ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)82 騙す者(トルッファトーレ)

 

 

 

 

 

 

 一方、城内。敵の団長のいる玉座へ続く渡り廊下前。

 

「どうなってるの!? それよりどうして城内に味方がこれだけしかいないの!?」

 

 短髪の赤い髪の人間(ヒューマン)の女性が怒鳴り声を上げた。

 この女性の名はダフネ・ラウロス。【月桂の遁走者(ラウルス・フーガ)】の二つ名を持つLv.2の冒険者で、【アポロン・ファミリア】の指揮官である。

 

「ル、ルアンがヒュアキントスから場外へ出撃するよう、直接命令があったと……」

 

「はぁ!? あの男はそんな指示を出していないわよ!! ここにいるウチが聞いていないもの!!」

 

 団長であるヒュアキントスが命令を出す際、通常は指揮官であるダフネに伝えられ、その指令をダフネが全体に伝える。本来はそれが定石である為、すぐに団員の言い分がダフネはおかしいと気づく。

 

「まさか、ルアンが裏切った……!?」

 

 ダフネは団員の報告からルアンが裏切ったことを察した。

 

「ほ、報告します!!」

 

「今度は何!?」

 

 その直後、一人の団員がダフネの元へ慌てて走って来る。そして片膝をつく姿勢を取った。ダフネが怒りを露にするも、ひとまず団員の報告を聞く。

 

「……ぶ、武器と回復薬(ポーション)が無くなっています!!」

 

「はぁ!? どういうこと!?」

 

「敵のエルフに多くの団員がやられ、回復薬(ポーション)を持ってこいと言われ城に戻ったのですが、どういう訳か保管庫から武器と回復薬(ポーション)が無くなっており……これでは武器と回復薬(ポーション)の補給ができません!!」

 

(まさかこれもルアンの仕業!?)

 

 本来であれば【ヘスティア・ファミリア】が自分たちの武器や回復薬(ポーション)がどこにあるかなど知る術などない。となればその位置を知る者の犯行であるとダフネは考えた。

 だが真実は違う。リリから情報を得ていたツナが【アポロン・ファミリア】の団員に変身し、がら空きになった城の中を移動し武器と回復薬(ポーション)破壊した事など彼女達が知るよしもない。

 

(でもどうやって!? 相手が少数とはいえかなりの数を用意したのよ!!)

 

 今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)の開催期間は3日間。それ故武器や回復薬(ポーション)の予備はそこそこ用意していた。しかし回復薬(ポーション)はともかく、武器は破壊するのしても盗むにしてもかなりの時間がかかる筈。

当然戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まる前に武器や回復薬(ポーション)の確認はしているし、そんなことが起きれば誰かが気かない訳がない。なら武器や回復薬(ポーション)が無くなったのは戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まって以降になる。しかし戦争遊戯(ウォーゲーム)はまだ始まって間もない。ルアンが裏切ったにせよ、こんな短時間で誰にも気づかれずこんな事ができるはずがないのである。

 短時間でそれをこなせたのは嵐の炎によるものである。ツナは武器と回復薬(ポーション)を嵐の炎の特性である分解の力で跡形もなく消滅させ、誰にも気づかれることなく作戦を成功させたのだ。

 

「玉座にカサンドラがいるから、事情を話して連れて来なさい。ウチが言ったって言えばヒュアキントスも納得するはずだから」

 

 一体どうやって武器や回復薬(ポーション)が消えたのか気になっていたが、それは今考えるべき事ではないと判断し、ダフネは団員に指示を与えた。

 

「ダフネ、敵が来てる!! 人間(ヒューマン)2人……大剣を持った赤髪の男と敵大将(リトル・ルーキー)だ!!」

 

「ここで止めるわ、あんたはカサンドラを呼んで。そしてこのことをヒュアキントスに伝えて。私たちはここでベル・クラネルを潰す」

 

「了解しました。ご武運を」

 

 団員はダフネの伝言を伝える為に玉座の間のある塔の階段を登り、ヒュアキントスの元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玉座の間。

 

「ヒュアキントス様!! 伝令です!!」

 

「何だ? 騒々しい」

 

 団員はダフネの指示を伝え、カサンドラを呼び寄せる為に玉座の間に辿り着く。

 玉座の間の玉座には茶色の髪に服に様々なアクセサリーをつけた人間(ヒューマン)の男がふてぶてしい表情で座っていた。

 男の名はヒュアキントス・クリオ。【アポロン・ファミリア】の団長にして、【太陽の光寵童(ポエブス・アポロ)】の異二つ名を持つLv.3の冒険者である。

 酒場での喧騒や【アポロン・ファミリア】が襲撃した際、ベルを一方的に蹂躙した人物でもある。

 

「ベル・クラネルが城に侵入しました!」

 

