日々の未来の青春譚 -メビウスアーカイブ-   作:逃げるレッド五号 5式

18 / 26


海獣 キングゲスラ

深海怪獣 ゲードス

 
登場





16.【海辺の怪 -決着!アカレンガ総力戦-】

 

 

 

【推奨BGM】

 『Run through! -ワンダバ「CREW GUYS」-』

 

 

 

 ファイヤーウインダムは奮起していた。

 その奮起の原動力となっているモノの内訳を敢えて書くならば、“歓喜”と“闘魂”。この二つだろう。

 

『――ウインダム、実体化に成功しました! 体内のミスト分布濃度も安定しています!』

 

 マケットウインダムは過去M78スペース地球に来訪し、地球防衛の任に独断で就いた元“恒点観測員”(現宇宙警備隊員)と共に、侵略者を迎え撃った地球初観測個体(オリジナル)のウインダムから収集した多角的データを元に生み出された。

 そして今、このアカレンガに立つ()はウルトラマンメビウス来訪時期――21世紀初頭より数十年以上が経過した未来、地球が再び“真の平和”を掴み取り外宇宙へと歩みを進める時代に…太陽系規模のGUYS軍縮の煽りを受け、戦略火器保管庫で眠りについていた旧極東支部所有のマケットカプセルであった。

 

『アロナちゃんが全面サポートします! やっちまいましょう!ゴー、ウインダァム!』

 

―――クワアッ!!

 

 分子ミストで出来た彼を構成する膨大なデータの中には、北米支部(USA)欧州支部(EURO)に配備されていた同期の()()だけでなく、第二次怪獣頻出期のGUYS JAPANで運用された…人間で言えば彼の曽祖父、或いは高祖父にあたる()()から自身の前任までに至る極東日本支部の歴代マケットウインダムの記憶とも言うべきモノが継承・蓄積されている。

 その中に、確かに()()のだ。地上よりこちらへ眼差しを向けている新たな主である筈の人物…ヒビノ・ミライとの記憶が。

 

「アレが、シャーレのロボット。ウインダム…ですか、先生?」

「うん。彼が…ウインダム。僕らと一緒に戦ってきた、頼れる仲間の一人なんだ」

 

 自身を内包するカプセルが“シッテムの箱”とか言う謎のタブレット端末内の仮想空間に無理やり接続され再起動を果たした時、タブレットの画面…仮想空間を覗き込んできたミライの顔を仰ぎ見たその瞬間、ウインダムの機械頭脳は演算処理が追い付かず固まった。

 何せその男は、ドキュメント上に載っている遥か過去の人物――歴代GUYSクルー……それも伝説的英雄とされている隊員だった。しかも、マケットウインダム初代が共闘したウルトラマンメビウス本人としても記載されているとんでもない御人である。

 何故そんな人物と自分が画面越しで()()しているのかが理解できなかった。

 

 だが嬉しかった。ウインダムのデータ製擬似人格は、斯様な使い手(主人)を持つことに何物にも代え難き充実感と幸福感を感じていた。

 

 故に、ウインダムは歓喜する。

 この方が新たなる主人ならば、恐れるモノは何も無しと。

 故に、ウインダムの闘魂は燃え上がる。

 英雄から頼まれ託された此度の戦い、無様な姿は見せられぬと。

 故に、ウインダムは奮起する。

 主人が愛するこの青く透き通る新天地を守らんと、敵を討つ。

 

 マケット粒子を生成するに必須である分子ミストの補給手段がキヴォトスで見つかっていない現状、この戦闘が終わればウインダムの再実体化は…活躍の機会は永遠に来ないかもしれない。

 それがどうした――ウインダムはそんな些細なことは気にしていなかった。

 己を己足らしめる本体(データ)は消えないのだから。あの端末の中で、主人や同じマケットの同志たち、そしてあの蒼いチビっ子ともまた会えるのだから。

 

 ウインダムは使命に忠実である。

 かの赤き闘士――ウルトラセブンのカプセル怪獣(パートナー)やメタル星原生種と同様の……メテオールとアーカイブデータによって緻密に再現された諸能力を分子ミスト残量と実体維持時間が許す限り行使できた。

 

 ………彼が、主人(ミライ)チビっ子秘書(アロナ)より与えられた命令は単純明快ただ一つ。

 

 

―――大トカゲをブッ飛ばせ(ゲスラを撃破せよ)

 

 

 ウインダムの答えは迷わず「イエス」だった。

 

クァアアッ!!

 

 覇気の籠った雄叫びと共にゲスラの一体に目掛けて放たれたのは、頭部ランプより発射する高威力光線“レーザーショット”。それも最大出力での照射である。

 昆虫型甲殻怪獣(インセクタス)の頑強な体表をも打ち破った同光撃は、僅か五秒間の連続照射で40mゲスラの身体を爆散させ絶命に追い込んだ。

 

 ……彼の武器はまだある。

 左腕に取り付けられた「炎」を思い起こす真紅の赤色塗装で染まっている火砲腕装ファイヤーアームから発射する高エネルギー火焔弾“ファイヤーショット”を忘れてはならない。

 直撃を許した対象を文字通り焼却する砲火の容赦なきフルチャージショット猛連打は、二体目の大ゲスラの体内水分を瞬時に沸騰させ風船のように中から弾け飛ばした。

 

 残る三体目の大ゲスラはと言えば、接近戦へ移行してきたウインダムが腕装から出力した百熱の刃――“メルトダガー”により斜め上からバターの如く両断、体格と重量差で強引に押し切られなす術なく撃破された。

 

クエッ、クワァアア〜ッ!!

 

 実体化から一分も経たぬ間に、漁港侵攻を目論んだ準大型ゲスラ3体を怒涛の勢いで葬ったウインダムは、左腕を天に掲げ勝ち鬨を上げる。

 

『――ウインダムの実用行動時間、残り127秒ですっ!』

 

 そのウインダムの姿を一瞥しつつ、ミライは尻餅をついたままの村民…新川達に駆け寄り、立ち上がる補助をしながら説得に移る。

 

「……新川さん、ウインダムが支えている今のうちに避難をお願いします! この村は、僕たちが絶対に守り抜きます。どうか信じて……僕は貴方がたに傷ついてほしくないんです。お願いします…!」

 

 マグロ漁師…新川や他の村民たちの気持ちはミライにも分かる。

 だから彼は引き退らなかった。誰かが悲しむ顔を彼は見たくない。

 

―――クアッ!!

 ――――ゲァアアアッ!?

 

 ミライの背後…アカレンガ湾海上では、海中から飛び掛かってきた新たなゲスラ――50mの大型個体を、ウインダムが咄嗟に背負い投げをし、腕装による打突を交えた徒手空拳を叩き込むところであった。

  

「………兄チャンからの願いってえなら、無下にはできねえ。それに、あの赤いトサカロボットの奮闘も無駄にしたくねぇ。

 ――――村を頼む。死ぬなよ。兄チャンに嬢ちゃん、ゴールドマグロを馳走する約束は、いまでも有効だからな」

 

 五日という短い期間でありながらも、新川ら漁村住民はミライと接し、その人柄を知ることができた。

 故に、この若者になら…彼にならと想いを託せる。

 ここに居座り続けるのは、村のためにも、彼のためにもならない。

 そう考えを改めた新川含む残留組の村民らは、負傷により後退を命令された一部の警備局員らに護衛される形で、漁村から急ぎ離れるのだった。

 

 ―――クェッ! ガァアッ!!

 

―――キュイイイインッ!――ドジュッ!!

 

 一方、沿岸でのウインダムと大型ゲスラの取っ組み合いは終わりを迎えるところであった。

 高速回転させたメタリックシルバーの右拳によるストレートが、生々しい音を響かせながらゲスラの体を抉り貫く。

 

 ―――グェエエエ、ゲェエエ………!!

 

 胴体中央に無理やりドリル穴を空けれられたゲスラが、苦しげに呻き、口から白泡と黒い汚水を滴らせ後退る。

 それにウインダムが追撃を掛ける。火焔弾と破壊光線からなる一斉射(フルバースト)は、寸分の狂いも無く裂傷部に命中し、そのままゲスラは断末魔も上げれず大爆発するのだった。

 

 大型ゲスラ撃破を見届けたウインダムは先の如く勝利の余韻には浸らず、各種生体センサーを用いた索敵を行ない、湾内海中の個体群を捜索する。

 彼に残された時間はあと1分と20秒ほど。……“シッテムの箱”に最適化を施される際、アロナから主人(ミライ)が万全な状態ではないと言い聞かせられていたウインダムは、少しでも多くのゲスラを討ち取らんとしていた。

 残存個体の数を減らせば減らすだけ、主人の負担と港の被害が減る。

 

『――っ! ウインダム、後ろです!』

 

 …刹那、ウインダムはオペレーター(アロナ)の声もあって背後より高速で迫る新手を察知した。

 四肢にびっしりと配されている多目的ノズルを使った横軸ジェット噴射で180度の急旋回。背後…否、眼前の海面が、大きく逆立つのを彼は目撃する。

 

 少なくない水飛沫を伴いながら、煌めく群青の海原から巨大な影が太陽を背にしてウインダムに飛び掛かってきた。

 

―――お前が、この群れの()()か!!

 

 その影…思わずウインダムが心中で“ヌシ”と形容した巨影は、先ほど爆散させた大型ゲスラよりも更に一回り大きい体躯を誇っていた。

 

 僅かな動揺もせずウインダムは左腕の滅却火砲を襲い来る影へ向ける。

 だが、それを巨影……群れの統率者――キングゲスラが許さなかった。

 開かれた大口より噴射したのは、通常個体のそれよりも収束性、貫通性に優れるハイドロカッター…“ハイドロキャノン”とも言えよう黒き一閃。

 

 ウインダムよりもキングゲスラの方が仕掛けるのが早かった。極太の超高圧水流は、火砲腕装の表面装甲を削り飛ばし、その照準を大きく逸らした。

 青空に橙の光跡が駆ける。

 

 海面にて、銀の機獣と海魔の王が対峙する。

 

 ウインダムと対峙するキングゲスラの目は怒りに燃えていた。

 

 陸地に上がった同胞達が次々と虐殺され、助けに向かわせた兵隊らは突如現れたこの銀色の何かに尽く斃されたのだから。

 群れの一大()()()を邪魔されキングゲスラは湾に怨嗟の咆哮を轟かせる。

 準大型、大型の個体――群れの守り手である兵隊の残りは全て、他地点に上陸した小集団の護衛にあたっている。

 今、この場で、この銀色の化け物を倒さねば各地へ散らばろうとしている同胞達は全滅する。

 

―――ボォアアッ!!

 

 ……()に追いつかれても同様の末路を辿るだろう…と思い至ったキングゲスラは、目下最大の障壁である銀の怪異――ウインダムに死に物狂いの体当たりを繰り出す。

 

 対するウインダム。

 ハイドロカノンを受け損傷したファイヤーアームは、高濃度汚水と強酸性胃酸による汚染と侵蝕が広がり、機能の殆どを失っていたが…鈍器としてはまだ十分使える状態にあった。

 トンファーと化した火砲腕装をキングゲスラの横合いに打ち込む――が、毛むくじゃらの剛腕にそれを掴まれ阻まれてしまう。しかも、ゲスラの爪の先端からは神経猛毒“ショッキングベノム”が分泌されていた。

 同神経毒は、生物だけでなく、金属を含む精密機械にさえもダメージを与える。

 

―――……ギュピッ! クゥワオッ!

 

 毒の影響まで律儀に貰うつもりはない鋼の戦士は、腕装の即時投棄を決断。左腕からファイヤーアームを強制パージした。

 パージされた火砲腕装は、マケット(ウインダム)本体からの実体構築情報の供給が絶たれたことにより、実体化を維持できず形状崩壊を起こして緑の分子ミストへと還り虚空に霧散。

 ウインダムの左腕は自由となり、それをすぐに真上へ振り上げるとそのまま上段からの手刀打ち(チョップ)に持っていく。メタル星原生生物特有の銀に輝く特殊合金に守られた手刀は、純粋な凶器だ。

 その一撃は精密に、掴んでいた腕装が消え去ったことでバランスを崩していたキングゲスラの脳天へ鮮やかに決まった。

 

 頭頂部に奔った激痛に堪らず大きく飛び退くキングゲスラだったが、ハッと我に返る。

 この距離はヤツの距離だ、と。

 瞬間、黄色の破壊光線がキングゲスラに命中。その巨体は吹き飛ばされ海面へと仰向けに叩きつけられた。

 

 海面でもがく“(ヌシ)”に対し、ウインダムは残りの活動時間全てを使ったレーザーショット照射に踏み切ろうとしていた。

 群れの頭目さえ潰せば、烏合の衆と化した残りはニンゲンたちでどうにかすると思ったが故である。

 

『――うみどり2号より港湾交番へ。3号と共に海鮮市場へ進む個体群へ仕掛ける。中通りの警備隊を退避させてくれ!』

『―――CP、こちらシャドー01。港湾空域現着。まずは小粒を減らす。シャドー各機、続け』

『――――目標ーっ!七番赤煉瓦倉庫前の準大型敵性生物! ヒトロク各車、撃てっ!』

『――タイガー2、五輌つける。ターミナル中央へ突入せよ』

 

 実際彼…ウインダムはアロナ経由で逐次届く地上の__半分は無許可傍受である__情報から、ヴァルキューレ航空局の一個ヘリ小隊、防衛室の二個対戦車対舟艇中隊と急派増援の一個攻撃ヘリ中隊、そして()()()()()カイザー戦闘団が水域区画に進出・展開を始め、各所でゲスラ群と交戦していることを把握している。

 ニンゲンたちは巻き返しつつある。ならば憂いは無い。

 自分の役目をキッチリやり遂げるのみだった。

 

 ―――トドメを刺す。

 

 両腕を掲げ、頭部ビームランプへ動力を回す。ターゲットは捕捉済みだ、外すことなど無い。

 

 満を持して発射…!―――その時だった。

 

『左に大型反応!気をつけてください!』

 

 側面海中よりまったく別の()()がやってきたのは。

 

―――ゲォオオオオオ!!

