ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
お互いの過去を知ったツナとリュー。その後、リューにいい修行場所を教えてもらった。
(よし。スキルの扱い方はわかった)
現在、ツナは
(だだ霧の炎だけは上手く扱えないな……)
炎の属性を変えられるようになったが、霧の炎の性能を完全に引き出すことができないでいた。
霧の炎は大空の7属性の中で一番、攻撃性能が低い。ただ霧の炎はあらゆるものを作り出し、相手を惑わすことのできる構築という特性があり、幻覚を生み出すことができる。中には実体のある幻覚、有幻覚を生み出すことのできる術師もいる。
ただツナは術師ではない為、幻覚を作り出す感覚がわからず霧の炎の扱いに苦戦していた。
(リリなら……)
ツナはリリが姿を変えられるスキルを持っていることを見抜いており、リリに聞けば霧の炎の力を引き出す為のきっかけがわかるのではないかと思っていた。しかしお互いについて詮索しないという約束がある為、ツナはリリに聞くことを断念した。
そして時刻は夜となり、食事の時間が近づく。
(リューいるかな?)
現在、ツナは再び密林の中を歩いており、両手には料理の乗った2つの皿を持っていた。
冒険者の前で顔を出せないリューは自分たちと一緒に食事を食べることができない。辞めたとはいえ冒険者としては自分よりも遥かに先輩である為、野宿の術も心得てはいるだろうが、それでも1人は寂しいのではないかと思いツナはリューを探していた。
(やっぱりあそこかな……)
ツナはリューの所属していた【アストレア・ファミリア】の団員が眠っている墓がある、あの場所にいるのではないかと予想し向かって行く。
【アストレア・ファミリア】の墓。
「っ!?」
ツナの予想通りリューは【アストレア・ファミリア】の団員が眠っている墓にいた。そして自分の元に近づいて来る足音と木々が擦れる音が聞こえた為、リューは右手で持っていた木刀の持ち手を握って、戦闘体勢に入る。
「あ。やっぱりいた」
「沢田さん!?」
生い茂る木々の中から現れたのがツナであった為、リューは驚くと同時に木刀の持ち手から右手を離した。
「な、なぜあなたがここに?」
「夕食を持ってきたんだ」
「夕食? 私に?」
「1人は寂しいかなって思ってさ」
「その為だけに私に会いに来たんですか?」
「うん。あっ。勿論、リューのことは言っていないから。安心して」
(嘘は言っているようには見えない……周囲に気配もない)
リューは周囲の気配を探知する。自分が指名手配されていると話した為、ツナが自分を狙う刺客を引き付けて来る、もしくはツナが自分を狙う刺客に尾行されているのではないかと警戒したのである。
「もしかして迷惑だった?」
「いえ。いただきます」
他人の善意を無下にできる程、リューは冷たくはない。リューはツナから皿を受け取り、一緒に食べることにする。
「そういえば修行の方はどうなりました?」
「大分使えるようになったって感じかな」
「使える?」
「ヘスティアにステイタスの更新をしてもらったら、新しいスキルが目覚めたんだ。そのスキルを扱う為の修行をしてたんだ」
「成る程。そういうことでしたか」
「でもまだ完全には使いこなせなくってさ。後ちょっとなんだけど、それさえなんとかなればスキルを完全にものにできそうなんだけど。そのコツを掴む為には俺の知り合いに聞けばわかるかもしれないんだけど……教えてもらえるかどうかわからないっていうか」
「それは難儀ですね」
「うん。ねぇ幻覚を使える人とか知らない?」
「私の知り合いにいるにはいますが……」
「本当!?」
「条件次第では教えてはくれるとは思います。ただ他派閥の【ファミリア】同士の深い関係は暗黙の了解で禁じられているので止めた方がいいと思います」
「そうだった……」
他の【ファミリア】同士との深い接触のルールを思い出すと同時に、同じ【ファミリア】でないリリに教えてもらうのも無理だということを悟る。
(あっ。そうだ)
誰かに教えてもらうという道が断たれて落ち込むツナであったが、ここであることに気づく。
「そういえばリューはシルと付き合いは長いんだよね?」
「はい。それが何か?」
「シルのことについて知りたいんだ」
「もしかして彼女に気があるんですか?」
「はい!?」
「残念ですが彼女には将来、伴侶となる方がいます。申し上げにくいですが彼女のことは諦めた方がいい」
「違うから!! そういうんじゃないから!!」
自分がシルのことが好きだとリューが勝手に勘違いしていた為、ツナは顔を赤くしながら否定する。
「それではなぜシルのことを知りたいのですか?」
「いや……シルって何者なのかなって思ってさ」
「どういうことですか?」
「いや。シルって普通の人間じゃないっていうか。といかそもそも本当に人間なのかなって思ってさ」
「確かにシルは普通の
「そう……」
シルと付き合いの長いリューが言うのであれば嘘ではない。しかしそれでもツナは完全に納得がいかない様子であった。
「ですがシルは私にとって特別な存在でもあります」
「命の恩人だから?」
「それもありますが、一番はシルは私に触れることのできる存在だからです」
「どういうこと?」
「私たちエルフは容姿が美しく、自他ともに称えています。しかし誇り高く潔癖で、他者と肌の接触を容易には許さない種族なんです」
さらにリューは続ける。エルフは他の種族を下に見ている者が多く、交流を嫌って里を出ずに閉じこもる者もおり、リューの故郷ではそう言った者がほとんどであると。
「しかし私はこう思いました。そんな考えを持つエルフこそ一番醜いのだと。そう思った私は里を飛び出して、このオラリオにやって来た。様々な種族が集まるこのオラリオなら、私の求めているものが手に入るのではと」
「求めているもの?」
「私は種族に関係なく互いに人格を認め、尊敬し合い、笑い合える仲間が欲しかった。ですが私は私に触れた者の手を次々に払いのけた。そして同時に自身に失望し理解させられてしまった。私も里の者と同じエルフなのだと」
「そうだったんだ……」
「ですがそんな私にシルは触れてくれた。そして私も彼女を拒絶することなく受け入れることができた数少ない人物なんです」
「シル以外にもいるの?」
「はい。1人は私を【アストレア・ファミリア】に勧誘し、【アストレア・ファミリア】の団長だったアリーゼ・ローヴェル。もう1人はあなたと同じ【ファミリア】のクラネルさん」
「え!? ベル!?」
「ええ。偶然だったのですが、彼は私に触れられても私は拒絶しないことがわかったんです」
ツナがまだオラリオに来る前。ベルが【ヘスティア・ナイフ】を紛失したことがあり、それをリューが見つけたことがある。その際にベルはリューの手を握ったのだが、リューはベルに対して拒絶反応を起こさなかった。
「でもそれでも【アストレア・ファミリア】の団長以外の人たちと、シル以外の酒場の仲間とかも触れられないってことだよね……」
リューは心を許しているのに、触れることができないという事実は変わらない。ツナはリューの体質を知って悲しくなってしまっていた。
その時だった
「「っ!?」」
突如、ツナとリューたちのいる地点から離れた場所から膨大な閃光が放たれた。
「な、何あれ!?」
「おそらく誰かが魔法を放ったのだと思います」
「な、何で!?」
「わかりません。ただ嫌な予感します」
今までの戦闘経験からリューはあまり良くない事態が起きているのだと直感する。
「沢田さん。私はあそこに向かいます。あなたはキャンプに戻って下さい」
オラリオに来たばかりの冒険者であるツナを危険に巻き込む訳には行かない為、リューは1人で魔法が放たれた場所へと向かうことを決意する。
「いや。俺も行く」