ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
それから翌日。ついにシュリーム古城跡地へと向かう日となった。
「ベル君、綱吉君。頑張ってくれ、応援してるからね」
「はい」
「うん」
現在ベルとツナは都市門の前にてヘスティアとリボーンに見送られていた。
シュリーム古城跡地までは馬車で向かうことになっている。すでにヴェルフたちは先行しシュリーム古城跡地に到着している為、一緒ではない。
そして今回の戦いはオラリオ中に設置された神の鏡にて
「死ぬ気でやれよベル。もし負けたら俺がぶっ殺すからな」
「ひっ!?」
「こんな時くらい普通に送り出せないのか君は!!」
リボーンは銃口を向けながらドスの効いた声でそう言い、ベルは悲鳴を上げる。こんな時にベルを脅すリボーンに対しヘスティアはツッコミを入れる。
。
そして馬車が出発する時間になった。
「それじゃ、いってきます」
ベルがそう言い2人は門番に都市外へ出る為の通行証を見せ、門の外へと出て行った。
馬車に揺られること1日。時刻は夜、ベルとツナはシュリーム古城跡地の近くに到着する。すでにヴェルフと命、そして助っ人であるリューたちが待機している。3人はキャンプを設置しており命は鍛練、ヴェルフは武器の整備、リューは目を閉じたまま立っていた。
「よ、待ってたぜ」
「沢田殿から聞きました、都市外にて修行をしていたようですね」
「で、修行の成果の方はどうなんだ? ちゃんと強くなったんだろ?」
「うん。それはそうなんだけど……」
「「?」」
「実は……」
ベルが言いにくそうな表情をした事にヴェルフと命を疑問符を浮かべるも、ベルは覚悟を決め修行の内容について話す。
「そ、それは本当なのですか!?」
「どう考えてもありえねぇだろ!!」
「それが嘘じゃないんだ、俺も確認したから」
ベルの修行の内容を聞き、信じられないといった表情を見せるヴェルフと命であったが、ツナも嘘ではないということを証明する。それを聞き、とてもベルとツナが嘘をつくとは思えなかった為、二人は信じる他なかった。
「そういえばツナから聞いたんだけど、ヴェルフたちも修行したんだよね?」
「ああ。お陰で少しだがステイタスを上げられた」
「それに【ランクアップ】した器を完全に自分の物にすることができました」
ベルがヴェルフと命に尋ねると、2人は自信をもって修行の成果を話した。
「といっても相手は【アポロン・ファミリア】。油断はできません」
「勝つ為にはツナの考えた作戦に賭けるしかない。成功するかどうかはリリスケ次第だが……リリスケは大丈夫なのか?」
「それは明日にならないとわからない。今はリリを信じるしかないよ」
「そうか……そうだよな」
同じ【ファミリア】であるリリはこの場にはいなかったが、何故かそのことについて誰も言及することはなかった。
その後、ヴェルフはベルの武器の整備を。命は鍛練を再開する。
「リュー」
「沢田さん」
ツナは目を閉じたまま立っているリューの元に訪れる。リューはツナに話しかけられ、目を開けてツナの方に視線を向ける。
「本当に来てくれたんだね」
「神ヘルメスに頼まれたとはいえ、【アポロン・ファミリア】のやり方が許せないのは私も同じです」
「ありがとう」
「礼を言うのはこの戦いに勝ってからにして下さい。それにすでに戦いは始まっている」
「え? どういうこと?」
「
「え!? 大丈夫だったの!?」
「問題ありません。全て撃退しました」
(流石Lv.4……)
冒険者から退いたとはいえ、リューが数多の死線を乗り越えたLv.4の冒険者だということをツナは改めて実感する。
「じゃあ今も?」
「ええ。襲撃が来ないように気配を探っています」
「見張り、代わろうか?」
「これくらいは問題ありません。それよりも明日の【アポロン・ファミリア】との戦いに勝つにはアーデさんとあなたがキーマンとなる。万全を期すべきだ」
「作戦のことは聞いたの?」
「ええ、あの2人から。随分と無茶苦茶な作戦を思いついたものですが、そのくらいやらねば勝てない相手ですし、何よりこれはクラネルさんがやらなければ意味がない」
「そっか、ごめんね。作戦のこと伝えなくて」
「結果的にではありますがそれで正解です。もし酒場で話していたら、客を通じて作戦が【アポロン・ファミリア】にバレてしまう可能性だって充分に有り得ましたから」
「そっか……」
「そういえば酒場で思い出しましたが、あなたと一緒にいたあのリボーンという赤ん坊は何者ですか?」
「え……!?」
あの騒動があってからリボーンの正体が気になっていたが仕事中であった為、中々聞くことができなかった。そのため、リューは余裕のある今聞くことにした。
「あの身のこなしといい急所を正確に捉える技術。あれは普通の人間の業ではありません。世界最強かどうかは知りませんが、殺し屋と名乗っていたのも嘘ではないと私は感じました」
「そ、それは……」
「まさかとは思いますが……彼は【
「ち、違うよ!! あ……でもリューの言ってることもあながち間違いじゃないっていうか……」
「どういうことですか?」
「リボーンは確かに普通の人間じゃないよ……けどリューの仲間を殺した
「なっ!?」
まさかツナがリボーンの教え子だとは思ってもいなかった為、リューは驚く。
(やけに戦闘慣れしているとは思っていましたが……しかしそれだけでは……)
ツナがLv.1でありながらかなり戦闘慣れしていること関しては納得できたリューであったが、それだけではツナのあの強さは完全に説明できないことも彼女は理解していた。
