日々の未来の青春譚 -メビウスアーカイブ-   作:逃げるレッド五号 5式

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14.【海辺の怪 -港湾警備依頼-】

 

 

―――ミライのキヴォトス来訪から凡そ二週間後

 

 

 

D.U.外郭区 中枢市街地

 連邦捜査部(シャーレ)部室(ビル)

  地上区画 本棟併設カフェ

 

 

 

「――カフェの整備も進んでいるのですね」

 

「うん。仕事の合間に少しずつやってるんだ。ただ、設備の配置と包装剥がしはまだまだで…。ごめんね、コーヒーまではいかなくても、お水さえ出せなくて」

 

「いえ、お気になさらず」

 

 シャーレ部室棟の横には、平屋のホール型カフェが連結して建っている。

 外からのアクセスは勿論、上述の造りのため屋外を経由することなく本棟側から直接入退も可能だ。

 外装、内装どちらもモダン風デザインで統一されており、業務利用の回数がゼロなこともあってだろうが、非常に清潔な空間に保たれていた。

 

「……えーっと、それで、リンちゃんの用件は?」

 

 朝9時、未だ客を迎えた経験の無い同カフェで、連邦生徒会の指定外套制服を着たシャーレ顧問教師のミライと、連邦生徒会本部(サンクトゥムタワー)より足を運んできた統括室・首席行政官のリンがテーブル席にて向かい合い座っていた。

 

「本日お伺いしたのは、私たち連邦生徒会(GSC)からのシャーレに対する依頼についてお伝えするためです」

 

「連邦生徒会から…か。内容は?」

 

「特定施設…アカレンガ港の警備依頼となります」

 

 そう言ってリンが席横に置いていたジェラルミンケースを開けて複数枚の用紙を取り出し、それらを真っ新なテーブルの上に並べた。

 どの書類にも、端に連邦生徒会の公式文書であることを示す認証マークが付いている。

 

「アカレンガ港…の、警備依頼?」

 

 眉を顰めミライは聞き返した。

 リンが口にした単語の中に、苦手意識を持つものがあったから…ではない。

 指名依頼だったからでもない。また、それについては特段珍しいものではなくなっている。

 

 ……現在シャーレが何らかの事態に投入できる人的リソースはミライのみ。

 警備を……それも臨海部の大型施設筆頭である“港”の警備を頼む相手ならば、質と量の面でもっと他に良い組織団体があるのでは? ……と思ったが故の、怪訝そうな表情と反応なのである。

 

 この二週間でミライも、一般市民と比べて遜色ないぐらいにはキヴォトスの基礎知識を蓄積させている。この学園都市では複数の学園・企業が共同利用する海上交通網(シーレーン)とそれを支える海洋拠点の防衛を担っているのが、防衛室・ヴァルキューレ海警局・“オデュッセイア海洋高等学校”の三勢力であることも把握している。

 又、防衛室はともかくとして、他二大組織の人員はかなりの数だと記憶している。言うなれば日本における海保と海自であり、海自と評したオデュッセイアに関しては、旧帝国海軍の規模に匹敵するほどだ。

 ()()()()()()()、とミライは目で訴えたのだ。

 

 そんな彼の心情を知ってか知らずか、リンは特に問題無いとする涼しげな表情のまま、気に留めることもなく話を進める。

 

「はい。今回の依頼は、“D.U.アカレンガ区”行政担当からの正式なモノとなります。詳細資料の方は電子版もご用意しています。そちらはメールに添付ファイルでタブレット(“シッテムの箱”)へ送りましたので、内容の再確認の際などにご参照していただければ…」

 

 念の為という事で、ミライはコートの胸裏から“シッテムの箱”を取り出し、この場でメールの受取を確認する。

 起動させたメールアプリには、リンの言っていた通り、添付ファイル付きの新着電子便が届いていた。ご丁寧にも画面内ではアロナがメール文書を頭上に掲げ強調表示してくれている。

 

「……うん、電子版の依頼書類と資料も確かに受け取ってるね。じゃあちょっと内容を読ませてもらうよ」

 

「どうぞ」

 

 【アカレンガ港協働警備依頼】…と題されたそれには、本日より凡そ五日間、同港湾施設とその周辺地域の巡回警邏活動にシャーレの参加を要請する旨が、お役所特有の堅苦しい難解な文言で書かれていた。

 

「―――ぱっと見なら期間・区域指定のパトロール、だね。それにしても、今日からって急だけれど……そのアカレンガ港でこの期間に何かあるのかな? それとも平時の警備体制に何かあったのかい?」

 

 ミライの問いに、リンが小さく首を横に振った。

 

「いえ、現行の警備体制は万全です。どちらかと言うと、シャーレに…先生に頼みたいのはアカレンガ港の警備そのものよりも、依頼期間中に()()()()が万一発生した際の情報提供と事象(有事)対処への協力となります」

 

 怪獣災害、その単語を耳にしたミライの目が鋭いものに変わる。

 

「怪獣災害だって? 何か予兆を見つけたんだね?」

 

 そう尋ねるとリンは無言で肯定の頷きを返した。

 

「……“予兆”、そう呼ぶに値するモノを確認したのは、私たち連邦生徒会ではなく、オデュッセイア海洋高等学校です。一昨日夜のことでした―――」

 

―――『本日20:30頃、我が校“海護部”隷下第32哨戒(パトロール)艦隊がD.U.アカレンガ沖合・北東海域を航行中、同海域を南下する既存の如何なるものにも該当しない未知のエコー及び熱源反応を複数探知(キャッチ)した。その後、同反応群追跡を実施した32艦隊より提供されたサーモ画像等から、我々はこれを非既存特殊生物…即ち“怪獣”と断定した』。

 

 上記報告はオデュッセイア海洋高等学校の生徒会組織“海事統括委員会”が、二日前、日付が変わるか変わらないかの深夜に連邦生徒会・統括室の学園首脳間直通緊急連絡網(ホットライン)へ掛けてきた内容の冒頭部分である。

 

「………なるほど、水棲怪獣の可能性が…」

 

 付随資料を手に取りながら、顎に手を当て思案するミライ。

 

 資料を読み取るに、外見は__サーモ画像の粗さで若干不明瞭だが__爬虫類(トカゲ)の特徴と一部合致している。

 サイズは個体毎に疎らであり、小型(3〜5m)から準大型(25m前後)までと、かなり幅が広かった。

 加えてリンの話では、数十体以上の大きな群れを形成し、それほどまでのサイズに成長するような海棲生物はキヴォトスの海で現在確認されていないという。また、そんなものがいればとっくに見つかっていた筈だとも。

 

 裏で自発的にアロナがシッテム側に送られてきた資料を読み込んで、アーカイブドキュメントの登録怪獣から類似点を持つものを探ってくれてるようだが………確度の高い判別を付けるために必要なデータの絶対量が足りないらしく、頓挫してしまったようだ。

 それでもある程度は候補を絞ったようで、__所要時間数分という超突貫で作られた__暫定予想の一覧表ファイルがタブレット内に出力されていた。あとで確認するとしよう。

 

「件の反応が杞憂だったなら…通常生物の新種、若しくは海底で発生した何らかの大規模な自然現象…であれば良かったのですが。何より…場所が場所でした」

 

 そう言って、リンが机に置かれたままの資料の表題に人差し指を置く。

 

 ―――アカレンガ港。キヴォトス大陸一の巨大複合臨海拠点である。

 先ほどから何度も話題に上がっている、今次警備依頼の対象施設だ。

 

「この探知海域と目と鼻の先にあるD.U.アカレンガ港は観光・物流の両方でキヴォトスを支える一大海洋拠点です。ここが被災してしまう事態になると―――」

 

「―――キヴォトス経済の大動脈の一つが、潰れる」

 

 ミライが代わって懸念の続きを口にした。

 アカレンガ港が如何にキヴォトスにとって重要な場所であるか、彼も当然理解している。

 

 同港アカレンガは先に触れたように、キヴォトスにおいて最大規模且つ唯一の国際戦略級港湾である。

 広大な泊地に数重の防波堤、沿岸灯台、多目的埠頭、漁業組合所、共同魚介市場、海運貿易関連業社の社屋、オデュッセイア陸上分校(分屯基地)、港湾付属簡易飛行場、物資集積所(コンテナターミナル)、臨海貨物・旅客鉄道駅、物流倉庫、海洋研究センター、海水浴場、水族館(アクアワールド)……などから成る、大変大きな寄り合い所帯だ。

 

 これが臨海拠点としての一部機能の喪失ないし全機能が完全失陥した場合、連邦生徒会は傾国相当の打撃を受ける。

 又、それの余波が各学園自治区にまで波及するのも予想できた。これに関してはサンクトゥムタワーの件で残念ながら証明済みである。

 

 ……キヴォトスはその大陸面積と比べて空港の数があまりに少なく、空路よりも海路が大幅に発達している。鉄道網や自動車網の規模は大陸相応だが、それでも物流網の大半は依然として海運に依存していると言ってもいい。

 怪獣による疑似的な海上封鎖が為された場合の影響と損害は天文学的数値に及ぶだろう。

 

 今の連邦生徒会は、“超人”会長の謎の失踪から疲弊し続けており余力は…無い。

 海運依存の物流脱却の改革見通しが立っておらず、次善策等の代替案すら持ち上がってきていない現状、アカレンガ港がやられれば混乱からの立て直しは不可能になると思われた。

 

「……そのような事態だけは避けねばなりません。そこでオデュッセイアは、探知海域とアカレンガ港の中間海域…D.U.行政側に帰属する経済水域一帯に、高性能聴音センサーブイ等で構成された音響探知システムからなる警戒監視網の設置を計画。敷設の許可をこちらに求めてきました」

