日々の未来の青春譚 -メビウスアーカイブ-   作:逃げるレッド五号 5式

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07.【再臨のメビウス】

 

 

 

D.U.外郭地区

 市街地中枢部

  連邦捜査部(シャーレ)部室棟 屋外

 

 

 

(――なんで、なんでこの世界に怪獣が…!)

 

 怪獣が姿を現し悍ましい咆哮を上げた時点で、ミライはシャーレ部室棟の外へと飛び出していた。

 部室で一緒にいたリンの方は、その場で連邦生徒会の各行政委員会からのコールに捕まり、彼について来てはいなかった。

 

(あの怪獣…何処か見覚えがある……けど、何かが違う……)

 

 一階の正面玄関前からでも見える、黒く燻んだコンクリートジャングルの中を我が物顔で歩く巨大生物に彼はある違和感を感じた。

 故にその違和感をまず晴らさねばなるまいと動く。あの怪獣を()()にしてやるのだ。

 

「――アロナちゃん、()()()()()カメラモードを起動させて」

『合点承知しました!ついでにカメラ選択の既定設定(デフォルト)を背面部に切り替えときますね!』

 

 ミライは手に持っている、気の利く小さな助手付きのタブレット端末…“シッテムの箱”の裏側を怪獣へ向ける。ミライが見ている液晶画面には、虫眼鏡を持ったアロナと進撃を続ける黒い巨獣(被写体)の全身が映った。

 

「――“GUYSアーカイブドキュメント”を()()()()。起動でき次第、検索開始」

『はいっ!これより対象個体の照合を行ないます!』

 

 ミライは“シッテムの箱”内の擬似空間で、アロナ女史にGUYSメモリーディスプレイ内にて保管されている一部データ群の引っ越しと、それらの統括システム…“GMDS”を彼女が扱うサブOSとしてインストールしてもらっていた。

 それは何故か? この世界でも怪獣災害や宇宙人による侵略活動が起こるのだと危惧して……のモノではなかった。

 

―――地球の仲間達との記録(おもいで)を、ずっと…そしてもっとよく見たい。

 

 ほんのささやかな願い。

 …ミライはただ、メモリーディスプレイよりも何十倍も大きな液晶画面を持つ“シッテムの箱”で、リュウが遺してくれた地球の仲間達との想い出の数々を見返せるようにしたかったのだ。

 

 尚、この願いをアロナは快く「昔の先生やそのご友人の方々を見れるんですか!?それなら是非是非やらせてください!」と乗り気で引き受けた…のだが、その際に彼女は“電脳秘書(スーパー)アロナチャン”としての()()()()()()を遺憾なく発揮してしまった。

 ミライは写真や動画、音声記録のデータさえ移行してくれればそれで良かった。しかしこの引っ越し作業を主導した敏腕ちびっ子秘書は予め頼まれていたデータ群や自身のサブOSとして勝手に内定させていたGMDSだけに留まらず、メモリーディスプレイ内の()()()機能と記録を“箱”へと移植した。そう。すべての、だ。

 その中には、ついさっきミライが口にした“GUYSアーカイブドキュメント”___過去地球に出現し、人類が交戦或いは交流した怪獣・宇宙人の情報を集積した公的電子資料集___も含まれていた。

 当然ながらその宇宙人の枠の中には、M78星雲人(ウルトラマン)もちゃんと入っている。

 

 さて、ここで数あるアーカイブの一つ、“ドキュメントGUYS”の“非敵性(友好)宇宙人”のフォルダを覗いてみよう。彼らの中に「ウルトラマンメビウス」が混ざっていることだろう。

 そのメビウスの情報を開いてみると、()()()()()()()資料注釈の中にGUYS JAPAN歴代クルーのアーカイブへと飛ぶハイパーリンクが綴られているのに気づくはずだ。そして更にリンク先に飛び、マーカーが付けられている()()()()()の情報にアクセスすると………お分かりいただけただろうか?

