サリーちゃん可愛いくて、みぞれ同様に『護りたい……この笑顔』状態になってしまいました。
巫女服サリーちゃんが見たいです公式様‼︎
本来なら前回のあとがきに書いた仕込みをしたかったのですが、展開的に無理矢理入れるのもアレだったので、次回以降に回しました。
では本編をどうぞ。
「あらためまして、トランペットパートにようこそ。先ほど楽器紹介を務めさせていただきましたパートリーダーの中世古香織です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる香織に合わせて、一年生は頭を下げる。
楽器決めが終了し、音楽室からトランペットパートの練習場所の教室に移動したメンバーは全員で八人。新入部員三人を加えて、これから本格的に活動していくことになる。
麗奈の音に興味を持った由貴は、晴香から入部届けを受け取りささっと名前を記入して提出。他の二人の音出しの後を行い、問題なくトランペットパートに決まった。その際麗奈の音に触発されて目一杯音出しした結果、自身も注目を集めることになったのは割愛。
「三年生の笠野沙希です。副パートリーダーをしています。よろしくお願いします」
「二年の吉川優子です。よろしく」
「同じく、二年の加部友恵です。トランペットは高校に入ってから始めました。何か分からないことがあったら遠慮なく相談してね。恋愛相談は別料金で受付けしてるから」
黒髪を二つ結びにした沙希。黄色いリボンが特徴的な優子。ハート型の髪留めを左右に付けた友恵。三人が並んで挨拶をする。女子は新入生含めて六人。先輩とはいえ男子が一人いるのは、由貴としてはありがたい。
「二年の滝野純一。これから不安な事が色々あるかと思いますが、困ったら是非頼ってください!」
やや上擦った声で自己紹介をするのは、トランペットパートで唯一の男子だった先輩だ。新入生を前に少し緊張しているのだろう。女子二人とも、先輩たちに負けず劣らずの可愛さを持っている。
「北中出身の高坂麗奈です。よろしくお願いします」
「吉沢秋子です。よろしくお願いしま〜す」
麗奈に続けてもう一人の新入部員、吉沢秋子が挨拶をする。どこかのんびりとしたマイペースな雰囲気をしてゴムで留めたサイドテールが揺れる。
「暁由貴です。よろしくお願いします」
由貴は無難な挨拶をして頭を下げた。
「はい。では自己紹介が済んだので、簡単な説明をするね。基本パート練習と言われたらこの教室か渡り廊下になるから事前に確認すること。雨が降った場合この教室に集合。部活の練習時間は放課後の一八時まで。休日練習に関しては顧問の滝先生の方針次第だけど、基本的に合奏を中心とした練習になるから覚えておいてね。特にコンクールや演奏会の時期が近づいたら土日両方練習になるから。個人練習は個々の自由になってるから、部活中にやる場合は報告を忘れずに」
一通りの説明を済ませると香織は優しい笑みを浮かべて「何か質問はある?」と聞いてくる。柔らかい物腰と雰囲気はどこか落ち着く。特に聞くことがなかった三人は「ありません」とだけ答える。
練習に関しては北宇治も強豪校と思ってたより変わらない。練習時間に差はあれど、平日はパート練習メインで休日は合奏メインは何処も同じなのだろう。違いがあるとすれば、真っ先に上がるのは顧問と生徒の意識の差くらいだ。
「それじゃあ、今日は最後に吉沢さんの楽器を決めて終わりにしましょう」
香織の言葉に各自荷物を待って教室から出て、楽器室に向かう。吹奏楽に使用される楽器は自前の物が無い場合、学校の備品を使用することになる。楽器は安ければ三万程度で済むが高価な物になると三〇万以上はする。当然学校に保管されてる数しか使えないので、その分パートに所属出来るメンバーは限られてくる。幸いにもトランペットパートの新入生三人中二人はマイ楽器を所持しているのでその心配はない。
「どう思う?この部」
