ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
時はリボーンがウラノスの祭壇に訪れた時に遡る。
「よう。お前がウラノスか?」
「あ、赤ん坊……!?」
暗がりから突然姿を現したリボーンを見て、フェルズが驚く。
「いや!! お前は一体何者だ!?」
本来入れる者が限られているこの祭壇において、侵入したのがまさかの喋る赤ん坊という奇抜な存在であったことに大きな衝撃を受けていたフェルズであったが、すぐに警戒体勢に入る。
「俺の名はリボーン。ある人物の情報を知りたくてこの祭壇にやって来た」
「ある人物?」
「沢田綱吉という男を知っているか?」
「「っ!?」」
「どうやら知ってるようだな」
沢田綱吉という名前が出て来た瞬間、フェルズとウラノスは驚くと同時にリボーンがツナと同じ世界からやって来た人物であろうことを察し、同時にリボーンも2人の反応からツナのことを知っていると察する。
「お前は異世界から来た人間ということでいいのか?」
「そのことも知ってんのか。なら話が早ぇな、その通りだ。俺はあいつに会う為にこの世界にやって来た」
「それはこの世界とお前の世界を自由に行き来する手段を確立したということか?」
「まぁな、それで? あいつはどこにいる?」
「答える前に聞かせろ。一体どうやってこの祭壇に辿り着いた?」
「大したことじゃねぇ。お前はこのオラリオにおいて一番の重要神物。ならもしもの時に備えて抜け道を用意してると思ったからな……俺はそいつを見つけただけだ。流石に時間はかかったがな」
(馬鹿げたことを簡単に言ってくれる……)
リボーンのようにウラノスが抜け道を用意している事に行き着く者は別に珍しくもない。しかし、その抜け道を見つけ、ましてやこの祭壇まで単独でやって来た者などオラリオが創設されてから2000年間、誰もいない。そんなとんでもないことを当たり前のように言ってのけるリボーンに、フェルズは流石に畏怖の念を感じた。
「疑問に答えてくれたことを感謝する。それで、沢田綱吉の居場所だが……沢田綱吉は今【ヘスティア・ファミリア】という【ファミリア】に所属している」
「そうか」
「こちらから沢田綱吉に連絡しよう、迎えが来たとな」
ウラノスは
「その必要はねぇ、すぐ元の世界に帰るつもりはねぇからな」
「何?」
「ダンジョンの攻略と黒竜の討伐。それがお前らの悲願らしいな」
「……何が言いたい」
「俺たちが手伝ってやろうか?」
「何だと?」
既に元の世界に帰れる手段が確立しているにも関わらず、何故ダンジョン攻略と黒竜の討伐の協力をリボーンが申し出たのか、その意図がウラノスにはわからかった。
「特に黒竜は15年前に歴代最強の【ファミリア】と呼ばれた【ゼウス・ファミリア】、【ヘラ・ファミリア】ですら討伐できなかったと聞いた。次に黒竜に討伐できなければ、人類にもう後はない。お前からすればどんな手を使ってでも討伐したいはずだろ?」
「何が目的だ?」
「使命の為だ」
「使命?」
「あいつは【ボンゴレファミリー】っていう組織の次期後継者候補だ。俺には、あいつを立派なボスにする使命がある」
「【ボンゴレファミリー】……ジョットの作った自警団か……」
「ツナから聞いたのか?」
「いいや、今から数百年前ジョットという男がこのオラリオにやって来た。そして、当時治安の悪かったオラリオを救ってくれたのだ」
(……まさか
流石のリボーンもこの話は予想外だったのか、内心驚いていた。
「人類を滅亡させ得る程の黒竜を倒すことが出来れば、あいつは更に強くなれる。修行相手にはもってこいだ」
「修行相手だと!? 黒竜を舐めすぎだ!! 確かに沢田綱吉は強い。だが黒竜は生半可な相手ではない!! それにこれは我々の世界の問題!! 彼を巻き込む訳にはいかない!!」
あまりにもとんでもないことをしれっと言ってのけるリボーンにフェルズは糾弾する。
「彼が死んでしまえば、周囲の人間たちも悲しむだけでなく【ボンゴレファミリー】だって崩壊する!! 自警団が無くなれば弱き民たちはどうするというんだ!?」
「……【ボンゴレファミリー】はもう自警団じゃねぇ。富と権力を求めるマフィアになっちまった」
「「マフィア?」」
「その言い方はこっちじゃ通じなさそうだな。お前らにわかるように言うなら
「なっ!?」
「っ!?」
まさか自警団だった【ボンゴレ】が犯罪組織になっているとは思っておらず、フェルズとウラノスは驚愕する。
「ジョットの後継者となった2代目が、組織を一新したんだ。そこから富や権力を追い求めた結果、【ボンゴレ】は裏社会最強のマフィアになった。といってもこっちの世界で暗躍した
「ならお前は沢田綱吉を
「その通りだ、現【ボンゴレ】のボスである9代目の命令を受けてな。といっても、ツナは【ボンゴレ】のボスになるのを拒み続けてるけどな」
「当たり前だ……彼は犯罪組織のボスになることを望むような男ではない……」
短い付き合いではあるがツナが温厚な人物であることを知るフェルズは、同時にツナが【ボンゴレ】のボスになりたいとは思っていないことを感じていた。
「それでどうする? オラリオの滞在を許可してくれるのなら、ダンジョンの攻略と黒竜の討伐に手を貸してやるぞ」
「こちらの世界の事情に、別の世界の人間を巻き込みたくないのは私も同じだ……だがその頼みを断っても、お前は自分の考えを改めるとは思えん」
「どーだろうな」
ウラノスの言葉に対し、リボーンは口元を緩ませるも、曖昧な返事で答えるだけだった。
「私は戦いの神ではない。だからどう足掻いても、お前を止められないことくらいはわかる」
「それは、オラリオの滞在を認めたっていうことでいいのか?」
「正直不本意だが……そうせざる得ない」
「聡明な判断だぞ。流石このオラリオを創設した神なだけはあるな」
「話は終わりか?」
「ああ。時間を取らせて悪かったな」
オラリオの滞在許可を得ることができたリボーンは、元来た道をそのまま戻って行く。
「これで、本当に良かったのか……?」
「致し方あるまい……それにお前もわかっているはずだ。我々ではどうすることはできないと」
「……」
フェルズは万が一、何が起きてもいいよう決してリボーンから目を離さなかった。だがリボーンには一切隙がなく、もし攻撃を仕掛けていれば必ず殺られていただろうことをフェルズは失った肌で感じていた。
「ウラノス……彼の言っていた事は本当だったのか……?」
「わからぬ。どういう訳か、あの男が嘘をついてるかどうかすらわからなかった」
「何!?」
「だがわざわざそんな嘘をつくためにこの祭壇まで来るとは思えん……奴は本気で、沢田綱吉を強くする為だけに黒竜と戦わせるつもりだろう」
「なんて男だ……」
そして時は現在に戻る。
「つー訳で、お前にはダンジョンの攻略と黒竜を討伐してもらうぞ。勿論その為に俺が徹底的に鍛えてやる。また俺との地獄の日々に逆戻りだな」
「自分で言うな!!」
「「…」」
いつものリボーンの理不尽に対し、ツナはツッコミを入れる。一方で、リボーンがオラリオに残ると言ったその理由を知り、ベルとヘスティアは驚愕のあまり何も言えなくなってしまった。
こうして改めて、オラリオにおけるリボーンとのハチャメチャ生活が始まるのであった。