 

 結論から言うと、人力ハイパーコンピュータとも言える演算処理能力を持つアロナは「ヒビノ・ミライ()ウルトラマンメビウス」の方程式を偶然ながら解き明かしてしまったのである。これに関してはミライによる、自分自身(メビウス)の登録情報をほぼ規制せず素通しさせた不注意と、アロナの子供特有のなんでも覗いてしまう好奇心が引き起こした不慮の事故と言えた。

 

 体感一時間弱ほどついつい行なってしまったアロナとの()()の内容の八割はこれの…ウルトラマンに関してであり、「正義のヒーロー」について質問攻めするアロナになんとか断りを入れて「それなら次にここでお会いする時は、続きを聞かせてくださいね!絶対ですよ!?」と約束を取り付けられて解放されるまで掛かった時間でもあった。

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 話がかなり逸れてしまったが……結果として、“シッテムの箱”へGUYS JAPANの仲間達の写真や動画、音声記録データと共に搭載されたGMDSとアーカイブドキュメントが、この世界に来てから図らずも再びその役目を果たすこととなった。

 ミライの方は、まさかこうなるなどとは微塵も思っていなかったが。

 

『ミライ先生、“アウトオブドキュメント”に()()種族を確認しました!』

 

「――類似種族だって?」

 

 あの怪獣との遭遇、交戦経験はメビウス(ミライ)に皆無であった。

 又、キヴォトス赴任以前…光の国・宇宙警備隊の総合データベース上にも同様に情報は無かったと彼は記憶している。

 

『はい。該当する種族の識別名称(レジストコード)は……古代怪獣ゴメス、です!』

「ゴメス…? アレが、ゴメスだっていうのか」

 

 しかし、出てきた事実はこれまた奇怪である。

 あの怪獣の近縁種と目されたのは、彼もよく知る地底生息怪獣のゴメスだった。確かに…指摘されてみれば、外見上の特徴に類似点は複数あるように思える…が、ここまで()()がかけ離れていると訝しむのも無理はなかった。

 あのようなゴツゴツとした海岸の岩肌をそのまま貼り付けた、哺乳類よりも爬虫類然とした凶険な顔や、尻尾の先端に「第二の口」らしきものを備えているゴメスはミライも見た事が無い。

 

(……なんて攻撃的な姿だろう…)

 

 …多次元宇宙(マルチバース)並行世界(パラレルワールド)時間遡行(タイムスリップ)由来の、自身と同じ()()()の線も十分考えられる。

 単に進化・変異した新種、或いは宇宙警備隊さえも全く認知していない未踏領域……それか異なる時間軸、世界線から丸ごと飛び越えてきてしまった成熟個体か…どれであれ、傍迷惑で厄介な相手であることに変わりない。

 

バラバラバラバラバラバラ……!!

 

『――ダガー01よりオールダガー。防衛室より火器の無制限使用が許可された。各々の有する全火力を以って目標を粉砕撃滅せよ』

『『『了解』』』

 

 そう一人考えていると、“シッテムの箱(アロナ)”がヴァルキューレの航空無線を傍受した。

 そのタイミングでシャーレ部室棟ビルの上空を、機体を青と白に塗装した、スタブウィングに武装をこれでもかと満載しているヴァルキューレ警察・航空局所属の軽攻撃ヘリコプター…〈AH-6(キラーエッグ)〉十数機が、編隊を組んでゴメスの方向へと重い羽音と共に飛び去り遠ざかっていく。

 

(…ダメだ。()()を倒すには、とても――)

 

 鋼鉄の天馬を駆る防人の少女達を見送るミライの顔は険しかった。彼は知っているのだ。

 科学文明が50m級怪獣への武力による直接反撃・撃退を目指すとなれば、指向性粒子・エネルギー兵器の有無を抜きにしても、一個軍団規模___M78ワールド地球・西暦2000年代換算___の戦力が最低でも必要だと。

 

 チカッチカチカッ――

 

 ――………ドォン! ドドォン!!

 

 連続した閃光と、爆発。交通局と警備局の弔い合戦と息巻く「空飛ぶ殺し屋卵」達による空からの猛攻が始まった。

 ヴァルキューレ重装機動隊の総攻撃を軽く凌ぐ、圧倒的な火力がゴメスを焼き尽くすためにそれの正面、側面、背面へと休み無く投射される。

 大口径ガトリングガンと70mmハイドラロケット弾、ヘルファイア対戦車誘導弾からなる息吐く暇も与えぬ一斉射……しかしそんな一方的とも言える熾烈な暴雨を受けてもなお、ゴメスは微動だにせず黒煙を突き破って前進を続ける。鼻先を掠るような挑発的機動を試みた機体もいたが、ゴメスに興味を持たせるまでの行動にはならず、逆に片手間の要領で始まった長尾の振り回しによる()()()()を受けて離脱・散開を余儀なくされていた。

 やはり、ヘリのみでは足止めにもならない。

 

