諸人、立チ入ルベカラズ   作:クサリ

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エピローグ

「君、つくづく運が良いのか悪いのか分かんないよね……」

 

 疲れ切った体を引きずって霧の導きを辿り、禁域を抜けたことでどうにか繋がるようになった通信端末で境対に迎えに来てもらって、諸々の事情聴取と身体&霊体検査を終えてようやく一眠り……というのを呼び出しで邪魔してくれた下手人は、憐れむようにため息を吐いた。

 ラフなTシャツ姿の上から白衣を来た変人。どこからどうみても少女にしか見えないその人物の名を、(かがり)という。彼女は草薙の()()()()であり、要は成人男性にあれこれ少女趣味の装備を押し付けてくる主犯であった。

 

「篝さん、俺、疲れてるんすけど」

 

 もはや食ってかかる元気もない。草薙は一刻も早く自室に戻って泥のように眠りたかった。元々生還自体が奇跡的だったのだし、禁域での活動という希少事例を前にした研究者達に根掘り葉掘りと記憶とデータをほじくり返された後なのだ。その精神的疲労はピークに達していた。

 

「そうツレないことを言うなよ、今回ばかりは流石の私でも驚いてるんだぜ? あの有楽飯荼毘(うらめしだび)と、それも禁域で遭遇して生還してくるなんて」

 

 その口ぶりが、妙に気にかかる。確かにヤバい相手ではあったし何から何まで不審ではあったが、結局のところは面倒見が良くなにかと気を配ってくれていた恩人でもあった。善人には見えないが、悪人に見えないというのが草薙からの評価だ。それが、遭遇して生還したのが奇跡であるかのように語られるなんて、どういうことだ?

 

「……有名なんすか? あの人」

「有名も有名、ミワシ部隊の特攻隊長だよ?」

「…………は???」

 

 ミワシ部隊。詳しいことは覚えていないが、それでもその名前だけは研修で叩き込まれて覚えていた。

 曰く、日本大帝国の亡霊。曰く、未だにかつての作戦目標を達成せんと活動し続けている軍隊崩れ。曰く、大規模な呪詛テロリスト。

 組織の規模や構成員の質もさながら、何よりも部隊長と独自の技術体系が危険視されていると噂の、超危険集団の、特攻隊長?

 

「うわほんとに気づいてなかったんだ。彼の自爆戦法、意味不明で名が通ってるんだけど」

「意味不明な自爆…………、ああ、してましたね……」

 

 頭を抱えてしまった草薙を篝がからからと笑う。そう言えば、縁があればまた会おうとか言われてたっけなんて思い出してしまって胃が痛むような思いだった。あれどんな気持ちで言ってたんだよと問い詰めたくて仕方がない。どう考えても水と油、敵対せざるを得ない立場だった。

 

「ま、聞いた感じでは供潰の性質が作戦に邪魔だったんだろうね。アホみたいな火力で一気に潰すのが手っ取り早いから荼毘が寄越されたと見たよ私は」

「利害が食い合わなかったから見逃されたんすね俺」

「それどころか生還を手伝ってくれたわけだ。きみ、感謝しといた方が良いよ? 次会った時に殺されないようにね」

 

 草薙と荼毘の再会をどこか確信したように語る篝に、重く長いため息を吐く。考えたくはない事態だが、次に会うときは敵対的な立ち位置であることは十二分にありうるというか、職業柄ほぼ確実にそうなるだろう。

 今のままでは何もできずに死ぬ。その確信があるからこそ、草薙は嫌そうな顔を隠しもせずに篝へとこう訴えることにした。

 

「その時に死なずに済むようにもっと強力な装備も持たせておいてくださいよ」

「良いけど、君も使いこなせるくらいにテスト頼むよ? そうだなあ、次はどういう系統の装備が良い?」

 

 どうせ少女趣味にされると分かりきっている未来に沈む気持ちを振り切って、その問いに答える。どんな装備が良いかって、そりゃ決まってるさ。

 

「呪瘤檀」

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