ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)60 動揺(トゥルバメント)

 

 

 

 

 

 

 酒場での騒動があった次の日。

 

(リュー。いるかな?)

 

 時刻は夕方に差し掛かる少し前。ツナは現在、豊穣の女主人に向かっていた。

 今日の昼、ベルに【アポロン・ファミリア】という【ファミリア】が神の宴という神が主催する宴の招待状が渡された。参加の条件が【ファミリア】の主神と付き添いの眷属1人で参加するという条件であることと、その【アポロン・ファミリア】は昨日、酒場で喧嘩をした【ファミリア】であった為、相手の【ファミリア】の主神と話し合う為にベルとヘスティアは宴に参加し、ツナは留守番することになったのである。

 ツナはダンジョンで別れてからリューに会っていないが為、リューがあれからどうなったか気になった。故に様子を見に行くと同時に、豊穣の女主人で食事をすることにしたのである。

 歩くこと15分。豊穣の女主人に辿り着いた。すると店前でツナの視界に豊穣の女主人の制服を着た、ショートヘアーの茶髪の人間(ヒューマン)の女性が掃き掃除をしてる姿が視界に入る。

 

「あのー」

 

「ん? お客さん?」

 

 掃き掃除をしている女性に話しかけると女性はツナの方へと視線を向けた。

 この少女の名はルノア・ファウスト。豊穣の女主人の従業員の1人である。一見すれば普通の雰囲気の女性だが、店で迷惑になる客を容赦なく追い払うなど、荒っぽい性格ではある。しかし曲者揃いの店員の中では比較的常識的であり、何かと問題を起こすアーニャとクロエに振り回されるという苦労人でもある。

 

「リューって今日はいますか?」

 

「あんた。リューの知り合い?」

 

 リューに用があると聞いた途端、ルノアは目を細めて警戒を強める。

 

「い、いや!! ちょっと前にダンジョンで俺の仲間を助けてくれた時にお世話になったていうか!!」

 

「ああ。成る程」

 

 ツナが怪しい人物ではないと理解したルノアは、警戒を解いた。

 

「ごめんねー。てっきりリューを逆恨みしてるお客さんかと思ってさ」

 

「さ、逆恨み?」

 

「ウチの店ってば冒険者向けの店だからさ。血の気が多い奴が多くってねー。たまに店で暴れてる奴らを私たちがぶん殴ってとっちめたりするから、てっきりリューに仕返しにきたのかと」

 

(さらっととんでもないこと言ったんだけどこの人!?)

 

 ルノアは笑顔でぶん殴ると言葉を言い放った。ルノアの言葉を聞いてツナは恐怖を覚えていた。

 

「リューならいるけど。でも最近、様子がおかしいんだよね」

 

「え? どこか調子が悪いの?」

 

「調子が悪いっていうか……ダンジョンから帰ってからなんか急に何もないところでこけたり、ボーッすることが多くなったり、ずっと同じ皿を洗い続けたりしてるんだよねー」

 

(何かあったのかな?)

 

 ルノアからリューの近況を聞いたツナであったが、全くと言っていい程、何も気づいていなかった。

 

「あ。自己紹介が遅れたね。私、ルノア・ファウスト。よろしく」

 

「俺、沢田綱吉。ツナでいいよ」

 

「なっ……!?」

 

 ツナの名前を聞いた瞬間、ルノアは持っていた(ほうき)を地面に落とし、衝撃を受けていた。

 

「あ、あんたが!?」

 

「な、何!?」

 

「シルの料理を食べても平気って本当!?」

 

「え……!? 全く平気って訳じゃないけど、食べられない訳じゃないっていうか……」

 

「嘘でしょ……耐異常の発展アビリティさえ貫通するのに!?」

 

「発展アビリティ?」

 

 発展アビリティという聞いたことのない単語から聞いた為、ツナは疑問符を浮かべる。

 

「発展アビリティっていうのは【ランクアップ】した時に得られる専門的なスキルみたいなものだよ。人によって発現する発展アビリティは違うんだけどね。さっき言ったら耐異常なら毒物とかの耐性がつくんだ。といっても耐えられるレベルには個人差があるけどね」

 

「へー。といっても俺はLv.1だからその発現アビリティっていうのはないよ」

 

「耐異常のアビリティを持つ奴でもシルの料理は耐えられないのに……何で耐えられるのよ……」

 

「俺の知り合いに作った料理が全部、毒料理になるっていう才能持ってる奴がいるから……あれに比べたらマシっていうか……」

 

「どんな才能よ!!」

 

 あまりにも殺人的過ぎる才能の持ち主が知り合いにいるということに、ルノアはツッコミを入れざる得なかった。

 

「掃除にいつまで時間をかかってんだルノア。さっさと仕事に戻りな」

 