 ………キヴォトスは学生(こども)達が治める学園都市だ。

 自治区(学園)毎にそれぞれ国軍的立ち位置にある実力組織を抱えているとは言え、やはりその人員数は学園相応のものに留まる。更に、それらを束ねるはずの統一政府(連邦生徒会)が足枷を掛けられている現状では、とてもそれほどの規模の戦力を即座に動員できるとも、適切に運用できるとも言い難かった。

 いずれにせよ…このまま行くと、何としてでもゴメスを止めなければならない学園都市の彼女達は、対怪獣戦闘で最も避けなければならない「戦力の逐次投入」に踏み切ってしまうだろう。とことん厳しい戦局に追い詰められて、泥沼の戦いへと踏み入れざるを得なくなってしまう。いや、もうなりつつあるのか。

 

 ならば、完全にそうなってしまう前に――

 

「――あっ!ミライ先生! 今あの巨大生物が空きテナントの高層ビルを…!」

 

 その時、シャーレ部室棟の外で歩哨役をしていたユウカが、正面出入り口前に立つミライを見つけて駆け寄ってきた。

 後ろには、彼女の周りに集まっていた少女達…即席分隊の他三名やヴァルキューレ警備局の応援として駆けつけていた生活安全局員たちが続き、すぐにミライは囲まれてしまう。

 彼女らの顔は優れていない。不安一色である。特に警官の少女たちは。

 ……十中八九ゴメスのせいだろう。リンの通話経由でだったが、ヴァルキューレの機動隊三個中隊がゴメス駆除の初動対応へ動いたものの、健闘むなしく壊走してしまったと聞く。

 

「…ユウカちゃん、それに皆んな。ここも危険だ。早くここから離れてほしい」

 

「えっ、先生も一緒に避難しないんですか」

 

 即席分隊の面々は彼の避難の促し方に齟齬を感じた。代表してユウカが聞き返す。

 

「……僕は…怪獣、ゴメスをどうにかする」

 

 生徒たちに向けていた穏やかな目が、ゴメスを見据えた途端にわかに鋭くなる。

 同時に彼を囲む少女達の顔がどれも驚愕と悲壮に染まった。

 

「ゴメス……あの巨大生物のことですか。ミライ先生はアレについて何かご存知で………え、ちょっ、待ってください! 今どうにかって……先生は把握してるか分かりませんが、既に駆除活動を実行したヴァルキューレ機動隊が返り討ちに遭ってます!銃弾もミサイルも効かない相手に挑むおつもりですか!?」

 

 一瞬「怪獣」「ゴメス」なる単語へ注意がいっていたユウカだったが、すぐにミライの発言の意味を理解し連邦生徒会施設ロビーでも見せたものと同様の、強い剣幕で捲し立ててきた。それほど彼を心配しているのだ。

 

「すべて理解した上で、だよ。怪獣災害の恐ろしさを、僕はよく知っている。これ以上ゴメスを野放しにはできない」

 

 されどもミライは一切物怖じせず、毅然とした態度で答えた。

 歩兵装備で怪獣に至近距離での地上戦を単独仕掛けるのが、如何に危険な行為であるかも重々承知している。

 

 それでも。第二の故郷たる地球で幾度も引き起こされた悲劇を、このキヴォトスで繰り返させたくはないと強く思うのだ。

 

 …ミライは大人の先生だ。生徒を、子供を守る義務がある。

 …ミライはGUYSのクルーだ。文明の平和を守る信念がある。

 …ミライは光の超人だ。懸命に生きる者達がいる、尊い世界を守る使命がある。

 

「無茶です、無謀です、非論理的です! たしかに先生の光学拳銃は目を見張る性能であることは認めます。ですが一人で――」

 

 しかし、天輪(ヘイロー)も持たない外界人が、あの巨獣に立ち向かうと宣言したのがいけなかった。ユウカが「認めません…一人でなんか行かせません…!」とワナワナ震えながらミライの前に立ち塞がる。それに合わせて周りの少女達もディフェンスを固めようと動く。

 

「――【人々を支え、助け、守る】。…それが僕()、CREW GUYSなんだ。……だから―――」

 

 だがミライは慌てない。ユウカの言葉に被せるように、諭すように語りながら、人想いな菫色の頭を優しく撫でる。

 死地へ飛び込むという自覚はある。

 だが大切なものを守る為ならば、幾多の困難を跳ね除けてきた星の戦士はそれを恐れない。立ち止まらない。

 

「―――僕が行く」

 

 ユウカ達はそんな彼の言葉を聞いた途端、「ああ、この人ならきっと、大丈夫だ」と、魔法が宿ったかのように不思議と忽ち納得してしまった。会って数度しかやりとりを経ていない相手であるのにも関わらず、だ。

 これも大人の力というヤツなのか?