 

 当然、安保面や資源資金の面からしても拒否する理由がありませんでしたので、監視網敷設の特例許可は昨日緊急開催された行政会議にて即決されました、とリンが最後に補足した。

 

「――もしかして今回の依頼条件にあるこの期間って……」

 

「ええ。先生が予想されてる通り、今次依頼における期間指定は、オデュッセイアの哨戒網設置にこちらが合わせて策定したものです。……監視網が機能し始めれば、ある程度の即応性は担保されると思われます。それまでは――」

 

「――それまでは、“保険”として僕を置く…ということだね」

 

 ()()()専門の集団に属していた人間であるミライを現地に配置し、不測の事態が発生した際には戦闘部隊の全権を移譲しその指揮を取らせる…のは実際理に適っている。

 

「……身も蓋も無い言い方をすると、そのようになってしまいますね。ご気分を害されたのでしたら謝罪します」

 

 対怪獣戦闘を熟知している…勝手(セオリー)を知る者が一人でもいれば、即興(アドリブ)になるとは言えその戦力運用は遥かに改善・効率化されるだろう。

 

「ううん、いいんだ。リンちゃん達の力になれるなら、喜んでこの手を貸すよ」

 

 何せこの超巨大学園都市――キヴォトスは超が付くほどの銃社会である。加えて、都市と市民を守る治安組織は何処も実戦経験が豊富で、その()()自体は整っているのだ。

 

「それにしても、オデュッセイア…の海護部、だっけ。この付随資料の中身を読んでると、かなりの熱量が窺えるんだけど……いや、全然良いコトなんだけどね?」

 

「かの学園自身が管理している公海で好き勝手されてるのが気に食わない、と言う多少の縄張りとメンツの意識もあったのでしょうが…“D.U.外郭区特殊災害”における怪獣(ゴメス)の脅威は他人事ではない、と意見が一致したのでしょう。()()()()()、滅多にありませんから」

 

 リンはそういいながらオデュッセイアの資料に再度目を向ける。

 彼女の口から出た()()()()()、とは学園間における有事情報の早期共有を指している。

 どの学園自治区も、安全保障の観点から他学園に()()をあまり見せたがらない。場合によってはインシデントの経過・対応情報さえ表立って流さない時もある。

 各方面より一定の信頼を得ている筈の連邦生徒会(中央政府)でさえ、これが特に顕著であり基本的に連邦生徒会側から該当学園への一方的な情報発信のみに終始し、「既読スルー」されることが殆どとなっている。統括室の交渉係は泣いていいと思う。

 

「―――ミライ先生への報告が遅れてしまったのは、こちらでの情報の整理に時間が掛かってしまったためです。と言うのも、オデュッセイアから送られてくる提供資料があまりに膨大で……」

 

 ……それ故、リンたちからすれば、今回のオデュッセイアの対応は迅速であると同時に異例中の異例の出来事と言えた。

 

「あの方々、音紋の比較表やサーマル画像の束、艦隊責任者から艦橋要員、果ては機関室員の報告書に至るまで、特にまとめもせずに取り敢えず形になったものからひたすら情報を紙、メール、電話で投げてきたんですよ…

 有力な情報が貰えるのは非常に助かるのですが……そのお陰で統括室、防衛室、調停室は処理がパンクして一時は完全にダウンしてしまい…」

 

 死んだ魚の如き目で虚空へ視線を投げて当時の状態(惨状)を話すリン。

 彼女の様子からして、思い出すのは辛い激務だったのだろう。ミライが労いの言葉を掛ける。

 

「連絡もできないほどだったんだね…お疲れ様。オデュッセイアの子達の動きと言うか焦り様も、分からなくは無いけど…うん。それで、現在の…怪獣の反応の行方は?」

 

 リンはそれに残念ながら…と言うように目を閉じて首を横に振る。

 

「怪獣の群れと思われる反応は、哨戒艦隊に発見されてからもバラけず固まって南下を続け、その凡そ30分後…アカレンガ沖の東部海域上でロストしました。失探したのは、この海域の深部…ウラガ海溝へ潜航されたのが原因と見ています」

 

「そのウラガ海溝…深海を棲家にしてるんだろうね」

 

 机に広げられた海図に載っている、南北に大きく伸びる大海溝は未だオデュッセイアの深海探査の手は一割ほども及んでいない。

 そこを根城にしているのは十分に有り得る。

 

「同じような考えに至ったオデュッセイア海護部の、一部派閥…が自律機雷散布による海上封鎖と窒素(N2)爆雷の集中投射による海溝への先制攻撃からなる積極防衛策を提案したようですが、相手の能力が未知数なこともあって海護司令部側が基本姿勢を受動対応…専守防衛とすることにしてコレを却下したとか」

 

「妥当な判断だったと思うよ」

 

 私もそう思います、とリンも溜め息を一つ溢しながら一枚の依頼契約書をスッと机へ出した。

 

「先生は先程、口頭で快く承諾してくださいましたが…規則は規則ですので、一応こちらの書類にサインを」

 

「分かった。留守中のシャーレの管理は申し訳ないけどお願いするよ。他には何かある?」

 

 ささっとサインをし、用紙を返しながらリンに尋ねる。

 

「いいえ特には。準備が出来次第、即現地入りしていただいて―――あ、待ってください。一点訂正です。

 本案件におけるシャーレと関係各所との連絡役として一名、ヴァルキューレ中央本部から生徒が派遣されるらしく。彼女と共にアカレンガ区へ向かってください」

 

「うん、了解。その子は何時頃にシャーレに?」

 

 リンがスケジュール帳を開いているスマホの画面と見比べながら、袖下の腕時計を見遣る。

 

「時間からして恐らく…そろそろこちらに着く頃だと――」

 

―――ブォンッ! キキィーーーーッ!!!

 

 屋外から聞こえてきた自動車のエンジン音と甲高いブレーキ音によって、リンの言葉は掻き消された。

 

「えっと…あのパトカー、かな?」

「あのパトカー、ですね。恐らく」

 

 一台の__チョロQ(ゼンマイミニカー)を少し引き延ばしかのような__大変コンパクトなヴァルキューレのパトカー、俗に言う“ミニパト”が部室本棟・カフェ前の交通広場のど真ん中で、たった今ダイナミック停車したのがカフェの窓から見えた。

 

 ミニパトをかっ飛ばしてきた警察学生を迎えるためにミライとリンは席を立ち、カフェから出る。

 それはパトカーから生活安全局の制服に袖を通した白髪の警官少女が、慌てた様子で出てきたのと同じタイミングであった。

 

「シャーレ連絡要員として派遣入部されたヴァルキューレの方ですね?」

 

「は、はいっ!シャーレ出向の生安局員は、本官で間違いありません。七神首席行政官!」

 

 彼女は水色混じりの白い三つ編みツインテールを揺らしながら、その表情は緊張で強張っているものの、初々しい模範的敬礼をリンへ返してみせた。

 その所作からして、もしかしたら今年度入学を果たした一年生の新米警官なのかもしれない。

 

「集合予定時刻ギリギリの到着となってしまい、申し訳ありませんでしたっ!」

 

 そこから即座に叩頭せん勢いで今度はミライとリンに頭を下げ声の上擦った謝罪した。

 リンは特に気にしてはいないと言い、ミライは頭を上げるように説いた。

 

「全然時間通りだから気にしないで。僕はヒビノ・ミライ。連邦捜査部シャーレの顧問をさせてもらってる。キミのお名前は?」

 

 自身が名乗っていないことを思い出したのか、わたわたと敬礼の構えを取り所属を詠唱した。

 ……なんというか、どんなことにも一生懸命だが空回りしてしまうタイプの子、なのだろう。だが元気なのは良いことだ。

 

「――ほ…本官はっ、ヴァルキューレ中央本部、生活安全局所属の中務(ナカツカサ)キリノと申します! ヒビノ先生、よっ、よろしくお願い致しますッ!」

 

「うん、こちらこそ。今日から五日間よろしくね、キリノちゃん」

 

 二人の自己紹介が終わったところで、リンが生徒会本部へ戻る旨を伝える。

 

「それではミライ先生、アカレンガ港へ到着されましたら一報ください。本日中にカヤ防衛室長からリモートミーティングを求められると思いますのでそちらもよろしくお願いします。道中お気をつけて」

 

「分かった。それじゃあ…キリノちゃんにアカレンガ港までの運転をお願いすればいいのかな?」

 

「は、はい。局長からもシャーレの先生を全面的にサポートせよと伺っていますので、そのように…。あ、お荷物等ございましたらお申し付けください!」

 

 その後、ミライは捜査部事務室に一度戻り荷物を纏め、シャーレ臨時当番となったキリノのミニパトへと乗り込み、二人はD.U.アカレンガ区を目指し出発した。

 

 

 

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――シャーレ出立から2時間後………

 

 

 

D.U.シラトリ区・アカレンガ区境界地域

 KV高速自動車道(キヴォトス・ハイウェイ)

  自動車専用高架幹道

 

 

 

『―――間も無く、アカレンガ区へ入ります』

 

 カーナビ(カーロケ)のAI音声が車内に響く。

 

「D.U.ってやっぱり広いんだね〜。一つの地区を通るのに1時間だもん」

 

「そうですね、どこの行政区も中堅レベルの学園自治区以上の土地を管理していますから」

 

 午前11時を回った頃。

 ミライはキリノ運転のミニパトで下道、高速と経由してアカレンガ区境界に差し掛かるところであった。

 

