ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
時は少し遡る。ツナたちはリリが捕らわれている酒蔵の近くまでやって来ていた。救出メンバーはツナ、ヘスティア、ナァーザ、ミアハ、ヴェルフ、そしてベルたちを
「準備はいいかい?」
「ああ。問題ない」
ヘスティアが最終確認について尋ねると
「おい!! 頭燃えてるぞ!!」
【タケミカヅチ・ファミリア】のメンバーの図体のいいヒューマンの男が慌てふためく。
この男の名はカシマ・桜花。【
「どどどど、どうしよう!!」
「は、早く水を!!」
小柄な黒髪のショートヘアーの少女と、凛とした黒髪ポニーテールの少女も桜花と同じく慌てふためく。
小柄の少女の名はヒタチ・千草。【タケミカヅチ・ファミリア】に所属するLv.1の団員である。内気で気弱な所もあるが芯は強い。実は桜花に好意を寄せている。
黒髪ポニーテールの少女の名はヤマト・命。【絶†影】の二つ名を持つ、Lv.2の冒険者である。真面目で義理堅く、誰に対しても礼儀正しい性格の持ち主である。主神であるタケミカヅチに好意を寄せている。
この3人とはベルたちと
「これは俺の力だ……」
頭が燃える人間を見て驚くのは仕方がないが、流石のツナも何度も説明するのは面倒くさいと感じてしまっていた。
「多重人格……?」
「違う」
「それよりも本当にこの先にリリスケがいるんですか?」
「ああ。ヘルメスが突き止めた。間違いない」
「よく見つけられたな」
このオラリオはこの世界で最も栄えている都市。その中で1人の人間をたった3日で見つけ出すことができたことにツナは少し驚いていた。
「【ヘルメス・ファミリア】は情報収集能力に長けている。奴らにかかればこれくらいのことは雑作もない」
「そうか……」
ミアハから【ヘルメス・ファミリア】のことを聞いたツナは、自分のことを怪しまれれば、自分が異世界の人間だということを気づかされる可能性が出て来ると理解した。
「ミアハ。君が当初の作戦通り万が一の為、ここで待機していてくれ」
「了解した」
「行こう。一刻も早くサポーター君を助け出すんだ」
そしてリリに捕らわれている酒蔵へと突撃するツナたち。事前に【ヘルメス・ファミリア】から得ていた情報通り、酒蔵には【ソーマ・ファミリア】の団員のほとんどが集まっていた。
「おらぁ!!」
「どけー!!」
ヴェルフと桜花が前衛にて戦い、襲いかかる敵を次々に蹴散らしていく。
「はぁ!!」
中衛は命とツナ。命は日本刀による峰打ちで、ツナは最低限の動きだけで敵を鎮静化させていく。
そして後衛では前衛で戦っているヴェルフと桜花、中衛で戦っている命とツナを、千草が弓矢で、ナァーザがボウガンで援護していた。二人の後ろには戦いに巻き込まれないようにヘスティアが戦いの様子を見守っていた。
「不味いな……」
だがツナはすぐに気づいてしまう。実力は劣ってはいないものの敵の数が減らないことに。そしてこのままいけばヴェルフたちの体力が消耗し、負けるのはこちらだということに。
「がっ……!?」
「大男!!」
ツナの予見した通り、あまりの敵の多さに体力が消耗し、桜花が隙を突かれて敵の蹴りを受け倒れる。すぐさまヴェルフが桜花の元に向かう為、敵を蹴り飛ばした。
他のメンバーも疲労を隠せない様子であり、後衛の千草とナァーザは段々と少なくなっていく矢を見て、焦りの表情を見せ始めた。ヘスティアも戦況が悪いことを察し、苦渋の表情を浮かべていた。
「ったく。手間取らせやがって。アーデの為にこんなことをやらされるなんてよ」
「元はとは言えばてめぇらがリリスケを拐ったの原因だろうが!!」
「リリスケ? ああ。アーデのことか。あいつのせいでこんなことをする羽目になったんだ。こっちは金を稼がないといけないってのによ」
「てめぇ!!」
リリのことよりも金の稼ぐことにしか頭にない男にヴェルフは怒りを露にする。
「ヘスティアの話以上の酷さだな。酒に溺れて人としての尊厳すら失ったか」
「何とでも言え。そんなことよりも俺は神酒が飲みたいんだ。カモとしての価値すら無くなったアーデを護ったところではした金にすらない。はっきり言って迷惑だ。本当に死んでればこんなことしなくても良かったのによ」
ツナの言葉を聞いても男は怒りを露にするどころか、金のことにしか頭になかった。他の団員もこの男と同じ考えなのか、面倒くさそうな表情をしており、誰も異を唱える者はいなかった。
神酒を求めることしか頭にない団員たちを見て、ヴェルフたちは怒りを通り越して恐怖心を覚えていた。だがそんな中でツナだけがゆっくりと歩みを進めて行く。
「駄目だ!! 綱吉君!!」
ツナの意図に気づいたヘスティアがツナに向かって叫ぶも、ツナの歩みが止まることはなかった。
そしてヴェルフと桜花の前に立つと、ツナの額の炎が晴の炎へと変化する。
「【
ツナは右腕の拳を地面へと叩きつけた。すると地面に巨大なクレーターと凄まじい轟音が発生する。そして攻撃の余波で凄まじい震動が発生した。
(は……?)