 特に具体的な理由も無いのに、えらく腑に落ちるのだ。加えて、この人をここでいま止めてはいけない、送り出さなくては…と捲し立てた際とは真逆の思考が浮かび上がってくる。そうもう一人の自分が囁いてる気がしてならない。まるで、これまでも似たようなこと、同じようなことがあったと自然に認識しているのだ。

 

 こちらをジッと見つめる大人の瞳は、何処までも真っ直ぐである。

 

 おかしいと思ってる筈なのに。止めなきゃいけない筈なのに。

 それらを上回る……どうしようもなく穏やかで、温かくて、愛しくて、優しい何かに絆され、気づけば――

 

「〜〜〜〜っ!!! あーもうッ!分かりました!! 私達はここのヴァルキューレの子達に協力して中枢市街地の避難活動に徹します……ただし、ちゃんと帰ってきてください。そこだけは譲れません。いいですね、先生!?」

 

 ――ユウカは先の発言をひっくり返していた。

 それを聞いた他の少女達もつられるように何の疑念も持つこと無くミライへの包囲を解いていき、彼の前には一本道が開かれる。その先には、コンクリートジャングルを我が物顔で闊歩する怪生物が見えた。

 

「ありがとう。行ってくる」

 

 彼女らの新任教師は、それに短く頷き応え、たった一人、巨獣の下へと向かっていったのだった。

 

 

 

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 ミライは疾る。

 人々の命を守り救うため。

 迫り来る巨大な敵を倒すため。

 

「アロナちゃん、付近の監視装置の映像・音声記録の改竄を始めて」

『合点ですっ!! 先生から半径500m圏内の全てのモノに命令通りの処置をこれより実行します!』

 

 大地は揺れ、空は陰り、風は震えている。

 街は軋み、まるで嘆きの慟哭を上げているかのようだ。

 そんな人々の営みが途絶えた色無き街中をひたすら彼は走る。

 いくつもの路地を抜け、再びゴメスの正面…大通りへと出る。

 悠然と歩みを進めるゴメスの前に立つミライ。その瞳は怒りの闘志で真っ赤に燃え上がっていた。

 

『……周囲を索敵(スキャン)しましたが、ミライ先生を認識している生体反応及び人工物はありません。―――先生、いよいよですね!』

 

 アロナの意気揚々とした声がタブレットから響く。

 

「……そうだね。アロナちゃん、行くよ…!」

 

 そうだ。今こそ、勇気の扉を開く時。

 何処にでもある、ありふれた日常を、この手で獰猛なる理不尽の化身から取り返すのだ。

 

 

 

【“大人のカード”を取り出す】

【“変身アイテム”を使う】

 

 

 

―――バッ!

 

 ミライが左腕を縦にし、前へ向け構えた。

 するとその腕に、街の至る所から発現する“神秘”を包んだ虹色の粒子が徐々に集結し、自然と装具のカタチを模っていく。

 それが白い輝きを発すると、次の瞬間には紅蓮の炎を思わせる赫い腕装…「戦士の証」である“メビウスブレス”へと変わっていた。

 …メビウスブレスの中央部にある真紅の結晶球、クリスタルサークルにミライは右手を添える。

 その添えていた右手を電光石火のスピードで下へとスライド、クリスタルサークルを高速回転(スピン)させ、ブレスに宿った“神秘”の光を一気に開放させる。

 そして、左腕を一度大きく胸元に引き込んだ後、アッパーカットの如き勢いで、スパークする真紅のブレスを蒼空へと掲げて彼は天を貫かんばかりに()()()を吠えた。

 

「―――メビュウーース!!!」

 

 刹那、ヒビノ・ミライは烈しく瞬く無限の光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

――その胸に秘めるは、真っ赤な炎。

 

――銀河の彼方、遥かな星から、光と共にやってくる。

 

――夢と希望を紡ぐため。愛と平和を築くため。

 

――こどもたちの、声なき声聞きやってくる。

 

――ぼくらの愛する、永遠のヒーロー。

 

――願いと祈り、奇跡の輝き手繰り寄せ。

 

――来たぞ。われらの、ウルトラマン。

 

 

 

 

 

 

 憂鬱を誘う黒い曇天に覆われつつあったD.U.上空を一筋の陽光が突如切り裂いた。

 青空を取り戻していくキヴォトスに、何重もの天使の梯子(エンジェル・ラダー)…光のカーテンが掛かる。更にそこから降り注いだのは、琥珀に輝く一条の光柱だった。

 