SA(サービスエリア)で休憩とかしなくても大丈夫?」

 

「はい! 今のところは休憩無しで問題ありません。日頃の業務の中には長時間のパトロールもありますから…もう慣れっこなんです」

 

 ハンドルを握るキリノの様子はと言えば、シャーレで自己紹介した時と比べて幾分か緊張が取れてきており、今ではほぼ自然体でミライと雑談するまでに改善していた。

 

「そっか。……キリノちゃんは中央本部の…タカマガハラ区の所属って言ってたけど、他の行政区…今通ってきたシラトリ区とか、今回のアカレンガ区とかには行ったりしてるの?」

 

 長時間、車内という一種の閉鎖空間下で他者といる状況で沈黙を貫き続ける、と言うのは、キリノ、ミライの両名にとって精神的・性格的に非常に苦手で気不味いものだった。

 それに加え、元々どちらも社交性に富んでいる人物である。

 打ち解けるまでそう時間は掛からなかった。

 

「えーっと…少し前の新人研修で各D.U.支部を回ったり、車両(パト)による巡回ローテで他地区に行くよう指示されたりもしましたので、今回の任務が初めて…ではありませんね。

 業務外(プライベート)でも何度か、シラトリ区や隣接の“アオバ区”の方へ遊びに行ったりしてます。ただ、休暇の際は専らハイランダーのD.U.環状線を利用してますけど」

 

 本官、食べ歩きが趣味なもので…と、キリノが質問に照れを滲ませながら答える。

 

「じゃあ、アカレンガ区の美味しいものとかも知ってるんだ」

 

 ミライの言葉にキリノは――ええ!もちろんです、と頷きながら話を続ける。

 

「全部を網羅しているワケではありませんが……本官イチオシのグルメは、今回赴く任地でもある、アカレンガ港の鮮魚市場で食べれるゴールドマグロのユッケ丼です。漁港から引き揚げられ一日タレに漬けたゴールドマグロのお刺身とトロトロの卵黄を目の前で丼に盛り付けられるのを見ればもう……とにかく、絶品なんです!」

 

 一瞬だけ垣間見えた、もう後戻りできそうにない(女の子がしちゃいけない)ラインにまでとろけきっていたキリノの表情からして、冗談抜きで本当に美味いのだろう。

 

「――あの、キリノちゃん…?」

 

「はい、どうされましたか?」

 

 だがミライは今の話を聞いて一つ疑問に思ったことがあった。先の表情の件ではない。

 心底申し訳なさそうに、されど遠慮なく彼女へその疑問を投げた。

 

「ここまで聞いてからなんだけど、ゴールドマグロって……何?」

 

 それは彼からしたら率直な疑問であった。

 

「っんえぇ!?」ガクン――!

 

 突然、走行中のミニパトが運転手(キリノ)の奇声と共に、横に大きくブレる――が、すぐに立て直した。

 後方車両からは数回クラクションが鳴らされた。

 

「今の運転は失礼いたしました…。ですがヒビノ先生、えっと、本官の聞き間違いかもしれませんが……ゴールドマグロをご存知ないのですか……?」

 

 ……キヴォトス人からしたら、今のミライの言葉は余程衝撃的だったのだろう。

 キリノが握っていたハンドルの操作を誤りかけ、彼の膝上に置かれ待機状態にあった“シッテムの箱”(アロナ)が唐突に過去最大強度のバイブレーションを起こしたぐらいには。

 

「うん。あ、マグロ自体は知ってるよ。僕もキヴォトスに来る前に何度か食べてたことがあったからね。ただ…そのゴールドマグロっていう品種は見たことも聞いたことも無かったから…」

 

 一応、横の新米婦警ドライバーさんに一部訂正を掛けたが、あまり効果は期待できなさそうである。彼女の目は忙しなく前方と側面…即ちミライを行き来していた。

 

「そ、そうなんですね…ヒビノ先生が外の世界から赴任された方とは聞いておりましたが、まさか外界ではゴールドマグロが食べられていないどころか、存在すらしてないないなんて……」

 

 あんなに美味しいのに…という外界人(地球人)に対する同情又は哀憐の念が籠った声でガックシ嘆くキリノ。

 

「あはは……キリノちゃんの反応からして、とても美味しいマグロなんだろうとは伝わってきてるんだけど…」

 

 ―――ピロン♪ ピロロロロン♪ ピロピロン♪

 

 また、アロナが直接彼にそう言ったわけではないが……

 

 ――おめえにゴールドマグロが如何にすげえ食材なのか教えてやらぁ。まずは読め。

 

 このような心境で送ってきたと思われる、怒涛のアラーム通知を合図にして大量の__ゴールドマグロを取り扱っているネット記事や電子百科事典等の__ページが、タブレット画面を即座に埋め尽くした。

 ミライは生真面目なので、それらの全てに目を通していく。

 

 ゴールドマグロ。

 正式名称を「キヴォトスコンジキマグロ」と言い、その名の通りキヴォトス大陸周辺海域にて漁れる…体全体に金色に反射する謎粒子を覆っている最高峰の食用天然マグロである、とのことで、中身まで黄金に塗れてはいないらしい。

 主な群生海域はD.U.アカレンガ区・アオバ区・シラトリ区経済水域、ゲヘナ領海、百鬼夜行領海とされ、数十から数百匹の群れを形成し各所を回遊しているのだとか。

 つまり、そのリッチで特異な体表に目を瞑れば、ミライも良く知る美味しい(ブランド)マグロと変わりなかった。

 

「へぇ〜、なんで体全体が金色なのかはかなり気になるところだけど、とりあえず食べてみたいかな」

 

「それでしたら今日のお昼にでも食べられると思いますよ!ですが、昼食の時間帯は海鮮市場の混み具合が――」

 

――ポーン!

『――500m先、アカレンガ・シーポートIC(インターチェンジ)。減速車線への変更準備を推奨します』

 

 ナビのAI音声が、目的地に近づきつつあることを二人に報せる。

 それに従う形でキリノはミニパトを左車線へ移し、高架道路から地上のICへと繋がる減速道路に入った。

 防風フェンスの連なる区域を抜けたことで、道路の外側の景色が一気に変わる。

 

―――眼前には煌めく群青の海原と、巨人港。

 

「わあ…!あれがD.U.アカレンガ港…!!」

 

 それは、地球・日本国を代表する国際戦略級港湾…京浜港湾、阪神港湾をも超える敷地及び施設を抱える都市一体型港。

 電子辞書に掲載されていた風景写真のそれらよりも、何倍も広大に感じる臨海拠点が、確かに在った。

 

「ICを抜ければ、もうアカレンガ港内市街地ですよ」

 

 荷捌き区画にある埠頭には稼働中の赤とオレンジのガントリークレーンがいくつもあり、湾内海上に目を向ければタグボートが大型船舶を曳航し、色とりどりの“大漁”旗をはためかせた漁船団が出航するところが見え、真新しい白磁のコンクリート製防波堤の…港の最端部には多段式の信号灯台がそれら港湾の日常を見守るように立っている。

 

 感嘆。その一言に尽きる。ただただ初めて見るキヴォトスの巨大港の規模にミライは圧倒された。

 シーポートICより抜けた先には、複数の主要道とバイパス路が合流し組み合わさった8車線道路がある。これがアカレンガ港の玄関口だ。

 さらにここから幾つかの交差点を進めば、目的地である“港湾中央管理センター”庁舎の職員用駐車場に辿り着く。

 

『――目的地に到着しました。音声案内を終了します』

 

 アカレンガ港用地内の諸交通インフラは中央区(タカマガハラ)と同等レベルに発達しており、特段渋滞などの交通トラブルに捕まることなく、二人の乗るミニパトは無事、管理センターの駐車場に到着した。

 

「予定通り昼前に到着できたね。運転お疲れ様。キリノちゃん」

「いえいえ。先生こそ色々とお気遣いしてくださりありがとうございました」

 

 二人とも降車し、管理センター庁舎の一階正面玄関へと足を進める。

 

「それにしても、表のバスターミナル、すごい混み具合だったね」

「あそこは日中ずっとあのような感じらしいですよ。管理センターの左右には付属空港ロビーにフェリー受付、鉄道駅(ハイランダー)などの貨物・旅客系施設がくっついてますし、管理センタービル内には我が校のアカレンガ区支部の港湾駐在所第1オフィスを含め、各校各企業のオフィスも所在していますから――」

「――だから人の出入りが多いわけだね。 今出たヴァルキューレのオフィス…第1って言ってたけど、それなら第2とか第3があるの?」

「はい。水域区画にある海警局の管区本部の中に、第2オフィスが間借りする形で置かれてます」

「海警局かぁ。キリノちゃんは何か繋がりはあったり?」

「研修の際にシラトリ区の巡視艇に乗船して見学させてもらったぐらいですね…船酔いしちゃってたので、当時の記憶はかなり曖昧ですが…」

 

 あれこれミライが聞き、キリノがそれに一つずつ答える…そんな会話をしつつ、照りつける夏の日差しと爽やかな潮の香りを感じながら、件のビルに二人は入った。

 

「建物の中も人がいっぱいだね」

 

 自動ドアが開き、風除室からエントランスロビーに入場した二人はそのまま受付窓口へと向かった。

 

「連邦捜査部シャーレのヒビノ・ミライです。こちらの依頼書の件で――」

「いらっしゃいませ! シャーレのミライ先生と、そちらの方は…ヴァルキューレの中務さんですね」

「はい。中央本部生安局一年の中務です」

「依頼のお話は上の者から聞いております。依頼期間中にシャーレのお二人が利用できる事務室まで私がご案内致しますので、少々お待ちを…」

 

