日々の未来の青春譚 -メビウスアーカイブ-   作:逃げるレッド五号 5式

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03.【キヴォトスの常識】

 

 

 

【推奨BGM】『CREW GUYS出撃せよ!』

 

 

 

 シャーレ部室へ急行の道中。

 D.U.中央街道を爆走する、連邦生徒会・防衛室所有の__GUYS JAPANでも採用されていた〈Type-96(96式)〉に酷似した__装輪兵員輸送車(APC)車内。

 

「――えっ!? 生身で銃弾を受けても死なない!?」

 

 その後部乗員席で揺られながら素っ頓狂な声を上げたのはミライであった。

 彼の隣に座るユウカはそのあまりのオーバーな驚きように目を丸くしている。

 

 ミライは、キヴォトスに来てからまだ一日と経っていないが、今日で何度衝撃を受けたのか分からない。地球の時よりも遥かにハイペースだった。

 

 彼がトンチキな声を上げた理由は、共に乗車した少女達__ユウカ以外の三人の名前と所属もミライは確認済みである__による、キヴォトスに住む人々の身体強度と銃火器を扱うにあたっての価値(倫理)観についての話の中にあった。

 

「はい。単純な銃撃から…対戦車誘導弾(ATM)の直撃まで、擦り傷や打撲、悪くても気絶程度の範疇に収まります。余程のことが無い限りは、骨折や多量の失血は稀です。要は銃火器程度で死亡することはまずありませんが、痛覚はあり怪我をしないワケでは無い…ぐらいの認識で考えていただければと」

 

 キヴォトス人は、似た形、近い丈の地球人(外界人)のそれを遥かに凌駕する強靭な身体を有しているのだと、“トリニティ総合学園”・正義実現委員会の羽川(ハネカワ)ハスミが要所要所を押さえながら丁寧に説明してくれた。

 

「それと、ミライ先生が先程、簡易的に説明してくださった外の世界の常識と照らし合わせると……私達の住むキヴォトスの方が引き金を引く引かれる恐怖感、抵抗感はかなり低い…傾向にあると言えますね」

 

 ハスミに続いて、路上での些細な口喧嘩(言い争い)が銃撃戦に様変わりするのは、キヴォトスでは珍しい風景ではないと眼鏡少女…“ゲヘナ学園”・風紀委員会の火宮(ヒノミヤ)チナツは語った。彼女の母校…ゲヘナ学園の自治区では特にその傾向…治安の低さが目立つとのことだ。

 撃っても死なない、痛いだけ。命は減ら(消え)ない、()がある。

 それなら銃は、兵器は、単に相手を屈服させる(懲らしめる)ための道具にしかならない。故にキヴォトス人が指を掛ける引き金の重さは恐ろしいほどに軽いのだとチナツの説明と併せてミライは結論付けた。

 だから、彼女達は銃火器はおろか、装甲車輌まで確認された外郭地区でのいさかいを把握しても驚きや恐怖、焦りといった感情の起伏を示さず、逆に心底気怠そうな…面倒臭そうな反応を滲ませていたのかと一人納得する。「痛いし疲れるから」…恐らくただそれだけなのだ。

 

「子供が最低限の護身用自衛火器さえ持つことが殆どないなんて……ちょっとイメージが湧きません」

 

 そして、ミライの話した外の世界(地球・日本)の常識を聞き、銀髪赤眼の少女…トリニティ総合学園・同校自警団の守月(モリヅキ)スズミが、あまりよく想像できなかった__「うーん…」と軽く唸るぐらいには脳内で描写できなかった__らしく、不思議な社会(世界)ですね、と呟きながらコテンと首を傾げていた。しかし、銃弾一発で斃れるような体を持つ種族となれば然るべき機関・組織・団体のみが銃器を管理・保有・運用するようになるのかと、体制への理解はそれなりに示していた。

 

「……ミライ先生。以上(これ)が、キヴォトスの常識(普通)です。なので、私達も――いえ、私達()戦います」

 