 何者に教えられたワケでも無いのに、誰もが悟る。

 あれは、この絶望を打ち崩してくれる奇跡であり希望だと。

 …そんな彼ら彼女らの期待を、「光」は裏切らなかった。

 

 ――その眩い光の柱から降臨するは、銀の鎧を纏った赤き体躯の巨人。

 

『――ご覧になられていますでしょうか!? 巨大生物の前に現れたのは、巨人…赤い巨人ですっ!謎の怪物の次は、謎の巨人……一体、このキヴォトスで何が起ころうとしていると言うのでしょう!?』

 

 ヴァルキューレ航空局が指定した飛行制限空域へ強行突入したクロノススクールの報道ヘリによって、ゴメスの行く手を阻むかのように突如現れた巨人を映した外郭区上空からの中継映像は、瞬く間にキヴォトス中に拡散された。

 

 

 

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「――あれが、“光の巨人(ウルトラマン)”…ですか」

「ええ。恐らくは…」

 

 その頃――ミレニアム自治区“特異現象捜査部”の冷房ガンガンな薄暗い部室では、部長を務める超天才美少女ハッカーと“セミナー”の会長がモニター前で驚愕しながらも現実を受け止めようとし……

 

「おおっ!アレこそ…否、あの者こそ、“崇高”の一つの到達点…! 素晴らしい…非常に素晴らしい……!!」

「…“光”。無垢なる幼子たちが『ああ成りたい、在りたい』と願い望む憧れ。時空を超えて存在する不滅の救世主(ヒーロー)。究極の人体と高潔な精神を併せ持つ護星者たち。……こうして見られる日が来ようとは。うむ、実に興味深い。心が躍るというものだ」

「真実と正義と美の化身……虚構(フィクション)でありながら現実(リアル)でもある彼らが内包、或いは纏っている“神秘”と“テクスト”は膨大です。それらは世界を跨げば跨ぐほど、更にはヒトを媒介していけばいくほど、指数関数的に増えてゆく……正しく、無限の可能性を秘めた“崇高”なる種族と言えますね。いやはや…尊敬の念に堪えません」

「そういうこったぁ!!」

 

 キヴォトスの何処かに所在している、異形なる探究者達のアジトでは、四人の怪人が外界からの来訪者の登場を心から祝い……

 

「へぇ……誰かと思えば、不死鳥の戦士サマじゃないか」

 

 ゲヘナ自治区郊外のとある喫茶店では、そこの男店主が壁に取り付けられた薄型テレビに目を向け、闇のオーラを滲ませながら不敵に笑い……

 

「―――か弱き愚かな民らを守り導く…その敬虔な精神だけでは、この世界は救えやしない…」

 

 トリニティ自治区商業地の道端を歩く、青白い顔をした黒づくめの男が悔恨と嫉妬を含んだ目で街頭モニターを睨みつけ……

 

「フッ……『英姿颯爽』、私の好きな言葉です」

 

 アビドス自治区市街地に所在する某人気ラーメン店で、お冷で喉を潤していた黒スーツ姿の男が、店内の一角に置かれたスクエアテレビの画面を眺めて胡散臭い笑みを浮かべ……

 

「全高50mの人型生命体…? ああもうD.U.はどうなっちゃったのよ!?」

「……ですがユウカ、論理的なモノではないとは重々承知してますが…一つ確信できることがあります」

「…確信できること…?」

「ええ。あの巨人はキヴォトスに対する敵意や害意をまるで感じられません…何と言うか、このキヴォトスを――」

「――キヴォトスにいる人々を守ろうとしている、あの大型生物に立ち向かおうという気概が見受けられます」

「私もハスミさんや火宮さんと同感です。何故か、と問われれば、私は答える術を持ち合わせていませんが…とにかくそう思えるんです」

「……たしかに。あの背格好は、頼もしい…と定義できそうかもね」

 

 シャーレ近辺でヴァルキューレの部隊と共に退避準備に入っていた即席分隊ユウカ・ハスミ・チナツ・スズミの四人は、謎の巨人を「敵ではない」存在であると位置付けその動向に釘付けとなり……

 

「あの赤い巨人…怪物と戦うつもりだぞ…」

「私たちの代わりに、やってくれるのか」

「………頑張って…」

 

 ……光に照らされる戦士の背中を直に見て、外郭区郊外の9号線上より撤退中であったヴァルキューレ警官隊の面々の、暗闇に染まりつつあった瞳と心は僅かならがらも希望の光を取り戻していた。

