ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
ツナの作戦を決行することを決めたリリ。
「問題はその作戦を成功させる方法ですが……」
「どうしようか……」
「お、いたいた」
「ヴェルフ?」
「ヴェルフ様?」
すると大剣を持ったヴェルフが現れた。ヴェルフがここに来たことに対しツナとリリは驚く。
「ヘスティア様からここで修行してるって聞いてな」
「何の用ですかヴェルフ様? 悪いですがリリたちは今、
「そんな冷たいこと言うなよリリスケ。
「え!?」
「まさかヴェルフ様……!?」
「ああ。【ヘファイストス・ファミリア】を脱退して【ヘスティア・ファミリア】に
右手の親指を自身に向け、爽やかな笑みを浮かべながらヴェルフはそう言い放った。
「もしかして俺たちの為に……!?」
「おう。昨日のお前の言葉を聞いて決めたんだ」
「え?」
「目の前で大切な仲間を失ったら死んでも死にきれねぇ、だっけか? お前は自分の力を知られたくないと思ってるのに、リリスケを助ける為に躊躇いもなくその意地を捨てた。なら俺も
「ヴェルフ……ありがとう」
自分たちの方が圧倒的に不利な状況にも関わらず、味方になってくれたヴェルフにツナは礼を言う。
「それにお前の言葉を聞いて心動かされたのは俺だけじゃないぜ」
「私もいます」
すると今度は【タケミカヅチ・ファミリア】の命がツナたちの目の前にやって来た。
「まさか命様も!?」
「はい。死地に追いやったことへの償いを、まだあなた方に返せておりません。故に自分も【タケミカヅチ・ファミリア】から【ヘスティア・ファミリア】に
「ほ、本当にいいの?」
「はい。ただ自分はヴェルフ殿と違って1年間だけの在籍になります。短い間ではありますが、皆様の為に尽力を尽くす所存。どうかよろしくお願いいたします」
命は右足の膝を地面につけ、頭を下げて自分の覚悟を示す。
「つー訳だ。俺たちも作戦会議に加わってもいいよな」
「うん。勿論だよ」
「それで? 何か作戦は思いついたのか?」
「ええ。綱吉様が考案した作戦を、どう成功させるか考えていたところです」
「どんな作戦なんだ?」
「それは……」
そう聞くヴェルフにリリは
「なんと……」
「おいおい……一か八かの賭けじゃねぇか……」
「はい。ですが成功すれば盤面をひっくり返すことができます」
「確かにそうだが……というかツナ。お前はそれでいいのかよ? 失敗したらベルは【アポロン・ファミリア】の手に落ちるんだぞ」
「もしもの時は俺がなんとかする。けど、俺はこの
「はぁ!?」
「ど、どうしてですか!?」
「ちょっと色々あってね……とにかく俺がいなくなった後、俺の力無しで戦わないといけなくなるし、俺の力ばかりに頼ってばかりじゃ、この先みんなが戦えなくなるかもしれない。だから俺は基本的に表立っては戦わない。自分勝手かもしれないけどみんなの為なんだ」
ツナは自分が主力として戦わない理由を説明する。自分の国に帰ることを無理に止めることは出来ず、またツナの言い分も理解できる為、ヴェルフと命はツナにこれ以上何か言うことはしなかった。
「とりあえず戦ってみようぜ。まず自分たちがどんな力を持ってるかお互い理解してねぇと、まともに連携も取れねぇ。それに戦ってみれば作戦を成功させる為の方法が見つかるかもしれないからな」
「ヴェルフ殿の意見に自分も同意です。まずは互いのことを知らねば何も始まりません。それに短い期間とはいえ、戦えば己の実力を少しでも上げることができます」
「そうですね。綱吉様、ヴェルフ様と命様と戦ってもらえますか? 私は皆様の戦いを見て作戦を成功させる為の案を考えてみます」
「わかった」
ツナはポケットから27と書かれた手袋を取り出して両手に装備して、
「死ぬ気でかかってこい」
(す、すげぇ……)
(つ、強い……)
ツナと対峙するヴェルフと命。ツナが実力者であることは昨日の一件で知っていた。だがそれでもこうして対峙したことで、二人はツナの強さを改めて実感した。
そしてヴェルフは大剣を構え、命は鞘から刀を解き放って、戦闘体勢に入る。
「ヴェルフ殿。隙を作ってもらえますか?」
命は唇からの動きで作戦を読まれないよう左手で口元で覆い、ヴェルフに向かって小声でそう言った。ヴェルフは命の意図を察し、黙ったまま首を縦に振った。
「おおおおおお!!」
刀を頭上に振りかぶった状態で構え、ヴェルフはそのままツナに向かって行く。
この構えは上段の構え。そのまま振り下ろす動作だけで相手を切れるため、最速で攻撃することが可能。そして、刀のリーチを最も活かせる構えである。
「悪くない太刀筋だ」
(う、動かねぇ!!)