 彼と対面した窓口係のロボット族職員が、顔のディスプレイに笑顔を表示させて席から立ち上がると、数人の受付係員を集め何やら話をした後、受付カウンターから出てこちらにやってきた。

 

「お待たせいたしました。それではこれより事務室までご案内させていただきます。こちらです」

 

 ロボット職員が手で「ついてきてください」と促してきたので、二人もそれに素直に従いついて行く。

 

「シャーレに充てられた事務室は、弊港の“セントラル・オペレーションルーム”と同じ階である地下1Fにございます。ただ、地下の一階と言いましても、地表から20m下にありまして、各種合金素材からなる三重構造の防護層により守られており、有事の際には司令塔としてだけでなく、多目的シェルターとしても機能します」

「セントラル・オペレーションルーム…」

「弊港における全ての業務をリアルタイムで統括管理している、中央指揮所のような…と言うよりも、モロそれそのものです。其々の第二統一言語(英語)訳の頭文字から取って“SOR(ソル)”、とも呼ばれていたりします」

 

 落ち着いたモダン様式のエレベーターホールに着くと、ロボット職員は手近の開閉ボタンを押しカゴの一つを呼び出す。

 数秒もせぬ内にエレベーターが到着したので、そのまま乗り込んだ。

 

「当庁舎につきましては、先の地下階層から地上3F、最高階から下の三階層までのフロアは連邦生徒会…統括室、防衛室、交通室、調停室のいずれかが管理しており、その周辺階層はヴァルキューレ、オデュッセイア、その他の学園企業団体への貸出フロアとなっています」

 

 はぇ〜、とミライとキリノが彼の説明を感嘆混じりに聞いていると、エレベーターは件の地下階層に着いたことを知らせるブザーが鳴った。

 

「……こちらが、D.U.アカレンガ港の全てを支える司令塔、セントラル・オペレーションルームとなります」

 

「空自の、防空指揮所みたいな雰囲気だ…」

「くう…じ? ――本官もここは初めて見ました。何と言うか、少年心くすぐるものを感じますね」

 

 エレベーターホールのその先には、高強度ガラス製の壁を隔てて、「秘密基地の薄暗い司令室」を思わせる空間があった。

 その中央管理室(オペレーションルーム)に釘付けになっているミライとキリノにロボット職員が声を掛け、案内を再開した。

 

「お二人用の事務室はこちらになります」

 

 中央管理室内に入り、その室隅にまで通されると、目の前には【シャーレ臨時事務室】と書かれた看板(プレート)付きの簡素な開きドアがあった。

 職員がドアを開け、中へ入るよう促した。

 

 室内中央には二人分の作業机とワークチェア、持ち運びの容易なノートPC、そして有線電話が二台と小型プリンター、スピーカーマイク付きプロジェクターが置かれ、部屋の隅っこには昨今の会社オフィスに置かれているような除湿機とウォーターサーバーが並んでいた。

 急拵えの事務部屋としては中々の環境である。

 

「ご覧の様に、防音仕様のパーティションで囲った簡易的な仮設部屋になりますが…オペレーションルームの通信係と直通のものと、連邦生徒会関連施設並びにアカレンガ港内の全ての公用電話とやり取りできるもの、で固定電話を二台取り付けております。室内にある設備機材はご自由にお使いくださいませ」

 

 情報伝達の面から見れば、仮設とは言えこの拠点の司令室とも呼べるフロアにシャーレの部屋を充てがってくれるのはありがたい。

 又、室内のモノの質からして、アカレンガ港側もこちら側…外部組織(シャーレ)を邪険に扱うことはないと考えられたので、有事の際の連絡連携については下手に気にしなくていいと言うのは大きかった。

 

「ここまでの案内、ありがとうございました」

 

「いえ、これも仕事の内ですので。あとで何か不明点等がありましたら1F総合受付の内線までご連絡くださいね」

 

 それではこれで…と、職員がロボット族特有の角度キッチリの黙礼をし退室。

 

「――ここから依頼開始…かな?」

「はい。……ヒビノ先生。改めまして、今日より五日間、よろしくお願いします!」

「こちらこそ。さて、挨拶回りと腹拵えの前に…リンちゃんに連絡しなきゃだったね」

 

 それを見送った二人は、早速活動に移るのである。

 

 

 

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凡そ2時間後……

 

 

D.U.アカレンガ港 中央区画

 港湾中央管理センター庁舎ビル

  地下1F セントラル・オペレーションルーム

   シャーレ仮設事務室

 

 

 

 あの後、ミライは連邦生徒会への到着報告をし、キリノと共に関係部署への挨拶回りをしていたら………この時間になっていた。

 

 事務室内では現在、アカレンガ港警備に関するウェブ会議が開かれている。

 キリノは各所との調整役を自ら申し出ており、ビル中を巡っているため不在である。

 

 余談だが、“昼食をゴールドマグロのユッケ丼にしましょう作戦”は、時間的余裕の無さを理由に延期となった。残念。

 なお昼食自体は二人とも庁舎食堂で摂れている。ミライはポークカレー、キリノはベーコンエッグ定食であった。

 

『―――その協定によって、オデュッセイアの場合は、行政区管理海域内…D.U.の領海内にあたるアカレンガ湾内に駐留させることが可能な艦艇の種類と数を制限されているのです。数日前から彼女達が臨海分校へ搬入中の、沿岸防衛用自走短距離対艦ミサイルシステムは、それに対するせめてもの()()というわけですよ』

 

 ここまでは理解していただけましたか、ミライ先生?――と、プロジェクターの投影映像越しに彼へ話を振るのは連邦生徒会・防衛室長、不知火(シラヌイ)カヤである。

 ピンクのアホ毛が特徴的な彼女は、今回のリモートミーティングでミライに現状のアカレンガ港防衛体制のレクチャーをリン代行から任されている(投げられている)

 彼女の手には集中力増強剤(ブラックコーヒー)がなみなみ注がれたマイカップが握られていた。

 

「うん、その“港湾中立協定”に、アカレンガ港を利用する学園、企業、団体がどこも批准してるから、いくら怪獣用の戦力を用意したのだと言っても…他方から見ればただの武力進駐にしか捉えられないってことだよね。

 その対艦誘導弾については、オデュッセイア側に課せられた条項…艦艇数、艦種制限の抜け穴を突いた、と」

 

 ミライの口から出た“港湾中立協定”とは、「アカレンガ港内では如何なる勢力であろうと武力の持ち込みと行使は許さない」というものである。

 なお、上記の内容には「但し、当該地域の治安維持機関の部隊配置等は除く」という訂正が入る――が、その治安機関…先に何度か出てきたオデュッセイア、ヴァルキューレ、防衛室には、その代わりとしてそれなりの制限が掛けられている。

 

『ええ、ええ。その通りです。ですがヴァルキューレはともかく防衛室(ウチ)はそう簡単にはいきません。こちらはそのミサイルシステムを含む陸戦兵器等の地上戦力全般、加えて航空戦力に、港内駐留及び侵入禁止の全面的な制限を設けられていますからねぇ…もどかしいことに、港側が有事と認め出動要請を出さない限りは、殆どの戦力は港敷地境界より外に待機させておくほかありません。

 ――これに関しては市街地…アカレンガ港外縁での広域演習を申請し、予め部隊を巡回させておくことで少々の時短が可能です。最近はアオ…財務室が優しいですからね、“超人”である私があんまり採りたくない択ですが…私が頭をヘコヘコ下げれば派遣部隊の燃料弾薬食料の悩みはある程度解消されるでしょうから、まあどうとでもなります』

 

 上で説明した協定は、経済の大動脈である海洋拠点が機能不全に陥ってしまう原因の一つ…武力衝突の発生を防ぐために生まれたモノだ。

 しかしながら、今回の件に於いてはその協定が有事対応への足枷となっている。

 

『…因みにですが、港内勤務のヴァルキューレ警備局員からなる港湾守備隊は今次案件の戦力勘定に入れていません。当人たちには悪いですが……大口径火砲がゼロの部隊が力不足であることは、ゴメスとの交戦で既に分かっていますので。まあ元より、あのような存在を相手取る部隊では無く――』

 

 ……キヴォトスの凡ゆる現行法に、怪獣を含む要項が無いのは致し方ないことだ。

 さりとて()()を想定した枠が作られるまでの間、()()が飼い犬よろしく律儀に待っていてくれる保証はどこにも無い。

 

『――失礼しました。少し話が外れましたね。要は、もしもアカレンガ港で怪獣の出現ないし上陸が発生した場合、現場への駆除部隊展開…即ち、こちらが打てるマトモ且つ有効な唯一の対策を実行に移すまでには、最短でも30分は掛かるというわけです』

 

 それ故、キヴォトスを守るため日々活動している者達は、いつ来襲するかも知れぬ敵に対して可能な限りの準備を整え、コトに臨む他ないのだ。

 憂いだけは完全に拭うことはできない。

 

『……と、ここまでべらべら喋ってきましたが、ヘリだけはどうにかなるかもしれません。現在、港湾付属空港のヴァルキューレ航空局・海警局用として割り当てられている格納庫には、海難救助用ヘリ〈SH-60(シーホーク)〉が予備機含め四機あります。

 ……そしてサンクトゥムタワーの防衛室多目的倉庫には、それらをガンシップ化させることができる着脱式ハードポイントと、それにくっつけられるミサイルと機関砲が腐るほどの数…保管されています。同備品群は今から数時間内に付属空港まで輸送・取付ができます』

 

 だからこそ、防衛室長は妥協しなかった。

 