「何だと!? 一体、何をしていたのだ貴様ら!?」

 

「も、申し訳ございません!!」

 

 団員の報告を聞いたヒュアキントスは玉座から立ち上がり、怒りを露にする。ヒュアキントスの怒気に団員は気圧される。

 

「ですが、ダフネ様たちが今渡り廊下に応戦しておりますので問題ないかと!! それよりも深刻な問題が!!」

 

「まだあるのか!?」

 

「どういう訳か城に保管してあった武器と回復薬(ポーション)が全て無くなっています!!」

 

「何だと!?」

 

(よ、予知夢の通り……)

 

 ヒュアキントスの横に待機していたカサンドラは予知夢の中にあった詩のことを思い出していた。

 

「すでに敵のエルフによってこちら側の戦力に甚大な被害が出ております。現状、回復と武器の補給ができず、このままでは討伐に向かった50人の団員たちが全滅してしまいます!!」

 

「50人だと!? たった1人にそれだけの戦力を向かわせたのか!?」

 

「は、はい……ヒュアキントス様が50人の団員を向かわせるよう、ルアンが伝えてたので命令通りに向かったのですが……」

 

「私はルアンにそのような命令を出していない!!」

 

「えっ……」

 

 ヒュアキントスが伝令を出していないと知り、団員は愕然とする。

 

「ま、まさか……ルアンの奴、裏切ったというのか……!?」

 

「そ、それでは武器や回復薬(ポーション)が無くなったのも、ルアンの仕業……!?」

 

「おのれ……!? アポロン様の愛を受けたにも関わらず、それを仇で返すとは!! 許さん!!」

 

「い、如何いたしましょう!?」

 

「言いたいことは山ほどあるが、今は戦争遊戯(ウォーゲーム)の最中。ルアンのことは後回しだ。ただしルアンが裏切ったことは全員に伝令しておけ!」

 

「りょ、了解しました……それでダフネ様の命令でカサンドラ様を向かわせるように言われたのですが……」

 

「好きにしろ。ただこれ以上の失態は許されん、わかっているな?」

 

「はっ!!」

 

 連れて行く許可をもらった団員はカサンドラと共に玉座の間を後にし、リューのいる戦場に向かう。

 

「申し訳ありません。我々が不甲斐ないばかりに」

 

「い、いえ……それよりも武器や回復薬(ポーション)が無くなったっていうのは本当なんですか?」

 

「本当です。どうやったかわかりませんが……」

 

「や、やっぱり……霧となった大空が蓄えと武器を喰らう……」

 

「え?」

 

 カサンドラが予知夢の1節を呟き、団員は思わず声を漏らす。

 

「す、すいません……こんな時に予知夢のことなんて……」

 

「俺としたことが迂闊だったな。治療師(ヒーラー)である以上、警戒はしていたんだが……」

 

「え……?」

 

 突如、団員の一人称と口調が変わったことにカサンドラは驚く。

 すると団員の全身が藍色の炎の覆われ、炎が晴れるとツナが姿を現す。

 

「お前が一番警戒すべき相手だったとはな」

 

「だ、誰……かっ!?」

 

 カサンドラが大声を出そうとするも、ツナに腹部に拳叩き込まれた事でなす術もなく気絶する。

 

「まさかこの世界にもいるとはな。予知能力がを持つ奴が……」

 

 ツナの脳裏には【ジッリョネロファミリー】のボスにして、元【虹の赤ん坊(アルコバレーノ)】のボスでもあったユニの姿が浮かぶ。ユニは戦闘能力こそないが、未来を見通す巫女(シャーマン)としての力を持っていたからだ。

 ツナは倒れたカサンドラを運び、そのまま下へと降りていく。渡り廊下へと続く道には【アポロン・ファミリア】の団員たちが倒れている。ツナが玉座の間までに配置されていた【アポロン・ファミリア】の団員を全て気絶させたのだ。彼らはまさか敵がここにいるとは思わなかった為にカサンドラと同じくなす術もなく気絶させられていた。

 そして階段を登ってくる音が聞こえて来たのを察知し、ツナは即座に戦闘体勢を取る。

 

「ツナ!!」

 

「ベルか」

 

 だがやって来たのは敵ではなくベルだった。敵ではないと知り、ツナは安堵し警戒を解く。

 

「ヴェルフと共に行動していることは知っていたが、無事に来れたんだな」

 

「うん。今は渡り廊下でヴェルフが指揮官のダフネさんと戦ってる」

 

「そうか……今玉座の間にはヒュアキントスと何人かの団員がいる。この通り治療師(ヒーラー)の誘拐には成功した。後は作戦通り倒すだけだ」

 

「ありがとう。行って来る」

 

 そう言い、ベルは階段を登りヒュアキントスのいる玉座の間へと向かって行く。

 

「さて、次は……」

 

 

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