 先程まで連邦生徒会への助力に否定的であったのに、出発前の連邦生徒会ロビーで見せたミライの姿勢に当てられたのか、ユウカがミライにそう宣言して締め括った。

 足手纏いだ、と言っているのとはまた違った。…彼女曰く、外の世界の人間(地球人)は、銃弾を浴びれば体に文字通り風穴が空く、と。ミライの身を案じたからこそ出た言葉であった。

 

「ありがとう、ユウカちゃん。……だけど、僕もやる。やらせてほしい。ここで退がってしまったら、僕ではなくなってしまう気がするんだ」

 

 死者が出ないことは分かった。

 それならば、先の…連邦生徒会のロビーでリンに向けた彼の宣言と、決意(想い)は無駄になるのか?

 ――無駄ではない。無駄なワケがない。答えは既に頭の中で見つけている。

 争いを一刻でも早く終息させ、巻き込まれる人々を、負う必要のない怪我を負う人々を一人でも減らすことに重点を置き、遂行するのみだ。付けていい、付けられていい傷なんて、無いのだから。

 彼の決意は揺らがない。

 

「で、ですが先生! 銃弾を当てられたら大怪我…下手なことになると死んでしまうんですよね…?そんなことが起これば…先生が着任早々――」

 

「――心配してくれてありがとう。皆んな、とても優しい子達だってことが分かったよ。……でも、大丈夫。僕は()()()()んだ」

 

 白コートの胸の内ポケットにある、ファイヤーシンボルを布越しに強く握りながら、「こう見えても、それなりの扱きを受けてきたからね」と、不安そうに視線をこちらに送るユウカをはじめとした車内にいるメンバーを穏やかな表情で見渡しながら付け加えた。

 彼の並々ならぬ意志の固持を見せられ、代表するようにユウカが渋々頷いたところで、フロントの助手席に座るリンから車内スピーカーを通して報告があった。

 

『――ミライ先生、そして部室奪還作戦に快く参加してくださった即席分隊の皆さん。間も無く展開ポイントに到着します。降車の準備を』

 

 シャーレの部室がある区域まであと僅か。

 ミライは、白衣の外套を脱ぎ、白と空色のアンダーシャツ__「GUYS」のロゴマークが背部にでかでかとプリントされているもの__の上に、乗員席にあったマガジンベストを着込んだ。

 空のポーチには弾倉(マガジン)の代わりにマケットカプセルとメモリーディスプレイを差し込み、準備を整える。

 

 部室となる施設は、外郭地区の中枢部にある。何事もなければそこへ直接行けたのだが…暴徒と化した不良生徒らの規模があまりに大きく危険であったのでそれは断念された。

 又、地区中枢へ通じる主要道から脇道、路地に至る道という道を封鎖或いは上記の暴徒集団の手によって損壊しており、そこには私的な検問所(バリケード)まで作っていた。

 そのため、部室から数ブロック手前の区域でミライ達は降車し、進路上にいる暴徒集団の鎮圧をしつつ向かうという手筈となったのである。

 

『予定ポイントに到着。各自、降車してください』

 

 リンの指示に従ってミライ達は、輸送車から素早く降り、車輌周辺に展開してそのまま全周警戒に入る。

 大通りには乗り捨てられた車両で溢れていた。端に停めてるもの、前後で衝突してそのままのものと様々である。遠巻きに、複数の黒煙が立ち昇っているのが分かった。

 一帯に人の姿は見られず、さながら無人街を思わせる光景となっていた。

 

「……周囲に敵影無し。前進しよう」

 

 ミライはトライガーショットを一丁構えながら、即席分隊に前進を指示する。それに伴って装甲車の前方にミライ達5名が扇状の横列に配置を変え、前進を開始した。

 

『外郭地区中枢は小規模な衝突が発生した時点で、同地区の住民が自主避難を行なっていたようです。一般人が戦闘に巻き込まれることは無いでしょう』

 

 降車後の現場での指揮は分隊後方に座する装甲車にて待機しているリンではなく、ミライに一任することを事前に取り決めていた。

 

 シャーレ部室まで、残り1ブロックの距離までミライ達は接近していた。

 

