ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)65 囚われ(プリズナー)

 

 

 

 

 

 【アポロン・ファミリア】の襲撃が起こってから3日後。

 

「……」

 

 ここは都市の東南にあるソーマの作った酒を貯蔵している酒蔵。現在、リリは酒蔵にある地下牢獄に捕えられていた。

 

「気分はどうだ? アーデ?」

 

「……最悪です」

 

 牢獄に捕らわれている1人の人間(ヒューマン)がリリの元へとやって来る。男の問いかけに対してリリは即座に吐き捨てるような台詞を吐いた。

 この男の名はザニス・ルストラ。【ソーマ・ファミリア】の団長である。他の団長候補を蹴落とす形で団長に就任し、ソーマが【ファミリア】の運営に関心が無い事に付け込んで上納金が上位の者にだけ神酒を飲ませてやるという報酬システムを作った。ソーマが酒作りにしか興味がないことをいいことに、【ファミリア】を私物化したのである。リリが不幸な人生を歩むことになった原因の1人である。

 

「ベル様たちに本当に危害を加えていないのですか?」

 

 3日前の【アポロン・ファミリア】の襲撃。ザニスは報酬と引き換えに【アポロン・ファミリア】の抗争に協力した。そして抗争のどさくさに紛れザニスはリリに接触し、ザニスはリリを騙して利用してきたベルたちに罰を与えるなどと心ない言葉を吐いてリリを取り戻そうとしたのである。自分のせいでベルやヴェルフ、そして【タケミカヅチ・ファミリア】や【ミアハ・ファミリア】の団員たちが抗争に巻き込まれてしまったということを理解したリリは、ザニスの元へと戻ることを決意したのである。

 

「勿論だとも。主神様(ソーマ)の名に誓おう」

 

 ザニスは主神という大層な言葉を並べ、心にもない言葉でリリの質問に返事をした。

 

「なぜ……今更リリを構うのですか?」

 

「私がお前の価値を認めたからだ」

 

「リリにそんな価値はありません」

 

「いや。お前は使える。こそこそと金を貯めていたことには気づいていた。盗賊紛いの腕は私を知っているし、評価している。お前には希少な魔法があるだろう?」

 

 リリはベルたちを除いて教えていない魔法の情報をザニスが知っていることに対し、リリは目を見開き衝撃を受けていた。

 

「ソーマ様から聞き出したのさ」

 

 リリの表情からリリが何を考えているか理解したザニスは、リリの疑問に対する答えを教えた。

 他人に興味がないとはいえリリに恩恵(ファルナ)を与えたのはソーマ。そして情報漏洩という意識すらないソーマは簡単に口を割ったのである。

 

「確認だがアーデ。お前は怪物(モンスター)に化けられるのか?」

 

「だったらどうだと言うのですか?」

 

 ザニスの問いかけに対してリリは適当に返事をした。だがリリの返答を聞いたザニスは邪悪な笑みを浮かべた。

 

「お前にぜひ協力して欲しいことがある。なに、ちょっとした商売だ」

 

「それは……?」

 

怪物(モンスター)を誘き出し、捕獲し売りさばく。単純だろう?」

 

怪物(モンスター)に商品価値があるはずがありません」

 

「ふふっ……どうだろうなぁ」

 

 魔石やドロップアイテムならいざ知らず、怪物(モンスター)そのものに価値はない。リリは下らないと心の中で一蹴するも、ザニスは意味ありげな言葉を吐く。

 

「そんなことの為にリリを、【ソーマ・ファミリア】の構成員を……ベル様たちを今回の騒動に巻き込んだのですか……!」

 

「そんなこととは心外だ。私はソーマ様の作る神酒(さけ)が欲しい、金も女も欲しい、もっと美味いものだって食べたい。体を満たすこの世のありとあらゆる快楽を(むさぼ)りたい!!」

 

 今まで平静を装っていたザニスであったが、本性を露にし監獄の檻に向かって蹴り放った。ザニスの蹴撃によって檻は変形する。

 

「俺はこの【ファミリア】が好きだ。悪事にいくら手を染めようが主神からは何も咎められもしない。あの趣味に没頭する野郎(かみ)の邪魔さえしなければ、好き放題できる。最高の環境だ」

 

「地が出ていますよ」

 

「おっと」

 

 リリの指摘を受けてザニスは平静を取り戻し、檻から足を離す。

 その時だった

 

