ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
オッタルが去った後、ツナはフィンたちを置いて即座にベルたちの元へと向かう。
「この声……!?」
ベルの元へと向かう途中、ツナの耳に聞こえる。叫び声と剣と剣がぶつかった時に発生する金属音が。
「アイズ!!」
少しするとアイズの背中が見えてくる。だがアイズは何もせずその場で突っ立った状態で何かを見ていた。
「これは……!?」
ツナは目撃する。そこには大剣を持った牛の頭に人と同じく二足方向で立つ
「助けようと思ったんだけど……自分からミノタウロスに勝負を仕掛けて……」
アイズはツナたちになぜ助けに入らなかったのか理由を説明する。だが意識のほとんどはベルとミノタウロスの戦いの方へ向いていた。
アイズはベルに指導し、ベルの驚異的な成長に驚いていた。しかしミノタウロスに勝てるとは微塵も思っていなかった。だが現にベルはミノタウロスと互角に渡り合うという普通ではありえない光景を目にしている。故にこの戦いから目を離すことができなかった。
(修行の時と動きが格段に違う……)
ミノタウロスと戦うベルを見て、ツナはベルの動きが修行の時よりも動きが格段に良くなっているということを。
(戦いへの恐怖が消えている……そうか。どうやら見つけられたらしいな。自分の誇りを)
ツナはベルが恐怖を乗り越え、誇りを見つけられたのだということを理解する。そしてツナはベルを見届けることを選択する。
すると時間差でフィンたちがやって来る。ミノタウロスと戦うベルを見てベルが無事だということを理解する。
「って!! ちょっとあんた何してんのよ!? 仲間なんでしょ!? 何で助けないのよ!?」
「そうだよ!! その為に来たんでしょ!!」
「問題ない。ベルが勝つ」
ベルを助ける為に来たティオネとティオナは同じ【ファミリア】の仲間であるはずのツナが助けようとしないことに慌ててしまっていた。だがツナはベルが勝つという絶対の自信があったのか手を出すつもりはなかった。
「あぁ!? バカかてめぇ!? ミノタウロス相手にあの野郎が勝てる訳ねぇだろ!!」
「いや……そうでもないみたいだ」
ベートはツナの発言に正気を疑った。しかしフィンはベルの戦いを見てツナの発言がまんざら嘘ではないということをフィンは理解する。
「あ、あれ……?」
「嘘でしょ……!?」
よく見るとベルがミノタウロスと互角以上の戦いを繰り広げていた。その事実にティオナとティオネは困惑してしまっていた。
「確かに……勝てるかどうかまではわからないが、絶対に勝てないとは言い切れないな……しかし普通ではない……Lv.1でミノタウロスと渡り合うなどとは……」
リヴェリアもフィンの言葉を事実だと理解するが、駆け出しの冒険者がミノタウロスと互角に渡り合えるという事実に驚きを隠せないでいた。
誰もがベルがミノタウロスと渡り合うという事実に目を疑った。しかし目の前で起きているのは夢でも何でもなく、現実で起こっている出来事。フィンたちはベルとミノタウロスとの戦いを食い入るように見ていた。
『ベル。お前の誇りは何だ?』
『誇りとは譲れないもののことだ。たとえどんなことがあろうともな』
(ようやくわかったんだ!! 僕の誇り!!)
ベルは思い出していた。ツナとの修行の時に言われた言葉を。そしてオラリオに来る前のことを。
ベルは両親がおらず血の繋がっていない祖父に育てられた。祖父は美女や美少女好きでハーレムが浪漫だの、可愛い女の子を助けて仲良くなりたいとか言う、変わり者の祖父であった。
どういう訳か英雄たちの逸話をよく知っており、よく英雄たちの逸話を聞かせてくれ、ベルの誕生日には直筆の絵本をプレゼントしてくれるような優しい祖父であった。そして幼い頃にベルがゴブリンに襲われそうになった時は誰よりも早く駆け付け、ベルを護りゴブリンに立ち向かうような勇敢な祖父でもあった。
そんなベルの祖父であったがベルがオラリオに来る前に他界してしまった。祖父から色んな英雄の話を聞いたり、英雄に関する本を読んだベルだったが、ベルにとっての一番の英雄は何を隠そう祖父だった。
『オラリオには何でもある。行きたきゃ行け』
『英雄にもなれる。覚悟があれば行け』
生前、幼かったベルに祖父が言っていた言葉。祖父が失くなった後、ベルは祖父のこの言葉を思い出し、オラリオに来ることにしたのである。
(英雄になりたい!! これが僕の誇りだ!!)