 

 不気味なる叫びを上げながら海水を巻き上げて姿を現したのは、ゲスラ…ではなかった。

 

 ―――なんだ、コイツは。()()()が違うぞ。

 

『――あれ!? ドキュメント上に類似種族すら見当たりません!!』

 

 ウインダムの電子頭脳にも、アロナ管理のアーカイブドキュメントにも記録の断片さえ無い、未知の水棲怪獣。

 ソレは、ゲスラと同じトカゲ…両生類や爬虫類系ではなく、両眼は赤く、身体全体にウロコ、首元にエラ、前頭部にはチョウチンアンコウの擬餌状体(エスカ)を想起させる触角器官を有し、魚類…特に深海魚の特徴を組み合わせたかのような出立ちの二足歩行の怪生物であった。

 

 ――ヴォオオッ!!

 

 第三の乱入者に対して威嚇するのはキングゲスラ。

 内に秘める殺意は、ウインダムに向けられているモノと同等かそれ以上だった。

 ()だ、()が来てしまった。

 奴こそ、ウラガ海溝を新たなテリトリーにしようとした自分達を…群れを襲ってきた犯人である。このアカレンガへの予定なき大逃避行をせざるを得ない原因を作った元凶だ。

 

―――深海怪獣ゲードス。

 とある世界では、漁師たちの間で「海の悪魔」として古代より伝えられ恐れられてきた怪獣であり、一度腹を空かせれば見境なく水産資源を食い荒らし、更には陸上生物にまで手を出すとされる存在だ。

 下手をするとゲスラよりも厄介な暴食怪獣である。

 ……この怪獣こそ、現アカレンガ地方の人々が信仰してきた海の神――“わだつみ様”であった。

 

 先述の世界では、「海への敬いや畏れを忘れた」者たちの前に現れるのだとも言われていた。

 故意であれ事故であれ、こうした水棲怪獣の人類生存圏への侵入並びに接触は、怪獣同士による縄張り争いの他、人類側の無遠慮な海洋開発の進行に比例して増加していく傾向にある。

 

 ………このキヴォトスにおけるゲードスとは、太古よりウラガ海溝深海域を生息地とする惑星原生の未確認怪獣であった。

 原典(ブレーザー)世界よりも温厚な性格を持つキヴォトス産ゲードスがこうして海上へ姿を見せたのは、他所の…キヴォトス超大陸から遥か遠方の海域より餌を求めて回遊してきたゲスラ群との衝突が発端になる。

 数日間に渡る群れと群れによる超深海で苛烈な縄張り争いを繰り広げ、多数の成熟個体を犠牲としながらもゲスラ群を海溝から追い出すことに成功した。

 

 因みに、これによる影響はアカレンガ沿岸の既存魚介類たちにまで波及し、南部もしくは北部へ彼らが逃げ出すことにも繋がった。……これこそ、アカレンガ港における数百年に一度とも言われた大不漁の真相である。

 

 港湾内にて現在キングゲスラ、ウインダムと睨み合っているこのゲードスは、海溝の安定化で満足できず、他所者の大トカゲどもにこちらの棲家を脅かしたツケを払わせるべく追ってきた、過激な排他的思考を有する大型個体だった。

 

―――トカゲ(ゲスラ)は皆殺し。決して許さぬ。慈悲は無い。

 

 …このゲードスも、ある意味でゲスラの被害者なのである。

 先のウインダムへの妨害は、仇敵の親玉を奪われることを嫌ってのものだった。

 ……互いが互いを牽制する三つ巴の状況。まず動いたのは活動時間が心許ないウインダム。

 

 功を焦ってではなければ、破れかぶれの特攻でもない。

 どうやらゲスラと新種(ゲードス)は敵対している、というのは彼にも分かった。圧を掛け続け潰し合うのを待つ消極的対応はすぐに択から外している。

 …自分が自由に戦える時間は30秒も無い。いや、10秒もあるか怪しかった。

 

―――クォオオオッ!!

 

 ならば…最後まで双方に圧を掛けながら、場を掻き乱してやる――と、ウインダムは二体の注意をこちらに割かせる雄叫びを上げ、電子頭脳と直結している頭部ビームランプがオーバーヒートにより焼き切れるのを覚悟の上で、高出力レーザーショットを手前の海面へ横薙ぎに発射。

 それによって海水が破壊光線と反応し、二体の海棲怪獣がすっぽり隠れるほどの巨大な水のカーテンが形成された。

 

 ウインダムの唐突なあまりの奇行に、ゲスラとゲードスが唖然としかけるも、警戒は怠らなかった。

 いつこちらに仕掛けてくるか、それとも隣りのヤツに襲いかかってくるか…身構える。

 そして、重力に従って降ろされていく水幕の先に―――

 

 

 

『―――VANISH(バニッシュ)

 

 

 

 ―――ウインダムはいなかった。空中にも、海上にも、海中にも、いない。その姿を忽然と消失させていた。

 活動時間の終了(タイムアップ)だ。彼は降りる水のカーテンと共に分子ミストの桜吹雪と化した。

 湾海上に残るは、キングゲスラとゲードスのみ。再び現れる気配の無いウインダム。

 海棲怪獣二体は、三つ巴の均衡が崩れたと悟った。次に始まるのは、サシでの決闘。どちらも互いを正面に据えるよう向き直ろうとした。

 

 ……カーテンの向こう側に、ウインダム()いなかった。されども、()()()()()()――

 

『――12式地対艦誘導弾(SSM)、終末誘導!』

『――無人突撃艇、全艇最大速!“よたか”、“しろわし”は水上機動戦よーい!』

 

 ―――オデュッセイアの陸海同時攻撃が二体に襲いかかってきた。タイミングを測っていたかのような…と言うよりも、ミライと言う時間計測員(タイムキーパー)前線観測員(フロントスポッター)をこなす現場指揮官がいたからこそ出来たドンピシャの芸当であった。

 

 ……まず海辺の怪獣たちの眼に映ったのは、弩級戦艦をも一撃で大破轟沈へ追い込む空飛ぶ音速の殺戮者と、水面を滑るように疾走してくる__()を怒りの赤に染めた__高性能炸薬・短魚雷満載の無人特殊攻撃艇(アヒルさんボート)が、こちらへ束となって押し寄せてくる光景だった。

 

 

 

______________

____________

_________

 

 

――時は少し前…キングゲスラ、ゲードス、ウインダムが湾中央にて戦闘を開始する前後に遡る。

 

 

 

D.U.アカレンガ港 同水域区画

 貨物区域 物資集積所(コンテナターミナル)

  ターミナル中央広場

 

 

 

―――ガガガガガッ!

――ズガアンッ! ドドドドッ!

 

――――キインッ!……スパンッ!!

 

 積み上げられたコンテナとガントリークレーンによって形成されているミニチュア摩天楼の中で、明色、鉛色の曳光が幾度も交錯している。

 

『――歩兵連中は90式(タンク)か装甲歩兵の盾の後ろに隠れろ! 真っ二つにされるぞ!』

 

 片やカイザーの陸戦部隊、片やゲスラの小中個体混成上陸群。

 コンテナや倉庫施設を盾に、カイザーPMCの90式戦車改や全高10m弱の〈歩行戦車(パワーローダー)“ダイダラ”〉がゲスラのハイドロカッターに砲火で応酬していた。

 

 カイザーPMCのアカレンガ救援戦闘団主力は、貨物区域に強襲上陸し市街地方面に浸透を目論んだ小型中型混成群を沿岸部近辺まで押し戻すことに成功。

 湾沿岸の荷捌き用小湾の手前…臨海倉庫地帯までゲスラたちを追い込んでいるところであった。

 

「湾ではまだ大型と例の連邦産ロボが殴り合いしてるってのにここでドンパチとかよォ……生きた心地がしねえ!」

「なんで俺たちは港で化け物と撃ち合ってるんだ!? D.U.で市街地行軍訓練ってのは嘘だったのかよ畜生!」

「聞いたか?『極力港湾設備を傷つけるな』だとよ、あのクソ役員!戦車砲ぶっ放した時点でそれは出来ねえ相談だってのに!!」

「本社の顔色でも窺ってるんだろ!()()()()だよ、点数稼ぎ!」

 

 機甲戦力の随伴部隊である通常歩兵は、上記の主力戦車、或いは「現代の鎧甲冑」…全面装甲式パワードスーツを纏った兵士こと、装甲歩兵が構える重層構造の耐弾盾に隠れ、砲声に負けぬ大声であれこれ述べ合って突撃の時を待っている。

 

 彼らカイザー戦闘団がここ、貨物区域を主戦場に選んだのは、物資集積所の背後に自社グループ企業――カイザーインダストリー及びカイザーエネルギーが共同管理する大規模な臨海石油化学コンビナート地帯があるためだ。

 カイザー戦闘団は、団長である臨時少佐が本社理事長プレジデントより受けた命令により、この地からのゲスラ一掃を遂行中であった。進捗度合いで言えば凡そ7〜8割がたといったところである。

 …奇しくもそれが、アカレンガ港沿岸全域にて発生したゲスラによる強襲上陸を防ぎ止める壁の一つとしての役目を果たしていた。

 

『おい!ダンタル6、敵がお前に指向してる!回避運動!』

 

 腕部の三連装大口径ガトリング砲をゲスラに浴びせかけていたダイダラの1機が、僚機(バディ)に向かって口を開いているゲスラを見つけ叫んだ。

 

―――キュイイイン…シュピッ!

 

 彼…ダンタル5の警告もむなしく、ダンタル6搭乗の歩行戦車の胴部側面を高圧水流が貫いた。

 ダンタル6のコクピット内に被弾アラートが表示される。

 

『うぐっ!?ダンタル6、機体に被弾、貫通しまし………な、なんだこれは…トカゲの体液か? ―――嘘だろ、そ、装甲が融解してるっ!?うわ゙あ゙あ゙あ゙ーーーっ!!!』

 

 水流に混合されていた強酸胃液によって、ダイダラの複合装甲は急速な腐食が進み、一部はコクピットと動力炉に到達していた。

 

―――ドォオオオン!!

 

 パイロットの悲鳴と共に上下に分かれて爆散する歩行戦車。その周りにいた歩兵一個分隊10名が、巻き添えを食らい臨海道路の真ん中に放り出された。

 

『――っ、ダンタル6のローダーと随伴歩兵がやられた!』

 

 ダンタル5のコクピット正面モニター上から、行動可能表示であった前方の友軍マーカーが一挙に掻き消えた。

 

『やはり酸だ、アレは酸だ! ヤツら、胃液と下水を吐き出してる!!』

『薄いとは言え、戦車と同等の複合装甲をも難なく溶かすとは…なんて化け物だ…』

『ただの水鉄砲じゃないのかよ!?』

 

 足元の兵士達が狼狽えている。動揺が広がりつつあった。

 されど戦車隊(タイガー)と彼の母隊である歩行戦車隊(ダンタル)は違った。

 

『こなくそっ!くたばりやがれ!!』

 

――ガガガガガッ!

 

『目標中型3体。各車、弾種徹甲、てぇッ!』

 

――――ドゥンッ! ドドゥン!!

