ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)81 錯綜(コンフューズド)

 

 

 

 

 

 

 ついに戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まる。

 

「な、何だ!?」

 

 そしてそれとほぼ同時にシュリーム古城跡地全域に凄まじい轟音が響き渡る。轟音を聞き城の中にいた団員たちは何が起きたのかと慌てふためく。

 

「こ、これは!?」

 

 団員たちは城を出て一体何が起きたかを確認する。すると団員たちの視界に城を覆っている城壁が抉られているという、信じられない光景が広がっていた。

 

「信じらんねぇ! あいつら攻めて来たぞ!!」

 

 外の見張りをしていた小人族(パルゥム)の少年が慌てて団員たちの元へと戻って来た

 この少年の名はルアン・エスベル。【アポロン・ファミリア】に所属するLv.1の冒険者であり、酒場でベルたちを挑発し喧騒を起こさせた人物でもある。

 将来の夢はフィンのような小人族(パルゥム)になるのが夢であるらしいが、実際は口先だけでフィンのようになるどころか何も為してはいない。それ故【ファミリア】内でも雑用扱いされ、小馬鹿にされている。

 

「も、もしかしたら……いや間違いねぇ!! クロッゾの魔剣だ!! 伝説の魔剣を持ち出して、この城を落とそうとしてやがる!!」

 

 見張りをしていたルアンが状況を報告する。クロッゾの魔剣という単語を聞き団員たちは驚愕すると同情にあの城壁を抉ることができた理由を理解する。

 

「うわぁああああああああ!!」

 

 すると再び魔剣が放たれた事で今度は城壁の上段が破壊され、城壁の上にいた団員たちは吹き飛ばされる。その光景を見たルアンは絶叫しながら城内へと逃げ込む。

 

「状況を説明しろ!! 状況はどうなっている!?」

 

「ヒュアキントスの命令だ!! 50人出撃して相手を倒しにいけ!!」

 

「50!?」

 

 城内で何が起きたわからず、慌てふためく団員たちに対してルアンが報告する。そして50という単語を聞いて団員たちは驚愕する。

 現在この場にいる【アポロン・ファミリア】の団員は全部で110名。つまりほぼ半数の団員を動員させるということである。団員たちが驚愕するのも当然だった。

 

「半端な数じゃ近寄る前にあの魔剣に吹き飛ばされちまう!! 敵は10人もいないんだ、さっさと倒して戻ってくればいいだろ!! 早く行けよ!!」

 

「……止むをえまい!! 出るぞ!!」

 

 ルアンの報告に納得せざるを得ず、50人の団員たちは魔剣を振るう者の元へと向かう。

 50人の団員が外に出て行った後、ルアンも同じように団員たちの後を追った。

 するとルアンの視界からは城の出口に1羽と鳥が地面に止まっている姿が見えた。しかしルアンは気に留めずそのまま走り去って行く。その際、ズボンのポケットからくしゃくしゃになった1枚の羊皮紙が落ちるも、ルアンはそれに気づくことなく進んで行った。

 団員たちがいなくなった後、鳥はルアンの落とした羊皮紙の前に移動する。すると鳥は羊皮紙を足で掴み、そのまま城の入り口へと戻る。

 

(侵入成功だな)

 

 鳥の正体は霧の炎で鳥に変身していたツナだった。ツナは入り口に入ると、今度は霧の炎の力で【アポロン・ファミリア】の団員の姿に変化する。

 この城へ侵入するにはまず城壁にある門を通るか城壁を越えるかの二択しかない。しかし当然門と城壁には【アポロン・ファミリア】の団員が侵入されないよう見張りが就いている。だがツナであれば空中からの侵入もできる。とは言えそのままの姿では敵に発見される上に、自分の存在が知られてしまう。そこでツナは戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まると同時に霧の炎の力で鳥に変身し、上空から潜入したのである。鳥であれば上空を飛んでいたとしても何ら不思議ではないし、それが幻覚だと見破られない限りは気に留めることもない。

 

「成る程な」

 

 ツナはルアンが落とした紙を広げる。そこには城の構造、回復薬(ポーション)や武器が保管されている場所や、団員の配置がわかりやすい図解で描かれていた。

 

「よく調べられている……流石だな、リリ(・・)

 

 ここで何故かツナの口からリリの名前が出る。

 あのルアンは本物ではなく、リリの魔法である【シンダー・エラ】によってルアンに変身したリリなのだ。

実は【アポロン・ファミリア】がオラリオを経つ前にこっそりルアンを誘拐。その後、リリがルアンに変身し、すり替わったのである。

 条件つきとはいえ、他者に変身することができる魔法は非常に稀有。その上、ルアンの口調や仕草を完璧にトレースしたリリの演技力やルアンが小馬鹿にされていた存在であった事も含め、誰もルアンが偽物だということに気づく者はいなかった。現在、本物のルアンはオラリオのとある倉庫の中で拘束され、ミアハの監視下に置かれている。

 リリがルアンに変身していること、ツナが鳥になって城に侵入することは事前の打ち合わせで決めていた。その為すぐにお互いの正体に気づくことができたのだ。

 

「さて……」

 

 ツナは羊皮紙に描かれた回復薬(ポーション)や武器の保管庫に向かう。

 ただでさえ戦力差がある上、回復されたり武器を調達されるのは流石に厄介極まりない。少しでも戦力を落とす為にルアンに変身したリリが戦場を乱している間、回復薬(ポーション)や武器を破壊するのが今回の戦いにおけるツナの目的の1つだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、リューの元へと向かった団員たちは。