極限の命のやり取りの中。ベルは確信した。自分の誇りを。ミノタウロスを倒す英雄に。弱い自分を奮い起こせる、強い英雄みたいな男に。この先、どんなことになろうともベルは心の底から英雄になりたいと願った。
「おおおおおおおおおお!!」
『ヴモォオオオオオオ!!』
ベルはさらにナイフを振る速度を上げて行く。ミノタウロスも負けじと大剣を振るう速度を上げて行く。
通常であれば大剣相手にナイフがぶつかりあえば、大剣に軍配が上がる。しかしベルの持つ【ヘスティア・ナイフ】は【ヘファイストス・ファミリア】の主神であるヘファイストスが自ら打った業物。まずかすり傷を付けることすら叶わない。そしてアイズとの修行で、ただ相手の攻撃を受けるだけでなく受け流すことを学んだ。この2つの要素がベルがミノタウロスと渡り合うことができた要因である。
(このままじゃダメだ!!)
ベルは【ヘスティア・ナイフ】で大剣を受け流し、
(なんとかして隙を作って懐に入らないと!!)
(考えろ!! 考えろ!! 考えろ!!)
自分の考えた作戦をどうすれば実行できるのか。ベルは頭をフル回転させる。
(っ!?)
頭をフル回転させた果てにベルは目を見開いた。何か重大なことに気づいたかのように。
ミノタウロスを両手でおもいっきり大剣を薙ぎ払う。今までであればミノタウロスの大剣を【ヘスティア・ナイフ】にて受け流してきたベルであったが、ベルは【ヘスティア・ナイフ】を使わず、ジャンプでミノタウロスの右薙を躱した。
「馬鹿が!!」
ベルの行動にベートは反射的に叫んでしまう。今のミノタウロスの右薙を躱せても、空中では身動きは取れない。故に次の一撃は躱せない。ダンジョンはほんのわずかな判断ミスが死に直結する。そのことをよく知っているフィンたちはベルがここで終わると確信する。
(成る程な)
だがそんな中でツナだけは微塵も動揺していなかった。そしてベルが上空に上がった理由を理解する。
上空から落下するベルをミノタウロスは右斜め下から左斜め上に向かって斬り上げる。ミノタウロスの放った左切上がベルに迫っていく。
その時だった
「ファイアボルト!!」
ベルは右手を後方に向けると後方に向かってファイアボルトを放った。その瞬間、空中にいたベルの体が前方に移動。ミノタウロスの放った左切上は空を切る。
「短文詠唱!」
「成る程。魔法を後方に打つことで空中での移動を可能にしたのか」
リヴェリアとフィンはベルがなぜミノタウロスの大剣をジャンプで躱したのかという理由を理解する。
(どうやら気づいたようだな。俺の言ったことを)
ツナは昨日、ベルに魔法の力を充分に引き出せていないということを伝えた。これは魔法を攻撃としてだけ使うのではなく、機動力としても利用しろということを伝えたかったのである。
極限の命のやり取りの中。ベルはツナの伝えたかったことを理解し実行したのである。
ファイアボルトの反動を利用し、さらにミノタウロスの背後を取ることに成功したベル。しかし背後を取られたことでミノタウロスは背後からの攻撃を警戒し、即座に後方を振り向いた。
『ブモォオオオオオオオ!?』
ミノタウロスが背後を振り向いた瞬間、ミノタウロスの左目に
ミノタウロスの背後を取れたベルであったが、いくら【ヘスティア・ナイフ】が優れていようともミノタウロスに致命傷を与えられることはできない。ここで無闇に突っ込んでも返り討ちに遭うと考えたベルは、
さらに言えば戦闘は一番の視覚を使用する。視覚を奪われるということは戦闘力の低下を意味する。一石二鳥とはまさしくこのことである。
(今だ!!)
左目に刺さった両刃短剣を抜こうとしているミノタウロス。その隙にベルはミノタウロスの間合いへと入る。
「おおおおおおおおおお!!」
『ゴォオオオオオオオ!!』
ベルは大剣が握られている右手に向かって【ヘスティア・ナイフ】をおもいっきり振り下ろす。ベルの放った竹唐によってミノタウロスの右腕は宙を舞い、大剣は地面に落ちる。ミノタウロスは再び苦悶の声を上げる。
「ああああああああああ!!」
「ヴォアアアアアアアア!!」
ベルは【ヘスティア・ナイフ】を即座にプロテクターにしまうと、地面に落ちた両手で大剣を握ると大剣を横に薙ぎ払う。ベルの放った右薙によってミノタウロスの腹部が斬り裂かれる。
(浅い!!)