「動き、構えがヴァルキューレやSRTで見たものと似た系統のそれ………先生もキヴォトスに来られる前は、法執行機関などに在籍されていたのでしょうか? シャツに付いているGUYS(ガイズ)と言うロゴと関係がありそうですが…」

 

 簡易的なハンドサインを交えながら口頭での指示を随時行なうミライを見て、スズミが感嘆の声を上げた。小慣れている。そう思った。

 

「銃も銃でキヴォトスではあまり見ない形――」

 

 そこに、キヴォトスの最先端を行く“ミレニアムサイエンススクール”出身であるユウカが、ミライの扱う見慣れない大型拳銃に興味を持ち質問しようとした――が、それは突如飛来してきた銃弾によって阻まれてしまう。

 

――ババババババッ!!

 

「――あっ!? 痛っ!!ちょっ、痛いってば!!」

 

 ビシバシ! と、ユウカの上半身…特に頭部近辺に複数の銃撃が浴びせかけられた。

 分隊員が攻撃を受けたことを察知した他分隊メンバーは路肩に放置されている乗用車の陰へと滑り込む。

 

「ユウカちゃん!!」

 

 不意打ちと頭部への集中射撃を食らって動けずにいたユウカは、銃撃の隙間を縫って飛び込んできたミライによって抱え込まれ回収。素早く装甲車の後ろまで退避させられた。

 

「大丈夫!?」

 

「いったあ…! ……カバーしてくれてありがとうございます先生。おかげで助かりました。体の方は大丈夫。まだ行けます!」

 

(――ハスミちゃんの言う通りだ。擦り傷すら付いてない…)

 

 地球人であれば原型も留めない即死判定の致命的な攻撃を幾度も受けたはずのユウカは、被弾し赤く腫れてしまった部分を手で摩るぐらいで済んでいた。なんなら相手が使用した銃弾の違法指定が云々と元気に文句を垂れながらハスミとのやりとりに怒鳴る勢いで返している。

 タフというレベルではなかった。

 

「チナツちゃん、遮蔽物伝いでこっちまで来れる? ユウカちゃんの手当てをしてほしいんだ」

 

『――わかりました。任せてください』

 

 百聞は一見に如かず、とは良く言ったものだが……ミライはユウカの、キヴォトス人の段違いな肉体強度を目の当たりにして、改めて衝撃を受けた。

 

 しかしミライはすぐに衝撃から立ち直り、「ここは自分がいた世界ではない」のだと受け入れ思考を切り替えると、装甲車を盾にして銃撃が飛んできた方向、敵集団がいるだろう道路上を覗った。

 そこには、十字路中央にぞろぞろと集結しつつある改造制服(スケバン)の武装集団が視認できた。

 

 インカム越しにリンから奇襲を加えてきた敵戦力の詳細がもたらされた。

 

『2時の方向、十字路右手より武装した所属不明の不良生徒…凡そ一個小隊規模の集団を確認。こちらに接近中です。――迎撃を開始します。車載機関銃、牽制射!』

 

ウィイイイイイイン……

――ダタタタタッ!! ダタタタタッ!!

  

 無人化された装甲車上部の銃座に置かれた対歩兵装備、“MINIMI”系軽機関銃(LMG)が敵集団に指向し連続して火を吹いた。明色の火線が十字路を放射状に満遍なく彩る。

 これに続いて、遮蔽物に隠れていた即席分隊の面々も応射反撃に転じた。

 

「ぎゃーはっはっはっ!! 連邦生徒会がなんぼのもんじゃー!!!」

「アタシらを止めれるモンなら、止めてみなぁ!!」

「怯むな、突っ込め撃ちまくれ!!」

「あの装甲車、連邦生徒会のだぞ!囲め囲めー!!」

 

 相手の子らにとってみれば、これも喧嘩の延長…気晴らし程度の認識だろう。

 しかしミライは子供達が引き起こしたそのいざこざを“戦闘”だと認識し、既にこれに臨んでいる。

 

 果たしてそれでいいのか?