 

 ダイダラ数機による腕部ガトリング砲での豪勢な制圧射撃で、狙撃してくるゲスラ達を遮蔽に引っ込めさせると、その側面へ回り込んでいた90式戦車改の小隊が120mmの装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)を繰り出し、無防備に下げていた彼らの頭部側面を一撃で貫いた。

 

『…タイガー2よりタイガー1、指揮車(コンダクター)。敵集団沈黙、ターミナル中央広場を制圧したと認む。現在までの我が隊の損害は中破1、小破5。全車、戦闘続行は可能。送れ』

 

 ぐりんと白眼を剥き、ズズゥン…! と、頭から前のめりに倒れ込むゲスラ群を確認した彼らは、すぐに戦闘負傷者の回収に移る。

 

『――こちらダンタル5っ。これから結城伍長…ダンタル6のコクピット周辺の瓦礫を除去する!』

 

 ダンタル6のダイダラが、スラスターを吹かして遮蔽から飛び出し、路肩に転がるダンタル5のコクピットの側に滑り込んだ。

 複数の〈Type-89(89式)歩兵戦闘車(IFV)と90式戦車、そしてダイダラがそれに続く。

 

『小隊全員傾注ッ! いいか、6小隊の野郎ども!俺たちは名誉ある決死救助隊に選ばれた! 道路の真ん中で呑気に伸びてるお仲間とダイダラのパイロット、さっさと回収して戻るぞ!戦車隊とローダー隊の援護がある!気合い入れろお!』

『『『了解!』』』

『――よーし、降車だ行け行け行け!ゴーゴーゴー!!』

 

 再度のゲスラ接敵が予想される地点…しかも身を守る遮蔽物等が一切ない道路上での負傷者救出劇が始まった。

 倒れている兵士達を守るようにIFVが壁を形成し、中からは第6歩兵小隊の兵士らが降車していく。

 彼らが二人一組で持っているのは折り畳み担架と耐圧容器である。

 

「……ダメだ…第2小隊第4分隊全10名、()()してます!」

 

 倒れる歩兵の側に駆け寄った衛生兵の一人がそう無線機に叫んだ。

 

 “停死”。

 単なる行動不能…昏倒や気絶の類いではなく、「死」に最も近い状態に陥っている者を表す、“機能停止”と“死亡”を組み合わせたロボット族特有の造語及び概念である。独特なイントネーションのため、「停止」とは明確に聞き分けができる。

 これは、何らかの事情で動力供給(生命維持)能力が停止、或いは各部の重要パーツが破損するなどして動作不能となり独力で通常状態への復帰できず、尚且つ、自他…体の内外の情報更新が止まり時間の経過を認識できず自然復帰が見込めない者を指しており、この状態は可能な限り速やかに回復されなければならない。

 

「そんなことは分かってる。アタマとボディが無事なのはさっさと担架に乗せてIFVに運び込め! 問題はダイダラのパイロット…結城伍長の方だ!工兵、操縦席のカバーを剥げ!」

「「っハッ!」」

 

 キヴォトス人類の中でもロボット族は、生徒含むヒューマノイド族や獣人族と比べると()()の耐久性は低い。

 

 その代わり、と言ってはアレだが、彼らは炉心…心臓からの動力供給が停止してしまったり、頭、胴、四肢が飛んでしまったりしても、胴部内の炉心(コア)パーツか頭部の頭脳(ブレイン)パーツが無事なら新たな身体パーツ一式を揃えてやれば完全な蘇生が可能なのである。

 これは上記二つの身体パーツに、人格や記憶といったプライベートデータの大部分が入っている故にできることだとも言える。

 

「……うわっ…ダンタル6、伍長も停死! パーツがコクピット中に散乱してますよ…!」

「伍長のコアかブレインのユニットパーツを回収しろ!基地に戻ったら()()できる! まだ死んでねえ!死ぬ気で見つけろ、いいな!!」

「了か………み、見つけました、小隊長! 頭と胴体上部はほぼ無傷です! 引っ張り上げて保管容器へ入れます!!」

『――第2小隊第4分隊全員の収容、間も無く完了!』

 

 尚、頭脳・炉心以外の各部位重要パーツにも容量は少ないが個人データが入っている記憶端子が内蔵されているため、最低でも腕や足の一本拾ってくれば蘇生()()()可能だったりする。

 但し、その場合は対象人物のデータ復元量が少なくなり、記憶喪失のそれと同じ症状を発症する。

 

 少しでもコレを防ぐためには、対象人物の停死前後に同じ場所に居合わせた人々から対象人物に関わる情報を抽出させてもらい、出来る限りの()()()をする、或いは定期的に人格・記憶データバックアップを取って保管してくれる停死保険屋に予め入るか、自前でバックアップ用サーバーを用意する、若しくはロボット族への福利厚生が充実している企業団体組織に入っておく他ない。

 

「よくやった! 6小隊は後退準備!負傷兵担いでトンズラするぞ!」

 

 ……ただし、この記憶の復元があまりに不完全な場合、当人の状態によっては別人として戸籍を再度登録させ新たなスタートを切ってもらう…こともある。

 つまり、元のパーツが全て見つけられず、スペアの身体パーツや個人データのバックアップさえ用意していなければ、そこで初めて外界人の定義する“死亡”判定を受けるのだ。

 

 身体を機械に置き換えることで不老は克服できたものの、完全な不死を獲得するには至らない………ある意味で外界人と最も近い存在…それがキヴォトスのロボット族なのであった。

 

 

 

「―――こちらはコンダクターである。救助を終えたのならば、さっさと第5埠頭に取り付いているトカゲどもの掃討に移行せよ!」

 

 その戦闘団主力から数百m後方の港湾倉庫が立ち並ぶ貨物保管区域にて、護衛の90式を数輌伴わせ待機しているのは、臨時少佐こと団長が座上する82式指揮通信車。

 

『コンダクター、こちらダンタル10!交戦想定域内の埠頭周辺倉庫内にヒトと思しき熱源反応を多数確認。逃げ遅れた民間人の集団と推定する! 指示を乞う!』

 

「ダンタル10、命令に変更は無い!民間人が多少どうなろうとも構うな!これはグループ関係者並びに社有財産の保護に基づく、緊急時の限定処置である! 何も気にすることは無い!射撃を開始しろ!!」

 

 戦闘団全体と繋がる無線を片手に、それへ唾を吐き掛ける勢いで怒鳴る少佐は、本社の評定への備えに躍起となっていた。

 戦場に身を投じた彼が指揮権を早々放棄する…という大尉の予想は外れた形だった。少佐は大尉や下士官らが思っていたよりも地位への執着が強かったのだ。

 

 戦場の状況把握など最早眼中にない。だからこそ人道に沿わない信じられない命令も平気で飛ばす。

 ただただどこまでも戦果、戦果、戦果を、であった。

 

「臨時隊長殿、再考願います!埠頭近辺に民間人が残されているのならば…ここで撃ってしまえば、我々は今次事件介入の大義名分すらも失っ――」

 

 昨今のキヴォトスにおけるカイザーグループ全体の評価評判と言うのは、お世辞にも良くはない。

 極端な営利主義と実力主義を推し進める彼らは、他企業グループらと比べて収賄であったり横領であったり、越権恫喝脅迫紛いの行為…即ち不祥事が多かった。

 

 巨大企業グループであるが故…そして上記のような行いの影響で、多数のロボット族を除くキヴォトス市民の、カイザーが行なう事業へ向ける目は鋭く、その一挙手一投足が注目されているのだ。

 

 しかも、今回のアカレンガ怪獣襲撃事案に関わっているカイザーPMCという企業は、同グループ軍事部門における著名な…広報でも引っ張りだこな看板会社である。

 この連邦生徒会直轄領内の海洋拠点で何かやらかせば、忽ち稼ぎ頭の同社は炎上し、最悪グループ全体へその影響が及んでしまうことだろう。

 そうなってしまえば、真っ当な社員、汚い社員関係無く、グループの明日(お先)は真っ暗。多くの社員が生きる伝手をいきなり失い路頭に迷うことになるかもしれなかった。

 

「――ええい、くどいぞ大尉ィ!トカゲどもの好き勝手にさせろというのか! 馬鹿も休み休み言え!!」

 

 ……ただでさえ無茶を押し通してこの場に来ているのに、その言い訳(命綱)をも自らで手放してしまうというのは自殺行為に等しい。

 それを理解していたがため大尉は、少佐に命令の修正を願い出たがあっさり却下され、代わりに罵声が返ってくるのみだった。

 

「そんなことになれば、共同利用地であるアカレンガ港臨海部のみならず、我がグループ所有の臨海石油化学コンビナート地帯まで危険に晒されるのだぞ!? ――安心しろ、戦車砲程度で人は死なん!!」

 

 そうは言うが、大口径砲の射撃自体で死傷者が出ずとも、死傷の間接的要因となる可能性は捨てきれないのも事実。

 

「それでも掠れば重度の打撲…最悪骨折でしょう!戦車砲は120mm、ダイダラの腕部機関砲で50mmですよ!? あの場で負傷してしまえばヤツらの格好の餌食です!」

「デコイが増えればその分戦闘団の損害は抑えられる!」

「人道的見地に則り、不要な犠牲は可能な限り減らすべきです!」

 

 ……企業とは一定の信用と信頼があってこそ成り立つものであって、それらを疎かにして投げ捨ててしまえば、待っているのは破滅(倒産)へ繋がる道だけだ。キヴォトス市民は少佐やカイザー本社重役らが思っているより盲目ではない。

 だからこうして常識のある現場側の社員たち――大尉や歩兵隊、戦車隊(タイガー)歩行戦車隊(ダンタル)が、目の前のゲスラと戦いながら説得に入っているのだが、リアリストたる彼らの努力は実を結ぶことはないだろう。

 

「ハッ!そのような犠牲であの忌々しいトカゲどもを殲滅できるのならば、安いものだ!有事に人道云々などとは片腹痛い、そんなもの野犬にでも食わせておけ!!」

 

 偏屈な人間ほどそう簡単に()()()()()。というより、寧ろ相手に曲がってもらおうと求めてくる。

 少佐との対話は既に破綻していた。

 

『――コンダクター、コンダクター!こちら歩兵第4小隊。一番彼らに近い我々が5分…いや2分で回収する! 我々からもタイガー、ダンタル各隊への射撃指示の一時撤回を求む!送れ!』

 

 なんとか大尉が少佐を引き止めようと奮闘していた矢先、別の隊…歩兵小隊の一つから戦闘団無線にて意見具申が届く。

 

 彼ら第4歩兵小隊は閉所での遭遇戦に弱い機甲戦力に代わって斥候役として先行していた機械化歩兵部隊だ。

 そして同小隊はいくつかの装甲輸送車を有し、すべての通常歩兵に脚部補助器(アンダーアシスター)が与えられている、人機共に機動力に優れた健脚部隊だった。

 

「なんだとぉ? 第4歩兵小隊、意見具申は許可していない。その態度は処罰の対象となるぞ、分かっているのだろうな!!」

 

 …別案を挙げ再考を促した第4歩兵小隊隊長を、自身のやり方にイチャモンを付けたと認識した少佐は大層立腹したようである。

 

『……あの中には同胞(ロボット族)もいるかもしれないんだぞ!…第4小隊――前進!我々のみで民間人保護を実行する!!』

 

 カイザーでさえ経験したことの無い有事…それが怪獣災害だ。

 PMC兵士の彼らは、停死以上の理不尽を平気で何度も振り撒く怪獣と言う存在が如何に恐ろしいかを正しく理解していた。そして、武器も持たぬ市民がそれらと相対してしまうことなど論外、狂気の沙汰であるとも。

 

「なあッ!?貴様ら乱心したか!! 団長である私の命令が聞けんのだな!この愚図共めぇ、第4歩兵小隊は全員その場で停死処分だ!!

 コンダクターより第4歩兵小隊近辺の各部隊へっ!各隊は第4歩兵小隊への懲罰行動を開始せよ!!これは団長権限に基づく最優先命令である!!」

 

 だが悲しいかな…4小隊の命令不履行を単なる独断専行と認定した少佐は、怒りのあまり頭部ユニットあらゆる排気口という排気口から熱風を噴き出しながら同小隊に対する行き過ぎた処罰――現場での即時処刑を短絡的に宣言した。

 それは「軍の規律を引き締める」と言うより、「自分の権威を知らしめるため」…という呆れた動機からきた宣言だったが。

 

「何を仰っているのですか!?今は作戦行動中、しかも拘束等を飛び越えて友軍による督戦隊紛いの停死処分とは…目標も多数健在であると言うのに…!」

 

 顔面(バイザー)に灯る二対の目を、あまりの驚きから丸くさせる大尉。

 少佐の暴走は止まらない。

 

「アァッ!?貴様も私に歯向かう気か大尉ィ!先ほどからこの私に何度も何度もぬけぬけとぉ…!私は本社の…カイザーの上級役員だぞ!特務少佐だぞ!?

 ……そうだ、停死処分は貴様からだ大尉!下士官の不手際は幹部の不手際である!!」

 

 彼の怒りの矛先は、手近な部下…大尉に向けられた。

 

「この状況下で何をっ……!」

 

 支離滅裂な物言いに絶句する大尉。

 対する少佐の目をよく見れば明滅を繰り返しておりショート寸前だった。完全に正気を失っている。

 ……戦場の恐怖から来るストレスが、彼を壊してしまったのかもしれない。やはり、戦闘を一度も経験したことの無い者に、指揮官が務まることなどなかったのだ。

 

「すぐにこの車両から降りろ!私自らが貴官を銃停処断する!!」

 

 自身の状態が異常だと自己診断もできなくなった少佐は、大尉の首を掴むとドアへと叩きつける。

 少佐が上半身に纏っている先進装備(アーマー)と連結した軽量パワードアームを使っての無遠慮な投げ飛ばしだ。

 装備によって底上げされた腕力は、ロックの掛かったサイドドアごと大の大人一人…大尉を車外に放り出すことを可能とした。

 

 背中からドアに叩きつけられ、そのままアスファルトの大地に転がる大尉。

 

「「大尉!」」

「貴様らも不用意に動くなあ!! アイツを処分したらすぐ指揮車に戻る!貴様らは貴様らの仕事をしていろ!!」

 

 一部始終を見ていた車内後部座乗の通信員たちは大尉の元に向かうべく席を立とうとしたが、左手に機関拳銃を握りこちらにそれを向ける少佐によって阻まれた。

 通信員らが席に戻るのを一瞥して、少佐は指揮通信車から飛び降り、立ち上がるのに四苦八苦している大尉の前までやってきた。

 

「………っ!」

 

「まったく無様だなぁ大尉。手でも貸してやろうか、ええ?」

 

 大尉に銃口を向けながら少佐が嗤う。

 

「貴様のような青二才で幹部とは、我がグループのPMCも質が落ちたものだ…」

 

 憐れみを含んだ視線を投げながら少佐は引き金を引き絞っていく。

 

「調子に乗った若造の妥当な末路というヤツだよ大尉。本社所属の、この私に逆らったからそうなる。……だが良かったじゃないか。鉛玉一発、復元蘇生一回で新たな学びを得られるのだからな。

 安心しろ、コアパーツは射抜かんよ。()()貴官に期待する。それではな、大尉――」

 

―――ピュン!