「あなたは……あなたたちは一体、何者なんですか?」
「ごめん……それは言えないんだ」
「……そうですか」
「いいの? もしかしたら俺が
「短い間ですが、あなたがそんな嘘をつける人間でないことぐらいは理解しています。それに公に正体を明かせないのは私も同じですから」
リューはギルドから指名手配されている。正体を明かせないという意味ではツナと同じ。ならこれ以上の詮索はすべきではないだろう。
「後はクラネルさんが敵の団長に勝てるかどうかですか……」
「そのことなんだけど……」
「なっ!?」
そう言うとツナはベルの受けた修行内容について話すと、リューは目を見開きながら驚いた。
「あ、ありえない!! いくら彼が特別だと言ってもこの短期間で……!?」
「リボーンがベルを鍛えたんだ」
「彼が……しかしいくら何でもたった7日間の修行でそんなことが……!?」
「リボーンならできるんだ。ただ前にも言ったかもしれないけど、リボーンの修行はあまりにも過酷過ぎて死にかける程なんだ……実際ベルもトラウマになる程だったし……」
(シルがいなくて良かった……)
ツナの言葉を聞いてリューの脳裏にシルの姿が浮かぶと同時に安堵した。
実はシルはベルに好意を抱いている。よく弁当を作ってベルにあげるのがその証拠である。
豊穣の女主人の店員の中ではおしとやかなシルではあるが、怒らせたらとてつもなく恐ろしい為、リューたちはどんなことがあってもシルを怒らせてはいけないということを心に決めている。
リューと話を終えたツナは武器の整備をしているヴェルフの元を訪れた。
「随分と力入ってるね」
「当たり前だろ、相手はあの【アポロン・ファミリア】だからな。それと魔剣も打った。時間がなかったから2振りしか打てなかったが、少しでも勝率を上げるには打てる手は打っとかねぇとな」
「え……でもヴェルフって魔剣を打たないって決めてたんじゃなかったっけ?」
「椿から聞いたのか?」
「うん。理由は聞いてないけど……ただ自分よりも強力な魔剣が打てるってことくらいは……」
なぜ魔剣を打たないと決めていたヴェルフが魔剣を打ったのか気になったが、ツナは気を遣ってあえて聞くことはしなかった。
「俺は魔剣が嫌いなんだ」
「え?」
ツナの心情を察したヴェルフは魔剣を打たない理由を語り始めた。
「俺の打つ魔剣はクロッゾの魔剣って言ってな。普通の魔剣と比べて何倍も強力な力を持つんだ」
「クロッゾ?」
「今は没落した鍛冶貴族のことさ。そして俺の家名でもある」
「え!? ヴェルフって貴族なの!?」
「もう縁は切ったけどな。俺の先祖。初代クロッゾはその昔、
「精霊……」
精霊と聞きツナは59階層にいたあの精霊を思い出す。だがヴェルフの話を聞く限り、全ての精霊があのような邪悪な存在でないと感じた。
「だが初代の血を引いてはいても、精霊の力を継ぐ者はしばらくいなかった。だが数世代前のクロッゾが
「え? 何で?」
「王国は魔剣を戦争の道具に使ったんだ。魔剣のお陰でその王国は戦争で勝ち続けた。その功績もあってクロッゾは貴族の地位を手に入れ好き放題し始めた。鍛冶師の誇りを忘れてな」
「力に溺れたんだね」
「そういうことだ。だが魔剣の力に溺れた王国とクロッゾはその報いを受けることになった」
「報い?」
「魔剣でエルフと精霊の住んでいた土地を破壊しちまったんだ。この出来事のせいでエルフは王国を恨み、精霊はクロッゾを恨んだ。挙げ句の果てに魔剣を作成する力まで失ったんだ」
「もしかして怒った精霊に力を奪われた?」
「おそらくな……それ以降、クロッゾは魔剣を打てなくなり、魔剣の力に頼っていた王国は戦争で惨敗。戦争に負けた事でその責任を王国に押し付けられ、クロッゾは没落した」
「でも精霊の力を失ったんなら、ヴェルフは何でクロッゾの魔剣を打てるの?」
「それは俺にもわからねぇ。けど俺に魔剣を打てる才能があるとわかると、俺の家族は魔剣を打てと言ってきた。没落したクロッゾの栄光を取り戻す為にな」
「それってヴェルフの力を利用して、また好き放題したいっていう事だよね」
「ああ、だから俺は国を出てこのオラリオにやって来た。けどこのオラリオでも俺がクロッゾの魔剣を打てると知って近付いてくる奴らばかりだった」
「椿が言ってたよ、魔剣の力に頼り過ぎて死ぬ冒険者も少なくないって」
「その通りだ。どんなに強力な魔剣でも使い続ければ砕けちまう。俺から言わせればそんなのは武器じゃねぇ。武器は使い手の半身だ、使い手がどんな窮地に立たされたとしても武器だけは使い手を裏切っちゃならねぇ」
「だから魔剣が嫌いなんだね」
「……俺は魔剣を嫌うあまり、どんなことがあっても魔剣は打たないと決めた。ヘファイストス様から意地と仲間を秤にかけるのは止めなさいって言われてたのにな。けどリリスケを助ける為、迷いなく意地を捨てたお前を見て決めたんだ、仲間を助ける為に魔剣を打とうってな」
「なんかごめん……ヴェルフがそこまで覚悟してたのに……」
ヴェルフの覚悟を知り、ツナは申し訳ない気持ちになった。力があるのにも関わらず自分の力を隠し、
「お前の考えは間違ってねぇよ。強い奴の力に縋ってばかりじゃ強くなれねぇし、何よりそんなのは魔剣の力に溺れた連中と同じだ。それにもしもの時はちゃんと力を使ってるんだから、堂々としとけ」
「……ありがとう」
なんか面白味のない話になりました。ヴェルフの過去を話す機会がなかったのでここで書きたかったんです。
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