ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
話はリボーンとの修行をしていた時に遡る。
「はぁ……はぁ……」
ベルは視界の悪い森の中でリボーンとスパーリングをしていた。背丈が小さく隠れやすい上に、森の中をとてつもない速さで動くリボーンの姿を捉えることは至難の業であり、ベルはなす術もなく一方的にやられ続ける。
「人に攻撃することを迷ってやがるな。そんな覚悟で勝てると思ってんのか?」
「それは……」
「いいか、お前の今回戦う相手は人間だ。人間は
「っ!?」
リボーンの言葉でベルは思い出す。身勝手な都合で抗争を仕掛けてきた【アポロン・ファミリア】のことを。
「気負い過ぎて修行に影響が出るかもしれねえと考えて言わないでおこうと思ってたが、やはり言っておいた方がいいみてえだな。ヘスティアの命運について」
「神様!? 神様がどうかしたんですか!?」
「今回の
「え……!?」
ヘスティアが天界に強制送還されると知り、ベルは衝撃のあまり立ちつくしてしまう。
「お前がそのままならヘスティアは強制送還されるだろう。お前のその甘さのせいでな」
「っ!?」
実際のところ、リボーンはツナがいれば負けることはないとわかっているが、そのことを忘れさせる為に敢えてベルに追い討ちをかける。その思惑通りベルは修行のハードさも相まってすっかりそのことを忘れ、自分の情けなさを痛感していた。
「【アポロン・ファミリア】の団員は100名以上、圧倒的な戦力差だ。なのにお前がそんな甘い考えのまま戦ってたら勝てる訳がねぇ。そして確実に後悔する、もっと死ぬ気で戦っておけばってな」
リボーンのその言葉を聞き、ベルの脳裏にはヘスティアの姿が浮かんでいた。
冒険者になりたい一心でオラリオに来たベルだったが、現実はどこの【ファミリア】もベルを入団させてすらくれず、オラリオに来て早々に挫折しかけていた。そんなベルに話しかけ、自分を【ファミリア】に勧誘し入団させてくれたのがヘスティアだった。故にヘスティアはベルにとってとても大切な存在なのである。
「いいかベル、勝てるかどうかなんて言ってんじゃねぇぞ? お前は【アポロン・ファミリア】に絶対に勝たなきゃなんねぇんだ」
リボーンがそう言うと、ベルのナイフを握る力が強くなった。
「リボーンさん……ありがとうございます。お陰で目が覚めました」
「……覚悟が決まったようだな、それでいい」
ベルがナイフを構える。だが先程までとは違い、その目付きは違っていた。一転して覚悟を決めたベルを見てリボーンの口角が上がる。
「常に神経を張り巡らせろ、一瞬たりとも気を抜くんじゃねぇ。戦うことだけに没頭にしろ。勝つ以外のことは考えるんじゃねぇ。わかったな?」
「はいっ!!」
そして現在に至る。
(これで機動力は低下した……)
ヒュアキントスの機動力を奪い人体急所を打ち抜いたベルだが、まだ緊張を解かずナイフを構え、神経を張り巡らせていた。
一方その頃、ツナたちは反アポロン派の団員たちを味方につけることに成功。反アポロン派の団員たちの雄叫びがシュリーム古城跡地全体に響き渡る。しかし戦いに集中している今のベルには全く雄叫びは聞こえておらず、目の前の倒すべき相手だけを見据えていた。
(次は……)
ベルはヒュアキントスの周囲をグルグルと回り始める。機動力を奪ったとはいえ油断せず、ヒュアキントスの呼吸をズラす為に隙を伺っているのである。
(ば、馬鹿な!?)
ヒュアキントスは目を見開き驚愕する。何故ならベルの姿を自身の目で完全に追いきれなくなったからだ。
(ま、まさか……!?)
ヒュアキントスはすぐに理解する。ベルがここまで飛躍的な成長を遂げた理由を。
(こ、この短期間でまた【ランクアップ】したというのか……!?)
ベルがミノタウロスを倒し【ランクアップ】し、前回の抗争からもそこまでの日数は経っていない。しかし今、ヒュアキントスはベルの姿をほとんど捉えられていない。この現状はベルが再び【ランクアップ】したということ以外に証明のしようがない。
そしてヒュアキントスの予想通りベルは【ランクアップ】している。彼の持つ【
ヒュアキントスが驚愕する中、ベルはヒュアキントスの背後に移動した。殺気を感じたヒュアキントスは右腕による遠心力を加えた裏拳を放った。
「っ!?」
それに対し、ベルはヘスティア・ナイフで右手の甲を突き刺す事で反撃しようとした。だがヒュアキントスはすぐに寸止めし、手の甲にナイフが刺さるのをなんとか回避する。
だが
「ガハッ!?」
ナイフが刺さるのを避けた事でヒュアキントスに隙が生まれ、ベルの左ストレートがみぞおちにクリーンヒットする。
「ゴホォ!!」
そこからベルを地を蹴って空中に移動するとヒュアキントスの顔面に真空飛び膝蹴りを喰らわせた。
「ゴフッ……!?」
顔面に蹴りを喰らった事で一瞬視界を奪われたヒュアキントスの懐に入ると、今までのお返しと言わんばかりの怒涛のラッシュを喰らわせる。
(な、何なんだ!? こいつは本当にあのベル・クラネルなのか!?)