ヴェルフはそのまま思い切り大剣を振り下ろす。しかし自身の放った渾身の唐竹はツナの右手によって受け止められる。
「力を上手く使いこなせていないな。【ランクアップ】した影響か?」
「っ!?」
ツナの超直感によってヴェルフの本質が見抜かれる。たった1度の攻撃で自身のことを見透かされたヴェルフは動揺を隠せずにいた。
【ランクアップ】するとその急激な変化によって感覚がついていかなくなる。そのため【ランクアップ】によって成長した力をフルに使いこなせないのである。しかしこれはヴェルフだけの話でなく、【ランクアップ】した冒険者全てに起こる現象である。この感覚のズレは鍛練によって無くすことができる。
(気配を隠すのが上手いな)
前方のいたはずの命がいないことに気づいたツナは気配を探るも、命の気配を感じられない。
すると命が音もなくツナの背後に現れ、そこから攻撃を仕掛ける。
(刀がない!?)
攻撃に移る際の命の殺気を感知し、ツナは即座に後方を振り向くが、命は刀を持っていない。そして命がツナに向かって縦拳を放った。驚きつつもツナは命の縦拳を左手の掌で受け止める。
命の在籍している【タケミカヅチ・ファミリア】の主神であるタケミカヅチは武術を司る神。故に命はタケミカヅチから武術も叩き込まれている。
「ヴェルフ殿!!」
「おう!!」
ヴェルフは命の意図に気づくと持っていた大剣から手離し、地を蹴って空中へと飛んだ。
「はぁ!!」
命はそのままツナに抱き付くと、そのままツナの体勢を崩した。
(そういうことか)
体が傾いた瞬間、ツナは空中にある刀に右手を伸ばすヴェルフの姿が視界に映ったと同時に2人の作戦を理解した。
最初にヴェルフが攻撃を仕掛けて目隠しになっている間、命は気配を消しツナの後方から奇襲する。そう思わせツナの頭上に自身の刀をあらかじめ放っておき、ツナの動きを封じ込める。そして空中からヴェルフが命の刀を使って攻撃するという作戦であった。
(いい連携だな)
ツナは2人の連携を心の中で称えると同時に額の炎と瞳の色が黄色へと変化する。そして晴の炎を纏った大剣を上空へと放つ。大剣は凄まじい勢いで上空へと飛んでいく。
(う、嘘だろ!?)
(なんという腕力!?)
凄まじい勢いで上空に飛んだ大剣は、空中にある命の刀にぶつかり弾き飛ばされた。大剣を小石を投げるかのようなスピードで投げ飛ばしたことに、ヴェルフと命は驚きを禁じ得なかった。
ツナは晴の炎の特性である活性を利用し、大剣の速度を活性化させることで、大剣を弾丸並の速度で飛ばしたのである。
大剣を投げ終えたツナは両手の掌を地面に置き、地面に激突するのを防ぐ。
「これは!?」
ツナと命の周囲に生えていた草が急激に伸び始める。それが自身に向かってくるのに驚きつつも、命はツナから両手を離しその場から後退し、ツナは草に呑まれていく。
晴の活性の力によって急激に草を成長させたのだ。すると草の中からツナが飛び出し命の方へ向かっていく。命は即座に戦闘体勢に入り、ツナに向かって掌底を繰り出した。
(消えた!?)
