ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)57 自覚(コンシェンティア)

 

 

 

 

 

 仮面の人物を追い詰めたツナであったが、仮面の人物はどこかにいなくなり装備していた仮面とマントだけが地面に転がっていた。

 

(どういうことだ? 奴の気配が完全に消えた……)

 

 ツナは周囲を見渡しながら自分たち以外の気配を探るも、周囲に気配は感じられず仮面の人物がこの場から完全に消えたのだと理解する。

 

(いや。それよりも奴はどうやってここから逃げた?)

 

 仮面の人物は空中に蹴り飛ばされ、ツナの攻撃を避けられないと判断して防御体勢を取った。空中にいる状態から逃げる術を持っているのであれば、その方法を使って避ければいい。なのに仮面の人物はその方法を使わず、仮面とマントだけを残して消えた。だとすれば仮面の人物はなぜすぐに逃走しなかったのか。そしてどうやって逃げたのかという疑問が生まれた。

 

「リュー。俺の最後の攻撃が奴に当たった後、あいつの姿を見たか?」

 

「いえ……見ていません」

 

 ツナは自分たちの戦いを見ていたリューであれば何か見ているかもしれないと思い尋ねてみるも、これといった収穫はなかった。

 

(有幻覚? あるいは空間移動か?)

 

 ツナは仮面の人物が有幻覚に現実の装備を纏わせた存在、もしくは自分自身だけを別空間に移動させる能力の持ち主なのではないかと推測するが、決定打には欠けていた為、なんとも言えない状態であった。

 

「すまないリュー。奴を捕えられば闇派閥(イヴィルス)のことを聞けたかもしれなかったんだが」

 

「沢田さんが謝ることはありません。謝らないといけないのは私の方です」

 

「謝る?」

 

「あなたは憎しみに支配されていた私を止めてくれた。なのに私はあなたの気持ちを踏みにじった。あなたが止めていなければ私はまた大切な人を失っていたかもしれなかった。だから本当に申し訳ありません」

 

 リューは深々と頭を下げ、ツナに対して謝罪の言葉を述べた。

 

「頭を上げてくれリュー。最終的に踏み止まったのはお前自身だ。謝る必要なんてない」

 

「沢田さん……」

 

「それより問題なのはすでに壊滅したはずの闇派閥(イヴィルス)が再び現れたということだ」

 

 そう言うとツナは仮面の人物のナイフを右脇に挟むと地面に残された仮面とマントを拾い上げた。

 

「リュー。奴に心当たりはあるか?」

 

「いいえ。ありません」

 

「そうか。だったらフィンに聞いてみるか」

 

「【勇者(ブレイバー)】と知り合いなのですか?」

 

「ああ。暗黒期のことはフィンから聞いたからな。安心しろ。お前のことは黙っておく」

 

「ありがとうございます」

 

 暗黒期を経験しているフィンなら仮面の人物に心当たりがあるかもしれない。たとえ知らなくともフィンからすれば、闇派閥(イヴィルス)は放っておけない存在である為、闇派閥(イヴィルス)について調べてくれるかもしれないとツナは考えた。

 自分のことを黙ってくれることに対して感謝の言葉を述べるリュー。するとリューの頬が赤くなり、ツナから少しだけ視線を反らす。

 

「と、ところで沢田さん……!!」

 

「どうした?」

 

「先程のことなのですが……!!」

 

「先程?」

 

「そ、その……!! 仮面の人物から私を護ってくれた時のことなんですが……!?」

 

 リューは思い出す。自身の死角からナイフが放たれた時にツナに押し倒されたことを。爆炎と爆発に飲み込まれそうになった際に、ツナが自分のことをお姫様抱っこしたことを。

 

「どうした? 何かあったのか?」

 

「い、いえ!! やっぱり何でもありません!!」

 

「そうか。とりあえず俺はみんなの所へ戻る。闇派閥(イヴィルス)が襲って来ることはないだろうが、気をつけてな」

 

 そう言うとツナは証拠品を見せに行く為に、フィンたちの元へと戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仮面の人物の持ち物を見せに食人花の出現した場所へと戻って行く。

 

「あっ!!」

 

 【ロキ・ファミリア】の団員の1人が視界にツナを捉える。

 

「団長!! 帰って来ました!!」

 

「やっとお帰りか……っ!?」

 

 帰って来たツナを見た途端、フィンはツナが持っている仮面とマントを見て顔色を変えた。そして慌ててツナの元に駆け寄る。

 

「どうして君がそれを!?」

 

「フィン?」

 

 声を荒げるフィン。珍しく声を荒げるフィンの声を聞いてリヴェリアはフィンたちの元へ向かう。

 

「どうした? 何があった?」

 

「これを見てくれ」

 

「これは!?」

 

 フィンと同じくリヴェリアもツナの持っているマントと仮面を見て顔色を変えた。

 

「さっきの怪物(モンスター)が現れた時に、誰かがいたような気がしてな。気になって調べていたんだが、途中で白装束を着た2人組を見つけたがこのマントと仮面を纏った奴に消された。俺も消されそうになったが、なんとか撃退した……と思ったんだがどういう手段を使ったのかマントと仮面だけ残して消えて」

 

「「……」」

 

 自分の身に起きたことを端的に話すと、フィンとリヴェリアは黙ったまま何かを考えていた。

 

「あまりに不気味な奴だったんでな。もしかしてお前なら何か知っているんじゃないかと思って持って来たんだが、どうやら何か心当たりがあるようだな」

 

「ああ、ある。というよりも僕たちもその人物を追っていると言っていい」

 

「フィン。本当にいいのか?」

 

「経緯はどうであれすでに奴と接触したんだ。彼には知る権利がある。それに奴と対峙したと言うなら、彼も標的になるだろう。それに対峙しなかったとしても奴らと対抗するなら彼の力も必要になる」

 

(やはり闇派閥(イヴィルス)か?)

 

 2人の会話を聞いてツナは敵が【闇派閥(イヴィルス)】だと知り、その行方を追っているのではないかと推測する。

 

「ただ今ここで話すのは得策じゃない。だから地上に帰ってからゆっくり話をしたい。悪いが了承してもらえるかい?」

 

「わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 

(これは一体?)

 

 リューは木の枝の上にて、眼球のような物体が埋め込まれ、Dという記号が刻まれている赤い球体を手に取って見ていた。

 先程のツナと仮面の人物と戦った場所から少し離れた場所に落ちていた物であり、リューはただの道具には思えなかった為、持って帰ったのである。ただこの球体が何なのかまではわからなかった。

 

(とりあえず帰ってから調べてみましょう)

 

 現時点ではこの球体が何なのかわからない為、リューは球体を懐にしまった。

 

(それにしても沢田さんは一体?)

 

 仮面の人物との戦いでツナの強さを目の当たりにして、ツナが明らかにオラリオに来たばかりの冒険者ではないということを理解させられたリュー。ツナの(ハイパー)死ぬ気モードを見た時からツナがただ者ではないということはわかっていたが、自分の想像より遥かに上の強さを持っていた為、ますますツナが何者なのかが気になっていた。

 

(な、なぜだ!! 頬が熱い上に急に心臓の鼓動が速くなっている!!)

 

 ツナのことを考えたリューは胸の上に右手の掌を置くと服をクシャっと握りしめる。そして自身に起きている異変に気づく。

 

(ち、違う!! 沢田さんは私を助けてくれただけだ!!)

 

 凄まじい速さで首を横に振りながら、リューは自分自身に起こっていることを否定するのだった。

 

 

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