ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
遠征を終えて地上に戻って1週間が経過した。
「ただいま綱吉君。【ロキ・ファミリア】の団員から君宛に手紙を預かったよ」
バイトから帰って来たヘスティア。バイトの最中、【ロキ・ファミリア】の団員からツナに渡してくれと頼まれた手紙をツナに見せた。ヘスティアから手紙を受け取るとツナは手紙の内容に目を通す。そこには話し合いの日時が記載されていた。
「何て書いてあるんだい?」
「前にフィンが遠征の報酬の受け渡しと話したいことがあるから【ロキ・ファミリア】の
「成る程ね。それより祝賀会に行かなくて良かったのかい綱吉君?」
ちなみにベルたちはヴェルフの祝賀会の為、ここにはいない。ツナが地上に帰った後に起きた
「俺は今回、一緒じゃなかったし。それにもしかしたら今日、【ロキ・ファミリア】に呼ばれるかもしれなかったから」
「まぁ君がいいんなら僕は何も言うつもりはないけどさ」
「それよりむしろヘスティアの方こそ大丈夫なの? ダンジョンに入ったことがバレてギルドから厳重注意を受けた上に罰金を払うことになったんでしょ?」
「ま、まぁね……それでも僕の【ファミリア】は貧乏だったからまだ持っていかれた額は大したことはなかったよ。ただヘルメスのとこの【ファミリア】は中堅【ファミリア】だった為にどえらい額を持っていかれて、放心状態になったけどね」
「そ、そうなんだ……」
ヘルメスに言われた通りダンジョンに入ったことを秘密にしていたが結局バレてしまった為、ヘルメスの約束を守った意味がなかったと理解すると同時に同情してしまった。
「そういえばベル、ランクアップしたんだよね」
「ああ。ランクアップしたことで【
「最速記録か。やっぱり凄いねベルって」
(本当の最速記録は君なんだけどね)
オラリオではベルが【ランクアップ】の最速記録の持ち主だということが認知されているが、本当の最高最速の記録の持ち主はツナであることをヘスティアだけは知っていた。
【ランクアップ】に必要な条件は一定以上のアビリティと神々が認める程の偉業。ツナはオラリオに着いてからアイズ、フィン、アレン、ガリバー兄弟という第1級冒険者との連戦、今回の遠征であらゆる
しかしウラノスの命令でツナは【ランクアップ】することができない。ウラノスの命令がなければ、世界最速の記録の持ち主はツナになっていた。
(ま。ウラノスの命令がなかったとしても言えないんだけどね)
1ヵ月半で【ランクアップ】したベルでさえ多くの冒険者に神々に注目された。その一方でツナは1ヵ月もかからず【ランクアップ】条件を満たした。ヘスティアからすればベルの上位互換と呼べる存在がいるなど、口が裂けても言えるはずもなかった。
その時だった
「ヘスティア様!!」
「サポーター君!? ってどうしたんだい君たち!?」
リリの声が教会内に聞こえる。するとヘスティアの視界に打撲と切り傷の跡があるベルとヴェルフの姿が映った。
「事情は後だ。まずは治療が先だ」
「お、おい!! 頭燃えてるぞ!!」
ツナは手袋を装備しない状態で
「問題ない。これが俺の力だ。それより俺の炎で治療する。じっとしてろ」
「ま、待て!! そこまでする必要はねぇって!!」
ヴェルフはツナが自分たちの傷口を燃やして、傷口を塞ごうと考えているのではないかと理解する。命に関わるような怪我でもないのに、傷口を焼くのは流石に大袈裟であった為、ヴェルフは両手を前に出した状態で首を横に振りながら断る。
「大丈夫だよヴェルフ……前に僕もツナに怪我を治療してもらったから。それに全然、熱くないから」
「お前が言うなら……」
ベルがそう言うなら大丈夫なのだと理解し、ヴェルフはツナの治療を受けることを決める。そしてベルとヴェルフはソファに座る。
「いくぞ」
ツナは2人の頭に両手を乗せる。すると額の炎の色がオレンジから黄色へと変化し、2人の体が晴の炎に包まれていく。
「き、傷が……!?」
「治って……!?」
晴の活性の力で治癒力が活性化されてベルとヴェルフの傷が一瞬にして塞がっていく。この力を初めて見るヴェルフとリリはこの光景を見て驚きを禁じ得なかった。