 

「――――ぁっ」

 

 刹那、笑みを浮かべていた少佐の頭部ユニットの付け根…首元を、黒く煌めく細線が貫いた。少佐の胴体から頭が転げ落ちる。

 何らかの一撃で頭部と身体を引き離されたカイザー高官は、ぷつんと糸が切れたかのように膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れこんだ。それと同時に彼の手中から機関拳銃が離れる。

 

 呆気ない停死。

 

「臨時隊長殿が即停! 4時方向に伏兵がいる!」

 

 少佐を停死に追い込んだ()()()は、倉庫の陰で呑気に四足で佇んでいた。

 残党の小型ゲスラだ。彼は初めてハイドロカッターで敵を仕留めたことに喜び咆哮を上げている。

 

『――タイガー7、やれ』

『了』

 

――ドゥン!!

 

 伏兵を確認した指揮車護衛の90式戦車改(タイガー7)が砲塔を回転させ、主砲たる120mm連装滑腔砲の砲身を雄叫びをなおも上げ続けているゲスラに定め即座に射撃。胴部に徹甲榴弾を命中・炸裂させ、これを難なく駆除した。

 

『…後続はいないようだ。単独、逸れた生き残りかもしれない。――大尉、無事か』

 

 周囲の安全を再確認し、指揮車から降りてきた部下たちが大尉に肩を貸す。部下らの助けも借りてなんとか立ち上がった大尉は手持ちの無線機でタイガー1へ返答した。

 

「ああ、俺は大丈夫だタイガー1。タイガー7に『感謝する』と伝えておいてくれ。――全部隊に通達。現団長が敵性生物の攻撃により先ほど停死。規定に基づき、これより自分が戦闘団長を引き継ぎ各隊の指揮を執る」

 

『タイガー1よりコンダクター、了解した。これより我が戦車中隊は貴官の指示に従う』

『ダンタル1、了解。大尉が指揮官(コマンダー)なら歩戦中隊からも異論は無い!指示をくれ!!』

『コンダクター、こちら歩兵中隊第1小隊。第4小隊から民間人を保護し後退、第6小隊と合流したとの報告を受けた!流れ弾の心配はもう無いぞ!』

 

「よし。ならば各隊は第5埠頭へ進出し、埠頭内に居座る敵性生物の残存個体殲滅に掛かれ! まだ湾にはデカブツが二体も控えてるんだ、手早くやるぞ!」

 

 大尉は各部隊へ指示を出し終えると、部下からの歩行補助を断り、自らの足で停死した少佐の前まで歩み寄った。少佐の残骸を見下ろす彼の瞳は氷点下である。

 

「………因果応報、と言うべきなのかもしれんな。既に聞こえてはいないだろうが臨時隊長殿、貴殿の今次作戦における違法かつ不適切な言動の数々は全て各隊員の胸部カメラとレコーダーが録っている」

 

 ……大尉と少佐の運命が分かれたのは、外見(みてくれ)の派手さであった。太陽光をギラギラ反射する装飾を身につけていた臨時団長は、ゲスラが好む、狙いやすい標的だったのである。

 

「個人データ復元と蘇生の後、貴殿がまず受けるのはカイザー本社で文民としての役職昇進や降格ではなく、PMC軍事法廷で軍属として下される刑罰だ」

 

 動かぬ人形と化した男にそう吐き捨て、大尉は82式通信車へ戻る。

 

「ソレを回収し、念の為胴体には拘束具を付けて車に乗せてくれ。後部の空きスペースでいい」

「「っは!」」

 

―――ズズゥウウウウン!!

 

 湾の方向からの轟音と振動。状況を指揮車の通信兵に尋ねれば、どうやら湾内の大型怪獣二体に対してオデュッセイアの無人艇攻撃が行われたとのこと。

 戦いはまだ終わっていないのだ。他水域区画や湾中央海上でもまた戦闘は続いている。

 カイザーPMCのアカレンガ救援戦闘団は、目前の第5埠頭解放に取り掛かるのであった。

 

 

 

______________

____________

_________

 

 

 

D.U.アカレンガ港 商業区画近辺

 港湾第6市街

  沿岸工房団地

 

 

 水域区画…湾に面する海岸からほど近い職人の工房街は、住民の避難によって無人と化していた。

 野犬も横切らぬそんな通りの端に、ナンバープレートを隠匿し車体を黒く塗り潰したキャブオーバー型自動車(ハイエース)が一台停まっている。

 

 車窓全てにスモーク処理が為されているため内部の様子は外から一切窺い知れなかった。

 

『――また状況が変わった…シャーレのロボットが消失し、残った大型同士で戦闘を再開したのなら……トキ、臨戦待機を解除。当初のプランで決行するわ。先のミーティングで話したように、今回貴女に与えた任務は()()の実戦データ収集になる。

 可能な限り他勢力との接触・戦闘は控えてちょうだい。離脱の際はルートCを使い、Dは予備ルートとして、AとBは破棄。回収地点には〈V-22(ミサゴ)〉を寄越すわ。

 ……最後にトキ、何か貴女から今回のプランに関する質問等はあるかしら』

 

 移動前線指揮所(MOP)仕様に改装された車内後部の空間には、金髪の長髪を結った碧眼の寡黙そうな少女が座っている。

 ホログラム通話に映る()()に問い掛けられた――トキと呼ばれた少女は無表情でそれに淡々と回答する。

 

「はい。いいえ、リオ様。私からは特にありません。準備は万端です。――ご指示を」

 

 旧“SRT特殊学園”の戦術セーラー服を模した欺瞞戦闘服を着、近未来的形状の大型携帯発射機(ミサイルランチャー)怪物喰らい(モンスイーター)”を涼しい顔で背負っている彼女は、己の主人…リオなる少女からの「任務開始」の号令を今かいまかと待っている。

 

『そう…なら良いわ。――コールサイン04(ゼロフォー)、状況を開始しなさい。……帰ってくるまでが任務よ、いいわね』

 

「イエス、マム…!!」

 

 トキの待ち侘びた瞬間がやってきた。己の実力を存分に奮える、そして示せる久方ぶりの機会の到来だ。

 

「コールサイン04、飛鳥馬(アスマ)トキ――」

 

 彼女を乗せる改造ハイエースの運転手を務めるミレニアム製次世代オートマタ“AMAS”の操作によって、瞬時に開け放たれるリアゲート。

 

「――スクランブル!!」

 

 そこから、セーラー服に身を包んだエージェント04が驚異的脚力で、さながら電磁カタパルトで射出される空母艦載機が如く飛び出し、背部の装備の重量をまったく感じさせない機敏な動きで瞬く間に戦場へと駆けて行った。

 

 

 

______________

____________

_________

 

 

 

D.U.アカレンガ港 水域区画

 アカレンガ漁村

  わだつみ海浜公園

 

 

 キングゲスラとゲードスに対する、オデュッセイア分屯地の残存火力を結集して行われた陸海一体の総攻撃は、二体の動きを一時鈍らせるなどの効果があったが…それらを受けてなおその海棲怪獣らは健在。

 取っ組み合い(プロレス)は継続中だった。

 彼らの周囲をオデュッセイア分遣艦隊のミサイル艇2隻が高速機動で機関砲を用いた嫌がらせをしたが、両者に見向きもされず高圧水流の流れ弾を受け戦域を一時離脱していた。

 

(―――この戦いは長引くとマズい)

 

 一方、漁村にてゲスラ群の上陸阻止をヴァルキューレ港湾警備隊と合同で従事していたミライとキリノは、あの直後に漁村へ進出してきた連邦生徒会・防衛室の第1対戦車対舟艇中隊隷下の一個増強小隊__16式機動戦闘車4輌及び〈Type-96(96式)多目的誘導弾(MPMS)2輌__と合流。

 彼女らを連れて波止場よりも自由に動ける村落の広域公園へと迎撃陣地を移し、港湾の水域区画各地にようやく展開した防衛室所属部隊と共に、キングゲスラ、ゲードス…大型二体の包囲網構築を急いでいた。

 

(二体が陸地側に寄ってきてる。このままだと地上の被害が増えるかもしれない)

 

 その中でミライが出した結論は、両者が潰し合い消耗するのを悠長に待ってはいられない…打って出る必要がある、というものだった。事態の収拾までの時間が長引くのもそうだが、何よりその間に発生が危惧される戦闘の二次被害の拡大を恐れた。

 ……アカレンガ港に集結しているヴァルキューレ・防衛室・オデュッセイアの部隊が大型怪獣を撃破せしめる、又は港湾から叩き出せるほどの決定的火力を用意できていない以上、静観の択はありえなかった。

 

(――やっぱり僕が行くしか…)

 

 ミライが変身を決意し、ここまで横で自分のサポートに尽力してくれたキリノに声を掛ける。

 

「キリノちゃん、僕はここから移動して別方向から陽動を掛ける。…キリノちゃんにはシッテムの箱を預かっててほしい。これが反撃の鍵なんだ。皆んなへの指示はシッテムを通じてラグ無しで伝わる筈だから心配しないで」

 

「ええっ!? ほ、本官が特級機密端末(シッテム)を預かっても大丈夫なのですか!? それに心配なのはヒビノ先生の方です!どうしていきなりこのタイミングで!?」

 

 ミライは嘘を吐くのはあんまし得意ではない。

 やや…と言うより、かなり強引な話の持っていき方だが、これぐらいじゃなければこの場から離れられないだろう。罪悪感も感じるが、これも必要な手間賃なのだと自分に言い聞かせた。

 

「大丈夫。絶対に戻ってくるから。僕を…信じてほしい」

 

「うぅ………分かり、ました。先生のその言葉を信じます。ご武運を」

 

 キリノから渋々の了承を得て彼女にシッテムの箱(アロナ)を預けた。

 港湾警備隊と防衛室地上部隊の面々には漁村の守備を頼み、ミライはホルスターからトライガーショットを二丁引き抜くと漁村に隣接する海岸森林の方へと走る。

 

 遠ざかる彼の背中を、キリノは一糸乱れぬ敬礼で見送ると、漁村防衛のために再び奔走を始めるのだった。

 

 

 

――――

――――

――――

 

 

 

バラバラバラバラッ!

 

 湾の空には、連邦生徒会防衛室所属を表す空色と白色に塗り直された旧ソビエト連邦赤軍製の傑作攻撃ヘリ〈Mi-28 ハヴォック〉の一個攻撃ヘリ中隊――シャドー飛行隊が怪獣らの上で円を描くように舞っている。

 彼女たちはシャーレの指示で空中待機、攻撃を中止し動向監視に徹していた。

 

『――湾の大型、両方ともめちゃんこタフですね飛行隊長』

 

 そう後席に座る飛行隊長…シャドー01操縦士に尋ねるのは前席のガンナー。

 軽口を叩きながらもキングゲスラ・ゲードスから近未来的バイザーより投影される電子照準を一度たりとも外していない。

 

『……対艦ミサイルへの耐性とも言うべき堅牢さを持ってるんだ。殴り合い程度では勝負は決まらんってこったろう』

『……もどかしいです。シャーレのトサカロボットがあんだけやってくれたのに』

『辛抱だ、またシャーレの先生からの指示が来る。それまで私たちは―――っ!各機散開!回避(ブレイク)回避(ブレイク)っ!』

 

 それは突然のこと。

 

―――ビュインッ!!

 

 下界…海上からヘリを撃墜し得る高圧水流…ハイドロキャノンが襲いかかってきたのだ。

 だがそれは彼女達を狙ったもの…ではなく、キングゲスラが砲撃態勢に入っていたゲードスに突進を喰らわせたことで射線が大幅に上にズレて流れてきたものだった。

 

 鈍色の線が青空を斬る。

 

―――スパン!

 

『――しまった!後部(テイル)ローター破損、海上に墜落する!!』

 

 不幸にもそれがシャドー01の後尾を奪った。安定を失った機体はすぐに墜落の道を辿る。

 

『メーデー、メーデー! ハボック・ダウン!ハボック・ダウン!!』

 

 油圧系統を片っ端から弄り、残りのメインローターで何とか揚力を取り戻そうと試みる01操縦手。

 だが彼女らを乗せるハボックは復帰の努力も虚しく、湾海へ激しく錐揉み回転をしながら真っ逆さまに落ち続ける。又、こちらを焦らせるかのように、大小の振動と浮遊感が何度も襲いかかってくる。

 いくらキヴォトス人と言えど、脱出できない状況下で機体と共にショック態勢も取れず海面と激突すればタダでは済まない。

 

『衝撃に備えろ――!』

 

 視界一面に迫る青に光る絶壁。

 シャドー01の二名は、来たる衝撃とその後の水没を経験する覚悟を決めてきつく目を閉じた。

 

 

 

「―――メビュウーース!!!」

 

 

 

 しかし衝撃も轟音も、待てども待てどもやって来ない。そして今まで感じていた振動や浮遊感さえ消え去っていた。

―――いったい、何が起こってるのか?

