ウィザーディング・ワールド・オブ・リコリス・リコイル   作:峰霧 澪

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第2話です。誤字・脱字などありましたら修正いただけますと幸いです。


#2: Uninvited guests|招かれざる客

「ん? 空いてるけど何か用?」

銃を整備する手を止めて、千束が答える。──2人に声をかけてきたのは、小狡そうな顔をした金髪の少年だった。彼の後ろには腰巾着とおぼしき2つの醜い肥満体が並んでいる。

「まあね。君たちもホグワーツの新1年生なんだろ? 僕はドラコ・マルフォイ。こいつらはクラッブとゴイルだ」

「ふーん……私は錦木千束。こっちは私の相棒のたきなね!」

自信満々に自己紹介をしたマルフォイに素早く眼を走らせ、千束が快活に言う。

「井之上たきなです。よろしく」

しかし、2人が自己紹介をした途端、マルフォイの顔に()()と侮蔑の色が差した。

「チサト家にタキナ家? 聞いたことないな。──少なくとも僕や父上のような純血じゃなさそうだ。まさかマグル生まれか? だとしたら声を掛ける相手を間違えたな……」

「あー違う違う、私たちは日本人だからね。錦木と井之上が(サー・ネーム)なの。で、その純血とかマグルって?」

「ふん」千束が訊くと、マルフォイはいよいよ侮蔑をあらわにして2人を見て、にやにやしながら説明をはじめた。「マグルっていうのは非魔法族のことで、純血というのは、僕らみたいに魔法使い同士で子を成してきた、百パーセント魔法使いな()()のことさ──もちろん、マグルから魔法使いが産まれることもある。君たちみたいな混血……〝穢れた血(マッド・ブラッド)〟が()()さ」

マルフォイは〝穢れた血(マッド・ブラッド)〟という言葉をとくに強調して言った。大抵の混血に、この方法は効果覿面(てきめん)なのだ。大半は激昂(げっこう)し、なかには殴りかかってくる者さえいる。──むろん、マルフォイには目の前のか弱そうな少女2人に負けるヴィジョンなど浮んでいるわけがなかった。だが……

「ふーん、純血主義ねぇ」

「とっくに時代遅れの思想をこんなところで見るとは思いませんでした。ふふ」

2人とも一向に気にする様子を見せない。むしろ純血思想を嗤っているようだった。金髪の方などは膝に広げた小さな鞄に視線を戻し、布で()()()()を磨く作業にもどっている。──2人に煽るつもりは毛頭なかったが、2人の無関心はマルフォイ少年の自尊心(プライド)をいたく傷つけた。

「僕を無視したり嗤ったり……クラッブ!ゴイル! 少し痛い目に──」

痛い目に遭わせてやれ、というマルフォイの命令は、2発の銃声によって遮られた。パシュ、パシュという気の抜けた音の一瞬後、動き出そうとしていた肥満体にたきなの放ったゴム弾が炸裂する。

「ぐぎゃっ」

「ぐえっ」

廊下に汚い呻き声が響く。──いくらゴム弾とはいえ、その衝撃は相当なものだ。弾頭が違うだけで同じ火薬で射ち出すのだから、その衝撃はハンマーで強めに殴られたようなものに近い。

未体験の激痛に悶絶しているクラッブとゴイルを見て、マルフォイが杖を取り出すが、たきなが彼に銃口を向けると気圧されたように杖を下ろした。未知の兵器を相手に未熟な魔法で対抗するのは悪手だと判断したのだ。

癒えよ(エピスキー)──くそっ、父様に言いつけてやるからな! この穢れた血め!」

──そして、彼は捨て台詞を残して消えていった。

「たきなぁ~手出すの早すぎだよ……」

「向こうは魔法使いです。早めに潰しておくに越したことはありません」

千束がやんわりとたしなめるが、たきなは消音器(サイレンサー)を外しながら反論する。──彼女が腿のホルスターに入れていた銃は彼女の愛銃、米・S(スミス・)&(アンド・)W(ウェッソン)社製M&P9。隠密射撃用に、長く角ばった消音器(サイレンサー)がついていた。

「しかし……『父様に言いつけてやる』と言っていましたから、彼の父親はおそらくかなりの権力者なのでしょうね。もしかしたら消音器(サイレンサー)を付けずに爆音で脅した方がよかったかもしれません」

「うーん……それはわからないけど、ゴム弾を使ったのは良かったと思うよ。いつの間に調達してたの?」

「流血騒ぎを起こさずに問題を解決することも必要かと思いまして、日本を発つ前にDAの武器庫から失敬してきました」

「そうそう!」千束が我が意を得たりとばかりに言った。「私もいいこと言うでしょ?」




《ひとくち解説》
【呪文の形式について】
→呪文の表記には2種類あります。

小説版──〝エクスペリアームス 武器よ去れ〟
映画版字幕──武器よ去れ(エクスペリアームス)

実際には「エクスペリアームス」しか言ってないなぁということで、本作では映画版の表記を採用しています。
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