 そう捉えてしまっていいのか?

 自問自答が頭の中を過ぎる。何故なら――

 

 ――本来、宇宙警備隊はいかなる理由があろうと、他文明の()()()で生じた()()には一切関与しない。干渉してはならないと言う取り決めがある。生き延びるか、滅びるかに関係無く、その知性体が辿る種としての進化、文明の発展の道筋を歪めてしまうのを危惧して、だ。

 

 (…いや、それは違う。僕は()()()()として今ここにいるわけじゃない。僕は人として、()()()としてここに来たんじゃないのか)

 

 しかしミライは、一人の人間(先生)としてこの場にいる。故に光の国の掟には抵触していない…そう自己解釈した。

 

 掟破り、命令違反、言葉遊びだと言われたらそれで片付けられてしまう。

 

 されども()()こそ、M78星雲人が姿形を変えても、何千何万の時を経ても、頑なに捨てず脈々と受け継いできた「自己を顧みぬ庇護精神」の結晶。彼らを彼らたらしめる不可視にして不可侵のものなのだ。

 今日まで、光の国が宇宙に在れたのは、宇宙警備隊が宇宙(そら)に生きる多種多様な民から絶大な支持を受けているのは、光の使者(ウルトラマン)達が()()の積み重ねをしてきたからだ。

 

 それ故…彼の決心とそれに伴う行動を咎める者、裁く者は同胞、そして仲間の中にはいないだろう。

 

「―――ロングバレル、レッドチェンバー、よし。……これより正当防衛射撃を実施する」

 

 自分のことを先生と呼ぶ子供達は戦っている。

 

 ならば自分は?

 

 答えはもう出している。

 

 反撃に移る際の口上__リュウや当時の隊長からみっちりと仕込まれた星人(対人)向けの形式的なもの__を詠唱しながら、ミライはトライガーショットの射撃(ショット)形態(モード)を確認し、片膝立ちの射撃態勢に入る。

 子供へ銃を向けることに、思うことが無いといえば嘘になる。それでも一瞬の逡巡を経て、狙いを定め引き金を引き絞る。

 宇宙警備隊の任務でも似たようなものが何度もあった。引き金を引く覚悟()とうの昔に出来ている。

 

(…これで、武器を奪って彼女たちの戦闘能力を喪失させる)

 

 狙うは生徒…の持つ銃器。それの無力化だ。戦意も削げれば儲け物。

 既にトライガーショットは、精密射撃に最適な長距離形態(ロングショットモード)へと変形、トリプルチェンバーは「レッド」に切替済みである。

 斯くして、引き金は引かれた。

 

「う、うわあっ!? アチチチ!アタシの銃が溶けちまったあ!?」

 

 ミライの狙い通り、不良の一人が振り回していた自動小銃(AR)赤の光条(アキュートアロー)が突き刺さり、それは原型を保てずに秒で赤熱し融解した。

 

「なんだあの赤いビームみたいなの…」

「いや、もろビームだったろ!?」

「うっわドロドロになってやんの…どうやったんだマジで」

 

 特異な攻撃を仲間が受けたこと、そして光線銃特有のマズルフラッシュと発砲音から、ミライは殆どのスケバン少女達の注意を引いた。

 

「あの大人だ!アイツが撃ったせいだ!!」

「はん!ツラいい癖してやること生意気じゃんか!」

「なんだあの銃、見たことねえぞ。奪っちまえ!」

「っ!?―――ば、バカ!そっちにばっかし気ィ取られてると――ぐわっ!!」

「横からミレニアムの“算術使い(フトモモ)”が突っ込んできやがった!?」

 

 横から殴りつけてきた鉛玉の暴風雨を受けて、ミライに銃を向けようとしていた前衛が数人、白目を剥いて倒れる。

 

「太もも言うな!!」ジャキッ!!