だが命の掌底がツナに当たると同時に、ツナが霧のように霧散する。
伸びた草木に隠れている間、ツナは霧の炎の特徴である構築によって自分自身の幻覚を構築。草の中から飛び出した事で、命はこれが幻覚だと気づかず迎撃したのである。
そして
(もらった!!)
命が手刀をつきつけられている間、まだ空中にいたヴェルフは地面に落下する前に枝を蹴って加速し、背後からツナに右ストレートを放とうとする。
しかしヴェルフの気配を感じたツナは後方を振り向き、それと同時に額の炎と瞳の色が青色へ変化する。そしてツナは右手を薙ぎ払うと、その炎は空中にいるヴェルフへ飛んでいく。
(か、体が!?)
反射的に顔を両腕で覆ったヴェルフであったが、何故か自身の体が空中で止まっていることに気づいた。
ツナは炎で攻撃したと思わせ、雨属性の炎の特徴である鎮静を利用する事でヴェルフの動きを鈍化させたのだ。
「悪くない連携だった」
ツナは鎮静で鈍化したヴェルフの左腕を掴むと、そのまま地面に降ろす。そして炎を大空の属性に戻した瞬間、ヴェルフを覆っていた雨の炎も消えた。
【
「だが2人とも【ランクアップ】した事で力を完全に使いこなせていない。まずはその力を使いこなせるにならないと【アポロン・ファミリア】には太刀打ちできない。だが使いこなせるようになればもっと高度な連携ができるようになるはずだ」
(2人のLv.2相手に全くの余裕……)
(これが59階層から生きて帰った冒険者の力か……)
2人はツナを倒す為に全力で挑んだ。その一方でツナは余裕を崩さす、息一つ乱れていない。命とヴェルフは自分たちとツナの実力の差を痛感した。
「なぁツナ」
「何だ?」
「ヘスティア様から聞いたんだが……ベルは今、都市外でお前の師匠と共に修行してるんだよな?」
「ああ。それがどうかしたか?」
「その修行ってのは……厳しいのか?」
「厳しいという言葉で片付けられるようなものじゃないな……何の修行をしているかまではわからないが、恐らく何度も死にかけているだろう。最悪の場合、
「「なっ!?」」
まさかそこまでの修行をしているとは思っていなかったのか、ヴェルフと命は驚愕する。
「確かにあいつの修行は滅茶苦茶だが、それでも乗り越える事が出来れば急激な成長が出来る。俺はベルなら乗り越えられると信じている。今頃ベルも死ぬ気で修行しているはずだ」
ミノタウロスとの戦いを見ていたツナは知っている、ベルであればリボーンの修行を乗り越えられることを。そして確信していた。きっとベルは世界を救う英雄になるということを。
「だったら加減しないでくれツナ」
「何?」
「いくらお前が強いと言っても、攻撃してこないってわかっちまったら意味がねぇ。これじゃ死ぬ気とは言えねぇよ」
「自分も同じ意見です。実戦で自分の格上の敵と遭遇し、攻撃してこないなんてことはありえません。ベル殿が死にかけてまで強くなろうとしているのなら、自分たちもベル殿と同じく死ぬ気にならねば」
「……本気か?」
「ああ!! 遠慮なくやってくれ!!」
「殺すつもりでやって下さい、沢田殿!!」
「……わかった」
ヴェルフと命の覚悟を感じたツナは、心を鬼にすることを決めた。
するとツナから暴風のごとき炎が解き放たれる。そのあまりに強い炎に対し、ヴェルフと命は両足に力を入れ、吹き飛ばされないようにするのが精一杯だった。
「いくぞ」