ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)97 (フィアンマ)

 

 

 

 

 

 変身を解き、ツナとシャクティはついにその姿を現した。

 

「お、お前は……戦争遊戯(ウォーゲーム)の!?」

 

 【アポロン・ファミリア】と【ヘスティア・ファミリア】の戦争遊戯(ウォーゲーム)を見ていたテリーは知っていた。幻術で【アポロン・ファミリア】の団員たちを翻弄し、敵を裏切りを誘発させる前例のない展開を起こした張本人であると。

 

「さ、沢田さん!! なぜあなたがここに!?」

 

「潜入捜査だ。こいつの悪事の証拠を掴む為のな」

 

「潜入捜査だと!? ここはギルドですら介入できない治外法権区域!! ここで俺を捕縛できると思っているのか!?」

 

「負けた腹いせに何の罪のない者を殺すことを命令しているんだ。いくらここが治外法権区域とはいえど、今の事実が広まれば充分捕縛はできる。何せここにはたくさんの証人がいる訳だしな」

 

「【象神の杖(アンクーシャ)】……!?」

 

 ツナの言葉に激昂するテリーだったが、赤い髪のカツラを取り素顔を見せたシャクティを見て冷静さを取り戻すと同時に、自分が追い込まれている状況になっていることを理解さぜるを得なかった。

 そして用心棒たちもまさかLv.5の冒険者がここにいるとは微塵も思っていなかった為、明らかに分が悪い事を察した。

 用心棒たちが唖然としている中、シャクティとリューは用心棒たちを徒手空拳のみで一瞬の内に気絶させていく。

 

「テリーに協力した者たちも同罪だ。テリーのイカサマに協力し、罪のない女性たちを巻き込んだのだから。逃げられると思わないことだな」

 

 シャクティはテリーに協力した進行役(ディーラー)やゲストたちを見て言い放った。もう逃げられないとわかり、テリーの協力者たちは放心状態になってしまう。

 

「ファウスト!! ロロ!! 一か八かだ!! あれ(・・)を使え!! 後のことは私がなんとかしてやる!!」

 

 テリーが両隣にいたファウストとロロと呼ばれた人間(ヒューマン)猫人(キャットピープル)に命令した。

 2人も彼と同じく捕まりたくはないらしく、懐からリングを取り出すと2人はリングを右手に嵌めた。

 

「あぁ……ああああああああああ!!」

 

 そしてリングを装備した瞬間、ファウストとロロの体からそれぞれ赤い炎(・・・)青い炎(・・・)が溢れ始める。

 

「な、何あれ……!?」

 

「体から炎が……!?」

 

「まさか、呪武具(カース・ウェポン)か!?」

 

 苦しみながら全身から炎を溢れ出る2人を見てシル、リュー、シャクティは驚愕する。

 呪武具(カース・ウェポン)とは代償を払う代わりに強力な力を得ることができる武器のことである。払う代償自体は呪武具(カース・ウェポン)によって異なるが、主な例としてステイタスの低下や体力の消耗が挙げられる。

 

(馬鹿な……!?)

 

 だがこの場にいる者たちの中で一番驚愕したのはツナだった。なぜなら2人から溢れ出ているのは紛れもない死ぬ気の炎(・・・・・)だったのだから。

 

「そのリングをどこで手に入れた!?」

 

「沢田さん……!?」

 

「っ!?」

 

 ツナがここまで冷静さを欠いて叫ぶ姿を見て、リューとシャクティは驚く。

 しかし苦しみからか2人は返答することすらできず、むしろ(よだれ)を垂らし発狂しながら凄まじい勢いで襲いかかってきた。

 

「「ガハッ!?」」

 

「ば、馬鹿な……!?」

 

 だがツナの拳が2人の腹部に叩き込まれ、体がくの字に曲がると同時に意識を失った。用心棒の中ではこの2人が最高戦力だったにも関わらず、あっさりと倒された事にテリーは衝撃を隠せなかった。そして他の用心棒も2人が一瞬でやられたことで戦意を失う。

 

「くっ!!」

 

 だがテリーはアンナの元へと向かった。ファウストとロロがやられた以上、テリーに残された手段は人質を取って脱出する以外になかった。死に物狂いに襲いかかろうとするテリーを見てアンナは恐れ、目を瞑ることしかできなかった。

 

「がっ!!」

 

「え……!?」

 

 だがテリーの魔の手がアンナに届くことはなかった。なぜならアンナの視界にはテリーの右手首を握り、動きを抑えているツナの姿があったのだから。

 

「終わりだ」

 

(か、体が!?)

