ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
スタッフの協力もあり、例の部屋に入る方法を見つけたツナとシャクティ。
「……侵入できたな」
「あの2人には感謝しかないな」
そして二人は例の部屋に入る事に成功。誰にも気づかれることもなく表向きスタッフとして働いていた。
一方で協力者であるスタッフ二人は服を着替えさせ、【ガネーシャ・ファミリア】に保護され、手錠をかけた状態で外へ連れ出した。手錠をさせたのは表面上は犯罪者として連れ出す事で周囲に違和感を持たれず、エルドラド・リゾートから安全に脱出させる為。なおかつ万が一のことがあっても【ガネーシャ・ファミリア】が2人を護ることができるようにする為である。
「これからどうするんだ?」
「そうだな……」
ひとまず侵入自体には成功したものの、肝心のテリーの悪事の証拠が入手できなければこの潜入捜査の意味は成さない。ツナはこれからどう動くか尋ねた。シャクティは周囲を見渡しながら、どうやってテリーの悪事の証拠を掴むかを考え始める。
「おいお前たち、突然だが今からゲストが来る。こっちを手伝ってくれ」
だがタイミング悪く他のスタッフに呼ばれてしまい、ツナとシャクティはゲストを持てなす準備の為別の部屋に移動することになってしまった。
移動した部屋ではVIP客や様々な種族の美女、用心棒と思われる
((あれがテリー……))
ゲストを迎える準備をしながら、ツナとシャクティはあのドワーフがテリーであるということを察する。
すると部屋の扉が開かれ、ゲストが入って来る。
(あれは……シルとリュー?)
(なぜあの二人がここに……?)
そのゲストはなんとシルとリューだった。変装してはいたものの、ツナとシャクティは2人にすぐに気づいたが、ここで話しかけて目立つ訳にもいかない為、沈黙を貫く。
ちなみになぜ2人がここまで来られたのかというと、シルとリューはこの部屋にアンナがいると判断し、テリーの目に止まるようカジノで勝ちまくることで自分たちをアピール。その思惑通り、2人はテリーの目に止まる事に成功し、この部屋に呼ばれるに至ったのだ。
だがそんな中でシルが自分たちの方を向き意味ありげな笑みを浮かべ、すぐに視線を元の位置に戻した。
((気づかれた?))
今のシルの笑みを見て、ツナとシャクティは自分たちの正体を見抜いている事に気づいた。
(シル……本当に何者なんだ?)
Lv.3のヒュアキントスですら自分の幻術に気づくことはできなかった。ましてや
「紹介します。今宵初めて我々の店に来られたアリュード・マクシミリアン殿です。お隣におられるのはその夫人のシレーネ殿」
「お初にお目にかかります、皆さん」
「
テリーが他のゲストたちに2人のことを紹介すると、アリュード、シレーネと呼ばれた二人は会釈をしながら挨拶をする。
「そう言えば。ここに来る途中、
「おおっ!! 私も聞きましたぞ!! 何でも遠い異邦の国から
「どうか我々にも見せて頂きたい!!」
リューの言葉を聞いた瞬間、周囲にいるゲストたちが騒ぎ始めた。あまりの醜悪な光景を前にツナとシャクティは強い嫌悪感を覚えていた。
「ガハハハハ!! 皆さんも耳が早い!! ええ、おっしゃる通り新しい愛人として迎え入れたのです。せっかくですから紹介しょう。おい」
テリーが1人のスタッフに呼びかけると、スタッフはドレスを身に纏った亜麻色の髪の少女を連れて来た。
「初め、まして……アンナと申します」
ドレスの裾を両手で摘みながら自己紹介するアンナ。しかし表情は明らかに怯えていた。
(やはり無理やり連れて来られてるな……)
怯えながら自己紹介するアンナを見て、ツナは彼女が自分の意思で来た訳ではないと察する。そんなアンナの姿を見て他の女性たちも同情したのか、暗い表情を浮かべる姿がツナとシャクティの視界に映った。だが明確な証拠がある訳でもない。もしここで行動してしまっては潜入捜査はご破算。それどころか外交問題に発展しかねない為、2人は見て見ぬフリをすることしかできなかった。
「マクシミリアン殿。彼女の顔に何か付いていますかな?」
アンナの姿をじっと見つめるリューに、テリーは違和感を覚える。
「いえ……ただ彼女と似てる娘を知っておりまして」
そう言うとリューは語り出す。自分の知人がとある人物の罠に嵌められ賭博に手を出した挙げ句、自慢の1人の娘を拐われてしまい、その女性の行方を追っているという事を。
(ここに来たのはそういうことだったのか……)
(リオン……やはりお前は変わらないな)
ツナはてっきりリューはシルの付き添いでエルドラド・リゾートに来たものと思っていたが、そこにいるアンナを助ける為なのだということが分かった。
一方でシャクティは冒険者を引退し、賞金首となってもなお弱き者の為に動くリューに少しだけ嬉しさを覚えていた。
「興味深い話ですなぁ、マクシミリアン殿。ちなみに今更ではありますが貴殿は
「ええ、ただの田舎貴族です。融通が利かず道を踏み外した行いを看破できない、頭が固いエルフです」