 

 

 

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 眩い光を背に浴びて、キヴォトスの大地に堂々立つこの巨人こそ、ウルトラマンメビウス。

 M78星雲、光の国よりやって来た…安寧と融和を愛する正義の使者。

 かつて生命溢れる蒼き天球に到来した暗黒宇宙大皇帝を、心通わせた小さき仲間達との絆で打ち倒し、未来(明日)を掴み取った大いなる真の英雄。

 

 …斯くして「不死鳥の勇者」と謳われた光の戦士は、地球の生き写しとも言える青く透き通ったこの星の大地に、()()舞い降りた。

  

 対するゴメスは歩みを止めて眼前の巨人に、明確な敵意と戦意を含んだ眼差しを向け、威嚇を意味する低い唸り声を上げた。

 惑星生態系の真なる最上位種族(霊長類)として、超古代の淘汰に次ぐ淘汰を勝ち抜き磨かれた生物特有の勘…本能とも言うべきものが特大の()()を鳴らしていると反射的に知覚したからだ。

 故に巨獣ゴメスは、かの巨人を同格の存在と位置付け、不倶戴天の「天敵」だと判断。メビウスをその黒い巨体の正面に据え、ヴァルキューレ警察との交戦でさえ見せなかった()()の態勢に入った。

 

 ――セアッ!!

 

 雄々しい掛け声と共に、右の平手を前へ突き出し、左の拳を掲げた勇敢なるファイティングポーズを構えるメビウス。

 

 この街を蝕むあの巨獣を討つ。

 

 そう決意し、いざ行かんとした時だった。

 

 

 

―――ピコンピコンピコンピコン!

 

 

 

 メビウスの胸部中央…瑠璃のように青く輝いていた胸の斜方結晶体が、活動補助器官“カラータイマー”が……何の脈絡も無く()()()を発しながら赤く瞬き始めたのである。

 

 その赤の明滅が意味するのは「限界の一歩手前」。

 それを理解している光の巨人の鉄仮面が、心無しか驚愕と焦燥に歪んだように見えた。

 

 状況に進展は無く、ゴメスは依然健在だ。

 

 ……キヴォトスでのメビウスの初陣に、早くも暗雲が立ち込めてきたのだった。

 

 

 





 あと
 がき

 どうも、『青春のアーカイブ』を聴く度にサビ突入時、ガイアとアグルのダイナミック着地を延々幻視する投稿者の逃げるレッドです。♪バルンガみたいな雲がカタチを変えていく〜

 …ベアおばの声、個人的イメージだと「マナカケンゴォ!」botでお馴染みのカルミラ姉さんになっちゃう。なんでだろね?
 メイドミドモモ、実装……ッ! 満を持しての、実装!!! 慈愛のアキラは…アキラはどこにおるんですか…?

 本作のお気に入り登録が300を超えました…ありがとうございます…!!
 6話投稿してから百人ぐらい一気に増えたんでビックリしました。どれの何がブッ刺さったのか、良ければ感想書いて教えてくださると投稿者が喜んでオートボットの司令官と共に爆発します。

 ミライ先生、謎“神秘”パゥアーのゴリ押しで正面から生徒達の壁を突破。単独で立ち向かっても怪しまれないし追跡もされない。
 ある種のメタ的な要素も含んでるけど、“物語の主人公”は絶対こういうことできる。
 
 
※毎度お馴染みピックアップ解説コーナー
 (独自設定独自解釈共にもりもり)

 ↓今回の解説コーナーはいつもよりちょっと長めになります。スキップしたい方はスキップしてもらっても大丈夫です。

◯ヴァルキューレ警察航空局・対テロ飛行隊
 要は戦闘・攻撃ヘリで構成される航空部隊。
 地上で活動する警官隊の支援や機甲・航空戦力の排除を担当する。
 今回出てきたフライングエッグ達は、外郭区とその隣接区支部がかき集めて一挙投入した、対テロ飛行隊の即席編成一個飛行群。
 
 本作の時間軸・世界線のヴァルキューレ中央本部及び各支部に置かれる航空局は「対テロ」、「警邏・捜索・追跡」、「調査・広報・監視」を任務として、複数種のヘリコプターを所有している。
 迅速な地上戦闘支援並びに人員の緊急輸送で重宝されるAH-6(キラーエッグ)/MH-6(リトルバード)、中央本部の対テロ飛行隊のみに配備されている虎の子のAH-1(コブラ)、パトロール系全般で引っ張りだこなOH-1(ニンジャ)、あらゆる任務に対応できる万能機体UH-1(イロコイ)、同校海警局と共同で扱う海難救助用として配備されているSH-60(シーホーク)……などが主な保有ヘリコプター。