 すると店の中から土色の髪を結わえた中年のドワーフの女性が現れた。

 この女性の名はミア・グランド。豊穣の女主人の店主である。男勝りかつ物怖じしない性格で、まさに肝っ玉母さんともいうべき貫禄の持ち主である。

 怒らせると怖い人物であり従業員からは恐怖の象徴として恐れられているが、懐の深さや面倒見の良さも持ち合わせており慕われてもいる。

 

「何だいあんた? 見ない顔だね」

 

「えっと……リューに会いに来たのと、夕食を食べに来たました」

 

「そうかい。私はミア。この豊穣の女主人の店主(オーナー)さ」

 

 ミアは右手の親指を自分自身に向けて、自己紹介した。

 

「最初に言っておくがここは私の店だ。ここでは私が法だ。神だろうと人間とこの店で無礼を働く者は容赦しない。わかったかい?」

 

「は、はい!!」

 

 圧倒的な威圧感を放ちながらそう言うミアに圧倒されて、ツナは背筋をピンとさせて返事をさせた。

 

「リューに会いに来たって言ったね。リューなら買い出しに行ってる。そのうち帰って来るだろうから、中に入って待ってな」

 

 そう言うとミアは仕事を再開する為に店の中へと戻った。

 

「こ、ここ酒場なんだよね?」

 

 酒場の店主と思えない圧倒的な威圧感に、ツナはここが本当に酒場なのかと疑ってしまっていた。

 

「ミア母さんは昔、冒険者だったんだよ。でもどんなクソッタレな時代であろうと、笑って飯を食べてもらう場所を作りたいって言ってこの酒場を作ったんだって」

 

「凄い人なんだね」

 

「うん。でも怒らせたら殴り飛ばされるから気をつけてね。出禁になるから。最悪の場合、マジで埋められるから……」

 

「う、埋め……!?」

 

 埋められるという単語を聞いて絶句するツナであったが、さっきのミアの威圧感を感じ取ったツナはルノアの言うことが本当なのだということを理解する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃リューは。

 

(私はどうしてしまったというのでしょう?)

 

 現在、リューは街中を歩いていた。買い出しを終えて豊穣の女主人に戻る最中であった。

 

(あれから彼の事ばかり考えてしまう……!?)

 

 リューの頬は少しだけ赤くなっており、脳裏にはツナの姿が浮かんでいた。どうしてツナのことばかり考えてしまうのか考えている間にいつの間にか豊穣の女主人に到着してしまう。

 

「あっ、リュー。あんたにお客さんだよ」

 

「久しぶりリュー」

 

「なっ!?」

 

 ツナのことを考えていた矢先に突如としてツナが現れた。その瞬間、リューは顔が一気に真っ赤になりそのまま後方に倒れ、頭を地面に打ち付けた。

 

「「リュー!?」」

 

 突如、倒れて頭を強打する光景を見て驚くツナとルノアであったが、慌ててリューの元に駆け寄った。

 

「ちょっ!? 大丈夫!?」

 

「わ、私に近づくな!!」

 

「グフッ!?」

 

 慌ててリューの元に近づきしゃがんでリューの顔を覗き込んだツナ。リューはツナの顔が視界に入った瞬間、反射的にツナに向かってアッパーカットを放った。リューの放った拳はツナの顎に見事に的中。ツナは宙を舞った後に床に落下する。

 

(いて)ぇ!!」

 

(う、嘘でしょ!?)

 

 だがツナはすぐに起き上がり、アッパーカットを喰らった顎を両手で押さえる。ルノアはリューの拳を受けたにも関わらず、意識を保っていられるツナに驚きを禁じ得なかった。

 ルノアはかつて【黒拳(こっけん)】という異名を持つ、Lv.4の賞金稼ぎだった。そして暗黒期を終えた頃にリューとも戦ったこともある。色々あって今はリューと共に働いているが、リューの実力は充分に理解している。いくら本気でなかったとはいえ今の一撃を、Lv.1の冒険者がまともに喰らってこの程度で済む訳がないのである。

 リボーンと死と隣り合わせ生活を送っていたツナは、体が通常の人間よりも頑丈になっている為、リューのアッパーカットを喰らってもこの程度で済んでいるのである。

 

「はっ!? 私は何を!?」

 

 リューは我に返ると、慌てて起き上がり自分のしたことを思い出す。

 

「いきなりあの子をぶっ飛ばしたのよ!! 覚えてないの!?」

 

「わ、私がですか!?」

 

「あんた以外に誰がいんのよ!! というか何で覚えてないのよ!?」

 

「い、いや……沢田さんの顔が視界に映ったことろまでは覚えているんですが……そこからの記憶がないというか……」

 

(ま、まさか……!?)

 

 リューの言葉を聞いてルノアは確信に至ってしまう。そしてツナの方に視線を移した。

 

(リューの様子がおかしくなったのって……!?)

 

 

 

 

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