 

 それはチナツの応急手当てを受けて、戦線に復帰したユウカの援護であった。

 更に彼女は自身の愛銃である二丁の短機関銃(SMG)“ロジック&リーズン”を華麗に扱い、機関銃顔負けの制圧射撃を行なって数の優位で勝る不良達の顔を引っ込ませた。

 

「ミライ先生、早瀬さん、援護します!」

 

 後衛職のチナツが自身の拳銃(“サポートポインター”)で牽制しつつ、ミライの下に合流する。

 周囲を見れば、遮蔽物から狙撃を続けるスズミ・ハスミと視線があった。両名とも小さな頷きをミライに返してくる。彼は意を決して指示を飛ばす。

 車内で行われたショートミーティングで、彼女達の役割、能力、装備はミライに共有されていた。

 

「スズミちゃん!集団中央目掛けて、閃光弾(フラッシュ)投擲! 投擲後はそのままユウカちゃんの支援に!」

「――了解。実行しますっ!」

 

 スケバン集団の中に眩い白光が疾った。

 投擲物に注目してしまった哀れな不良生徒たちは、あまりの光量に、堪らず武器を投げ捨てて両手で目を覆い、声にならない異常を訴える。

 

「今ので相手の戦線に綻びが生じた…ハスミちゃん、目を眩まして頭を出した子から順次狙撃!」

「――承知しました。畳み掛けます」

 

 一切の慈悲もなくただ淡々と、ハスミの狙撃銃(SR)“インペイルメント”が、一人一発…コッキングを挟む毎に、哀れな不良たちの意識を刈り取っていく。

 

「ユウカちゃんは武器をまだ持っている子達(残敵)を掃討して!」

「――はい! 弾道計算は完璧…そこよっ!!」

 

 統率を失い戦闘不能の人員が増加するスケバン集団は、みるみる反撃の頻度と精度を落としていき、最後はリンの乗る装甲車から繰り出された機銃掃射を受けて鎮圧された。

 

『敵集団は壊滅。戦闘の終結を確認しました』

 

「報告ありがとう、リンちゃん。――皆んな、まだそれぞれ奥の手(とっておき)は残ってるね? このまま一気に目標地点まで進むよ」

 

「「「了解!」」」

 

 降伏の意思を示した不良生徒たちは、後詰めの“ヴァルキューレ警察学校”__キヴォトス全土をカバーする警察機関__警備局の機動隊が処理する旨をリンから聞いたミライは、前進の再開を指示。

 各々が銃を構え直し、硝煙漂うコンクリートの大地を両の足で踏み締め、その歩みを進める。

 

「――先の戦闘、いつもよりやりやすかった気がします」

「…やっぱりそうよね?」

「同感です」

「たしかに……先生の指揮のおかげで、普段よりもずっと戦いやすかったと感じます」

 

「いっつもしてるものなんだ……」

 

 前進しながらまず口を開いたのは、スズミであった。

 彼女曰く、「投擲指示のタイミングと位置の指定はドンピシャ」であったとのことだ。それへユウカ、チナツ、ハスミの順に肯定を示す。

 

 戦闘も日常(普段)の風景の一つだと言われたミライはスルーできなかった。……が、苦笑するのが精一杯である。子供同士でのドンパチが普通で、本人たちが特に思うことが無いのなら突っ込んだところで野暮でしかない。

 

「なるほど。これが先生の力……――まあ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か……って、そんなことよりも!ミライ先生、その銃ホントになんなんですか!?光学拳銃の実物とか初めて見ましたよ!!」

 

 ずいっとユウカがミライに顔を近づけて問い詰めてきた。

 なんかあの時のリン首席行政官の気持ちが少し理解できた気がする。あまりの彼女の熱量に気圧されるミライ。

 

「こ、これはトライガーショットって言って…」

 

「そのサイズで威力があれほどとは…興味深いですね」

「先生には一度ミレニアムに来てもらって解析を――」

「――それでは、次の戦闘もよろしくお願いします、ミライ先生」

 

「う、うん。こちらこそ」

 

 ユウカが何か呟いているところに、食い気味に割り込んできたハスミにミライはひくついた作り笑いを返すのみだった。

 約束の取り付けを遮られたユウカは、ぶすっと頬を膨らませて先行していった。

 

