ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
オラリオ全土のを騒がせた
一度は地に落ちたベルの名声であったが、アステリオスとの戦いがインパクトが強く、圧倒的な格上のアステリオスに挑む姿勢が評価され、【ヘスティア・ファミリア】の評価は持ち直し、誰もがベルのことを認めた。
武装した
一方でベルが名声が落ちたことに便乗して非難していた冒険者達は穏やかではなかった。骸に利用されたとはいえ、莫大な懸賞金を独占する為に他人を攻撃できるという人間性が露になったからである。冒険者同士の乱闘はオラリオでは珍しくないものの、都市の危機だというのに利益の為に他の冒険者を攻撃したベルと同じことをした。そしてベルの立場が弱くなったをいいことに非難し、嘲笑っていた。
しかし黒いアステリオスとの戦いで、ベルがオラリオ中から絶賛された。ベルがオラリオを護る為に戦う一方で、多くの冒険者は都市の危機だというのに都市の危機よりも、自身のプライドを傷つけられたことに怒り、他者を攻撃した。優位な立場に立っていたつもりが、都市中から非難された時のベルと同じ立場に、自分達がなるかもしれないことを恐れるようになってしまった。
ダイダロス通りは住民達の避難がほとんど済んでいたことと、都市中がベルとアステリオスとの戦いに注目されたことで自分達の所業が知られることはなかった。それでも自分の所業が露見することを恐れた冒険者は、都市中から非難される前に都市から逃げ出す者や、日陰者の如く活動するように者が増えた。
ただこのお陰で冒険者達を目立つことを恐れた為、問題を起こす冒険者が減り、オラリオ及びダンジョン内での犯罪が減るという現象が起きた。
───【黄昏の館】
「なんとか事態は収まった⋯⋯って言いたいとこやけど」
騒動が終わって1日後。ここはフィンの執務室。現在、フィン、リヴェリア、ガレス、そして執務室にある机の上に
「本当なんフィン?
「ああ。しかも7年前に神エレボスが宣戦布告した場所で、今回の全てを仕組んだ黒幕を名乗ろうとしていた」
「成る程なぁ⋯⋯それならハッタリでも
全知である
「民衆や冒険者の論理的思考を奪うことで、ありとあらゆる負の感情を自分自身に向けさせ、未知が大好物な神の心理を利用することによるダメ押しか⋯⋯仲間を護る為とはいえ、まさかそこまでするとはのう⋯⋯」
「それくらいやらなければ僕らには勝てないと判断したってことでもあるんだろうけど⋯⋯」
「馬鹿げているとしか言いようがない。こんな作戦、普通なら思いつくことすらありえない。それも20年も生きていない人間が」
普通であれば実行することはおろか、思いつくことすらない作戦。ツナよりも圧倒的に戦闘経験の長い3人ですら、驚愕を禁じ得なかった。
「そして沢田綱吉の仲間。彼らによってリヴェリア以外の幹部陣は全員やられた」
「ありえへんやろ。あの色ボケんとこならともかく、全く名の知られてない奴らがウチらに勝つなんて」
驕りでも何でもなく、現実的にまず【ロキ・ファミリア】に勝てる可能性のある派閥など【フレイヤ・ファミリア】以外に存在しない。質が重要視される神時代では、いくら数を揃えたところで勝つことなどはできない。
「団員からの情報によると、判明している沢田綱吉の仲間は7名。体中の至るところに爆発物を持った男、アイズの風を弱体化させる剣士、ガレスと小細工なしの殴り合いができる男、沢田綱吉並みの
「ツッコミどころしかないな⋯⋯本当にそないな奴ら存在すんのか⋯⋯ていうか喋る梟って何やねん」
フィンは団員から聞いたツナの仲間達の情報を報告する。自身の眷属が嘘をついていないことは分かっているものの、ロキはそれでも本当なのかどうか疑いたくなる情報であった。
「その喋る梟を沢田綱吉は骸と呼んでいたらしい。そしてティオネとティオナの報告によれば、幻覚を使い、ダイダロス通りにいた冒険者をプライドを刺激することで、冒険者同士を争わせたと言っていた」
(その骸って奴の仕業か⋯⋯冒険者の憎しみを向けさせられるし、
あの時にダイダロス通り冒険者同士が急に争いを始めた理由と目的を神であるロキは瞬時に理解する。