ミノタウロスの腹部を斬ることに成功したものの、致命傷を与えるまでには至らなかった。
「ヴモオオオオオオオオ!!」
「くっ!?」
するとミノタウロスは左手を天に掲げると一気にベルに向かって振り下ろす。ベルは大剣を掲げて、ミノタウロスの鉄槌を防ぐ。ダメージを与え、片腕を失ったとはいえミノタウロスのパワーは計り知れず、ほんの少しでも気を抜けば自分自身が押し潰されそうな程であった。
すると時間差で大剣に亀裂が入っていく。そしてミノタウロスのパワーに耐え切れなくなった大剣は破壊され、真っ二つに折れる。完全ではないものの、ミノタウロスの鉄槌を押さえたこともあって鉄槌の勢いが落ちた為、ベルはミノタウロスの鉄槌を喰らう前にその場から飛び引いて鉄槌が直撃するのを避けることができた。
するとベルは折れた大剣を上空に投げる。ミノタウロスは何かあるのだと思ったのか、大剣に視線を誘導される。
するとベルは大剣の元に向かってジャンプする。そして大剣の表面に向かって足を前方に繰り出す。すると折れた大剣をミノタウロスに向かって蹴り飛ばされる。
ミノタウロスは顔面に向かって来る大剣を左手で薙ぎ払った。薙ぎ払われた大剣はダンジョンの壁に突き刺さった。
「ファイアボルト」
「ヴモォオ!?」
ベルは左手を後方に向けるとファイアボルトの反動を利用して前まで一気に移動する。そしてファイアボルトによって加速した勢いを利用し、ミノタウロスの右足を【ヘスティア・ナイフ】を使って斬り裂いた。
左足を斬られたことによってミノタウロスの左膝が地面についた。
ベルは折れた大剣を蹴り飛ばし、大剣の表面がミノタウロスの視界を塞いだ。その間にファイアボルトで加速し、ミノタウロスの右足を斬り裂いたことでミノタウロスの機動力を削いだのである。
「あぁあああああああ!!」
『ゴォオオオオオオオ!!』
ベルは背後から【ヘスティア・ナイフ】にてミノタウロスの背中を貫いた。そこから貫通したままの【ヘスティア・ナイフ】を振り下ろし背中の穴を広げると、【ヘスティア・ナイフ】を引き抜いた。左手の掌をミノタウロスの貫通した部分に手を当てる。
「ファイアボルト!!」
『グッ……オオオオオオオオオオオオ!!』
ベルは背中に開けた穴に向かって【ファイアボルト】を放った。するとミノタウロスの腹部が膨れ上がり、ミノタウロスの内部が爆発する。
【ヘスティア・ナイフ】でミノタウロスの肉体を斬れようとも致命傷には程遠い。【ヘスティア・ナイフ】ではミノタウロスを倒すまでに時間がかかる。だからこそ防御不可能な体の内部から【ファイアボルト】を炸裂させたのである。
ベルの目論みは成功し、ミノタウロスは今までにないぐらい苦しみの声を上げた。すると背中から侵入した【ファイアボルト】はミノタウロスの口から吹き出した。
(死ぬ気で!!)
『死ぬ気とは体が壊れようとも喰らいつく覚悟のことだ』
ツナは思い出す。昨日の修行の際に言っていたことを。アレンとの戦いの際、自分のダメージを顧みずアレンに勝つ為に零距離で【
「ファイアボルト!!」
『グボォオオオオオオオ!?』
ベルはさらに【ファイアボルト】をミノタウロスの内部に叩き込む。ミノタウロスの腹部がさらに膨れ上がり、再び口から火炎が吹き出す。
「ファイアボルトォオオオオオオオオオオ!!」
「オオオオオオオオオオオオオオ!?」
3度目の【ファイアボルト】がミノタウロスの体内で炸裂し、ミノタウロスの断末魔が響き渡る。
そして3度の【ファイアボルト】に耐え切れなくなったミノタウロスの上半身が木っ端微塵に吹き飛んだ。ミノタウロスの体が吹き飛んだことによって、今まで撃ち込まれた【ファイアボルト】の熱が炸裂。大量の火炎がベルを包み込んだ。
火炎が消え去るとそこには服が焼け焦げ、上半身裸の状態で立っていたベルの姿があった。
(か、勝った……)
ミノタウロスに勝ったということをなんとか理解したベルであったが、ファイアボルトの使い過ぎによって起こる
ツナは即座にベルの元に移動し、左腕でベルの体を受け止めた。
「よくやったな。ベル」