「え、それって協定違反になるんじゃ…?」

 

 ミライの指摘に、「我に策あり」と微笑を浮かべカヤは答える。しかしすぐにその表情は引き締められた。

 

『先生。銃は分解してパーツの山にすれば銃としては使えませんし、銃であると捉えられませんよね? それと同じですよ。海難救助ヘリと、追加懸吊装置と、対戦車ミサイルに固定式チェーンガンが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です。

 何もなければ、そこに在るだけなのです。オデュッセイアの無人海上哨戒網完成までの間に、怪獣が来なければ来ないで良いコトじゃないですか。その際、我々は『何も無かったね』と備品と人員の再移動を静かに行なうだけですから。……歩兵よりも怪獣に注意を割かせることが出来る分、ヘリがあった方がマシだと考えます。――使えるモノは、使うべきです』

 

 カヤの閉じられていた瞳が僅かに開いた。

 

 ――如何なる時も、臨機応変に…それでいて迅速で冷静に。

 

 そこには、彼女なりの信念の火が灯っているように思えた。……だが何故だろうか、その灯火に彼の知る恩師――サコミズと似たものを感じたのは。

 

 不思議な感覚を覚えたミライだが、その間も彼女の弁は止まらない。

 

『それを含めれば、即座に抽出してアカレンガに回せる連邦生徒会側の初動戦力は、一個ヘリ小隊に、二個対戦車対舟艇中隊になります。同中隊には多目的誘導弾システムの他、最新の105mmライフル砲を有する旧SRT製の〈Type-16(16式)〉装輪機動砲車が多数配備されています。

 相手の最大値が25m級個体であるならば、外郭区の時よりは多少なりとも戦いと呼べるものが出来るでしょう。…先のゴメスのような巨大化能力を有している可能性を顧みて、我々は初動で全て叩き潰すべく努力します――が、無論これらの指揮権は、怪獣のアカレンガ襲来時にミライ先生へ略式委譲いたします。先生、よろしいですか?』

 

「アカレンガ港の現状と指揮権の話は分かったけど…この件でオデュッセイア側から、何か話は来てるの?」

 

『あーー……それはですね……』

 

 先ほどまでの勢いに突然ブレーキが掛かったカヤ。彼女の若草色の目は泳ぎに泳ぎまくっている。何故か頭のアホ毛も左右にブンブンと慌ただしく動いており、例の瞳の灯火と雰囲気は既に綺麗さっぱり霧散していた。

 

 するとそんな様子を見兼ねてか、ここまで背後に黙って控えていた目隠れの青白ツインテ副室長に、何か意味深な咳払いを一つされると、「うっ」と言う短い呻き声を上げ渋々といった顔で―――アホ毛(アレ)って、動かせるんだ…と、変な所に関心を向けていたミライに説明をし出した。

 

『実はこの会議、オデュッセイアの海統会並びに海護部にも参加を打診してはいたのですが、あちらは海の上で決着をつけるつもりのようでして……『我が校は連邦生徒会の指揮系統へは入らず、独自に対処する』という旨の返答を貰い……今の、私と先生のみの会議になりました。

 向こうのスタンスは、あくまでも最低限の情報提供だけ…先日のクソみたいなD()o()s()()()までが協力できる範囲だったのでしょうね。それか、先生のアカレンガ区派遣もこっちが勝手にやったものですし知ったことではない、と言っているのかもしれません』

 

 シャーレ部室奪還作戦の時はさほど感じなかったが、恨み辛み込みの皮肉を垂れながらコーヒー啜るカヤを見るに、学園間の軋轢というのはこれほどのものが常であるようだ。

 

 再度、オホン…と副室長からの咳払いとジトっとした視線を受けたカヤは、自身の腕時計に刻まれている時刻を確認した。

 

『……予定よりかなり会議時間をオーバーしてしまいましたが、私からは以上です先生。何も無ければこれで会議は終了にしたいと思います』

 

「取り敢えず、今聞いておきたかったことは全部カヤちゃんのおかげで把握できたから、僕も終了で良いと思う。ありがとねカヤちゃん」

 

『ええ。それでは、依頼期間中も毎日一回、情報交換の場としてこのウェブ会議をやりましょう。開催時間は先生に合わせますから』

 

「了解。あとで日程を送るよ」

 

 ミライはパソコンで退出操作をしてプロジェクターの電源を切ると、椅子から立ち上がり一つ伸びを挟んだ。

 そんな折、ドタバタと事務室の外から忙しない足音が聞こえてきた。

 

―――ガチャッ!

 

「ヒビノ先生!庁舎内の各部署への書類提出、すべて完了しました!」

 

 入室一番にビシィッ! と敬礼と報告をしてきたのはキリノである。

 

「お疲れ様キリノちゃん。……その両手に下げてる、ビニール袋は何?」

「あ、これですか? これは…行く先々で貰ったお茶菓子になります」

「おちゃがし」

「はい。本官、結構目立っていたらしくて…『一年生なのに、ずっと走り回っててお腹減るでしょ?』と、皆さんからのご厚意で…あはは…」

 

 ダメになる前に先生も一緒に食べてください、というより手伝ってください! と言ってキリノが袋に詰まった菓子類をミライの机の上にちょこちょこと置いていく。

 

 モモフレンズクッキー。

 刑事局太鼓判の老舗苺コッペパン。

 アカレンガするめ。

 温泉開発饅頭。

 カイザーフーズの一本奮発バー。

 

 挙げ始めればキリがないぐらいには沢山貰っていた。

 ここでミライが室内の壁掛けアナログ時計を見遣ると、午後の3時を回るところであった。

 

(…港の各区画での聞き取り調査は、コレの後にしようか)

 

 休める時に休むのが大事…というのは、サコミズの言葉である。

 腹が減っては何とやらだと、ミライは時計と机の上に置かれ続けているお菓子を交互に何度か見てから、キリノにお菓子休憩の時間にしようと提案するに至る。

 

 キリノもそれに賛成し、二人は暫しの間一息つくのだった。

 

「あ゙あ゙っ! このコッペパン、中にジャムが塗られていません!空っぽです!」

 

 

 

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――小休憩から30分後………

 

 

 

D.U.アカレンガ港 水域区画

 アカレンガ漁村

  漁業組合用船着場

 

 

 

 ―――目の前を、旭日意匠の自衛艦旗…ではなくオデュッセイア校旗を掲げた〈1号型ミサイル艇〉が二隻、ゆったりと航行していく。艦のクルーだろう生徒達が、埠頭を走ってフネを追い掛ける漁村の子供達に笑顔で手を振っている。

 彼女たちを乗せる灰の軍船は、湾近傍への哨戒にでも行くのだろうか。

 

 菓子を食べて一息ついた後、管理センター庁舎から東に500m進んだ地点…湾と接している水域区画の一角にある漁港まで二人は住民へ聞き取り調査を行なうべく足を運んでいた。

 

 八十年以上も前…D.U.行政区、アカレンガ港さえ影も形もない時代、ここら一帯は海岸林と木造建築の漁師家が並び、美しい砂浜と磯場が目を惹く、穏やかな沿岸集落であったらしい。

 ――今では、アカレンガ港内の都市化政策の推進を受けて、道という道にはアスファルトが敷かれ、路端や臨海住宅地、浜はコンクリートで固め埋められた立派な近代的臨海町村となっており、更には同じ区画にヴァルキューレ海警の管区本部施設と泊地、オデュッセイアの陸上分校が置かれているなど、昔の面影は何処にも見当たらない。

 

「――なんでい兄チャン、そんななりでゴールドマグロ食ったことねえのかい!?」

 

「はい、一度も…」

 

「ホントのホントか!?」

 

「ホントのホント、なんです…」

 

 そんな漁村の真ん中で、江戸っ子かぶれな若手マグロ漁師のアライグマ獣人が素っ頓狂な声を挙げた。

 その原因は彼の目の前に立っている、ゴールドマグロを食した経験が無いとのたまう栗毛頭の純ヒューマノイド成人…ミライにある。

 

「たはー! マジかよ、そのカッコ…連邦生徒会の役人さんなんだろ?食おうと思えばいつでも食えるだろうに……そりゃ人生大損してるぜ?」

 

 アライグマ漁師の言葉に、横に立つキリノが腕を組んでうんうんと頷いていた。

 悪事を白状するかのようにミライが口を開く。

 

「それ、彼女からも言われました…。あの、実は僕…キヴォトスの外から来たんです。大体二週間ほど前に」

 

「はーはー、なるほどなぁ! そういうことなら兄チャンにアカレンガのマグロ料理をご馳走してやりてぇ――ところだったが、今の漁港は見ての通りよ……」

 

 二人はその目を彼の親指の先にある、午前の漁から戻ってきた漁船が多数係留されている船着場へ向ける。

 見た感じでは、漁師たちの活気がある普通の船着場、だが…彼らの漁船から揚げられてくる魚介類にはアカレンガ名物であるマグロの姿が一切なかった。

 

「ここらの漁師は皆んなゴールドマグロで生計立ててんだけどよ、ゴールドマグロどころか、モノクロのマグロすらここんところ…一週間以上はマトモに網に掛かってねえんだ。獲れても稚魚とか人様の前に出せねえ半端モンでよ……申し訳ねえな……」

 

 この学園都市には、日本風の食文化の一つ…魚肉の生食が当然のように浸透しているため、刺身や寿司と言うのが、カレーライスなど並ぶ国民食ならぬ大陸代表食となっている。

 故に、キヴォトスにおけるマグロの年間消費量は数十万トンにも上り、著名外界国家・日本国のそれに匹敵するとされる。

 