 シャドー01の操縦手と射撃手の両名は、勇気を振り絞り閉じていた両目を開いた。

 

『…う、ウルトラマン…?』

 

 コクピットから見えたのは、こちらを覗く暖かな乳白色に輝く大きな一対の瞳。

 彼女達の前に現れたのは光の巨人…ウルトラマンメビウスであった。彼は墜落するハボックを高速飛翔形態である光球状態で難なくキャッチしていたのだ。

 

『私たちを、助けて…くれた?』

 

 射撃手の呟きにメビウスがゆっくりと、されどハッキリ頷いた。

 連邦ハボックのパイロットらが無事であることを確認したメビウスは、漁村の臨海公園――キリノたちの元に降下し、機体を地上に置くと湾の方へ身体を向ける。

 

『――港湾交番、聞こえるか!こちらうみどり3号!アカレンガ港水域区画に、ウルトラマン…ウルトラマンメビウスが出現した!!』

 

 こうしてメビウスはキヴォトスにて二度目の顕現をするに至る……のだが、前回戦闘時と変わらずカラータイマーは開幕から赤色に点滅している。

 やはり一回二回の変身で新環境への適応は厳しかったようである。されどメビウスはそれも織り込み済みだ。

 

―――セアッ!

 

 彼は戦闘を止めて新手であるこちらを見ている湾内の二大怪獣目掛けて大きく水平跳躍し、一気に距離を詰める。

 二体が慌てるがもう遅い。メビウスのダブルラリアットが炸裂した。水飛沫を上げ仰向けに倒れるゲードスとキングゲスラ。

 

――ゲェエェッ!!

 

 それでも二体もやられてばかりではない。メビウスの顔目掛けてまずゲスラがハイドロキャノンを即時発射した。

 対してメビウスはバック転でその初撃を避ける。続けてゲードスの超水流が放たれたが、これはなけなしのエネルギーを使って防御技――多重円形の光子(フォトン)防壁(バリア)“メビウスディフェンサークル”を発動し防いだ。

 

 巨人がバリアを解除しファイティングポーズを構える。その先には態勢を立て直した水棲怪獣が二体。

 彼らは潰し合いを再開せず、一丸となってメビウスに突撃を敢行した。……両者とも互いを敵だと認識していたが、巨人の力量の高さを察し、即座に状況を整理。

 「取り敢えずはアイツ(メビウス)を仕留めてからだ」と思考が一致したことで、巨人を倒すまで一時休戦…即ち条件付きの同盟関係を結んだのだ。

 

 活動エネルギー残量に不安材料を抱えているメビウスは、分断からの各個撃破ではなく短期同時撃破を選択。

 先に飛びかかってきたキングゲスラに回し蹴りを喰らわせ、二の矢である初見怪獣(ゲードス)を正面で迎え撃つ。

 

――バチッ! バチバチバチッ!!

 

〈っ! 放電能力持ち…!!〉

 

 こちらに首をスイングするゲードス。その頭部にある一本の触角器官が鞭の如くしなりながら、電光を走らせたのをメビウスは見逃さなかった。

 電撃も毒に並ぶ恐ろしい攻撃手段の一つだ。ウルトラマンも生物な以上、当然()()である。

 

 現在の彼が最も危惧しているのは、何らかの事象により反撃不能状態となったところで一方的に袋叩きにされること。

 

〈今の僕が、()()を受けるワケにはいかない――!!〉

 

 幾多の狩猟活動によって洗練された予備動作(スイング)を経て繰り出されたゲードスの伸縮触角。それが超高速でメビウスの身体に巻きつかんとする。

 直接接触すれば状態異常付きの大ダメージが待っている。故に彼は咄嗟に腕装(ブレス)を備える左腕を振り抜いた。

 

セヤァアッ!!

――ズバッ!

 

 ゲードスの電気鞭は巨人には届かなかった。

 何故なら、それが()()()()()()()()()からだ。

 

 赤き腕装(メビウスブレス)()として、そこから()()()()のは黄金に輝くプラズマスパークの刀身。

 

 光剣“メビュームブレード”。メビウスブレスから発現される切断性に優れた光子刀剣である。

 伸縮触角とゲードス本体を泣き別れさせたのは、これの抜剣斬撃であった。

 

〈……次はどう来る…?〉

 

 ブレードを構え直しゲードスと相対するメビウス。

 そうしていると、案の定とも言うべきか…無防備な背中を晒していると考えたキングゲスラが巨人の背後からハイドロキャノンを放ってきた。

 これを連続側転で躱わしたメビウスは牽制光線(メビュームスラッシュ)を数発、すかさずゲスラの頭部へ集中的に浴びせ怯ませる。

 

 だがそれはゲードスによる超高圧水流発射の好機を与えることとなる。かの怪獣の切り札はエレキウィップだけではないのだ。

 ゲスラ種の汚水吐きと比べ、初速、有効射程距離、連続放射時間で勝るゲードスのハイドロキャノンは、メビウスと言えど回避は困難。それは先のメビウスの対応…光子防壁の緊急展開が証明している。

 見てからの回避はやって出来ないことも無いが…確実性もまた無い。一撃は貰ってしまうか――メビウスは内心歯を食い縛り水流直撃を覚悟した。

 

「――“対獣徹甲誘導弾(フルメタル・ミサイル)”、発射…!」

 

――バッシュウウウウンッ!!!

 

 その時である。

 ゲードスの背後…湾水上の浮き桟橋(ポンツーン)に立っていた小さな影から、轟音と白煙を発する銀槍が放たれ飛翔した。

 

……ズンッ! ――ドガァアンッ!!

 

 銀に輝く槍…超硬金属製の高速誘導弾がゲードスの数少ない弱点――背部排熱口付近に着弾した。

 新型誘導弾はその余りある運動エネルギーで表皮を突き破り炸裂。内部に外殻の破片と炸薬を撒き散らし、破壊をもたらした。

 突然の有効打にゲードスが痛みから身を捩らせ唸る。

 

 ……ゲードスの背にある排熱口は変温動物に類別される彼にとって、地上にて活動する際に無くてはならない必要不可欠な重要器官だ。

 これが無ければ地上での体温調整が上手くできず身体がオーバーヒートを起こし行動不能になってしまう。

 

「――表皮の損傷及び内部での爆発を目視で確認。また、熱源誘導にも問題ナシ。徹甲弾頭弾は怪獣に対し有効と認める。ただし、単体の携行火砲レベルでは威力不足で撃破までには至らず…と言ったところでしょうか」

 

 その重要器官が、たったいま損傷した。…一人の生徒の手によって。

 奇しくもそれがメビウスの窮地を救うこととなった。

 

〈セーラー服の、女の子…? 僕を助けてくれた?〉

 

 メビウスの瞳が浮き桟橋でバズーカを構えるセーラー少女を捉える。

 

「あれがウルトラマン…たしかに実物の方が断然カッコいいですね。――射撃ポイントを変更します。次、濃縮サーモバリック弾頭を装填」ジャコン!

 

 コールサイン04、エージェント・トキである。

 …彼女に課せられた任務は、キヴォトス産(ミレニアム製)対怪獣装備の実戦テスト。ミレニアム上層部の極秘指令に従い行動していた。

 

 桟橋を凄まじいスピードで走りつつ、携帯発射機(モンスイーター)に流れるような手つきで背腰部の弾薬ケースから替えの誘導弾を装填する。

 疾走の勢いを極力殺さない、且つ狙いが定まるよう、片膝でスライディングしながらの射撃姿勢に移る。

 彼女が担ぐ発射機の照準サイトは慌てふためくゲードスの頭部をロックオン済みだった。

 

「――撃ちます…!」

 

――バシュッ!!

 

 斯くして二射目が放たれた。トキの後方にバックブラストが吹き荒れ、光の槍が飛翔した。

 弾頭を赤く塗られた誘導弾は、内蔵するレーダーによって目標との距離が一定まで――ゲードスの顔面近くにまで達したと計測した瞬間、弾体内部の濃縮サーモバリック…気化爆薬が作動、炸裂する。

 直後、摂氏2,000度を優に超える直径10m強の真紅の灼熱球が、海棲怪獣の前に現れた。

 突然の超高熱源の眼前出現に、ゲードスは驚く暇も無く顔を焼かれ、眼球は水分を急速に奪われ干からび瞬時に壊死した。

 

サーモバリック(こちら)も効果アリ……しかもクリティカルヒット。ブイブイ」

 

 苦悶の咆哮を上げ、その場で地団駄を踏むゲードス。

 深海怪獣の失明させた主犯ことトキは、相変わらずの仏頂面のまま、湾に並ぶ浮桟橋を次々飛び越え、地上…岸壁へと移ったことでゲードスの近接攻撃が及ぶ範囲からの離脱に成功した。

 湾に振り返り、やたらめったらに暴れるゲードスを一瞥して任務達成の報告を行なう。

 

「新装備の実戦テストは完了と判断。コールサイン04、これより戦域から速やかに撤収します。………これは借り一つ、です。また何処かでお会いしましょう――メビウス様」

 

 …その後セーラー服のエージェントは、湾近傍から内陸側…回収ポイントに指定されている港湾市街地某所へ向かうべく、建造物群の上に飛び乗り飛び移りを繰り返して颯爽とその行方をくらました。

 

 さて、思わぬところから援護と好意を貰ったメビウスだが、ずっと金髪少女のアグレッシブな立ち回りを見て呆けていた訳ではない。名も知らぬ少女へ心の中で「ありがとう」と唱え、不意に転がってきたチャンスをものにすべく、既にその身をアカレンガの遥か空に()ばしていた。

 

 これを撃墜しようとキングゲスラが最大出力の高圧水流を放たんとしたが、機を窺っていた__アロナに管制された__オデュッセイア、ヴァルキューレ、連邦生徒会の陸空部隊による後頭部――三半規管や索敵機能を有する重要部位である背鰭(弱点)への統制射撃を受け、射撃目標の捕捉が困難となり断念。

 結果。行動妨害を受けることなく、メビウスは下界に落下を始めた。目指すはゲードス…その軌道は一直線。

 メビウスは降下速度をそのままに体を捻り回転させ始める。光剣を携えた状態での高速回転により、巨人は黄金の螺旋と化してなおも突入する。

 ゲードスにこれを防ぐ手立ては無い。

 

――セヤァアアーーーーッ!!

 

 吠えるメビウス。盲目の海魔を襲う連続回転斬り。

 

 グォオオオ………ッ!

 

 巨人の着水から僅か一秒…ゲードスは斜めに“三枚おろし”ならぬ()()()()()にされ、ブレードが纏っていたプラズマエネルギーと反応を起こし、しめやかに爆発四散。

 

 天敵が呆気なくやられる様を目の当たりにしたキングゲスラはメビウスから背を向け、この土地から離れろ…と湾内の群れ残存個体に呼びかけ海中に飛び込み撤退しようとしたが――

 

『ここまでやられて、逃すわけないだろうが!! “よたか”水里より“しろわし”、こちらに合わせろ。90式SSM、てぇッ!!』

 

『コンダクターよりタイガース、あの大型を逃すな。ヤツを逃せば、数を増やしてまたやってくる。叩くなら今しかない!』

『タイガー1よりタイガー各車、聞いての通りだ。やるぞ。目標…“王冠持ち(クラウン)”。―――撃て』

 

 ――それは湾海上を疾駆していたオデュッセイア分校のミサイル艇二隻が発射した艦対艦誘導弾と、荷捌き区画沿岸に展開していたカイザー地上部隊の90式戦車改(タイガー)一個中隊による120mm砲での集中狙撃によって阻まれた。

 

―――ハァアッ!!

 

 背を向け足踏みをし致命的な隙を晒すキングゲスラを、メビウスは逃すほど甘くはない。

 ゲードスの爆発をバックにして、抜剣状態のまま、十字光線――メビュームシュートを最速動作で放つ。

 完全に足を止めてしまったゲスラの王の背に、明色の輝きを放つ光波熱線が突き刺さった。

 

 必殺光線を浴びたキングゲスラは、体内組織の光線エネルギー蓄積量が超過し、表皮の隙間という隙間から閃光を溢れさせ最後に断末魔を上げながらの大爆発を起こしたのだった。

 

 

 

 

 

 

―――ゲェエエエ…! グエエエッ!?

 

 アカレンガ湾水底の人工岩礁に隠れ潜んでいた群れの残党は悲壮と恐怖を伴った鳴声を一斉に上げた。

 赤き巨人(メビウス)天敵(ゲードス)だけでなく、統率者(キング)をも撃破されたゲスラ残党。

 群れを率いる者が討伐され、天敵以上の存在が健在であることに彼らは嘆いた。

 

 …自身らを守ってくれる大型種の兵隊たちは陸での戦いで皆やられてしまっている。この湾内において、彼らはあまりに脆く、最も弱い集団に成り下がっていた。

 ここに留まっていても、陸に上がっても命が無い…ならば海へ戻るしかない。彼らは全力で逃げるという選択をした。

 

―――しかしながら、それは遅すぎる選択であった。

 

 

 

…………コォオオオオン……コォオオオオン…!

