ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)35 衝動(インパルス)

 

 

 

 

 

 

 遠征から出発してから5日が経過した。ツナたちは50階層。

 ここは大荒野(モイトラ)。灰色に染まった木々がある荒野、亀裂のように走る川あり、灰色の大樹林地帯であり、安全階層(セーフティポイント)でもある。

 

「事前に伝えてある通り、51階層から選抜した一隊(パーティ)進攻(アタック)を仕掛ける。残る者は【ヘファイストス・ファミリア】と共にキャンプの防衛だ」

 

 野営地を設置した後、フィンは59階層攻略の為の最終確認を始める。

 51階層以降の階層は最低限の能力を持った者でなければ連れて行けない。大部隊を率いて進攻すれば、指揮手間や時間がかかる。故に51階層以降に突入できる条件としては、少数かつ選りすぐりの精鋭のメンバーでなければならないのである。

 

「パーティーには僕、リヴェリア、ガレス、アイズ、ティオネ、ティオナ、ベート。そして沢田綱吉」

 

 51階層以降の攻略において主戦力(メインアッタカ)となるメンバーを発表する。

 

「サポーターにはラウル、ナルヴィ、アリシア、クルス、レフィーヤ」

 

 次にサポーターのメンバーを発表する。サポーターといってもレフィーヤ以外はLv.4。レフィーヤもLv.3といっても魔法の潜在能力(ポテンシャル)は都市最強の魔導士リヴェリアが自身の後継者として選ばれる程の魔導士である。サポーターも十分な戦力と言える。

 

「キャンプに残る者はたちは例の新種の怪物(モンスター)に遭遇した場合は魔剣及び魔法で遠距離から対応するんだ。接近を許さないよう見張りは気は抜くな。指揮はアキ、君に任せる」

 

「はい」

 

 キャンプの防衛の指揮を任されたアキは一言だけ返事をした。

 安全階層(セーフティポイント)怪物(モンスター)が生まれないが絶対に安全という訳ではなく、他の階層から怪物(モンスター)がやって来ることがあるのである程度の戦力を残して置かなければならないのである。

 

(新種の怪物(モンスター)?)

 

 ツナはフィンの言う新種の怪物(モンスター)が何のことかわからず疑問符を浮かべる。

 

「ああ。すまない。実は前の遠征で腐食液を吐く芋虫型の怪物(モンスター)が現れてね。この先で現れるかもしれないから注意してくれ」

 

「わかった」

 

 ツナの表情を見て言い忘れていたということに気づいたフィンは、ツナに新種の怪物(モンスター)について説明する。

 

「椿は武器の整備士として、僕たちに同行してもらう」

 

「うむ。任さされた」

 

 待ってましたと言わんばかりに返事をする椿。今回、武器の整備士として【ヘファイストス・ファミリア】を同行させていたが椿はLv.5である為、51階層以降も同行できる唯一の鍛冶師(スミス)なのである。

 

「では渡す物を渡しておくぞ」

 

 地面に()(ぐら)をかいていた椿が立ち上がると、鍛冶師(スミス)にアイコンタクトを送った。すると鍛冶師(スミス)たちは布に包まれた武器を地面に並べた。

 

「注文されていた品。不壊属性(デュランダル)だ」

 

 フィン、ガレス、ベート、ティオナ、ティオネは武器は武器に包まれた布を剥がした。

 

連作(シリーズ)ローラン。それぞれの要望通りに作った」

 

 フィンは長槍を、ガレスは大戦斧、ベートは双剣、ティオナは大剣、ティオネは斧槍(ハルバード)を手に取った。

 これらの武器は今回の遠征に挑む際に最上級鍛冶師(マスタースミス)の称号を持つ椿に作成を依頼したのである。

 アイズの愛刀であるデスペレードと同じ不壊属性(デュランダル)である為、壊れることはないが使えば使う程、切れ味が落ちるのでこのタイミングで渡したのである。

 

「今さらじゃがツナ吉。お主はどうする? 流石にフィンたちのような上等な武器はないが、手前の武器を貸してやるが」

 

 明日の遠征についての会議と武器の受け渡しが終わると、団員たちは解散する。すると椿がツナに話しかけてくる。

 

「俺はいいよ。武器とか使えないし。それに武器持ってるとスピードが出せないし」

 

「そうか。だったら……」

 

 ツナの言葉を聞いて椿が自身のバッグから2振りの短剣を取り出した。

 

「だったらこの魔剣を持っていけ」

 

「魔剣?」

 

「魔剣とは魔法が使える剣のことだ。これを振るえば魔法が放たれる。この短剣なら携帯しやすい上に、スピードも落ちん。獲物を扱う術に長けておらんでも扱える。使わなければそれでもいい。だがここから先は何が起こるかわからん。持っておいて損はないはずだ」

 

「じゃあもらっておくよ」

 