「……で、仕事(マグロ)の話で吹き飛んじまったが、その役人の兄チャンとお巡りの嬢ちゃんが俺に何のようなんだっけか?」

 

 キヴォトスにおいても、主力鮮魚の漁獲不良が続いてしまえば大小問わず、後々問題になることだろう。

 

「マグロの不漁もそうかもしれませんが、最近身の回りで変わった出来事などはありませんでしたか?」

 

 些細なことでも構いませんので、と…メモ帳とペンを装備したキリノが改めて尋ねる。

 この質問は、その回答情報を元に行われる足を使っての調()()関連のものだ。

 

 その調()()とは、臨海部における怪獣事案との関連事象の有無把握と、懸念材料・不確定要素潰しである。

 

「ん〜? 変わった出来事ねぇ…マグロが捕まんねえってのが一大事だったもんでよぉ、オレ的にはてんで無えなあ。力になれなくてすまねえ…」

 

 用心するに越したことは無いからと始まった調査活動(聞き込み)であるが、意外にもその成果の一つはすぐに上がってきた。

 

 原因不明のマグロの不漁…ウラガ海溝に潜伏している未確認怪獣群との関係性は十分に考えられた。

 

「いえいえ、その証言も調査の進展に繋がるものです!ご協力感謝します!」

「お話ししてくれてありがとうございました!」

 

 このような二人の誠意ある地道な聞き取り調査は、漁村の各地で行われた。因みにミライのゴールドマグロ未食で驚かれる流れもセットである。

 以下はそれら会話のダイジェストだ。

 

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「――(おか)であのゴメスとか言う奴が出てからよぉ……ぱったりゴールドマグロが網に掛らんくなっちまった。いや時期が被ってっからそう言ってるだけなんだが。こうでも言ってないとやってらんないんだ」

「ミナミマグロやクロマグロも軒並み同じ状態と伺いましたが…」

「そうなんだよ。図体のデケエ魚どもがめっきりと少なくなっちまって…ホントに参ってる」

 

「――うちんとこの旦那は貝の養殖にも手ェ出してたから、まだマシやけども、やっぱ主力はゴールドマグロやけん。このまんまってのは勘弁してほしいわぁ」

 

「――ここらの漁師はゴールドマグロが文字通りの命綱だから、この流れは不味いワケさ。……やっぱこれって天変地異ってやつなんかねぇ。夜戸裏(ヤトウラ)でエビ獲りまくってる連中が羨ましくなってきたよ」

「海に出た時に何か変わったことなどは…」

「ああ、俺じゃないがあれだ……鴨川んとこのせがれが沖回ってる時に、珍しい背鰭を見たとか言ってたような。大方、極地海路あたりから流れてきたはぐれザメだろうがね」

 

「――“わだつみ様”がお怒りになられておるんだろうか〜って、漁師のじいちゃん達は皆んな揃って口にしてらぁ」

「「ワダツミサマ…?」」

「おう所謂あれだ、土着神ってやつよ。『海』の『神』って書いて海神(わだつみ)様だ。ここらの地域で昔から祀られてきたカミサマで、名前の通り海の豊穣と厄災を司るって伝えられてんだ」

「結構お詳しいんですね」

「そりゃあ、この漁村で生まれたガキはみーんなこの話を親に聞かされて育つからな。覚えちまうもんさ。まあ俺含めて若い世代でソレとマグロの不漁と結びつけてる連中はいないがね。あ、今のは爺さん婆さんにはオフレコで…」

「その神様…わだつみ様のこと、もう少し聞いてもいいかな?」

 

「――金鮪(キングロ)を獲るとすれば、ここ以外だと一番近くてゲヘナ近海まで出ねえとダメだわな。体力あるベテランはとっくにみーんなそっちへ遠征に行ったわ。

 アンタら、アカレンガには昼前に来たんだろう?旗振って湾から出てくフネ見なかったか? アレだよ」

 

「――とっても立派な背鰭だったと思うよ」

「アカレンガ近海では見ない種でしたか?」

「うん。サメとかシャチってよりかは、なんだろ、もっと別物だった。ま、その背鰭と船の距離はそこそこあったし、見間違いかもね。ほら…最近だと海洋ゴミが増えてきてるって言うじゃんか」

 

「――行政の姉ちゃん達はなーんもしてくれん。補償の陳情もあげとるが、音沙汰が一つもこん」

 

__

__

 

「―――数日前だったかな。村民館の横にわだつみ様を祀ってるちっこい御堂があるんだけども、何百年もの間…その御堂の中に無傷で置かれてた御神体…これもまた手の平サイズのちっこいやつなんだが――にヒビが入っちまってたって話が……」

 

 漁村住民への聞き込みも終盤に入るところであった。

 

「!! そのお話、詳しくお願いします!」

 

「お、おう…食いつき良いな駐在さん…――いやまあ古いモンはどんなモンでもボロくなってくってのが当たり前だとは言うがよ? おいらも会館管理やってる友人からちょろっと又聞きしただけなんだが、ウチんとこの御神体はちと特別で――」

 

 マグロの不漁の次に村民達が挙げた特筆すべき直近の出来事に、この臨海集落で未だ信仰されている海の神…わだつみ様の御神体に関するものがあった。

 

◯工事や地震も無いのに堂内の御神体が倒れていた

◯夜中に御堂から蝋燭ではない謎の光が漏れている

◯一礼無しに御堂を素通りした若者が徒歩で自転車を轢いた(?)

◯「ふんぐるいふんぐるいおおとろうなふ」と唱えながらマグロの頭を振り回してる変質者が村民館の周りを練り歩いている

 

 ……などなど。

 信憑性はともかくとして、御神体周りで異常現象が多発しているのは事実だった。

 ……案件の半分ほどがヴァルキューレ警察(キリノちゃん)が単独で対処できそうなものであることには、目を瞑っておいた方が良いのかもしれない。

 

「「――“オーパーツ”石製?」」

 

「らしいんだなこれが」

 

「なるほど。オーパーツでできた御神体ですか…」

「……キリノちゃん。確認なんだけれど、キヴォトスのオーパーツってどんなモノなのかな?」

 

「んー……オーパーツは、辺境秘境、遺跡に遺構、その他ミステリースポット等で稀に拾われる謎の物品群のことを主に指してます。研究機関や骨董商、宗教団体などに高い需要があり、何らかの…小石ほどのカケラであっても最低500円で買い取られることがザラで、完品に近いものになれば10万円は下りません。コレらを売ることで生活してる方も少なからずいらっしゃると聞いています。

 あとはそうですね…一応、外界から流れ着いたもの…漂流物などもこの中に含まれることもありますね」

 

 因みに我々観測世界における“オーパーツ”とは、「場違いな工芸品」…現代文明の技術や時代に合わない、不可思議な出土遺物を指す。

 曰く付きのモノ、道楽者によるアートが大半であると言うのが今日(こんにち)における評価である。

 

 一方、キヴォトスで発見されるオーパーツは多量の“神秘”が含まれているものの、大抵は無害な代物であり、使用用途が判明していない()()()()が殆どとのことで、そのためかキリノ曰く、部屋のインテリアやアクセサリーとして気軽に飾ってる子もいるらしい。

 余談だが遺跡などから出土するオーパーツについては、古代キヴォトス先史文明の産物であるとする説が強いのだとか。

 

「また、オーパーツには“等級”という物差しのようなものがあります。原理は詳しくご説明できませんが、等級が高ければ高いほど、経年劣化を含むあらゆる外的ダメージへの耐久性は高くなる傾向があります。

 火砲の類いは例外として、滅多なコトでは傷が付かないんです。これまでの市民の方々の話から推察するに、御神体に使われているのは完品…つまり最高等級ものだと思われます」

「そういうことなら、たしかに妙だね」

 

 怪奇(オカルト)現象と怪獣・異星人事案には密接な関わりがあることが多い。

 地球においては、戦前から戦後復興期の間に日本各地で目撃された未確認飛行物体(UFO)飛来の尽くが、同惑星侵略を画策していた同一の敵性異星人(ゼットン星人)文明による組織的な偵察活動だったと判明した例もある。

 

「取り敢えず、実物の確認と村民館周辺の人たちに改めて聞き込みをする必要があるね」

 

 些細なものでも自分の目で見て確かめる意識は、現地パトロールに何度も仲間と共に赴いていたミライにも根付いていた。

 

 このように、依頼初日の日没になるまで、二人の漁村での活動は続いた。

 

 

 

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――時は一気に進んで4日後…依頼期間最終日早朝へ

 

 

 

D.U.アカレンガ港 中央区画

 港湾中央管理センター庁舎ビル

  地下1F セントラル・オペレーションルーム

   シャーレ仮設事務室前

 

 

 

 結論から言おう。一日目の調査で原因不明の不漁と同様に怪獣関連事案と目されていた御神体騒動は()()だった。

 

 わだつみ様の御神体の周りで起きていた怪奇現象が、()()()村の子供達の仕業(イタズラ)であったと分かったのだ。

 

 ――ここでいきなり話をズラすが、キリノと言う少女は間違いなく愛嬌満点の美少女であろう。

 本人は無自覚だが……年端もいかない村の悪ガキどもが、彼女が婦警であることを忘れてホイホイ御神体と御堂周りの悪戯は自分達がやったコトだと得意げに(背伸びして)自慢話(ナンパ)してくるぐらいには、児童の性癖破壊装置…つまるところ初恋泥棒のお姉さんの素養を持った生徒だったのである。

 ……発覚の経緯が経緯だが、キリノが解決の糸口を見つけたのに間違いはない。

 