 

 

 

 ゲスラたちは狼狽えた。

 

 海中…それも湾の出入り口の方向から、()()()()()()()()が聴こえたからだ。

 忘れもしない。あの音は、()()()()()()()()だ。

 海溝からの大移動の途中、海に浮かぶ鉄の塊たちが発していた音――アレが聴こえれば、次には海、或いは空から死の槍が迫りこちらの命を奪っていった。

 

 アカレンガ沖海戦の時よりも、例の()は圧倒的に多かった。二倍、三倍では足りない、ゲスラたちにとっての死神の声…艦艇より発されるソナー音は湾内で何度も何度も反響する。

 それもそうだ。何せ広大なるアカレンガの湾口は、既に海上を数十のミサイル駆逐艦、ミサイルフリーゲートが、そして海中はそれらと有線操作ケーブルで繋がれている数十の無人潜水艦によって封鎖されていたのだから。

 

 湾口に浮かぶどの艦にも、オデュッセイアの校旗が掲げられている。それは、アカレンガ統合任務艦隊の増援として急行していた大艦隊。

 

『――こちらは、オデュッセイア海護部序数艦隊(ナンバーズ・フリート)が一つ、第2機動打撃艦隊。本艦は艦隊旗艦、戦略空母“A137”である。

 現在湾内にて交戦中の友軍、並びにその他勢力、港湾管理センターに通達する―――』

 

 その艦隊中央に在るのは、左右に〈改いずも(いぶき)型護衛艦〉2隻を控えさせる未完の超巨大航空母艦(〈ユナイテッド・ステーツ級〉)

 そして、それらの航空甲板より吐き出され続ける無数の哨戒機と艦上戦闘機の群れ。

 

『―――これより…湾水底に潜伏中のゲ号標的群の残存個体は、我が艦隊麾下の艦艇及び航空機の全戦力を以って排除する。至急、湾中央水域並びに空域からの退避を強く推奨する。なお、ワレへの支援は一切不要である』

 

 蒼と茜が混じりだした空と海よりやってくるソレは…正しく、怒りに満ちた死神の戦列。

 

 そのタイミングは果たして偶然か。

 ……夕焼けに染まりつつある港湾の漁村地域各所の電柱に備え付けられている村内放送用スピーカーからは、夕方のチャイム(『蛍の光』)が流れはじめた。

 

 

 

――――

――――

――――

 

 

 

「海中のゲ号標的、全て捕捉しました。いつでもやれます」

「了解した。残敵処理という形だが、気を抜くな」

「っハッ!」

 

 今も「オデュッセイア水軍の父」として語り継がれている外界出身偉人の名を刻まれた戦略航空母艦“A137”は、栄光の第2機動打撃艦隊旗艦を務める海上の不沈航空要塞である。

 同艦には、大規模なステルス設計が盛り込まれた巨大艦体に見劣りしない主要艦橋(アイランド)が左舷中央部甲板に存在する。

 

「…“わらび”以下A-JTF艦艇の弔い合戦ですね」

 

 アイランド中層の航海艦橋内で第2機動打撃艦隊の司令生徒にそう語りかけたのは同生徒の補佐役であり同級の二年生でもある“A137”の艦長生徒だ。

 

「ああ。………あの人は……真海先輩は、泣いてたって。あの先輩の泣き顔なんて、正直想像がつかない」

「………」

 

 第2艦隊の司令生徒は、第32哨戒艦隊司令生徒の後輩であった。彼女にとって第32艦隊司令官とは、尊敬すべき海兵の先輩にして、実の姉のような存在だった。

 

我が校(ウチ)の生徒にとって“フネ”とは、第二の家であり、共に航海するクルーは、第二の家族だ。

 ………そんな想い出が沢山詰まった(フネ)を…沈めたんだ、あの人達を傷つけ涙を流させたんだ。私はヤツらを許さない」

 

 彼女の表情は冷静そのものであるが、心内では沸々とした激情を理性で抑え込んでいる。自分が想い寄せる者を傷つけられたと知れば…こうもなろうと言うものだった。

 

「艦隊、対潜及び対水上戦よーい…!」

「艦隊ッ、対潜及び対水上戦よーい!!」

 

 たった一度の号令で、海に浮かぶ鋼鉄の城たちは眠りから目覚める。

 

「……ここが連邦港湾で良かったな、ゲスラども。N2爆雷で生きたまま焼かれずに済むのだから」

 

 ゲスラの群れに、死刑宣告が迫る。

 

「―――第2艦隊、攻撃開始。ヤツらの一匹一片も…アカレンガに残すな」

 

 仇討ちに燃える第2艦隊司令の命令の下、水上艦艇からは次々と光の矢が昇り、無人潜水艦からは雷槍が無数に放たれた。それに続いて艦載機からは航空爆雷、対潜誘導弾が次々撃ち下ろされていく。

 ゲスラの群れに、オデュッセイア生以外の誰もが「流石にオーバーキルだ」と溢すほどの…抗いようの無い死が近づく。

 

 忽ち海中の群れはパニックとなった。逃げ場はもう何処にもない。

 

 堪らず水面に顔を出した小型個体が、“AGM-84(ハープーン)”空対艦ミサイルを受け即死。

 続いて無謀にも、封鎖された湾口を突破する切込役として最前で進んだ勇敢な中型個体が、無人潜水艦隊からの雷撃を多数受けて海の藻屑と成り果てた。

 そして、水底の人工岩礁で右往左往するのみの残りのゲスラたちには、航空爆雷とアスロックが面制圧の勢いで満遍なく降り注いだ。

 

―――アカレンガ湾からは、自らの最期を悟った海獣たちの…物悲しい慟哭がこだましたのだった。

 破砕する水面。立ち昇る水柱とそれに混じるゲスラだった大小の肉片。

 第2機動打撃艦隊による病的なまでに徹底された対潜攻撃によって、アカレンガに襲来したゲスラ群はこれで全滅した。

 

―――シュワッチ!

 

 湾に立つ赤き巨人――ウルトラマンメビウスはその輝く瞳でゲスラたちの最期を黙して見届けたのち、オデュッセイア第2機動打撃艦隊とアカレンガ分屯基地の対空索敵網による追跡を完全に振り切って茜空の彼方へ飛び去った。

 

 海獣の慟哭が途絶えたアカレンガの港湾には、災厄を乗り越え後始末に入る緊急車輌のサイレンと、穏やかな波のせせらぎのみが…響いている。

 

 

 

______________

____________

_________

 

 

 

D.U.アカレンガ港 水域区画

 アカレンガ漁村

  わだつみ海浜公園

 

 

 

 オレンジの空の下、アカレンガ漁業集落内の臨海公園。

 そこでは現在、ヴァルキューレ港湾警備隊と防衛室地上部隊が任務終了…ゲスラ撃滅に伴う園内環境の復旧並びに撤収作業に追われていた。

 

「ど、どこですか…?」

 

 そんな中で心ここに在らずな浮かない表情で、あちこちをキョロキョロとまるで何かを探すかのように彷徨き歩いている警察学生はキリノである。

 

 彼女も漁港防衛戦では、メインアームの“第3号ヴァルキューレ制式拳銃”で小型個体の急所を見事撃ち抜いた…りと言うのは無く。彼女が突然の接敵にテンパって落とした、ピン抜き済みの発煙弾(スモークグレネード)を更に慌てて蹴り付け、偶然にもそれが汚水吐きの準備動作に入っていたゲスラの口内へゴールイン。

 モクモク白煙を吐き出し続ける発煙弾を喉奥に飲み込んでしまったゲスラは、鼻口から白息を垂れ流しジタバタしているその隙を突かれ、グスタフ対戦車砲で仕留められた…という破茶滅茶なエピソードもあった。

 

「ヒビノ先生ぇ…」

 

 そんな彼女が探しているのはシャーレ顧問…ミライだ。自分に機密の塊である端末“シッテムの箱”を半ば強引に預け単独行動に移ってからというもの、インカムでの通話一つ寄越してこないのだ。

 ミライがキリノと別行動を取ってからもう2時間は経過している。仮ではあるものの、今日までの五日間を共に活動してきた顧問である彼の安否を気にするのは至極当然であった。

 

「声も上げれず、身動きも取れない状態になっていたら…」

 

 もしや怪獣との戦闘か、それの余波で動けぬほどの傷を負い、何処かで助けを求めているのでは…と、らしくもなくアワアワ狼狽えるキリノ。

 

「あの時に本官が無理をしてでも止めていれば…こんなことには…!」

 

 以前にも書いたように、彼女は良くも悪くも正義感と責任感に厚い模範的警察官だ。それ故に己のとった言動に何かしらの後悔を感じてひどく凹むことだって、悩むことだってある。

 今が正にその状況であった。

 

「本部の生安局一年の…えっと、中務って言ったよな? 大丈夫か?」

「アンタ、分校の埠頭で会った時よりヒドい顔してるぞ…」

「何処かやられたのか?」

 

 その様子を見ていていたたまれなくなったのは周囲で後片付けの作業指揮を執っていた沿岸警備隊の中隊長と、ミサイル艇“よたか”を漁船用埠頭に仮留めして降りてきたオデュッセイアの艇長である水里、そしてメビウスに助けられた防衛室攻撃ヘリ中隊指揮官機…シャドー01操縦手の、高等部三年生3人である。

 

 出身校や所属こそ違えど、何らかの形で彼女と接点を持っていた二つ上の先輩方は、瞳に涙を溜めて俯く後輩――キリノにそれぞれ優しい声色で何事かと尋ねた。

 

「ヒビノ先生が戻ってこなくて…それに何の連絡も無いんです…」

 

 たしかに。言われてみれば、栗毛頭の青年(おとな)がどこにも見当たらない。

 彼女の落ち込み具合に先輩三人は合点がいった。

 

「海浜公園から離れる手前の、中務と先生のやりとりは少しだが聞いている。あの人はお前に『必ず戻ってくる』と約束したんだろう?」

 

 三人の中でも、事情をある程度知っている港湾警備の中隊長がキリノにまだ希望を捨てるなと語る。

 

「それに、まだ死亡かどうかも確定していない。あたしとしては、ヒビノ先生はこんくらいのことでポックリ逝くようなタマじゃないと見てるが……」

「仮に捜索となった場合は、我々防衛室はあらゆる力を貸すことを惜しまない」

 

 警備中隊長に続いて、キリノを元気付けるように話すのは面と向かってミライと話した“よたか”艇長の水里と、彼の指揮下につき通信越しでやりとりをしたシャドー01操縦手。

 辛いかもしれないが、まずは落ち着け。言い方はそれぞれ違うが、誰もが概ねこのような想いであった。

 

 キリノが上述のような彼女らの思い遣りの言葉を受けて、「はいっ!」と精一杯の強がりの笑顔を見せ、涙を肩の袖で拭った時だった。

 

「――おーい!キリノちゃーん! 皆んな〜!」

 

 一人の大人が、大きく手を振りながら屈託のない笑顔でこちらに走ってきた。

 夕焼けに照らされるその大人は、先の話題の人物…ヒビノ・ミライ先生本人だった。

 

「ヒビノ先生ぇっ!!」

 

 ミライを目にするや否や、()()()()()()()キリノは一目散に彼へと駆け出し……

 

「キリノちゃん、大丈ぶ――」

「せんせぇ〜っ!!」ドゴォッ!

 

 ……制帽付きの頭頂部から、無警戒(ノーガード)だった彼の腹に思いきしダイブをぶちかました。ミライの胴部からは、人体から出てはいけないだろう音が出た。

 

(((あっ、今やっばい音した……)))

 

 又、キリノの精神ケアのため寄り添っていた故、偶然にもその場に居合わせた三校の現場トップ生徒らの顔は忽ち青ざめた。

 

「ごふっ」

 

 ――ここで思い出してもらいたい。これまでの様々な場面で何度も…そう、何度も記したように、キリノと言う少女はヴァルキューレの警官である以前に巨大学園都市の女子高生であり、更にそれ以前に肉体強度が地球人類の十数倍はあるキヴォトス人である。

 要するに…だ、この正義感に厚い文字通りの石頭による頭突きは外界人が決して受けてはならない__ わざわざ言い換えるならば、クレーン鉄球の打ち込みと何ら遜色ない__殺人級の一撃なのだった。

 

 幸か不幸か…ミライの人間体が有する素の肉体強度は地球人のそれに等しかったが、同形態の彼にはウルトラ族の光因子由来の身体強化…加護(バフ)とも言うべきものがフルオートで掛かっているため、現状の肉体スペックは並のキヴォトス人にやや劣るくらいのものに仕上がっていた。

 つまるところ、キリノ渾身の頭突きに対して、中途半端に耐え切ることができたのである。無論、彼の意識は飛びかかっていたし、胃から虹色に輝く流体(キラキラ)が出そうにもなったが、本当にギリギリのところで……耐えた。

 

 ただまあ、ホントに耐えた()()である。ミライは美少女ヘッドバットの衝撃を完全には受け止めきれなかった。

 ドシャァ… と、キリノを抱いた格好でそのまま公園のジャリジャリした地面へ仰向けに倒れたのだった。

 腹部と背部の鈍痛に悶えながらも、ミライはまず自身よりもキリノの容態を気遣う。彼女の頭突きに関しての怒りなどは微塵も無い。

 ……逆に、2時間も音沙汰無しで()()()()で済んでいるのだから安いモノであろう。

 

「う……いててて。キリノちゃん、大丈夫?どこか怪我は無いかい?」

「あ゙あ゙〜先生が戻ってきてくれて本官はッ!ほん゙かん゙はぁ゙っ…!」

 