『……たった今、外郭地区での一連の騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました』

 

 目標地点である部室(シャーレ)は、もう目前。

 

『――ワカモ。“百鬼夜行連合学院”で停学処分となった後、矯正局を脱獄した生徒です。似たような前科がいくつもある大変危険な人物なので、気をつけてください』

 

 

 

 奪還作戦はいよいよ佳境に入らんとしていた。

 

 

 

_________

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D.U.外郭地区

 部室奪還作戦指定地域外縁

  某幹線道路

 

 

 

『――連邦生徒会の鎮圧活動の付随処置として、この道路は現在、一時的に通行止めになってまーす!』

 

 場面は飛んで外郭地区の外れ。そこに敷かれた車両道路上に視点を移す。

 

「通行解禁までの時間…未定……だと?」

「おのれ連邦生徒会……これではマコト様が指定してくださった時刻に間に合わないぞ…!!」

 

 陽光によって温められたアスファルトの上で、多くの車両が立ち往生を余儀なくされていた。

 事前通告無しに行われた__シャーレ部室奪還作戦遂行のための__大規模な交通規制により発生した渋滞が原因である。

 

 上のような愚痴を溢したのは、「キヴォトス三大学園」の一角として有名なマンモス校…ゲヘナ学園の生徒会“万魔殿(パンデモニウムソサイエティー)”の役員生徒二人。

 彼女らの運転する万魔殿所有の大型自動車(10tトラック)__ボディ両側面には万魔殿のクソデカロゴがペイントされている__も同様に、この渋滞に嵌ってしまった運の無い車両の一台だった。母校への帰路の途中での遭遇であったが故に、その顔には苛立ち(青筋)が見え隠れしているし、口からはギリギリと歯軋りが聞こえてきそうなほどだった。

 

「……帰ったらライオンマル様のお世話したい」

「分かる。肉球で癒されたい」

 

『――こちらはヴァルキューレ、D.U.外郭支部交通局です!皆様には自主的な走行ルートの迂回変更をお願いしております。誘導は当局が受け持ちますので、指示に従ってください!』

 

 外郭地区中枢方面に繋がる道路の奥は、ヴァルキューレ警察学校が設置した通行止めの車両用バリケードで固められている。

 その周囲には複数台の警ら車両(パトカー)が停まっており、誘導棒(赤色灯)を片手に持って振りながらヴァルキューレ交通局員の一人がパトカーの外付けスピーカーで交通誘導と交通規制に関する説明を繰り返し何度もしていた。

 

『どうかご協力を……ああっ!空の弾倉、座席のクッションとか投げないでください! お気持ちは良く分かります!ここはどうか落ち着いて―――って、おわああーっ!?手榴弾!!』

 

―――ドカァアアアン!!

 

『ゴホッ、こほこほ……い、一斉検挙ぉお!捕縛、全員捕縛だ!!』

 

――ワァアアアーーー!!

 ――ヤンノカコラァー!!

  ――オナワニツケーーー!!

 

 流石は、とある観測世界ではあまりの沸点の低さから「きららGTA」とも揶揄されるキヴォトス。

 一向に渋滞が解消せぬことに痺れを切らした渋滞先頭集団の運転手の生徒たちが、バリケード前に待機していたヴァルキューレ警官隊に向けて爆発物を含む手持ちの消耗品を投げつけ暴動に急速発展。キヴォトスならば何処でも見る銃撃戦がここでも遂に勃発した。

 

「……おっ始めた奴ら、あれウチの生徒(ゲヘナ)じゃないか?」

「いや、よく見ろ。あれは最近聞く“ジャグジャグヘルメット団”のヘルメだ。生のツノじゃないぞ」

「ホントだ…腐ったカボチャみたいな色のフルフェイス付けてる」

「お前また視力落ちたな?」

 

 何故、ゲヘナ生である彼女たちがD.U.地区でトラックを走らせていたのか?