 御神体の話で一番の謎であった本体__“海底原人(ラゴン)”を思わせる半人半魚の“完全なミステリーストーン”__の破損についても、先に「すべて判明した」と書いてあるように、児童らの悪戯が原因だった。

 使われたのは、一等級下位のオーパーツ(“修理途中の古代ロケット”)及び、噴進剤代わりの市販製火薬。

 漁港のコンクリートで出来た人工沿岸に配されているテトラポットたちの隙間に漂着していたソレを、偶然拾って玩具にしていたのだと言う。

 

 ちなみに…これを聞いて「街のお巡りさん」に変貌したキリノから強めに問い詰められ、見事撃沈した悪ガキ達は残る悪戯のすべてを白状。話を聞き引き取りにきた親御さんによって同日中に__村の伝統的管理物であるモノに対する器物破損が絡んでいたので__コッテリ絞られたらしい。後日、この件はアカレンガ所轄の生活安全局にキリノが引き継いでもらった。

 

「――で、今日が依頼期間の最後の日になったわけだけども」

 

 さて、御手柄にも依頼期間の序盤二日で御神体騒動を解決したシャーレ。あれ以降もキリノを連れて各区画を回るなどして聞き込みを続けたのだが、漁港におけるマグロ不漁以外に特筆すべき案件との遭遇は無く。

 それに加えて肝心の怪獣の情報更新は皆無。オデュッセイアから情報の追加提供も無し。三日目に防衛室(カヤ)から臨時部隊の配備ローテーションが整った報告以外で進展したと呼べる話は同じく無し、という塩梅で。

 

―――ガチャッ

 

「おはよう、キリノちゃん」

 

 広すぎる港湾での見回りと聞き込み、そして報告書類の作成と関係機関代表者との会議…で期間後半の時間は瞬く間に溶けていき、遂に依頼の最終日となったわけだ。

 

 又、短くも濃いこのアカレンガでの諸活動によって、今では__依頼期間満了に伴い今日いっぱいで解体される運命にある__このパーティション区切りの仮設事務室も、ミライにとって愛着の湧くものとなっていた。

 

「はぇっ…! お、おはようございます、ヒビノ先生…!」

「キリノちゃん? もしかして体調でも悪いの?」

「いえ…昨日は深夜まで生安局長(ヴァルキューレ)への活動報告の説明をしていまして……お恥ずかしながら、ちょっと寝不足気味で…」

「昨日までの四日間、ずっと駆け回ってたからね。その疲労も重ねってるんだと思うよ。――キリノちゃんも何か飲むかい?」

 

 自分の手に提げているビニール袋を持ち上げ、寝ぼけ眼を擦るキリノに見せた。中身はどれも飲料であるようだ。

 

「わあ、そんないっぱいの飲み物、どうしたんですか? 登庁前に何処かへ?」

「朝の運動も兼ねて漁港方面を回ってたら…漁師の人達から缶ジュースとかコーヒーをいただいちゃって」

「ああなるほど…先生もすっかりアカレンガに馴染んでますね」

「そうかもね」

「――ええっと、本官はコーヒー類があればそれを…」

「これだね。はい、どーぞ」

 

 キリノの要望を受けて、袋の中から微糖のコーヒー缶を一本取り出して渡す。

 冷んやりとしたそれを彼女が「ドーモ…」と受け取り、蓋を開けて一口傾ける。美味しい。糖分とカフェインが、全身に染み渡る。

 

 ――あとでSOR勤務の子たちにもお裾分けしなくちゃ、とミライは考えつつ、シッテムの箱のメールボックスをチェックする。

 その画面横ではアロナが、愛くるしい見た目となったマケット怪獣のリム化仮想体(アバター)と戯れている。ここ数日、暇を持て余しまくっていたちびっこ秘書は、ミライから許可を貰ってマケットカプセルからデータの抽出を行なっていた。

 

(オデュッセイアから連絡が来てたみたいだ)

 

 オデュッセイア生徒会からの新着メールの日付を見ると今日の朝4時頃に送られてきたものだと分かる。

 表題には【アカレンガ沖の哨戒網構築作業完了と稼働開始について】とあった。

 

(……予定よりかなり早く敷設は終わったのか…しかも時間的にもう動いてるっぽい)

 

 哨戒網が完成すれば、ミライのアカレンガ出張も取り敢えずは終了である。

 今後はアカレンガ区は上記の海上警戒ラインからの通報に合わせて、関係学園並びに組織に対応を請える体制が確立するだろう。

 

 これで、一安心か…と思いたいが、ミライの中では未だに一つ気掛かりが残っていた。

 アカレンガ区におけるマグロを筆頭とした海産物の漁獲量の減少である。こちらに関しては有益な情報、或いは説は今日まで上がってきておらず、分からず仕舞いのままであった。

 

(……少なくとも、オデュッセイアが未確認怪獣の存在を把握した日よりも前から不漁が続いてる。やっぱり不漁と海棲怪獣に因果関係は無いのか…本当に……?)

 

「あっ――――」

 

 不意に、依頼初日のキリノの台詞を思い出す。

 

―――あ゙あ゙っ! このコッペパン、中にジャムが塗られていません!()()()です!

 

 空っぽ。

 中が、空っぽ。

 

「どうして気づかなかったんだろう…!」

 

 怪獣の出現や異星人との邂逅を経て、本格的な宇宙進出へ歩み出した当時の地球人類にとっても、海洋とは未だ神秘に満ち溢れた謎多き世界であった。

 そんな折、かつてSF界隈を沸かせた地球環境に関する突飛な()()が、馬鹿ほど真面目に提唱・議論された。

 

「キリノちゃん、オデュッセイアでもヴァルキューレの海警局でもいい。今から電話を繋げられる?」

「できますが、どうしたんですか先生」

 

 ―――“地球(惑星)空洞説”。

 かの伝説的冒険小説『地底旅行』の出版開始を契機に世界に広まった、「穴空き地球(ホロウ・アース)」とも呼ばれる概念。

 それは端的に言うなれば、惑星の内部に「第二世界」、或いはそれに類する人類未踏の巨大な領域と呼べるものがあるとするアイデアであった。

 

(もしも、ウラガ海溝と繋がるような未発見の海底洞窟がアカレンガ沖の何処かにあったら…)

 

 ――もしもアカレンガ沖に、怪獣の通行可能な海底洞窟(通り道)があったら、沖合におけるマグロを含む既存海洋生物の突然消失とも繋げられる。

 その場合……アカレンガの沿岸海域は、既に()()の餌場…縄張りとなっている可能性がある。

 

―――プルルルルルルルッ!!

 

 その矢先、室内に備え付けられている内線電話の呼び出しベルがけたたましく鳴った。相手はSOR通信係からのもの。

 受話器を取るのはキリノである。

 

――チャッ!

 

「はい、こちらシャーレ仮設事務室の中務です!――――え、()()っ!? モモホビーズの貨物船が、撃沈されたのですか!?!?」

 

 通話相手からの非常事態発生の報をその耳で直接聞いたキリノは、眠気が一気に吹き飛んだようだった。

 彼女はミライに内容を改めて報告しようとしていたが、あまりの凶報に口を必死にぱくぱくさせるばかり。

 

(――遅かったか……!)

 

 後手に回ったと悟り歯噛みするミライ。

 

 

 

 深き者どもは、すぐそこまで迫ってきていた。

 

 

 





 あと
 がき

 皆様、わっぴ〜!(気さくな挨拶)
 好きなTRPG卓様は某驚天動地クラブな投稿者(逃げるレッド)です。
 今回も長くなってしまった…書きたいコトが多すぎる。

 余談ですが、本作のキリノちゃんが運転してるミニパトのモチーフは、神奈川県警所有の日本でたった一台しかないとされる“アイミーブ”EVミニパトカーです。
 作中ではパトカー搭載のカーナビ(カーロケ)が案内やってくれてますが、実際の日本警察車両に装備されてるGPS関連の通信設備には音声案内機能は無いっぽいです。まあヴァルキューレは未来都市キヴォトスの警察だからね…そこらへんはね。
 
 キリノちゃんの趣味、「食べ歩き」なんですよね。ミライ先生と相性ビッタなんよなぁ…

 投稿者はカヤスキゼミなのでカヤに何がとは言いませんが矢印がデカいです。
 カヤ、不幸になったり幸せになったりしろ…コーヒーの話でカンナも混ぜてサコミズ隊長とイチャイチャしろ、必要だろ。

 
 
※毎度お馴染みピックアップ解説コーナー
 (独自設定独自解釈共にもりもり)

◯D.U.アカレンガ区
 連邦生徒会統括室が管理する行政区の一つ。
 領域の半分ほどが海に面しており、海と繋がりのある凡ゆる施設、資源、ビジネスを抱えるD.U.有数の経済区でもある。
 区内で代表的な場所は、キヴォトス超大陸内において最大を誇る区立海港“アカレンガ港”と、同港海運エリアに居並ぶ、区名の由来ともなった歴史的な現役建造物――「アカレンガ倉庫」。
 
 区の特産品は、ゴールドマグロのブランド種「ゴールデンキンピカアカマグロ」。

◯オデュッセイア海洋高等学校

 ※独自設定並びに、ミリタリースポ根アニメ『ガールズ&パンツァー』要素が著しく濃いです。ご注意ください。
 
 “海事統制委員会”なる生徒会組織に率いられている海洋学園。
 キヴォトスにおける海上交通網(シーレーン)、公海の大部分の管理を連邦生徒会から委託されている。
 又、数ある学園自治区で唯一本校舎がキヴォトス大陸内に置かれておらず、自治区を持たない学園でもある。
 自治区の役目を果たしているのは、全長凡そ10kmにも及ぶ空母型超巨大艦船こと“学園母艦”で、艦上には本校舎を含む都市建造物が広がっており、艦内部には魚介類養殖場や無人工廠(ドック)を備え……後述する数百もの同校籍のフネを収容することさえ可能な海上要塞となっている。
 因みに、キヴォトスの各臨海部及び港湾に他学園との交渉交流窓口・補給基地・監視所などの役割を持つ「陸上分校」を置いている。