「どこのどなたかと勘違いされているか存じませんが、どうやらマクシミリアン殿は奥様を差し置いて相当ご執心の様子」
リューの言葉を聞いてもテリーは動じるどころか、余裕の笑みを浮かべていた。
「ならば
「賭博……?」
「そうです。
「いいでしょう。その
テリーは負けない自信があるのか大胆なルールの
そして互いの望むものを賭けた
「おや? この老いぼれが勝ってしまいましたか」
しかし
それも当然。この場にいる
だがそれに気づかない程間抜けでもない。ゲームの最中にテリーがイカサマをしていることには気づいたリューだったが、そのイカサマの内容まではわからない為適切に対処することができず、焦りの表情を浮かべる。
「そういえば、まだ私が勝った時の願いは言っていませんでしたな」
焦っているリューを見てテリーはさらに心理的に追い討ちをかけてくる。
「私が勝った暁にはあなたの伴侶。隣にいる奥様を貸して頂きましょうか」
テリーは勝ちを確信したのかシルの方に視線を向けながら言った。
「お若い奥様をもらわれて羨ましい限り。私も是非、そのおこぼれに預かりたいと思いましてなぁ。何、私が暇な時に晩酌に付き合ってもらうだけです」
テリーはリューの感情を揺さぶる。出来るだけ感情を表に出さないようにはしているが、内心では爆発しそうな怒りを抑えるので必死の状態だった。
「生意気な者や欲に眩んだ者。後はあなたのように正義感に突き動かされる者……私は食い物にしてやりましたよ」
((不味い……))
テリーに挑発に対しリューは言葉を発することこそなかったが、凄まじい殺気を放ち始める。リューの殺気を感じ用心棒は身構え、ツナとシャクティはどうにかしてリューを止めようと画策する。
「貴方」
そんな中、シルが優しい声音でリューの手の甲に左手を置いた。シルの行動によってリューは冷静さを取り戻す。
「皆さん。夫は少々疲れているようです。ですのでここからは代役として私に
「シルッ」
「貴方お願い、自分の行く末は自分の手で決めたいの……貴方のせいにしたくない。
「ふふふっ、ははははは……真に美しいものですなぁ夫婦愛というのは。ええ、約束しましょう奥様」
テリーに約束を取り付けるシル。だが負けると微塵も思っていないテリーは、何の違和感を覚えることもなくシルの要求を呑んだ。
リューはシルを止めようとするも、シルは黙ったまま首を横に振った。その目は覚悟に満ちており、リューはシルにこの
そして今度はシルとテリーの一騎討ちが始まった。
(これは……)
(流れが変わった……)
再び
余裕の笑みを浮かべていたテリーは焦りの表情を浮かべ始め、大量にあった
「ロイヤルストレートフラッシュ」
シルがカードを表にして宣言。まさか自身が負けるとは微塵も思っていなかったテリーは驚きのあまり目を見開いたまま固まってしまう。
「ファウスト!!」
用心棒である
。
「
この場にいる全ての者たちが驚愕する中、シルだけは何事もなかったかのように扇子を広げながら答えた。
「よろしい……彼女にはしばらく暇を出すことにしましょう。思えば、異国ばかり来たばかりで疲れているでしょうからなぁ」
まさかの逆転劇にテリーは怒りを覚えたものの、シルがイカサマを使わずに勝った為渋々アンナを明け渡すことに了承した。
「いや、まだだ」
「何ですかな? このアンナだけではご満足して頂けないと? いやはやマクシミリアン殿はエルフであるのにも関わらず、強欲でいらっしゃる。私はどれほどの愛する者を手放せばいいのでしょう?」
流石に怒りが爆発しそうなテリーだったが、無理やり笑顔を作りながらなんとか言葉を紡ぐ。
「全員だ。あなたが金にものを言わせ奪い取った全ての女性を解放してもらう」
「主人はとても欲張りなんです」
リューは
一方でシルは口元に右手を置いた状態で微笑みながら言い放った。
「調子に乗るなよ、若造……」
ついに堪忍袋の尾が切れたのかテリーはドスの効いた声を発する。
「この俺を敵に回して生きていけると思ったのか!? ギルドが護ってくれるというのなら大間違いだ!!」
プライドをズタズタにされたテリーは大声を上げる。そして右手を上げると用心棒たちがリューとシルたちの周囲を囲み武器を向けた。
「やれ!!」
テリーが命令し用心棒の1人がナイフを取り出すと、ナイフを逆手に持ちそのままリューに向かって振り下ろした。
が、
「がっ!!」
「なっ!?」
用心棒の首筋にツナの手刀が叩きつけられた。用心棒は意識を失い、うつ伏せの状態に倒れた。まさかのスタッフが裏切るという展開にシル以外の者たちは再び驚愕する。
「明らかな殺意。これなら文句はないな?」
「あ、ああ……」
自分が止めようと一歩踏み出した瞬間、すでにツナは用心棒を気絶させていた。まさかツナが真っ先に出るとは思っていなかった為、シャクティは困惑しながらも返答する。
「
「シ、シル!? 何を言って……!?」
シルの口からツナの名前が出てきた事でリューは動揺する。
するとツナとシャクティの体が霧の炎に包まれ、炎が晴れると二人の本来の姿が現れる。
「やれやれ……やはり最初から全てお見通しだったって訳か」