 それにはトラックが運んでいる積荷の()()が関係している。

 

「……それにしたって、なんで()()()()()をマコト様は大金叩いて百鬼夜行から買い取られたんだ?」

「役員会で仰ってたじゃないか、イブキ様がテレビで見た“古代生物”に興味を持たれたと」

「それで張り切って、この馬鹿みたいにデカい()()のミイラをゲヘナに展示しよう…というわけか。……まあイブキ様が喜ぶことならば異論なぞないが」

 

 積荷の中身…それは万魔殿(ゲヘナ)議長(生徒会長)羽沼(ハヌマ)マコトとその取り巻きが滅茶苦茶溺愛している初等部上がりの飛び級生、丹花(タンガ)イブキの「イブキ、“たいこのいきもの”が見たーい!」という願いを叶えるために買った代物であった。

 

 万魔殿が百鬼夜行連合学院より買い取ったと言う古代生物のミイラ。

 その発見はつい先日のこと。事の発端は、キヴォトス全土の鉄道網の管理運営を担っている“ハイランダー鉄道学園”が百鬼夜行連合学院自治区内で新たに進めていた弾丸列車(新幹線)の路線開拓工事でのことだ。

 

「あー……厳密に言えば、爬虫類(恐竜)じゃなくて、二足歩行の()()()らしい。それも史上最古の…所謂“原始哺乳類”というヤツだと」

 

 とある山岳トンネルの掘削工事中、件のミイラが掘削ルート上に表出。サイズが巨大__ 全長20m強に迫る__であったこともあり、放置もできずハイランダーと自治区(百鬼夜行)代表団(陰陽部)による協議の後、発掘・撤去が決定され実行に移された。掘り出し作業自体は順調に進み、障害物としての除去は無事完了した。これのお祭り騒ぎは“クロノススクール”報道部も取り上げ、キヴォトス全域に生放送され大きく話題となった。

 

「随分詳しいな」

 

 ……問題はその後だった。巨大ミイラの後始末(処理)である。ハイランダー側は「こんなもん、列車扱うウチらにどないしろと(意訳)」、百鬼夜行側は「チセちゃんが好んでない(意訳)」ということで互いに所有権を持とうとしなかったのだ。

 

「受け渡しの際に百鬼夜行が持ってた、ミレニアムとトリニティの合同古生物学調査チームが纏めた鑑定資料をチラッと、拝見させてもらった」

 

 暗礁に乗り上げるかと思われた処理問題…そこに颯爽と仲介に現れたのが、百鬼夜行の友好学園…ゲヘナである。百鬼夜行からゲヘナへのミイラ引き渡しは、百鬼夜行側が協力的__「厄介払いできるからヨシ」の精神__であったのでトントン拍子で進んだ。

 

 そして本日、晴れてゲヘナに巨大ミイラの所有権が渡り、あとは自治区への輸送のみとなった。

 

「はぁ〜……で?ソレの名前は、もうあるのか?」

 

 その矢先に、この地獄のような交通渋滞であった。

 

 

 

「えっと、たしか……学名は“ゴメテウス”。縮めて――」

 

 

 

 彼女達は気づいていない。

 暗い荷台内部で、怪物(ミイラ)が“神秘”と“恐怖(テラー)”の混じり合った名状し難い淡い光を放ちながら、()()を響かせ始めていたことに。

 

 

 

「――ゴメス、と記載されていた気がする」

 

 

 

 キヴォトスと言う箱庭は、変貌を遂げようとしていた。

 “何が起こっても不思議ではない世界(アンバランス・ゾーン)”…へと。





 あと
 がき

 どうも、銀髪白髪灰髪系キャラが性癖な投稿者の逃げるレッドです。すべては逸見エリカ先輩のせい。そのお陰でわっぴー様とロールケーキ様が大好きなんです。

 前回の最後のシリアス君と今回の開幕推奨BGM君、キヴォトス衝撃の事実を速攻でお出しされ、しょっぱなで形成していた緊迫感を著しく失う。
 ミライ先生の神秘()にあてられたユウカ先輩の言動に早速変化が。オーラ(ぢから)ってすごいねぇ(別作品) これには矢的先生もニッコリ。

 今のところ直接対面した子全員ちゃん呼びだなこの不死鳥先生。この先生が初対面で迷いなく呼び捨て出来るキヴォトスの子って誰々だろう? 