 今まで剣で戦ったことはないが、デメリットがないと理解し、何が起こるかわからない以上、持っておいて損はないと理解したツナは魔剣を受け取った。

 

「ただ魔剣には大きなデメリットがある。それは使う度に消耗し、一定以上使うと砕けて使えなくなる」

 

「使用できる回数に限界があるってこと?」

 

「そういうことだ。それとお主なら大丈夫だと思うが魔剣の力に頼り過ぎるな。魔剣の力に頼るあまり怪物(モンスター)にやられる冒険者も少なくない。それに今から向かう59階層。手前も行ったことがないが、まずその道中はその魔剣で倒れるような怪物(モンスター)はいないだろう。だが怪物(モンスター)を倒す為ではなく隙を作る為などに使えるはずだ」

 

「わかった」

 

 椿から魔剣についてのデメリットを説明する。ツナは椿の言う魔剣のデメリットを心に留める。

 

「ヴェル吉が魔剣を打ってくれれば、もっといい魔剣が渡せたのだが……」

 

「遠征が始まる前にも言ってたけど、その人ってどんな人なの?」

 

「ヴェル吉のことか? 手前よりも遥かに強力な魔剣を作れる鍛冶師なんだが、当の本人は魔剣を作ろうとせんのだ」

 

「え? 何で?」

 

「手前は知っておるが、本人がそのことを言われることを嫌がっててな。悪いがこれ以上は言えん」

 

「ふーん」

 

「ま。とにかく他に武器が必要なったら遠慮なく言ってくれ」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 椿から魔剣を受け取った後、ツナは50階層を散歩することにする。

 

「ん?」

 

 ツナは周囲を散歩することを決め、歩いているとツナの視界に両手で頭に抱えた状態で体を震わせているラウルが目に入った。

 

「お、終わりっす……!? 今度こそ終わりっす……!?」

 

「ちょっ!? 大丈夫!?」

 

 ラウルがあまりにも怯えている為、ツナは心配になってしまっていた。

 

「気にしないで。ラウルはいつもこの先に行く時はいつもこうなのよ。こんなに怖がってるけど何回も生きて帰ってるんだから」

 

「アキは行ったことがないからそんなことが言えるんっすよー!! 何度も言ってるっすけど52階層以降は今までとは次元が違うんっすからねー!!」

 

「あのねぇ。いくら強いって言っても深層に初めて来たツナの方がしっかりしてるのよ。冒険者としてはラウルの方が先輩なんだからしっかりしなさいよ」

 

「そ、そうっすよね……」

 

 嘆息しながらそう言うアキ。アキの言葉を受けてラウルは喚くをことを止めることにした。

 遠征から5日経過しているということもあり、ツナは【ロキ・ファミリア】の団員たちとある程度、打ち解けていた。

 

「というか何でツナは初めて深層に来るのに、そんなに落ち着いていられるんすか……? 怖くないんすか?」

 

「別に怖くない訳じゃないんだけど……正直、リボーンに比べればダンジョンの怪物(モンスター)が可愛く見えるっていうか……」

 

「「リボーン?」」

 

 普段からリボーンのせいで死と隣り合わせの生活を送らされているツナにとって、ダンジョンの怪物(モンスター)はリボーンに比べれば幾千もマシであった。

 アキとラウルはリボーンという言葉を聞いて疑問符を浮かべる。

 

「俺の先生かな」

 

「先生って……じゃあそのリボーンって人がツナを強くしたってこと?」

 

「まぁね」

 

「ツナがそんな強くした人……自分もそのリボーンっていう人の弟子になれば強くなれるんすかね?」

 

「冗談でも言わないで!! 絶対に後悔することになるから!!」

 

「そ、そんなにっすか……」

 

 ラウルは軽い気持ちで言ったつもりだが、ツナが本気(マジ)になった為、ラウルは引いてしまっていた。

 

「あいつの修行は容赦がないんだ……あいつの修行受けたら絶対に死にかけるんだ……」

 

「ちょっ!? 大丈夫っすか!?」

 

(深層の怪物(モンスター)相手にするよりも怯えてる……!?)

 

 トラウマを思い出したツナを見てラウルは慌ててしまう。深層の怪物(モンスター)相手にも動じることなく戦えるツナが、ここまで恐怖させるリボーンという存在にアキは恐怖を覚えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アキとラウルの元を去ったツナは散歩を続ける。

 

(アイズ……?)

