ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
ステイタスの更新を行った次の日。
時刻は昼。昨日のステイタス更新を行った際に、新たに発現したスキルを試したいと思ったツナは人気のいない密林の中を歩いていた。そして誰もいなさそうで少しだけ開けた場所が見えて来た為、ツナはそこに向かって行く。
「ここなら……え!?」
開けた場所に出たツナ。ここなら大丈夫だと思ったツナであったが、そこには木々によって作られた十字架が並べられていた。
「お墓……?」
木々によってできていた十字架を見てツナはこれらが誰かのお墓ではないかと推測する。
その時だった
「沢田さん?」
「リュー?」
ツナの背後から両手に大量の花を持ったリューが現れた。2人はなぜここにいるのかわからず少しだけ驚いていた。
「なぜここにあなたが?」
「いや……ちょっと修行しようと思って人気のない所を探してたっていうか……」
「そうでしたか」
「そういうリューこそ何でここに?」
「私は墓参りに」
「それって……」
「はい。ここにあるお墓は私の所属していた【ファミリア】の団員たちが眠っています」
リューがここにあるお墓が何なのか説明すると、お墓の前に移動し持っていた花を1本ずつ置いていく。そしてポーチの中からお酒の入った瓶を取り出すと、地面にお酒をかけていく。
それを見たツナはお墓の前に移動すると地面にしゃがみ込んで目を閉じて両手の掌を合わせる。
「沢田さん?」
「いや……知らなかったとはいえ勝手に入って来ちゃったからこれくらいはしようかなって……ここに眠っている人たちは、誰かもわからない俺のことをどう思うかなんてわからないけど……」
「その気持ちだけで充分です。ありがとうございます」
会ったことすらないのにも関わらず、祈りを捧げてくれるツナに対してリューはお礼の言葉を述べる。
「リューは前に冒険者を辞めたって聞いてたけど、ここまで来れたってことは
「ええ。といっても私は破門の身でありますが」
「破門?」
「私はかつて【アストレア・ファミリア】という正義と秩序を司る女神、アストレア様の元で冒険者として活動していました」
「【アストレア・ファミリア】?」
「【アストレア・ファミリア】はダンジョンの探索だけでなく、都市の秩序を乱す者を取り締っていました。私が所属していた頃のオラリオは今とは比べならない程に治安が悪く、都市の平和を脅かす者が多くいた。私たちはオラリオの平和の為に日々戦っていました」
「もしかして暗黒期っていう時代のこと?」
「知っていましたか」
「うん。確か7年前に【
ツナは遠征の時に50階層にてフィンが教えてくれた暗黒期のことを思い出す。
「その通りです」
「ということはリューも暗黒期に戦ったの?」
「はい。私も都市を護る為に【
「じゃあこの人たちはその戦いの時に?」
「いえ。死の7日間では私
そう言うリューの脳裏には暗黒期に命を落とした1人の友の姿が浮かんでいた。
「死の7日間から2年後。私たちは【
「そんなことが……」
「その後、私は主神であるアストレア様を都市から逃がすことにしました。その時に私はアストレア様から破門を言い渡されました。それでもアストレア様は私から
「リュー……」
「その後、私は1人で【
「え……!?」
仲間を失った後のリューのことについて知って、ツナは驚くと同時にあることを思い出した。
「【疾風】……!?」
「っ!?」
ツナは50階層でフィンと会話をした時に【疾風】という冒険者が
「そこまで知っていたんですか……」
「いや……【疾風】という冒険者が【
「そうでしたか……」
「ごめん……余計なことを言っちゃって……」
「いえ。私と関わっているのですから、いずれ知ることになったでしょう。あなた以外にも知っている人物は他にもいます」
自分の正体を知られて動揺するリューであったがすぐに冷静さを取り戻した。
そしてリューはさらに話を続ける。
「【
「顔を見られると困るってそういうことだったんだね」
「はい。そして復讐を終えた私は身も心もボロボロとなり、路地裏で倒れました。そして生きる意志を失った私はそのまま死ぬことを選びました。だがそんな私にシルが手を差し伸べてくれました」
「シルが?」
「ええ。彼女は私の正体を知りながらも、豊穣の女主人で働かせてもらえるように
「それで酒場で……でもよくバレずに働けているよね」
「冒険者時代の私はいつも覆面を纏っていました。だから名字であるリオンの名を名乗らないようにし、髪を染めたことで私の正体に気づく者はほとんどいません。今こうして私が日常を送れるのはシルのお陰なんです」
「そうだったんだ……」
抜け目がなくどこか計算高いというのがシルに対しての印象であったが、シルがリューの命の恩人であると知って、シルへの印象が変わった。
「すいません。耳が汚れるような話をしてしまって」
「え!?」
「自分の過去を話して改めてわかったんです。私は恥知らずの横暴なエルフだということが。だから沢田さん。間違っても私のようにならないで下さい。あなたは優しい心の持ち主だ。だから正しい道を選択できるはずです」
ツナは誰とも知らない者の為に祈りを捧げてくれた。リューはツナがベルと同じく優しい人間であるということを理解していた。
「できないよ。俺はもう間違った選択をしてるし」
「え?」
「俺も怨みで人を殺したことがあるから」
「なっ!?」
まさかツナが人を殺していたと知ってリューは驚きのあまり目を見開いてしまっていた。
「俺の仲間が死ぬ原因を作った奴を俺は怨んで、俺は怒りに任せてそいつを跡形もなく消し飛ばした」
未来の戦いにおいて、白蘭によって乱された世界の秩序を戻す為に、自分たちを平和な過去に帰す為にユニとγは自ら命を捧げることになってしまった。【
「あいつのせいで罪のない人がたくさん死んで、俺の仲間は俺たちの為に命を捧げないといけなくなった。あいつを倒そうとしてる俺は正しいことをしてるんだと思ってた。でも最終的にやったことはあいつと同じだったよ」
白蘭がやったことは絶対に間違っている。白蘭がいなくなったことで罪のない人間が殺されることはなくなった。しかしだからと言って殺していい理由などあるはずがなかった。
「だから俺はとっくに間違えてるよ」
「あなたは大切な者の為に戦っただけだ!! あなたは何も悪くない!! 悪いのはあなたの仲間が死ぬ原因を作ったそいつのせいだ!!」
「それだったらリューだって悪くないよ。悪いのはリューの仲間が死ぬ原因を作った【
「それは……」
ツナは間違っていないと主張するリュー。しかしツナも自分と同じく大切な者の命を奪った存在を殺した。ツナが悪くないのに、自分だけが悪いというのはおかしな話であり、リューは何も言うことができなかった。
「俺のやったことを正しいなんて絶対に言えない。それでも俺の仲間は俺たちの為に命をかけてくれた。だからその覚悟を無駄にしない為に、俺は生きるって決めたんだ」
「……」
ツナの言葉にリューは何も言えなかった。暗黒期の自分より年下でありながら、明らかに普通ではない人生を送っていたのだから。