「警報の音……敵襲だと?」

 

 突如、鐘の音が響き渡る。そして激しい金属音が鳴り響き始めた為、ザニスはこれが敵襲であるということを理解する。

 

「チャンドラ!! チャンドラ!! いないのか!? 何が起きているのか報告しろ!!」

 

 ザニスは地上へと続く階段の上にいるドワーフの男に向かって叫ぶ。

 

「自分の目で見に行けばいいだろが。その足は飾りか」

 

「御託はいい。何があった?」

 

(ねずみ)の侵入を許していたらしい。所属はバラバラの連中で、幼い女神もいるそうだ」

 

 チャンドラと呼ばれた短い髪と(ひげ)生やしたドワーフは面倒くさがりながら報告した。

 

「侵入者たちは今どこに?」

 

「倉庫一帯の広場で今も戦っている」

 

「そうか。それでは駆除することにしよう。私が指揮を取る」

 

「約束が違います!? ヘスティア様たちには危害を加えないと言ったはずではないですか!!」

 

「あちらが自ら攻めてきたのだ。身にかかる火の粉は振り払わねばならない」

 

 ヘスティアたちが自分を助けに来たと知ったリリは、指揮を取りに戦いの場に行こうとするザニスを止めようとする。だがザニスはリリの言葉に耳を貸すことなどなかった。

 

「ではリリが説得します!! 引き取るように説き伏せてみせます!! だから……」

 

「駄目だ。大事な仲間(・・・・・)を危険な場所にはやれん。相手の狙いもお前だろう」

 

「約束を違えるのならリリはあなたに協力しない!!」

 

「では仕方がない。私がくすねておいた神酒を1滴、お前に飲ませてやろう」

 

 なんとかしてザニス引き止めようとしたリリ。だが神酒を1滴やるというザニス言葉を聞いた途端、リリは言葉を失った。

 

「神酒欲しさにお前は従順な下僕になる。喜んで私の願いを聞き入れてくれるだろう」

 

 かつてリリは神酒を口にしたことがある。そして神酒の虜となり、神酒を手に入れる為に冒険者のサポーターとなった。しかし冒険者から酷く扱われ続け、神酒の酔いが覚めたリリは神酒を手に入れることを諦め、【ファミリア】から抜け出しとある老夫婦が経営する花屋で働き、平穏に生きることに決めた。だがその平穏な日々も神酒に取り憑かれた団員たちによって壊された。リリの働いていた店に【ファミリア】が押し入り、リリの金を奪った。それも老夫婦の店を打ち壊して。

 それまでリリに優しくしてくれた老夫婦もこの1件でリリを汚物を見るような目で追い出した。そしてリリは冒険者を忌み嫌い、この世界に絶望しリリは盗みに手を出すことになったのである。

 

(リリは!! リリは!! リリはどうしてこんなに弱いのですか!? みんなが私の為に戦ってくれているというのに!!)

 

 ヘスティアたちが自分を助けようとしているのに、神酒を1滴くれるというザニスの言葉でリリは何も言い返すことができないどころか、神酒が欲しいという欲求がちらついた。リリは両手の掌から血が出る程、牢獄の檻を握りしめ自分の心の弱さを呪った。

 その時だった

 

「な、何だ!?」

 

 突如外から凄まじい轟音が響き渡り、それと同時に倉庫内に凄まじい地響きが発生し天井から塵が落ちてくる。そして先程まで響いていた金属音が一切聞こえなくなる。

 

「チャンドラ!! アーデを見張っていろ!!」

 

 ただ事ではないと判断したザニスはチャンドラにリリの見張りを任せ、階段を登り戦いの場へと向かって行った。

 

(い、一体上で何が起きているのですか……!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザニスは管理塔のある最上階にある主神の部屋を入った。凄まじい震動があったにも関わらず、机の上で酒作りの作業をしているソーマがいたが、ザニスはそのまま無視し戦場の様子を見る為にバルコニーへと出た。

 

「なっ……!?」

 

 戦場を目にしたザニスは目の前の光景に驚きのあまり絶句していた。なぜならそこには巨大なクレーターが発生しており、自分の味方はおろか敵までもが腰を抜かしていたのだから。

 

「お前がリリを拐った奴だな?」

 

 そしてそのクレーターの真ん中には(ハイパー)死ぬ気モードとなったツナがバルコニーにいるザニスを見上げ、そう告げたのであった。

 

 

 

 

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