前を歩くパートメンバーから少し距離を置いて後ろから歩く由貴の隣に並んで歩いてる麗奈は問いかけてきた。彼女の表情は変化していないが、考えていることはなんとなく察することが出来た。
「部内の雰囲気は悪くない。さっきの楽器選びを見てた感じだと先輩達もそれぞれ楽しそうに指導してたから、吹奏楽部特有の人間関係の問題はなさそうだな。部長さんも人当たり良さそうな人だし、大きな問題はそうそう起きないと思う」
約一名、明らかに
「それだけ?」
他に何か言いたいことがあるでしょ?そう問いかけてくる麗奈の言葉。お互い顔を見ず前を歩く六人の後ろ姿が目に映る。香織が積極的に秋子に話をかけることで、他のパートメンバーと馴染めやすいように接している。沙希や優子、友恵といった女子がそれに乗る形で話し、純一は少し引いた感じで歩いている。トランペットパートは香織が言った通り、メンバー間の仲が良い様子が伺える。これはパートリーダーである香織自身がどれほど信頼されているのか表している。
そんなやり取りを見ながら、由貴は少し悩んでから口を開く。
「高坂が聞きたいことはだいたい察しがつく。俺も初めて聴いた時、同じことを思ったからな」
入学式の日、演奏された暴れん坊将軍の出来は本当に練習をしていたのかとさえ思う。楽器ごとに音が出てない。音ズレが頻繁に起きる。問題点が多過ぎて、合奏練習どころかパート練習すらしていたのか疑問に思う。
北宇治に入学した時点で未練は残ってても高校で吹奏楽をやるつもりがなかった由貴からすれば、北宇治高校の演奏はお粗末な出来だった。順菜の誘いに乗り、麗奈という予想外の実力者との遭遇がいなければ入部なんてしなかっただろう。由貴の中で高坂麗奈という人物は、それほどの実力を兼ね備えてた存在だった。
「けど、この部内の雰囲気を変えることは容易じゃない。少なくとも、今の上級生が全員意識を変えないとこれ以上のことは到底出来ない。むしろ無理に何かやろうとして行動を起こしたとしても、簡単に潰されるのがオチだ」
長年染み付いた習慣や意識はそう簡単に変わらない。北宇治高校がかつて関西大会常連だった頃の雰囲気は、当時の顧問の転任によって簡単に崩れ、もはや色褪せた歴史として北宇治高校に残っているくらいだ。そんな状況にずっといた人がそう簡単に意識を変えるのは不可能に等しい。
「それなのに、どうして北宇治を選んだんだ?」
一番の疑問はそこだ。続けて由貴は麗奈に尋ねた。
「高坂の実力なら、立華や洛秋って強豪校から推薦されてたはずだろ?なんでわざわざ」
「……私は特別になりたいから」
「ん?それってどういう……」
麗奈は足を早めて前に出て由貴に振り返る。はらっと舞う黒髪と麗奈の綺麗な顔立ちと強い眼差しは見る者を虜にすると錯覚するほど絵になっていた。
「言葉通りの意味。私は特別になりたい。だから北宇治に来たの。だって——————」
「ちょっと! あんた達!」
麗奈が何か言いかけたところで、不意に叫び声が聞こえた。
「自分たちが関係ないからってちんたらしてんじゃないわよ‼︎ 香織先輩に迷惑がかかるでしょ⁉︎」
「優子ちゃん、ちょっと落ち着こう?」
見れば、異様に目立つリボンを揺らして優子が不機嫌な顔で怒っていた。そんな優子を香織が宥めていた。気がつかないうちに十メートル近く離れていたみたいだ。
「すみません。急ぎます」
「早くしなさいよ!」
二人は早歩きで合流する。楽器室に着いてからは備品の説明や秋子の楽器選びを終えるとその場で解散となった。結局、麗奈が何を言おうとしていたのか聞くことは出来なかった。
次の日、由貴はその言葉の続きを知ることになる。
それは同時に宇治高校吹奏楽部にとって、運命の転換点となることを、まだ誰も知らない……。
次回更新をお楽しみに。
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