持ってもなお、偉ぶることなく頭を下げてちゃんと謝罪することのできるフィンを見て、フィンの凄さを知った。

 

「君も彼と同じ【ファミリア】の人間かい?」

 

「そ、そうですけど……」

 

「君にも謝罪しよう。君の仲間に迷惑をかけたことを」

 

「あ、いや……俺、最近オラリオに来たからよくわかんないんだけど……」

 

「そうだったのか。すまない。勝手に話を進めてしまって」

 

 ベルの仲間であるツナにも迷惑をかけたことを謝罪するフィン。しかしツナが何のことかわかっていないのにも関わらず、話を進めてしまったと知って再び謝罪の言葉を述べた。

 

「本来であれば【ファミリア】同士での深い交流はご法度だ。しかし迷惑をかけた相手に何の償いもせず、何も無かったことにするのはルール以前に人としてどうかしている。よってこの件に関しては不問にする」

 

「フィン……ありがとう」

 

 一方的に罰することなく、ちゃんと事情を聞いた上で今回の一件を不問にしてくれた為、アイズはフィンにお礼を述べる。

 問題が解決した為、アイズはベルとの修行を開始することになった。せっかくなのでフィンも見ていくことにした。

 が、

 

「えっと……これは……?」

 

 修行を開始して数分後。フィンが見せられたのはアイズがベルを一瞬にして気絶させる光景だった。フィンは容赦なく気絶させられるベルを引いてしまっていた。

 

「アイズは手加減ができなくって……だから戦っては気絶して、戦っては気絶してを繰り返しって感じで……」

 

「これは償いになってるのかな……?」

 

 迷惑かけたお詫びをしているはずが、逆にお詫びではなくむしろさらに迷惑をかけているのではないかとフィンは罪悪感を感じてしまっていた。

 いつものようにベルは精も根も尽きて地面に大の字になってしまう。

 

「Lv差があるから仕方ないと言えばそれまでなんだが……何度も気絶させられてよく彼も心が折れないものだね……」

 

「まぁベルはそれでも止めずに頑張ってるし……修行が厳しい分ベルも凄い勢いで強くなってるし……」

 

「そうかい……」

 

 これで強くなっていなければただただアイズがベルを気絶させているだけなので、償いどころかただの拷問にしかなっていない。そうなっていないとわかってフィンは安堵していた。

 

「成長のスピードでいうならベルよりツナの方が上だよ」

 

「え!?」

 

「ベルも戦いを繰り返す中でもの凄く成長してる。けどツナは毎回、戦う度に強くなってる。最初に戦った時と次に戦った時じゃ反応速度の速さが全く違う」

 

「アイズ。君はこの子にも特訓を授けていたのかい?」

 

「うん。ツナにはこの特訓のことを秘密にしてもらってたから。この子にも特訓をつけてあげようと思って。けど逆だった」

 

「逆?」

 

「うん。私、ツナに1回も勝つどころか攻撃すら当てたことがない。魔法も使ったけど勝てなかった。むしろ私の方が特訓してもらう側になってる」

 

「特訓してもらっている!? 君がかい!?」

 

「うん。いつもベルの修行が終わったら私が特訓してもらってる」

 

(まさかこの少年がアイズを疲れさせていた原因!?)

 

 アイズがツナに勝ったことがないということ、そしてアイズの様子がおかしかった原因がツナだと知って驚きを隠せずにいた。

 

「ちょっと待ってくれ……君は最近、オラリオに来たと言っていたね?」

 

「そうだけど……」

 

「今の【ファミリア】に入る前に【ファミリア】に入っていた経験は?」

 

「今の【ファミリア】が初めてだけど……」

 

(この少年もアイズも嘘は言っていないみたいだが……しかし本当にそんなことがありえるのか!? 恩恵(ファルナ)をもらって間もない人間がアイズに勝つことができるなんてことが!?)

 

 通常、恩恵(ファルナ)をもらって間もない人間が第1級冒険者であるアイズに勝つことなど不可能と言える程の出来事。しかしツナもアイズも嘘を言っているようには見えなかった為、フィンは動揺を隠せずにいた。

 

(いや!! 今はそんなことはどうでもいい!! もしアイズが言うことが本当なら……!?)

 

 色々と気になるフィンであったが、それよりも大事なことがあるのかフィンの口元が少しだけ緩んでいた。

 

「えっと……ツナでよかったかな?」

 

「えっと……本名は沢田綱吉だけど……みんなそう呼んでるからそれでいいけど……」

 

「そうか。沢田綱吉。いつもアイズと戦っているのなら僕にも見せてもらえないかい? 君の実力を」

 

「いいけど……」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

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