怒涛のラッシュを喰らい続けるヒュアキントスは目の前にいる人物が、本当にあのベルなのかどうか信じられなかった。
黄昏の館
「あの動き……間違いない……」
「だがありえるのか……いくら彼が特別だと言ってもこの短期間で【ランクアップ】するなど……」
ミノタウロスとの戦いを見ていたフィンとリヴェリアは、ベルの動きがあの時の動きとは明らかに違っていることに気づき、それと同時に【ランクアップ】したのだと察し驚愕する。
「それも驚きじゃが……あの人体急所を的確に打ち抜く技術には驚いたのう……」
「しかも適当に打ち込んでいるように見えて、1度攻めた場所を容赦なく狙って攻撃している……」
ガレスとティオネはヒュアキントスに対しベルが容赦のないやり方でダメージを与えていることに驚愕していた。
「なんか……別人みたい……」
「うん……」
ベルがミノタウロスと戦っていた時、とにかくがむしゃらに戦っていた。だが今のベルにはその時の必死さが消え、まるで暗殺者のような戦い方になっていることにティオネとアイズは少しだけ恐怖を覚えていた。
(何がどうなってやがる!? 一体、兎野郎は何をしやがったんだ!?)
ベートはベルがこの短期間で【ランクアップ】しただけでなく、卓越した戦闘技術を獲得している理由が全くわからず、苛立ちを覚えていた。
シュリーム古城跡地
「このっ……!!」
ベルの猛ラッシュを受ける中、ヒュアキントスがベルの両手首を掴んでクロスさせることで、なんとかベルの動きを封じ込めた。
「これで動け……がっ!?」
不敵な笑みを浮かべるヒュアキントスだったが、ベルは両肩の関節を外しそのままヒュアキントスの額に頭突きを喰らわせた。
ベルはそのまま飛び引くと、外した肩の関節を元に戻した。
(両肩の関節を外して頭突きだと……!? この男、一体どういう神経をしているんだ……!?)
意識が朦朧とする中、ヒュアキントスはベルの先程取った戦法に対し畏怖の念を覚えていた。
「……降参して下さい」
「き、貴様……!?」
勝負が見えたベルはヒュアキントスに降参を勧める。しかしプライドの高いヒュアキントスはここまでやられてもなお、降参することはなかった。
するとヒュアキントスの視界にふとある光景が映る。それは背後からベルの動きを止めようと、痛みに耐えながら少しずつベルに近づく団員の姿が。
「降参などするか!! 私はアポロン様の眷属だ!! 降参するくらいなら死んだ方がマシだ!!」
背後の団員の存在を気づかせまいと、ヒュアキントスはわざと大声で叫んだ。
「【我が名は愛、光の寵児。我が太陽にこの身を捧ぐ】!!」
ヒュアキントスは右手を掲げ、魔法の詠唱を唱え始める。
それを好機と見たか、ベルの真後ろにまで近づいた団員が背後からベルの動きを封じようと両手を伸ばした。
「何!?」
だがベルはバク宙で回避し、団員の背後へと移動。まさか気づかれていると思っていなかった団員は驚きを隠せなかった。
そして団員の背中に移動したベルは団員の背中に前蹴りを放つ。団員はそのままヒュアキントスのいる所まで蹴り飛ばされた。
(しまっ……!?)
今まで受けたダメージと右足の痛みのせいでヒュアキントスは蹴り飛ばされた団員を躱すこともできず、思い切りぶつかってしまう。それが原因で詠唱が途切れ、
(や、奴がいない……!?)
「がっ!?」
するとヒュアキントスの頭上からヘスティア・ナイフと牛若丸弐式が投擲され、ヒュアキントスの両腕を掠め、少量の血が流れる。
「【ファイアボルト】」
それを見たベルは右足と左手の掌を天にかざし、左手の掌から雷と化した炎が放たれベルは急降下する。
「ガハッ……!!」
そしてベルはその推進力を利用し、ヒュアキントスの頭上に向かって渾身の踵落としを喰らわせた。魔法によって加速された踵落としはとてつもなく重く、ヒュアキントスはついに意識を失うのだった。