「派閥によっては【ファミリア】同士の抗争にまでなっとたで。十中八九、計算されとるやろうな」
同じ【ファミリア】の団員がやられていると知られば黙っていられない。【ファミリア】と自分の沽券に関わる為、冒険者同士が争う理由には充分。これも骸によって仕組まれものだとロキは推測する。
「幻覚⋯⋯それもたった1人で冒険者同士を争わせるように仕向けた。口で言うだけなら簡単だが、普通にできる芸当などせはない。しかも誰も利用されていることにすら気づかせないなどありえないとしか言いようがない⋯⋯」
「それもありえないことだが、一番ありえないのは僕らの情報が知られていたことだ」
「情報?」
「彼は僕のもう1つの魔法の情報を知っていた」
「「「っ!?」」」
フィンの持つ投擲魔法、【ティル・ナ・ノーグ】。見せたことの筈のない魔法を知っていることに3人は瞠目する。
「まさかウラノスが情報を売ったんか?」
基本的にスキルや魔法の情報が流出することは【ファミリア】に取って命取り。故にギルドも眷属の情報を秘匿することは認めている。それでも伝聞などによって得られた情報はギルドに存在する。
「状況から考えればそう考えるのが妥当だ。けどそれだと説明がつかないことがある」
「どういうことや?」
「彼はメリサのことを知っていた」
「何やと⋯⋯!?」
「「?」」
フィンの言葉を聞き、ロキは瞠目しガレスとリヴェリアはメリサが誰のことか分からず困惑していた。
「僕が君達と出会う前。ロキと初めて出会ったプレブリカの村の酒場の店員として働いていた僕の
「待てフィン。儂らと出会う前ということは20年以上前の話ということになるぞ」
「ああ。しかも彼はヨーグルとアイナの名前まで知っていた」
「ありえん⋯⋯アイナはともかくヨーグルのことまで⋯⋯」
リヴェリアの従者であったアイナは、ギルドの職員であるエイナと血縁関係にある。エイナと親しければアイナのことを知っていることに説明がつく。
しかしヨーグルに関してはロンザを後にしてから、1度も会っていない上に、ヨーグルのことをフィン達以外に話したことがない。故にガレスは信じられないでいた。
「僕らのことだけでなく、ティオネの魔法、ティオネとティオナが過去に【カーリー・ファミリア】に所属していたことや、アキのスキルとオラリオに来る前にアキが何をしていたのかも知っていた。目的は自分が本当に
オラリオに来る前。それも誰にも言ってない秘密を他派閥の人間が知っているという恐怖。その恐怖が論理的思考を奪い、ツナが
「そしてその情報を元に幹部人に対抗できる相手を選んでいる。まぁ僕は個人的な理由みたいだったけど」
魔法で自身の身体能力と剣の威力を強化できるアイズには、鎮静の力で弱体化できる山本。
五感の優れているベートには火薬と爆音で獣人の特性を封じれる獄寺。
圧倒的なパワーを持つガレスには、同じく圧倒的なパワーを持つ了平。
搦め手が苦手で【
【
おそらくではあるが魔導士であるリヴェリアには、重力で詠唱を封じ、かつ魔法の機動を強制的に逸らすことのできる炎真。
団員からの報告を照らし合わせた結果、戦う相手が考えられていることが判明した。
「だが一番の問題は彼らの強さだ」
Lv.1の冒険者が仮にLv.6の冒険者のスキルを全て魔法を知ったとしても、Lv.6の冒険者の攻撃を見切り、倒し切れるだけの力と技量が無ければ、いくら情報を得たとしても勝ち目などない。ツナ達が幹部人に勝てたのは、単に実力があったからであるとフィンは理解していた。
「そして沢田綱吉の発言。
「⋯⋯精霊の加護を受けたってことか?」
「いや。精霊の加護なら遠征の時に
「ありえへんやろ⋯⋯そんな力、聞いたことないで⋯⋯」
全知である神ですら、
「団員からの報告によると沢田綱吉の仲間は皆、沢田綱吉と炎を使い、炎を纏った動物を使役していたらしい。1人だけ動物を使っていない者はいたそうだが⋯⋯もし僕の仮説が正しいなら、沢田綱吉達が使っている力は条件さえ満たせば、誰にでも使える可能性が高い」
「⋯⋯フィンの仮説が正しいなら、この事実が知られば下界は荒れるで」
「ああ。だがこれなら沢田綱吉が自分の存在を悟られないようにしたり、
ダンジョンの踏破及び、黒竜の討伐は人類の悲願。都市最強の冒険者である、オッタルすら越える逸材をウラノスが泳がせておく理由がない。