 “海護部(海軍)”、“海運部”、“海洋資源調査部”、“海洋生態部”などが主な部活動。どう足掻いても海との繋がりは断てないので、何処の部活も艦船・艦艇を必ず一隻(最低でも足漕ぎ(アヒルさん)ボート)は所有している。
 特に海護部は海統会の直轄組織であり、数百隻の戦闘・補助艦艇並びに数百機の航空機を有し、数十の艦隊を編成運用している軍事部門相当の部活となっている。
 学園存続規模の危機が発生した際には、すべての部活動のフネが海護部の指揮下となる「聯合艦隊」へ組み込まれる。

◯N2
 半世紀以上前より数々のSF創作で登場している常連架空兵器の一つ。その多くは“窒素(N)”を用いた兵器を指す。
 本作キヴォトスでは上記と同じ高威力対潜爆弾として登場。
 
 SFロボット(ロボットではない)アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズにて同名の広域破壊兵器が複数種登場した。
 なお、同作における「N」は「窒素」とは違う意味だとかでないとか。

◯ヴァルキューレ警察・生活安全局
 “街のお巡りさん”筆頭の局。
 よく閑職のように扱われているが、キヴォトス市民に最も寄り添った活動をしている、貢献度の高い警察内組織である。
 ただ、他部署の案件に対する応援部隊、予備戦力として動員されることが多いのは事実。
 それ故下っ端扱いされることも多々あるが、彼女達がいなければ平時のヴァルキューレ、そしてキヴォトスは回らない。そんな組織である。

 姿形、名も無い局長、いつ登場なされるんですかね?
 白髪銀髪っ娘、もっと増えろ…あと頼むからアイドルキリノをガチャで出してくれ…それが、私の願いだ(ギロチン王子並感)

◯D.U.アオバ区
 “豊かな緑との調和”を掲げる行政区。自然を削らずに都市化を成功させたグリーンシティである。
 臨海部と山間部の豊富な天然資源とパワースポットを名物とした観光業、そして全D.U.行政区でもトップの水準に整備・発展した農林畜水産業に力を入れている。
 
 元ネタは“杜の都”仙台(センダイ)
 仙台SAの食堂で食べれる牛タンラーメンはマージで美"味"し"い"ぞ"!!

◯ゴールドマグロ
 めっっちゃ金ピカの体表が印象的な、(クロ)マグロを抑えてキヴォトス産食用マグロの頂点に君臨する王様マグロ。非常に美味として知られる。
 いくつかの亜種が存在する。内部構造は他のマグロと同じであるので調理と食事の際に遮光メガネは不要。
 再度書かせてもらうが、驚くべきことに遺伝子組み換え種ではなく、モノホンの天然ものである。
 
 何故金ピカの身体を持つ進化の選択を採ったのかは未だ不明だが、その体表の金色物質の研究は進んでおり、当物質を粉末・液状化したモノを物体に塗布すると何故か擬似的なビームコーティング材となることが判明している。(百式じゃん百式だよこれ)
 それ故、漁師免許を持たぬゴロツキたちによる換金目当ての乱獲が後を絶っていない。

◯防衛室の業務形態について
 以前にも書いたように、防衛室の人員は100%(元現場系所属の)事務職員(デスクワーカー)で構成されている。
 基本的に防衛室が出動せねばならないぐらいの非常事態が発生しない限りは、彼女達は本部及び各行政区オフィスで書類と睨めっこをしながら、ちょくちょく(同室の人数に見合わない量の)防衛室名義備品の管理をしている。現役装備の稼働率が軒並み低空飛行状態なのはこれが原因。
 室員は1000に届くか届かないかの三桁名。有事用の実働部隊は陸海空問わず必ずここの事務職員から抽出・編成する(というよりするしかない)ので、二個三個何らかの中隊大隊を作ろうとすると普通に書類業務が滞り始める。

 現在、人材資源室に掛け合って防衛室生徒の増員を急いでいる。
 実力組織なのに何故事務職員だらけ且つここまで人数が少ないかと問われると、実戦の担当は最近までSRT特殊学園が担っていたからと言う。
 原作の防衛室ってそういったとこの引退勢とか左遷された子、居場所を無くした子が集まるやんわりとした部署だと思ってます。本作の防衛室はストイックでただ過労気味なだけ。

 彼女らにとって最大の敵は、予算委員会での予算用途に関する質疑応答である。
 財務室との対戦履歴には未だ勝利の二文字は刻まれていない。
 
◯カイザーフーズ
 カイザーコーポレーション系列の食品会社。会社のロゴマークは、ナイフとフォークを持った王冠被りのタコ。
 戦う社会人をサポートするための栄養調整食品や指定医薬部外品の取り扱いが異様に多い。
 カイザー企業では珍しく、学園都市模範企業に毎年選出され表彰を受けている優良社である。

◯オーパーツ
 原作『ブルーアーカイブ』における成長素材系アイテムグループの一つ。中間等級のものが足りなくなるのは、先生あるあるではなかろうか。
 本作のキヴォトスでは、ちょくちょく採れる謎の希少資源扱いになっている。

地球空洞説(ホロウ・アース)
 今でもSF作品や都市伝説で稀に取り扱われている有名題材。
 最近の作品(当社比)では、漫画『怪獣自衛隊』、新訳漫画版『地底旅行(本家)』、『コング -髑髏島の巨神-』含む“GODZILLA/モンスター・ヴァース”などがコレを扱っている。
 
 2020年時点で地球の海洋調査の全体的進捗は凡そ1割程度らしいので、あながち実在すんじゃないかとも愚考。

レンジャー「地底探検を楽しめ」



 さて…今回は怪獣が出なかったわけなんですが、ご安心を。
 次回は登場します。大暴れします。
 ……この調子だと三部構成になりそう(小声)
 かなりクトゥルー系の表現を使ってますが、本格的TDG式クトゥルー回は、SRTの特殊作戦とか、エデン条約編あたりにやりたいと思ってます。

 なんで石が消し飛んでる時期にキャンプマキちゃん出すんですか…?(現場ビナー)
 チーチャン…チーチャンハドコ…? ココ…?

※次回予告・次章予告はどれも骨子段階のもので作成しています。それ故、予告にある台詞等が投稿される本編で改変したりしている場合がございます。ご了承ください。

 
_______
 
 次回
 予告

 海棲怪獣アカレンガ大進撃!
 
 迫る海魔たちを押し留めるべく、ヴァルキューレが、オデュッセイアが奮戦する。

「―――我が船は、モモグループ籍コンテナ船“ピーターⅢ世”乗組員の救助を行なう! 機関、最大速度っ!!艦首連装機関砲、安全装置解除っ!!」
『何匹いるんだコイツらは!?』
『わああっ!右舷底部破損、浸水はっせええええ!!』
『下にアホみたいにデカいのがいるぞーー!!』

『こちらはオデュッセイア海護部・アカレンガ統合任務艦隊旗艦、ミサイル重巡“わらび”である。これより我が艦隊は貴船の当海域離脱を支援する。――“わらび”より全艦に告ぐ。勇気ある彼女らを、死力を以って援護せよ』
『アスロック1番から6番、斉射(サルボー)!』
『――掃海艇“つるべ”中破! 取りつかれてます!!』
『やむを得ん、随伴の練習艦を前に出せ。掃海隊に無理をさせるな!またやられるぞ!』

 ―――しかし、数の暴力により海上での侵攻阻止は叶わず…怪獣の一団は、アカレンガ港内へ。

『分校の全艦艇乗組員は、ただちに緊急出航にかかれ――!』
「発令が遅いっての!」
「タグボードの曳航無しでミサイル艇を湾へ出すってんですか!?」
「だからそう言ってるだろ、やるしかない。タグのおっちゃん達は逃げちまったんだから!」
「―――12式はなんで動いてないんだっ!?」
「点検中だったので――」
「クソッタレ!とことん間が悪いな!」
「白兵戦なんてやったことないよお〜!!」

「私らは即席の対戦車兵って具合か」
「こんなんで倒せるのか?」
「持たされてるんだからもう信じるっきゃないでしょ」
「装甲車をこっちに! 壁にすんだよ!!」
「外郭区の奴らはこっぴどくやられたって聞いてるが…」
「防衛室の増援が来るまで持ち堪えるしかない」

 ヴァルキューレとオデュッセイアの港湾守備隊が防衛線を構築し、ヤツらのこれ以上の侵攻を阻まんとする。

 戦火は広がり、事態は混迷を極めていく中で、ミライはどう動く!?
 
 走れキリノ、戦えミライ!
 アカレンガの街を守ってくれ!!
 

「頼むぞ―――」バッ!


『―――“REALISE(リアライズ)”』
 

 次回、メビウスアーカイブ
 【海辺の怪 -対峙!ゲ号標的群-】

 お楽しみに。

 

本作において、皆さんが丁度いいボリュームと感じる一話毎の文字数は?

  • 5,000字未満
  • 5,000〜10,000字
  • 10,000字前後
  • 10,000〜15,000字
  • 20,000字程度
  • 30,000字ぐらいまでなら…
  • それ以上でもOK
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