「それで一体何があったの? 今日はダンジョンじゃなくて祝賀会に行ってたんだよね?」
ツナは
「酒場で神様の悪口を言ってきた人がいて……その人とその人の所属していた【ファミリア】の人たちと喧嘩になって……」
「ベルは我慢してました。先に奴らに手を出したのは俺です。ベルが怪我をすることになったのは俺のせいなんです。だからどうかベルを責めないでもらえませんか」
申し訳なさそうな
「君の言っていることが本当なのはわかった。だが君に罰を与えるつもりはない。だから頭を上げてくれ」
「ヘスティア様……」
「ベル君も僕の為に怒ってくれたのは嬉しいけど、喧嘩はダメだぜ」
「でも……あの人たち神様を馬鹿にしたんですよ!!」
自分が馬鹿にされただけなら我慢できた。しかしヘスティアを馬鹿にされたことはベルにとって何よりも許すことはできなかった。故にヘスティアの言葉を受け入れることはできなかった。
「ベル君の気持ちはわかるんだ。逆立場だったら僕も火を吐くほど怒る。でもそれで相手と喧嘩した僕がボコボコになって帰って来たらベル君はどう思う?」
「……泣きたくなります」
「だろ。僕も同じさ。綱吉君もね」
「あっ……」
ヘスティアの言葉を聞いてベルは我に帰ると同時にツナの方を向いた。そこには不安そうな
「それにその傷を治す為に綱吉君は力を使うことになったんだ。その意味がわかるかい?」
「はい……今度は我慢します。ごめんなさい」
「……」
相手が挑発してきたとはいえ、自分たちの勝手な都合でツナは心を痛め、力を使わせることになってしまった。そのことに気づいたベルは申し訳なさでいっぱいになっていた。返事こそしなかったが、ヴェルフもツナに対して申し訳なさでいっぱいになっていた。
「しかし相手方の反応は気になります。逆恨みをして、ベル様たちにちょっかいをかけてこなければいいのですが……」
ベルたちのことは一段落したのは良かったが、リリはこの先、喧嘩した相手の【ファミリア】が逆恨みをしてくるのではないかと推測する。
「俺が最初に手を出したんだ。ベルは問題ないだろ」
「それはそうかもしれませんが、
「うーん、確かに」
リリの言うことも最もである為、ヘスティアは腕を組みながら今後のことについて考える。
「ねぇ。これって本当にただの喧嘩なのかな?」
「「「「え?」」」」
「確証がある訳じゃないんだけど……これって罠なんじゃないかって思って……」
ヘスティアたちが逆恨みをどうにか避けようと考えている中、ツナだけはこの出来事が仕組まれた罠なのではないかと考えた。まさかこれが罠だと微塵も感じていなかった為、ベルたちは驚きを隠せずにいた。
「そう言われてみればそう思えなくともないですが……」
ツナの言葉を聞いて、自分たちをわざと挑発し、自分たちから手を出させることで何かしらの因縁をつけようとしたのだと理解する。
「しかし綱吉様がそんなことを言うとは……」
「いや……前に罠に嵌められて悪役させられた時のことを思い出したから……」
「お前……どういう人生送ってたんだよ……」
ベルと同じくお人好しであるツナがこんなことを言うのが予想外過ぎたのか、リリとヴェルフは驚きを隠せないでいた。
ツナはかつて【ボンゴレ】の次期ボス候補の1人であり【ボンゴレ】が誇る最強の暗殺部隊【ヴァリアー】のボスである、XANXASに罠に嵌められたことがある。今回の状況がその時と似ていると感じたのである。
XANXASは過去にゆりかごと呼ばれる【ボンゴレ】史上最大のクーデターを起こした。クーデターは失敗に終わったが、この1件は極秘扱いとなった。ゆりかごのことを知る者はこの時に戦った【ボンゴレ】の超精鋭と上層部のみとなる程のものであった。
しかし再び表舞台に現れたXANXASは【ボンゴレ】の次期ボスを決める戦い、リング争奪戦にてゆりかごについて知る者を黙らせる為にツナに9代目を倒させ、悪役に陥れることで多くの【ファミリー】の信頼を得ると同時にゆりかごを知る者を排除し、独裁体勢を作ろうとしたのである。
その後、ヘスティアはベルたちから相手の【ファミリア】の特徴を聞き、これ以上事態を悪化させない為に相手の【ファミリア】の主神と話し合いをつけるということとなった。
しかしこのツナの予想が最悪の形で当たるとは、誰もが思ってはいなかった。