 ミライが声を掛けるも当のキリノは彼のコートに顔を埋めたまま、らしくもなくわんわん泣きじゃくっている。

 キリノがこうなったことにミライは申し訳なさを覚えてか、無言でされるがままの状態で彼女が落ち着くまで待つ事にした。

 

 ――因みに、ここからキリノが泣き止むまで、約15分ほどの時間を要したのだった。

 

 

 

――――

――――

――――

 

 

 

「―――今回の件、アカレンガのオデュッセイア分校代表として、改めて礼を言わせてほしい。アンタ達があの時来てくれてなかったら…あの打診と説得がなければ、あたしらはただただ突っ走って損害は桁違いに増えていた。ありがとう」

 

 漁船に混じって二隻のミサイル艇が停まっている漁港埠頭で、そうミライと復活したキリノに頭を下げたのはオデュッセイア海護部の水里だった。

 キリノが落ち着きを取り戻したあの後、撤収作業を完了した防衛室とヴァルキューレの部隊は一足早くそれぞれの拠点へと引き上げ、オデュッセイア分校のミサイル艇員らは分校泊地への帰港のために出立の準備に入っているところであった。

 

「それはこっちも同じだよ。オデュッセイアの皆んなの協力が無かったら、ここまで被害を抑えられなかった。水里ちゃん達オデュッセイア生には感謝してもしきれない」

 

「……今回のゲ号標的(ゲスラ)によるアカレンガ襲撃で、あたしらよりも頑固な頭を持ってる筈の本校の部室統幕連中もヒビノ先生の――シャーレの能力を少しは認めたらしい。

 あたしがあの時独断で締結した安保協定を正式なものに格上げしたいとのことだ。近いうちに何らかのカタチで統幕からコンタクトがあると思うから、頭の片隅にでも入れておいてほしい」

 

 シャーレと一丸となった各地の警官隊と防衛室部隊、オデュッセイア分校並びに第2機動打撃艦隊、そしてカイザーPMC派遣軍、ウインダム、ウルトラマンメビウスの奮闘もあって、前例の無い怪獣の大群による港湾沿岸部全域への襲撃であったのにも関わらず、アカレンガ港の港湾機能の大半は無傷だった。

 臨海地域の建造物や船舶に多少の被害は出たが、その規模は無視こそできないものの全体から見れば「軽微」であり、一部区域では通常業務を再開していた。

 

 港湾管理センターが言うには、アカレンガ港の完全な復旧は約二日程度で終わるとのことだ。流石は連邦生徒会肝入りの国際戦略級港湾。事後対応の速度も規模も桁違いであった。

 

「――失礼致しますッ! 艇長、出航準備が整いましたので、お迎えにあがりました!」

 

 高速艇“よたか”から降りてきた水里の部下が帰投の用意を終えた旨を伝えにやってきた。

 彼女に水里が「うん、わかった」と返礼し、こちらにもう一度振り向くと緊急出航時とまったく同じ旧海軍式敬礼をミライとキリノに見せた。その顔には笑みが溢れている。

 

「それじゃあ迎えが来たようだからこれにて失礼する。次が何処の港、或いは海になるか分からないが……また会おう、ヒビノ先生、中務巡査」

 

 これに二人もまたそれぞれ応え、踵を返して水里は艇に乗り込んだ。

 漁港より二隻の高速艇がゆっくり出発する。それらは別れの挨拶代わりの汽笛を鳴らし分校泊地への短い帰路に着いた。

 

「……さあ、僕らも戻ろうか、キリノちゃん」

「はい!」

 

 二人も臨海道路に停めていたミニパトに乗り込み、港湾管理センターの仮事務室に戻るのだった。

 

 

 

______________

____________

_________

 

 

――漁村出発から30分後……

 

 

 

D.U.アカレンガ港 中央区画

 港湾中央管理センター庁舎ビル

  地下1F セントラル・オペレーションルーム

   シャーレ仮設事務室

 

 

 

『――それで、先生が出現させた人工怪獣…ウインダムの扱いについてですが、私もアユム、カヤ両名と同じ意見です。あくまでもウインダムは“外界国家より輸入していたシャーレ所有の大型汎用ロボット”であるとし、当面の間“マケット怪獣”の情報の一切を遮断・秘匿するべきかと』

 

 事務室内では現在、ごく少人数でのリモート会議が開かれていた。

 プロジェクターによって室内の壁に大きく映されているのは、遠隔参加者の一人であり発言者、七神リン連邦生徒会長代行。

 参加者は5名。リン、アユム、カヤ、ミライ、キリノ…一応全員が連邦生徒会関係者である。しかもシャーレ組二人を除けば全員室長クラスだった。

 

『キヴォトスの市民感情を考慮すれば、現時点での外界情報の全開示は悪手も悪手です。最悪ミライ先生が“G事変”と今回の…“G2事案”を引き起こした犯人…“怪獣使い”のような扱いを受ける可能性もあります。――先生、功労者の一人でもあるウインダムへの私たちの扱いに思うところもあるとは思いますが…このようなカタチで進めさせていただきます。よろしいでしょうか』

 

 因みに、“G2事案”の由来は、「公的怪獣事案の“2”例目であり、奇しくもゲスラの第二統一言語(英語)での頭文字が“G”であった」ことから、とされている。

 

「分かった。今はそうするしかなさそうだしね。僕はリンちゃん達の決定を尊重するよ。……ウインダムには僕から説明するから」

 

『ありがとうございます』

 

 彼女たちとミライがしているのは、アカレンガ港で発生した今次特殊生物災害――“G2事案”の連邦生徒会側が行なう事後処理と、ミライを提供元とする情報の取り扱いについての協議であった。

 数時間後には、連邦生徒会による同案件に対する記者会見がある。

 

 連邦生徒会本部の防衛室長執務室から、リンやアユムと同じくリモート参加しているカヤが、「私から少し補足を…」と小さく挙手して発言許可を求めた。

 特に拒否する理由は無い。カヤは無言の了承を他メンバーから得たと認識すると口を開いた。

 

『えー、幸いなことにシャーレの部室本棟に隣接する半地下にある多目的格納庫は50m級機動兵器を複数収納可能なサイズです。先の内容のまま、カバーストーリーの流布を実行して問題無いと考えます。

 あとは実体化…空間転送(ワープ)について問われた際の言い訳ですかね。物質転送技術はミレニアムでさえギリギリ実用段階にないので、これは先生のタブレットと同じく“連邦生徒会長の遺産”由来の超絶技術である…とした方が良いでしょう。ああそれと、『安全保障の観点から詳細情報の提示は控える』と言う文言もセットにしときます』

 

 一部からの批判もあるでしょうが仕方ありません、とカヤが苦笑して締めた。会見における、アカレンガ港湾で勃発した対怪獣戦闘の概要と推移、そして結果に関する発表は彼女の担当である。

 かなり重い役であるがそれでもカヤの表情は悪くない。何せ行政委員の予算会議での胃壁を削り合って最終的に必ず負けるレスバ(vs財務室)よりも、クロノスを筆頭としたマスコミとの罵声合戦の方が億倍マシであると認識しているからである。

 

『ち、調停室からも異論や反対意見はありません…。早速、ウインダムに関する編集済みの先行資料を各組織団体へ配布する準備に取り掛からせていただきます』

 

 連邦内外の隔てなく、あらゆる物事における対話(交渉)の仲介役を担う調停室の長、アユムがそう言うと参加者達に頭を下げて、このリモート議場から退席した。

 調停室が本気で下準備(仕込み)を行なった会議会見はどれも恐ろしいほど円滑に進行すると言われている。そんな彼女達が動いたのだから、リンやカヤの負担はかなり減ることだろう。

 

『…続いて、今回も現れたウルトラマンメビウスについてですが』

 

 それはさておき、リンが振った次の話題は光の巨人ことウルトラマンメビウスであった。

 

『ゴメスの時と同様、今回も怪獣…特型(キング)ゲスラ、()()()()と交戦、これをほぼ単騎で撃破…と。多対一でも難なく――』

 

()()()()? ゲードスって、あの赤目の魚類怪獣の名前?」

 

 しかし、聞き慣れぬワードが出たことでミライが反応して話は中断。聞き返されたリンが説明する。

 

『ええ。名付け親はカヤ室長ですよ。“新種”のままでは分かりにくいのでは、と彼女が』

『言い出しっぺの法則…と言われて、ハイ』

 

「名前の由来とか意味だったりは?」

 

『…………“()()()”と鳴いて、“()()()()”動いていたから…と言ったら納得してくださいますか?』

 

 画面越しにミライへ乾いた笑いを投げかけるカヤ室長。これはリンや副室長あたりから結構しつこくネーミングセンスを問われたに違いなかった。

 最近の小学生でも、もう少し考えて名付けるのでは…? と思ってはいけない。彼女も彼女なりに頑張ったのだ。その、ささやかな胸部装甲が如き貧相なセンスから何とか捻り出したのだ。

 彼女の役割は超巨大学園都市(キヴォトス)の安全保障統括である。こんなことは専門外であった。

 

「―――良い名前だねカヤちゃん! “分かりやすさ”で言えばこれほどピッタリな名前は無いんじゃないかな」

 

 プルプル肩を小刻みに震わせ、口を一文字に結んで黙るリンとキリノを他所に、ミライだけがカヤの命名を手放しに賞賛した。

 これはカヤも想定外だったらしく、先ほどまでの虚無一色だった顔がたちまち喜色で染まった。

 

『……え、ええ!ええそうでしょう!?そうなんです、“わかりやすさ”を追求した結果、この名前しかないとなって! ミライ先生、貴方が…貴方こそが、真の理解者であったようですね…!信じてました、信じてましたとも!!』

 

 感極まってか、空…天井を見上げたまま、眼から涙をとめどなく流すカヤ。キリノは若干引いている。リンは机上に顔を突っ伏し撃沈した。

 …そして、この()()()をミライの膝元で目の当たりにしたシッテムの箱(アロナ)が、コトコト動いた(笑った)とか何とか。

 

 上のように、大脱線した協議だったが、最終的にウルトラマンメビウスについては、引き続き調査を行なうこと、彼への対応姿勢は変わらず友好的中立を保つことを確認して、協議は軌道修正を経て詰まることなく進んだ。

 

『――港の機能復旧と並行して実施する、ゲスラの死骸撤去や有害物質の除染ですが、これらの作業は民間企業・団体に協力を仰ぐつもりです。又、D.U.アカレンガ行政府にはボランティアの募集も始めるよう指示は出してます。人手は一人でも欲しいので』

『――万一の事態…ゲスラの港湾再襲来を考え、一週間はアカレンガ区支部のヴァルキューレ警察には非常警戒体制を維持させ、平時の治安維持活動は隣接区支部からの応援部隊を用いて穴埋めします』

 

 そして、リンとカヤが交互に報告と今後の動きを述べるのを何度か繰り返したところで、協議は取り敢えず終了という流れになった。

 

「―――お疲れ様でした、ヒビノ先生」

「うん、キリノちゃんもお疲れ様」

「……ええと、ヒビノ先生。今更ですが本官もあの会議に同席していて良かったのでしょうか…? ガッツリ情報統制の話も混ざってましたけど…」

「キリノちゃんも仮とはいえシャーレの立派な部員の一人だからね。問題無かったよ」

「それなら良いのですが…。けれども驚きました!まさかウインダムがロボットの怪獣だったなんて! …しかしそれで納得もできました。先生が五つのカプセルの中から、あのウインダムを選んだ理由。そしてあの時本官に伝えた嘘の必要性も」

 

 リモート会議を終え、室内の壁掛け時計に目を向ければ間も無く18時に差し掛かるところだった。

 キリノと上のように話しながら、ミライは何かニュースでもと、点けっぱだったプロジェクターにノートPCを繋げて擬似的な大型テレビにする。

 

『―――本日のクロノスイブニングは、D.U.アカレンガ区のアカレンガ港で発生した怪獣災害の特集をお送りいたします!本日19時から連邦生徒会による公式発表もありますが、誤差です誤差!発表の予習としてご覧ください!』

 

 プロジェクターが映し出したのは、夕方の学生ニュース番組であった。

 

『まずは“アカレンガ沖海戦”です! オデュッセイア関係者に匿名取材で入手した情報を元にしたのがこちらで――』

 

 “G2事案”の特集とは言え、やはり連邦生徒会による公式発表前に編集されたものである都合からか……ある事ない事、誇張されていたり逆に窄んでいる話もあるが、内容は大体ミライとキリノが経験した出来事のなぞりであったため中略。

 特集コーナーは終盤…被災地域を抱えることとなったD.U.アカレンガ区での街頭インタビューに移った。

 

【20代ロボット族男性:配達業】

『なーんか今日は昼間っからいつにも増してサイレン鳴らしてるヴァルキューレのパトカー多いな〜と、呑気に思ってたんですよ。そしたら数分後に自分の携帯に緊急避難警報の通知が来て、そこでやっと何が起こってるか分かったって言うか……』

 

【ゲヘナ学園生:二年】

『今日は風紀の活動が非番でD.U.にって感じだったんだ。あの時は臨海鉄道駅にいたんだけど、ウルトラマンがデッカいの倒す前後だったかな…旅客駅側にさ、滅多に見ないハイランダーの装甲列車が、いきなりガーッて何両も来て――』