 

「き、貴様!! 同胞(エルフ)でありながら、よりによって忌まわしき魔剣を手にするなど恥を知れ!!」

 

「同胞の里が焼かれたことを知らないのか!!」

 

 リューを逃がさないよう囲んでいる。そんな中、【アポロン・ファミリア】に所属しているエルフたちはリューを非難していた。

 

「恥を知るのはあなた達の方だ。神アポロンと同じく、己の欲望のまま力を行使することしかできない野蛮人共め」

 

「アポロン様を愚弄するか!!」

 

「貴様!! 生きて帰れると思うな!!」

 

「恥知らずのエルフがアポロン様の名を語るな!!」

 

(やはり沢田さんの情報通り……しかし全員を残すのは難しいですね……)

 

 リューの発言を聞きアポロンを崇拝する者たちがリューに罵詈雑言を浴びせる。だがそんな罵詈雑言を気にせず、団員たちを見回しながら何かを狙っていた。

 

(ですが沢田さんが任務を完了するまで時間を稼がなければ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。命は。

 

(沢田殿の方が早い!!)

 

 命は城壁にいる団員から弓矢による総攻撃を受けていた。しかし命は降り注ぐ雨の矢の中を掻い潜りながら、自分に襲いかかる矢を華麗な剣捌きによって斬り裂いていく。

 戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まるまでの間、矢よりも速く動くことのできるツナと戦っていた経験が活き、命の目には雨のように降り注ぐ矢がスローモーションに見えていた。

 

「グハッ!!」

 

「ガァア!?」

 

 城壁まで走り切ると命は壁を蹴り、上空に飛ぶ。そして城壁の上にいる弓使い(アーチャー)に向かって剣を薙ぎ払う。峰打ちによる右薙で団員たちは気絶し、命は城壁に降り立った。

 

「この!!」

 

「待て!! 同士討ちになるぞ!!」

 

 城壁に降り立った命を弓使い(アーチャー)が狙おうとしたが、反対方向にいる味方に当たってしまうことを恐れた女性の団員が攻撃を止める。

 

「はぁ!!」

 

「ゴハッ……!?」

 

 命は刀を素早く納刀し、男の団員の腹部に肘鉄を喰らわせる。そして両手で団員の右手首を掴んだ。

 

「おおおおおおおお!!」

 

 すると命は男を掴んだままその場でグルグルと回り始めた。ある程度回転を掛け、命は反対側にいた者たちに向かって男を投げ飛ばした。

 

「グフォ!?」

 

 Lv.2の腕力によって凄まじい勢いで投げ飛ばされた団員が反対側にいた団員に直撃し、倒れる。そこから連鎖しドミノ倒しのように団員が倒れていく。

 城壁に近づく者たちを中へ入れさせないよう横一列に並んでいた為、城壁に登られてしまった場合、目の前に敵がいた場合を除き攻撃が出来ない。何故なら遠距離攻撃をした場合、味方に当たり同士討ちになる可能性があり、迂闊に攻撃ができないからだ。命はその状況を上手く利用したのである。

 命はそのまま城壁から飛び降りて城壁の内側へと侵入すると、そのまま城に向かって走って行く。

 

【掛けまくも(かしこ)き。いかなるものも打ち破る我が武神(かみ)よ】」

 

「敵だ!! 敵がこっちに向かっているぞ!!」

 

 命は城に向かいながら詠唱を始める。ルアンに変身したリリが再び騒ぎ始めると大勢の団員たちが城から出て命に向かって来る。

 

「【尊き天よりの導きよ。卑小のこの身に巍然(ぎぜん)たる御身の神力(しんりょく)を。救え浄化の光、破邪の刃。払え平定の太刀、征伐の霊剣(れいおう)

 

 襲いかかる団員たちの猛攻を命は紙一重で躱しながらも詠唱を続けていく。

 

「【今ここに我が()において招来する。天より(いた)り、地を()べよ。神武闘征(しんぶとうせい)

 

 詠唱がほぼ終わり、上空に巨大な魔力の剣、地に複数の同心円が同時に発生する。そして魔力の剣が同心円の中心に突き刺さる。

 

「【フツノミタマ】!!」

 

 命のいる地点から半径50M(メドル)内にいる者たちが全てうつ伏せ、もしくは膝をついて動けなくなる。

 これは命が唯一持つ魔法である【フツノミタマ】。範囲に侵入した者を重力にて動きを封じる事が出来、その最大射程は50M(メドル)。階層主クラスの怪物(モンスター)をも一時的に動きを封じることさえできる強力な魔法だ。

 

「てめぇ正気か……!?」

 

「しばらく自分と付き合ってもらいます……!!」

 

 そして命は敵だけでなく、自分自身をも巻き込んで重力魔法を発生させていた。命の行動に団員の1人は重力で身動きが取れなくなりながらも、命を睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。ルアンに変身したリリは。

 リューと命が騒ぎを起こしている隙にがら空きになった門の前で、門を開閉するレバーを解除していた。そして門が開く。

 

「どうやら上手く化けたようだな、リリスケ」

 

「リリにはこれくらいしか取り柄がないですから」

 

「それよりツナは今どうしてるの?」

 

「すでに城の中に侵入して備蓄の破壊に移っています」

 

「流石だな」

 

「僕たちも行こう」

 

「おう」

 

「はい」

 

 

 

 

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