 

 木々に囲まれた空間。そこでアイズが愛刀であるデスペレードを握り、素振りしている光景がツナの目に映った。

 ツナの気配に気づいたのかアイズは素振りを止めて、後方を向いた。

 

「ツナ……?」

 

「あ。ごめん。邪魔しちゃって」

 

「ううん。ちょっと素振りしてただけだから」

 

 アイズは首を横に振りながら答えると、デスペレードを鞘に納めた。

 

「ねぇツナ」

 

「何?」

 

「ベル……凄かったよね」

 

「うん……」

 

 ツナは5日前。ミノタウロスとの激闘を繰り広げたベルのことを思い出していた。戦いが嫌いなツナでもベルとミノタウロスの戦いは心を動かされていた。

 

「ツナ」

 

「何?」

 

「少しだけ戦ってくれない?」

 

「え!? 今から!?」

 

 明日は今回の遠征の本命。ここから先は今までにない程の過酷な環境と怪物(モンスター)が現れると聞いている。少しでも万全の状態でいなくてはならない状況で、戦うなどツナには考えられなかった。

 

「明日に備えないといけないのはわかってる。でもあれからあの光景が忘れられなくて。今も気持ちが高ぶってて。正直、素振りだけじゃ自分を抑えられない」

 

「わかったよ……」

 

 頭でわかっていてもどうすることもできないのだと知って、ツナはアイズの申し出を受けることにする。

 ツナは(ハイパー)死ぬ気モードとなり、アイズは再びデスペレードを鞘から解き放った。

 

「いくよ」

 

 アイズは一気にツナの間合いへと入ると神速の刺突を斬撃を次々に繰り出していく。

 ツナは一歩も動くことなく、最低限の動きだけでアイズの刺突を躱す。

 

(また強くなってる……!?)

 

 ツナはその場から一歩も動くことなく、最低限の動きだけでアイズの刺突を躱していた。

 今までアイズが斬撃を繰り出してもツナはボンゴレギアでアイズの斬撃を両手で防御していた。だが今のツナは両手を使わずにアイズの斬撃を躱すことができるようになっていた。

 5日前に都市最強の冒険者であるオッタルと戦ってからツナは怪物(モンスター)と戦い続け、今回の遠征のメンバーの中で誰よりも怪物(モンスター)を討伐してきた。その経験がツナをさらに急成長させたのである。

 

(一体どこまで……!?)

 

 ツナと出会ってからまだ間もない。だが初めて出会ってから急成長を遂げている。しかもその成長に限界が見えないことにアイズは驚きを禁じえなかった。

 するとアイズは斬撃を止めると、周囲の木々に紛れる。そして木々を足場の代わりにして移動する。

 木々を蹴る音だけが響き渡る中、ツナは動揺することなくアイズの気配を探る。

 

(これは……)

 

 ツナの周囲に大量の木々が落ちて来る。アイズは周囲の木々の枝を斬りながら移動し、ツナの集中力を少しでも削ごうとしているのである。

 

(後ろ!!)

 

 ツナは後ろに気配を感じて即座に振り向いた。そこには落下する太い枝に乗り、デスペレードを納刀し抜刀術を放とうとしているアイズがいた。

 ツナが振り向いたと同時にアイズは枝を足場にして斜めに飛んだ。そして斜め上にあった太い枝を蹴って、急下降しツナの背後を取った。

 そこからアイズは鞘からデスペレードを解き放つ。鞘走りによって加速した一閃がツナに向かっていく。

 

(っ!?)

 

 ツナはアイズの放った神速の抜刀術を振り返ることなく、バク宙で躱すと同時にアイズの背後を取った。そして右手で手刀を作ると、アイズの首元に近づけた。

 

「勝負ありだ」

 

(炎を使わずに……!?)

 

 炎の逆噴射による高速移動すら使うことなく、自身の最速の一閃を躱されたという事実にアイズは驚きを禁じえなかった。

 

「これで気は済んだか?」

 

「もう1回……」

 

「アイズ。悔しいのはわかるがこれ以上は明日の遠征に影響が出る。これ以上はダメだ」

 

「もう1回だけ……これで本当に最後だから……」

 

(やっぱりこうなるか……さてどうしたものか……)

 

 戦う前からこうなることは薄々わかっていた。ツナはどうやってアイズを説得しようか考えていた。

 

「なら私が代わりに相手になってやろう」

 

「リ、リヴェリア……!?」

 

 すると第三者の声が聞こえてくる。アイズが振り返るとそこには腕を組んでいるリヴェリアがいた。そんなリヴェリアを見た途端、アイズの顔が真っ青になっていた。

 

「遠征前だというのに元気で何よりだ」

 

 明らかに怒っているリヴェリアを見て、アイズは顔を真っ青にした状態で口をパクパクさせることしかできない状態になっていた。

 アイズは幼い頃にリヴェリアの逆鱗に触れてしまったことがあり、リヴェリアには逆らうことができないのである。

 

「それでは始めるとしよう」

 

「がっ……!?」

 

 リヴェリアは目にも止まらない速さでアイズの元に移動すると、アイズの頭部に拳骨を喰らわせる。アイズは何もできないまま、頭から煙を上げながら地面に叩きつけられ、意識を刈り取られた。

 

(い、一撃……)

 

 リヴェリアがここまで恐ろしく容赦のない女性だとは知らなかったツナは、リヴェリアを絶対に怒らせてはいけないと心に誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 




最近、更新が遅れてすいません。


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