◯GMDS
 文字通り、メモリーディスプレイに内蔵されているメインシステムのこと。名称も設定も独自のものとなります。ただの略称です。
 “GUYSタフブック”なるノートパソコン型ツールも同系統のシステムを積んでる。

◯GUYSアーカイブドキュメント
 怪獣博士(男の子)たちの憧れ。所謂、電子版の怪獣・宇宙人図鑑。その名の通り、GUYSが管理していたものである。
 M78ワールドの歴代地球防衛チームやその代替組織()観測・相対した存在の情報が載っており、画像や動画による照合が可能で、携行端末の撮影機能(アプリ)と併用すれば現場でも活躍する。
 今回出てきた“アウトオブドキュメント”は、惑星規模の軍事組織さえも整備・結成されていない、或いは該当する組織が機能不全を起こしていた空白の時期、つまり『ウルトラQ』や防衛チームが全滅した『ウルトラマンレオ』中期以降から『ウルトラマン80』来訪までに現れた怪獣・異星人の(精度に粗さが残っている断片的)記録である。
 ……また、地球側による対怪獣・異星人過失事案…「地球人類の()()」を記録・保存し集積している“ドキュメントフォビドゥン”なるものもある。同ドキュメントは最重要機密事項としてGUYS上層部が厳重な秘匿処置(セキュリティ)を掛けており、実働部隊指揮官未満のクリアランス権限ではアクセスがそもそもできず、GUYS内部だけでなく国連や各国政府並びに軍隊、民間人に対しても徹底的な情報統制と隠蔽がされていた。
 例として、ジャミラやギエロン星獣、ノンマルト、メイツ星人等の詳細データがここに収められている。

 尚、アロナはデータ群のダウンロードの際、ウルトラマン以外の星人・怪獣データは別名や画像を漫画本よろしくパラパラと流し読みしてただけなので、フォビドゥンには()()気づいていない。彼女にかかればGUYSの高度セキュリティーさえも鍵無し同然であるので、その気になればいつでも閲覧できると言える。もしかすると暇つぶし程度に覗いたら曇ってミライに泣きつく…なんてことになるかも。連邦生t……子供にはキツいやろあの胸糞な文書(ログ)たちはよぉ…

◯GUYSでの想い出
 中身の一部は、装輪装甲車での移動時間中やアロナとの邂逅時などで既に拝見済み。
 リュウさんのメモリーディスプレイなんで、多分保存画像や動画の半分はミライ先生や当時の同期達、そしてセリザワ元隊長でいっぱい。「その後」の想い出も詰まってるはずなので、ミライ先生にとって数千数万年越しの新たな発見もあるかも。微笑ましい。

◯変身ヒーローの正体バレ(対アロナ)
 しょーがねーだろド天然なんだから(ポプテピ感)
 自分のことに関しては、ほえ〜っとしてるけど、逆に仲間のことになるとシャッキリしてるのがメビウスでありミライ君だと思う。

 ただ、補足させてもらうと、今回の身バレはミライ先生の所持してるメモリーディスプレイが、()()()()()()()()であったから発生しました。
 原作でも恐らくそうですが……ミライ先生本人がトライガーや隊服と共に持ち帰ったメモリーディスプレイは本体の情報更新(アップデート)がエンペラ星人との最終決戦前後のゴタゴタで途切れていて「ミライ=メビウス」であることは公的には明記されていなかったのだと推測してます。
 一方、リュウさんのメモリーディスプレイはと言えば、その後も彼はGUYSに数十年ずっと勤めていたと推測できるので、ドキュメントアーカイブからクルーの履歴書に至るまでニューヨーク総本部のデータベースから各支部のデータベースへ定期的に送信される各種パッチがインストールされてるハズだから………まあ、こうなるかと。

◯【支・助・守】精神の宣誓
 オリジナルのGUYS極東・日本支部スローガン。
 吉田茂元首相(※2026/01/20 田中角栄元総理から修正)の自衛官に向けた『日陰者』スピーチの内容とかもちょこっと意識してます。要素は皆無だけどね。

◯ヒビノ・ミライ先生の“選択”
 ゲーム画面だったら、この一択しかない選択肢が見えてました。
 ここで書いておきますが、ミライ先生はあの“シッテムの箱”と並び立つチートアイテム…“大人のカード”は持ってません。その役目と立ち位置は後述の“メビウスブレス”が代替してます。なので、ゴメス事変後にシャーレ部室の先生用デスクの引き出しとかをひっくり返してみても恐らくそれらしきモノは見つからないでしょう。