 

 ツナの額の炎の色が藍色から青色へと変化する。そして掴んでいたテリーの右手首から雨の炎が流れ、首から下全てが炎に包まれ、雨の炎の鎮静によってテリーの体は動かなくなる。テリーは必死に体を動かそうとするもその体は動くことはなかった。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい……!!」

 

「なっ!?」

 

 アンナの方を向き彼女の無事を確認するツナ。しかしアンナは顔を赤らめうっとりとしており、その光景を見たリューに衝撃が走る。

 

「これでもうお前は終わりだ」

 

「た、助けて……!!」

 

「今までさんざん罪のない女性たちを巻き込んでおいてよく言えたものだな」

 

「た、頼む!! 助けてくれればお前が望む物を何でもやる!!」

 

「お前は言ったな。生意気な者や欲に眩んだ者、正義感に突き動かされる者を食い物にしてやったと。そんな奴の言い分を信じるとでも?」

 

「あ、あれは言葉の綾で……」

 

「そうか」

 

 テリーの言い分を聞いたツナは被害者である女性たちの方を向いた。

 

「こいつはこう言ってるが……本当か?」

 

 ツナは女性たちに尋ねる。しかしテリーを庇う者など誰1人としておらず、沈黙したままだった。

 

「やはりお前を信じる根拠は何もない。捕まって罪を償うんだな」

 

「クッソォオオオオオオオ!!」

 

 完全にどうしようもない事を理解したテリーは絶叫を上げることしかできなかった。

 

「覚えてろ貴様らぁ!! いつか必ずお前たちに復讐してやる!! 覚悟しておけ!!」

 

 ヤケになったテリーは目を血走らせ、嗜虐心を露にした。もう何もできないと頭でわかっていてもその場にいた者たちは皆畏怖する。

 そんな中でシルだけがゆっくりとテリーの方へと向き歩いて行く。

 

「この炎で動けなくさせているんですよね?」

 

「あ、ああ……」

 

「ちょっとこの人に言いたいことがあるので言わせてもらいますね」

 

「お、おい!!」

 

 シルはツナの制止を無視しテリーの耳元に顔を近付ける。そしてテリーにしか聞こえない程度の小声で何かを話す。

 

「あああ……!?」

 

 するとあれだけ逆上していたテリーの顔が一気に真っ青になり、鎮静の影響を受けていない頭が小刻みに震え始める。そしてシルは何事もなかったかのようにテリーから離れる。

 

「もういいですよ。言いたいことは言ったので」

 

「な、何を言ったんだ……?」

 

「知りたいですか?」

 

「い、いや……やっぱりいい……」

 

 あれだけ逆上していたテリーを一瞬で恐怖させた事について尋ねるツナ。しかしシルが意味深な笑みを浮かべ逆に尋ねてきた為、ツナはそれ以上踏み込めなかった。

 その後、シャクティは団員たちを集結させテリーを始めとする協力者たちを逮捕。そして【ガネーシャ・ファミリア】の本拠(ホーム)へと連行されることになった。

 

「待ってくれシャクティ」

 

「どうした?」

 

「そいつに聞きたいことがある。少しだけ時間をくれないか?」

 

「わかった」

 

 シャクティはツナの頼みを了承する。そして縄で縛られ、未だ恐怖の感情に支配されているテリーの方を向いた問いかける。

 

「さっきあの2人が装備していたリング。あれをどこで手に入れた?」

 

「とある女の商人がくれたんだ……試作品だとか言って……」

 

「その商人の名は?」

 

「わ、わからない……し、知っているのはその女とはラキアで出会ったということだけだ……」

 

「……」

 

 声を震わせながらリングのことについてテリーは答える。

 

「もういい……連れて行ってくれ」

 

「わかった」

 

 これ以上聞いても無駄だと悟ったツナは追及することを止めた。そしてテリーは【ガネーシャ・ファミリア】の団員によって連れて行かれる。

 

(やはりいるのか、俺たちの世界の人間が……この世界のどこかに……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界のどこかの森の中。

 

「もう少し……もう少しであなたを蘇らせることができますから……」

 

 森の中で黒髪の人間(ヒューマン)の男が黒い棺桶に頬を擦りつけ、おぞましい笑みを浮かべながら話しかけていた。

 

「それ、止めてくれない? 見てて気持ち悪いんだけど」

 

 近くの木の枝からリングを右手に嵌めた銀髪ロングの人間(ヒューマン)の女が汚物を見るかのように男を見ていた

 

「それよりも本当に上手くいくんだろうな?」

 

「さぁね。こればっかりはやってみないとわからないもの」

 

「成功してもらわねば困る。彼女(・・)が蘇らなければオラリオを崩壊させることができないのだから」

 

「逆に聞くんだけど仮に彼女が復活したとして、本当にオラリオを滅ぼすことができるの?」

 

「できる、彼女さえいれば必ずな。なにせ彼女は私の勝利の女神なのだから」

 

(……本当に上手くいくのかしら?)

 

 彼女と呼ばれる存在に狂信的な男を見て、女性は不安しかなかった。

 

(ま、オラリオの崩壊は私にはどうでもいいから別いいけど。私は自分の作り出した物で楽しみたいだけだしね)

 

 女性は男の目的に興味がないのか、満点の星空が浮かぶ夜空を見上げていた。

 

(それにこの世界(・・・・)にはあの忌々しい掟の番人(・・・・)もいない。じっくりと楽しませてもらうわ)

 

 

 

 

 

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