ツナが発生させたクレーターを見て敵はおろか味方までもが腰を抜かしていた。今、起きた光景をヴェルフは頭で処理することができないでいた。
「もういい」
地面にめり込んだ拳を引き抜くと、目の前で腰を抜かしている団員たちの方へ視線を移した。
ツナは決意する。リリを【ソーマ・ファミリア】に奪われるくらいなら、自分の正体がバレることになっても構わないと。
するとバルコニーから騒ぎを聞きつけたザニスがやって来る。地面に発生したクレーターを見て、衝撃を受けていた。
「お前がリリを拐った奴だな?」
事前にリリを手に入れようと接触したことも、ザニスが【ソーマ・ファミリア】を牛耳っていることは【ヘルメス・ファミリア】から情報を得たヘスティアに聞いて知っている。そしてザニスの身体的特徴なども。
「な、何をしているお前たち!! さっさとやれ!! 相手は1人だぞ!!」
ザニスは団員たちに命令を出す。しかし誰も返事をするどころか、腰を抜かしたまま動くことすらできなかった。
団員たちは先程の一撃でツナとの力量の差を見せつけられ、あまりの恐怖に動くことすらできなくなっていた。そしてその恐怖は神酒の魅了を覚ます程の圧倒的な恐怖であった。今の団員たちにあるのは恐怖と、リリを追い詰めたことでとんでもない化け物の逆鱗に触れてしまったことへの後悔であった。
「リリを解放しろ。そうすれば何もせず引き上げる。もし断るならどんな手を使ってでもリリを奪い返す」
「ひっ……!?」
力を行使することを決意したツナであったが、それでもまだ平和的に解決しようという思いは残っており、ザニスに対して交換条件を出した。ツナの圧力に気圧され、悲鳴を上げた。
その時だった
「これは……!?」
ここで牢獄に捕らわれていたはずのリリがバルコニーに現れた。そして今起きている現状を見て、衝撃を隠せないでいた。
「く、来るな!!」
「あっ……!?」
ザニスはリリの背後に移動するとリリを抱えると、持っていたナイフをリリの首元へ突きつけた。
「こいつの命がどうなってもいいのか!?」
リリを失えば大金を得られる
「いい加減にしろ!!」
それを見てツナは怒りに頂点に達し、大量の炎が暴風のごとく放たれる。
「そこまでして金が欲しいのかお前は!!」
「ひぃ!!」
人質を取ったことでこちらが優勢だと思い込んでザニスであったが、それが完全に悪手であったと理解させられた。
「忠告を無視したのはそっちだ!! 覚悟はできているんだろうな!?」
(綱吉様が怒っている……!?)
リリは激怒するツナを見て衝撃を隠せないでいた。まだ短い付き合いではあるが、リリはツナの人となりを理解している。ベルと同じくお人好しで、凄まじい力を持っているがその力で他人を見下したり、屈服させようとは決してしない温厚な人物だということを。
「ま、待て!! 他派閥同士の抗争は禁止されている!! こんなことすればお前もタダで済まないぞ!!」
なんとかこの状況を打破しようと、ザニスは自分たちが抗争を仕掛けたことを棚に上げてツナを脅す。
「だからどうした!? ここでリリを失うよりはマシだ!! それにこれ以上リリを不幸にするっていうなら俺が【ソーマ・ファミリア】をぶっ壊してやる!!」
だがザニスの交渉はツナの怒りをさらにヒートアップさせるしかなかった。
「わ、悪かった!! なら手を組まないか!? いい儲け話があるんだ!!
今度は
ツナは空中へ飛ばされたザニスを追って、炎を逆噴射させて空中へと飛んだ。
「むやみに人を傷つけたことを後悔しろ!!」
「た、助け……ガハッ!?」
命乞いをしようとするザニスの言葉を遮って、ツナはザニスの上から顔面に右ストレートが叩き込んだ。そしてザニスは空中から凄まじい勢いで落下し、バルコニーを突き破って地面に叩きつけられたのだった。