 先生のキヴォトス来訪時の上着イメージは、便利屋先生のシャーレスーツorそれに近いコートです。下シャツやズボンはGUYSのものとなっています。……革靴で戦場歩くって中々よね…ソンポヒーローかな?
 投稿者(わたし)だって、GUYSシャツが欲しかった!!(小学生ん時の思い出)

 宇宙警備隊、GUYSの交戦に関する口上等は独自設定となります。後者組織で参考にしたのは、テレビ原作劇中及び外伝ノベライズ(アンデレス・ホリゾント)でのメイツ星人ビオやサーペント星人への地球側の対応などです。
 撃っていいのは撃たれる覚悟のあるヤツだけだからね…

 万魔殿の黒髪ボブカット一般役員(親衛隊)モブちゃん、いいよね。5cボルコンハイランダー銀髪事務員ちゃんと同じくらい好き。……感想で名前出たから思ったんだけど、キヴォトスでトリピー補佐官に一番素で近い子ってさ……マコっちゃんじゃない?
 今回の最後のとこ、マコト議長本人が現地にいないだけで実質『はじめてのおつかい』みたいなもんだろ…グロテスセル生える(真顔)
 投稿者は当時、天井でちゃんとお迎えしました…ライオンマルかわいいよね…キヒヒクフフ…

 キヴォトス怪獣第一号、実は他にディノゾール、ゴルザ、ベムラー、デマーガ、キングゲスラと結構候補が沢山あり一人で迷ってました。
 でも暴れるのは部室ぶんどり返してからなので、まだ登場しないぞ!

 

※用語単語ピックアップ簡易解説コーナー(独自設定独自解釈共にもりもり)

◯連邦生徒会・防衛室
 同生徒会の行政委員会直属組織の一つ。キヴォトス全域の治安維持活動とそれに従事する警察機構(ヴァルキューレ)の統括・管理を担当する。最高責任者である現室長は、自己が認める“超人”不知火(シラヌイ)カヤ。本時間軸並びに世界線では構成人員の大半が事務職だが、実働戦力及び装備も僅かながら保有している。
 本作でも重要な組織の一つとなるので、ここで紹介。

◯トライガーショット(補足)
 ウルトラシリーズの中でも、トップクラスの万能性を誇る光線銃。シリーズ伝統の防衛チーム装備あるあるだが、ぶっちゃけ歩兵が触っていい火力じゃない。圧倒的サイズ感の怪獣や巨大宇宙人相手にはやや厳しい塩梅だが、対人を想定すると破格過ぎる性能と言える。当たれば文字通り塵と化すので、絶対キヴォトス人以外には間違っても銃口は向けちゃダメ。

 連射に優れる近中距離(ハンディショット)形態と、精度に優れる遠距離(ロングショット)形態への二種類の変形が可能。
 又、用途に応じて三()シリンダー“トリプルチェンバー”を回転させ、発射する光線の性質を変更する機構を有する。
「レッド」は連続照射も可能な赤色のレーザービーム“アキュートアロー”。
「イエロー」は黄色の炸裂性高エネルギー弾“バスターブリッド”。
「ブルー」はメテオール弾の一つ、光子防壁(バリア)形成弾“キャプチャーキューブ”。なお、他の各種メテオール弾頭に換装搭載・射出もできる。


※2024/04/19 二次創作日間ランキング69位にランクインしてました…ありがとうございます!!


 ナギサ様を80連でお迎えできたので、今後もよろしくお願いします。

 次回、【九尾の一目惚れ】
 お楽しみに。


読者の皆さんのウルトラ世代を良ければ教えてください!

  • 昭和(初代〜80、その他外伝)
  • 平成前期(TDG三部作)
  • 平成後期(コスモス〜大怪獣バトル・ゼロ)
  • ニュージェネ前期(ギンガ〜タイガ)
  • ニュージェネ後期+α(Z〜ブレーザー)
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