 

【40代獣人族男性:会社員】

『――埠頭最端で釣りやってたら逃げ遅れちまって…釣り仲間と倉庫に息潜めて隠れてたらカイザーの兵士が来てくれたんだ。俺ァあんましロボット連中の会社は好きじゃねえんだが、そん時だけは『カイザーも、たまにはやるじゃねぇか』って思ったよ』

 

【ミレニアムサイエンス生:一年】

『次に作るゲームに港町マップ出したくって、そのインスピレーションを得るためにアカレンガまで来たんだけど…まさかこんなことになるなんてぇ…!』

『そうは言ってるけどお姉ちゃん…ロボットとメビウスが来た時、大はしゃぎしてたじゃん』

『わあああ!それは言わないでミドリー!!』

 

【トリニティ総合学園生:二年】

『あぅぅ…沈んでしまったモモホビーズの船が運んでた貨物の中身は、ペロロ様の新規シリーズグッズだったんですよぉ…

 あぁ、1/10ペロロジラぬいぐるみがぁ…!モモフレンズウエハース5がぁ…!サクサクペロロ様のアクスタがぁ…! 皆んなみんな海の藻屑に。悲しいですぅ…再販まで待てる気がしません…』

 

 モモフレヲタクなトリニティ生で街頭インタビューコーナーは終いだったらしく、映像は番組スタジオに戻り、“G2事案”に対するニュースキャスターのお気持ち表明を一つ挟んで、明日の天気予報へと移った。

 

 …ミライとキリノは翌日朝、いくつかの手続きを行なった後、港湾管理センターを発し帰路に就くこととなる。

 

 

 

 これにて、コンテナ船舶“ピーターⅢ世”撃沈を端に発生したアカレンガ総力戦…G2事案のドタバタ劇は一応の終息を迎えるのだった。

 

 

 

 又、余談となるが、今回最も損害を被った組織であるオデュッセイア海洋高等学校・海護部は、撃沈された艦艇の穴埋めとクルーの入念なケアを指示。海空の無人兵器、誘導弾システムの増産も開始させた。

 

 ――真偽は確かではないが………学園母艦の艦底保管庫に安置されていた「()()()()()特型オーパーツ」を引っ張り出し、それの研究解析データを基とする非実弾兵器及び対怪獣航空機…仮称“ディープウィンガー”の開発を極秘裏に決定・着手した、とのウワサも出回った。

 

 

 





 あと
 がき

 皆様、わっぴ〜!(気さくな挨拶)
 レイ実装に歓喜する元高校球児の投稿者(逃げるレッド)です。
 投稿頻度回復しますなんて言って一ヶ月超の更新となってしまった…

 ブルアカssなのに生徒たちそっちのけでまーた怪獣プロレスとかミリタリブンドドやってるよこのss…

 メビウスのワンダバ、もっと広まってほしい。
 執筆作業用BGMとして、ブレーザーとメビウスのワンダバ、あとはガンダムビルドファイターズトライの『ガンダバダガンダバダ』を聴いておりました。

 
 
※毎度お馴染みピックアップ解説コーナー
 (独自設定独自解釈共にもりもり)

◯深海怪獣 ゲードス
 『ウルトラマンブレーザー』にて登場した新顔の地球産海棲怪獣。
 とんでもなく食い意地の悪い海の暴食家で、海での狩りで足りなければ、陸地にまで上がり腹が満たされるまで喰い尽くすのだとか。
 ブレーザー地球では江戸時代中期・日本の臨海部にも現れたらしく、当時の文献に記述が残されている。ブレーザーに討伐された個体は、漁港隣接の加工場を襲いカマボコを貪り食っていた。
 
 伸縮性の頭部触角から発する放電攻撃“ゲードスパルスウィップ”で獲物の動きを止め、口部発射の超高圧水流――ハイドロキャノンで仕留める。
 又、背部には体温調整のための排熱器官を有しており、ここを破損させれば熱暴走を誘発して弱体化を狙えると考えられている。
 誘導魚雷や誘導弾の波状攻撃をものともしない強靭な体表を持っており、ブレーザー世界ではゲードス撃滅のために派遣された“地球防衛隊(GGF)”海軍の潜水艦含む大規模な水上部隊を単騎で蹴散らした。

 アカレンガに現れたアレが、最後のゲードスだとは思えない…

◯装甲歩兵
 “重装兵”、“機甲兵”、“フェンサー”などとも言う。
 早い話、原作『ブルーアーカイブ』の“任務”でよく中ボスなどとして登場する、盾持ちNPCのこと。
 
 対爆・対弾装甲の外殻付きパワード(アサルト)スーツを着用し、パワーアシスト機能の恩恵で重厚な大盾と重火器を軽々操る、歩兵部隊の頼れる壁役(タンク)
 重装歩兵用のパワードスーツは、ヴァルキューレやSRTといった治安組織やカイザーPMC含む軍事企業から、ヘルメット団や非正規傭兵にまで良くも悪くも広く普及しており、キヴォトスではヘリや戦車、装甲車の次に「戦闘でかち合ったら苦い顔をしてしまう」存在となっている。

???「俺たちの(シールド)は、酸をも防ぐ!」
 
◯歩行戦車 ダイダラ
 カイザーPMC所有の二足歩行型汎用機動兵器…軍用パワーローダーの一種。由来は古代日本伝承の巨人「だいだらぼっち」から。
 ぼくらの“ゴリアテ”は「重歩行戦車」のカテゴリに入る。
 全高10m弱の、ずんぐりとした酷く鈍重そうな見た目のボディをしているが…案外そこそこ動けるし、脚底部と膝部には補助ローラーとキャタピラが備え付けられており、整地での機動力はある程度担保されている。
 背部に短距離跳躍スラスター、機体各所には大小の姿勢制御バーニアを有し、燃料や機体強度と要相談になるが…重力下での限定的な三次元戦闘が可能。
 
 元よりカスタム性の高い民生品(シビリアン)を軍用にグレードアップした代物で、武装は腕部着脱式の三連装大口径機関砲、背部ランドセル両側面に設置可能な誘導弾・噴進弾発射機…若しくは単装速射砲、腰部の対人固定機銃。
 格闘兵装は“拳”。
 
 ダイダラのイメージモデルは『機動警察パトレイバー』に登場する陸自の〈改97式装甲戦闘レイバー(ハンニバル)〉。
 直感的操作が可能な着衣式のパワードスーツとかも良いけれど、コクピットがあってレバーとスロットルとペダルで入力操作する昔ながらのやつも好き。

◯多目的携帯誘導弾発射機 “怪物喰らい(モンスイーター)
 ミレニアム生徒会“セミナー”、“エンジニア部”、“特異現象捜査部”の三組織共同開発によって誕生した純キヴォトス製対怪獣攻撃装備の一つ。
 便箋上、「誘導弾発射機」と付けられているが、発射機に施されているユニバーサル装填機構と砲身自動調整装置によって無反動砲や対戦車擲弾などの他火器の弾倉・弾薬を難なく使用可能な革新的大型携行火器に仕上がっている。
 既存の凡ゆる測距・誘導システムや遠隔制御装置を搭載しており、様々な場面での活躍が期待されている。
 
 後述の特殊弾頭誘導弾を使用することでその真価を発揮する。
 イメージモデルは『機動戦士 ガンダム00(ダブルオー)』に登場した実弾火砲“NGNバズーカ”。

◯AMAS
 ミレニアムで開発された次世代非人型汎用オートマタ。
 ゴツい見た目な単輪式の一つ目(モノアイ)ペッパー君(喋らないしそれほど似てもいない)とも言うべきロボット。
 頭部ユニットは某砲身付き攻撃機〈マゼラトップ〉よろしく胴体から分離・飛行が可能でドローンにもなる。
 
 胴体両側面には装甲板を備え、その裏側には短機関銃(SMG)をはじめとする小火器から掃除機に至るまで…を取り付けることが可能。脚部…太ましい一輪タイヤは防弾防爆仕様となっており、ある程度の無茶な運用にも耐え得る設計が為されている。

AMAS「――」グポォン…!

対獣徹甲誘導弾(フルメタル・ミサイル)
 前述のミレニアム上位部活動がG事変以前から()()()()()()怪獣の情報などから導き出した推定スペックを基準として開発した、超硬質金属製の弾頭と大出力ブースターを備える対怪獣用特殊誘導弾。
 大型怪獣が誇る絶対的防御力の外殻を打ち破るべく生み出された。エンジニア部部長が放ったとされる「“速さ”と“硬さ”を掛け合わせれば“最強”なんだよ」の一声から開発がスタートしたとかしないとか。
 携行誘導弾システム、車輌、航空機、艦船それぞれの規格があり、ミレニアム自治区内で極秘裏に量産・配備が進んでいる。
 
 元ネタは『ゴジラ -2000(ミレニアム)-』の日本国陸上自衛隊が運用していた同名の対怪獣誘導弾。

◯戦略空母“A(アドミラル)137(イサナ)
 オデュッセイアが過去に回収(サルベージ)してきた数々の外界産空母を研究し建造した初の純学産空母。艦載戦闘機は最新の戦闘攻撃機〈F/A-18 ホーネット〉が主力を張っている。
 その艦体は、米合衆国海軍が計画したものの建造を断念…中止するに至った超巨大空母〈ユナイテッド・ステーツ級〉そっくり。米軍の同艦との違いは、甲板側面上に従来空母らと同じ主要艦橋(アイランド)が置かれていることと、各種設備に近代化改修が施されていること。
 
 艦名の由来は、半世紀以上も前にキヴォトスに現れオデュッセイアが保護した外界人――「オデュッセイア水軍の父」と評されることとなった故人(おとな)の名から。
 彼は現海護部の空母機動艦隊や無人潜水艦隊の立ち上げと技術ノウハウ・運用思想の錬成に尽力した。
 どうやら外界の多国籍海軍――“GUYS OCEAN(ガイズオーシャン)”なる組織にいたらしい。
 ちなみに、上記の組織に在籍していた…等の重要情報を含む、当時の彼の正確な記録は殆ど残されておらず、その存在は学園の教本や歴史書に名前と偉業、画質の悪い顔写真のみが載っているのみとなっている。記念銅像の設置は本人が拒んだため現在に至るまでされていない。

 同じく外界人の名を冠する二番艦“C(キャプテン)296(ツグム)”が存在する。こちらは「オデュッセイア海軍航空隊の立役者」として知られる大人だった。
 …当該人物の姓は「真木(マキ)」である。

イサナ「天使(せいと)とダンスだ…ってところかな?」



 今回も長いし駆け足になってしもた。
 三万五千字なんて初めてでしたよ。自分でも長すぎだと思いましたが…端折るってことを投稿者は出来んのだ…許し亭許して….

 ゲードスのデザインすき。ていうかブレーザー怪獣全般がすき。投稿者は以前感想欄の返信に書きました。自分は「欲張り野郎」であると。彼の登場は必然だったのだ!!

 えーここで書かせていただきますが、投稿者はゲスラに特段恨みはありません。寧ろ好きな怪獣筆頭です。
 今回の原稿読んでくれた遥かなる(他県在住)友人からは「ブルアカssで何で怪獣側曇らせてんの?キミ変な宇宙ケシでもやってんのか?」っても言われたり…
 曇らせと言うか怪獣にも背景を生やせユウカしてたらこうなっただけなんや…信じて…

 これでミライ先生はヴァルキューレやオデュッセイアとは一端離れることになる…予定です。
 あとはここから、一部或いは二部構成のお話を3〜5つ出して、ようやくアビドス編に入る感じになります。

 まだまだ完結まで程遠いですが、引き続き本作をよろしくお願い致します。

 
________
 
 次回
 予告

 アカレンガの一件…“G2事案”の終息で、シャーレ部室に戻ることができたミライは、いつも通りの書類業務と依頼相談を相手取る日常に戻っていた。

「……連邦生徒会の制服って、夏服冬服とかってあるのかな」
 
 机上業務の合間に一息つきながら、ふと自身の…シャーレの制服について考える。
 もう少し動きやすいもの、もう少し目につきやすいものにできないものかな…と。

『――そんなことでしたらお任せください、ミライ先生。 連邦生徒会の制服はオーダーメイドも対応してますよ!』

 “シッテムの箱”からアロナが、制服のバリエーションを画面に並べて表示する。

「なるほど…防刃繊維のインナーなんてのもあるんだね……種類自体が多くて悩むなぁ……」

「―――どのようなお召し物でも、貴方様であれば全て似合うと私は思っております♡」

 むむむ…と迷っているミライの背後には、いつの間にか“厄災の狐”こと狐坂(コサカ)ワカモが立っていた。
 驚くミライを他所にして、彼女もミライの制服選びに参加する。

「このワカモ……貴方様のことを、いつでもいつまでも見守っております。どうか、無理だけはなさらぬよう…」

 “乙女”という言葉は、彼女(ワカモ)のためにあるものだ!
 行け、ワカモ!ミライは案外押しに弱いぞ!!

 次回、メビウスアーカイブ
 【追想のユニフォーム/純情のワカモ】

 お楽しみに。

 

Vol.3にて、ビナー君とまず戯れるウルトラ怪獣は…

  • 磁力怪獣 アントラー
  • 地底怪獣 グドン
  • 甲虫怪獣 タガヌラー
  • 金属生命体 アパテー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。