◯メビウスブレス
 本作の“大人のカード”枠な腕部装着式のブレスレット型変身装具(アイテム)。赤と黒、そして金の装飾が施されており、全体的に「炎」の意匠(デザイン)を強く押し出した代物になっている。
 メビウス(ミライ)にとって、人間体から通常体である光の巨人へと成るための必須デバイスであり、巨人体時に操る武具でもある。…因みに、当時新米(ルーキー)隊員であったメビウスが、宇宙警備隊大隊長ウルトラの父から直接授けられたトンデモアイテムだったりする。
 それ故か、多様な機能を備えており、代表的なのが「凡ゆるエネルギーと粒子の変換・貯蓄・放出」、「各種光線の発射媒体兼光剣“メビュームブレード”の発現器」、「装着者の潜在能力の制限(リミッター)付与」などがある。

 上でも書いてるように、ウルトラの父が直々に与えてるブレスレット装備なので、その性能は折り紙付き。無印状態の名称は「ファザーブレス」や「コマンダーブレス」なのかなとか勝手に考えてる。
 これの類似物としては――
 ウルトラブレスレット
 タロウブレスレット
 キングブレスレット
 レオブレスレット
 ナイトブレス
 ウルトラゼロブレスレット
 ――など、結構な数がある。又、競合・類似品に“スパーク”系腕部装備が存在。
 M78ワールドのブレスレット・スパーク系装備は、どれもフルスペックで本格量産化して配備できたら、一般警備隊員がネームド手前ほどに化けるだろうぐらいには冗談抜きで強い。

 何かの手違いと偶然が重なって貰えるなら投稿者はナイトブレスが欲しい。

◯カラータイマー
 ()()()()()三分経過直前になると赤く光ってピコンピコン鳴り始める丸いアレ。日本一有名な「弱点」とも言う。

 M78星雲系のウルトラマン達__それも星外での活動をする官民の人員__が取り付けている、装着者の生命維持を主な役割とする半球かつ結晶状の人工臓器。主に胸部中央に埋め込まれる。
 通常時は青い光を静かに発しているのみだが、活動制限時間やエネルギー・体力・精神が削られたりするなどして残り僅かになると言った緊急時には赤く点滅し不安を掻き立てるアラート音を鳴らして、装着者本人やそれの随伴者に()()()()へ突入したことを速やかに報せる。
 副次的な機能としては、プラズマスパークエネルギー__M78星雲人の力の源である「ディファレーター因子」を含む高純度の光__をある程度の量貯蓄し、非常時等に限定開放することで最低限の生命維持と活動時間の延長を可能とするものがあるとされる。

 尚、基本的にカラータイマーの発光現象が停止した場合、その装着者であるウルトラ戦士は活動能力を喪失した…即ち「死亡」したと位置付けられる。又、埋め込み式の人工臓器であるので、これを正規の手順を踏まずにいきなり取り外す外される、壊されるようなことがあると、装着者自身に致命傷相当の負荷が掛かるのは必至。心肺系の追加器官のようなモノなのでそうなるのはぶっちゃけ当然と言える。
 漫画作品『STORY0(ゼロ)』では、ウルトラマンエースの幼馴染であるルティアが自害する際に同器官を手で抉り引き抜くという行動をとった。



 反応を示した各陣営・人物に関しては今回の解説コーナーでは触れません。ミライ先生によるそれぞれとの接触回でまた改めて設けるので暫しお待ちを。
 
 又、残り二、三話で対策委員会編の準備としての次章――Vol.2【シャーレの始動】――に突入させる予定です。
 寄り道する関係上、原作のアビドス対策委員会編まではまだ遠いのだ……

 さてさて次は何故かカラータイマー点滅状態に陥ってしまったメビウス兄さん単独での古代禍威獣ゴメスそうりきせん突入です。
 ゴメスの攻撃属性は振動、防御属性は特殊装甲・重装甲だと妄想。
 
 次回、【奮戦の“ルーキー”】
 お楽しみに。
 

Vol.2アンケート

  • 【フトモモのユウカ/ノアの微笑】
  • 【全知の美少女】
  • 【史上最高のバ美肉】
  • 【海辺の怪 -港湾警備依頼-】
  • 【闇の|店主《マスター》】
  • 【追想のユニフォーム】
  • 【メフィラスの“やり方”】
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