しかしあの力が知られ、誰にでも使えるとなれば話は別。多くの国や【ランクアップ】できない冒険者は絶対に力を手に入れようとする。そうなれば下界は黒竜ではなく、人類同士の争い全滅することもありゆる。
しかしまだこの事実が正しいとは限らない為、この議論は一旦保留という形となった。
「じゃが沢田綱吉が
「問題はどちらかと言えば僕達の方だ。
しかし納得できない者を無理やり作戦に参加させようものなら、戦線に影響が出る為、
「アリシア達の様子はどうだ?」
「声掛けはしてはいるが、戦線に出すのは不安がある」
レイがアリシアを庇い重傷を負った。そのことに今だにアリシア達はショックを隠せずにいた。アリシア達のメンタルケアをフィンはリヴェリアに頼んだが、それでも完全に割り切れてはいなかった。
「ティオネも引きずっている。沢田綱吉の真相を伝えたがそれでもショックが大きいようだ」
ツナが心を鬼にし、涙を流しながら戦っていたことをフィンはティオネ自身から報告を受けていた。フィンはツナが仲間を護る為に悪役を演じたことは伝えたが、それでもショックの色を隠せないようであった。
「一番の問題はアイズとベートだ。アイズは自室に引きこもり、ベートは自暴自棄になっている」
─────ダンジョン
「がぁあああああああああああ!!」
ダンジョン内にベートの絶叫が木霊する。魔石もドロップアイテムにも目もくれることもなく、次々に現れる
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
『この勝負は俺の負けだ。獣化を使わせられないようにはした上に、
『だがお前のお陰で俺はまだお前に魔法を使わせられない程、弱いって事が分かった。礼を言うぜ』
「っ!?」
怒りが収まったかに思われたが、あの時の獄寺の言葉が脳裏で再生され再び怒り込み上がる。
あの時の獄寺の発言は同情でも何でもない。本気で自分が自身に魔法を使わせられない程に弱いと思っていた。その上で遙か先を見据えていた。そしてこの時、ベートは獄寺が自分などよりも遙か先にいることを理解させられた。
そして再び地を蹴り、ダンジョンの奥へと走り、再び
「クソったれがぁあああああああああ!!」
どれだけ暴れても、何度も何度も獄寺の言葉が脳内で再生され、怒りが収まる気配はなかった。
ベートは言い訳などしない。ひた隠しにしていた自身の魔法が知られていたことに確かに驚愕した。だが強くなる以上、自身の情報が知られることなど当たり前。相性の悪い相手が現れようとも、自分の情報が知られ、相手の情報を知らない状況など当たり前。ならなぜ負けたのか。それは自分が獄寺よりもが弱かったから。ただそれだけである。
(何だこのザマは!! 何だこのみっともねぇ負け方は!!)
獄寺は自分よりパワーもスピードも下。それでも自分を倒す為に知恵を振り絞り、策を講じ、己を全てを懸けていた。
一方で自分は全力を出さずに敗北した。いつかこのような日が来るかもしれないことは分かっていた筈。それでも自分は過去の傷を気にし、魔法を使わないどころか並行詠唱の練習すらしなかった。
強力なスキルや魔法があるからと言って、それらに頼った戦い方をしないのは正しい。だからと言って、ここぞという時に使わければ切り札の意味などない。
そもそも戦いとは己の全てを懸けて挑むもの。過去の傷を思い出させるという理由で魔法を使わない。それは自分の都合であり敵には関係ない。それでも使うどころか、並行詠唱の練習すらしなかったのは自分の責任である。
(何で他者を見下せた!?)
全力を出す。戦場に出る上で当たり前のことができない分際で、他者を見下すような真似をしていた自分が許せなかった。
(何で俺はこんなに弱ぇんだ!!)
────アイズサイド
「⋯⋯」
いつもなら空いた時間は鍛錬に費やすアイズであったが、現在は自室のベッドの上で体育座りをした状態で塞ぎ込んでいた。
『あんたは剣士になりきれてねぇ』
『峰打ちで戦ってる俺が言うのもアレなんだけどさ。なんていうか、あんたの剣は怖くないっていうか……死ぬ気がしねぇんだよな』
自分よりも
『俺は
(私は間違っているの⋯⋯?)