ヰ世界の歌 夜明け前のダークエルフ 王道硬派な大河ファンタジーの世界で一歩から始める人外愛譚   作:所羅門ヒトリモン

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#321「裏世界と今のギンヌンガ」

 

 

 朝が来た。

 夜通しギンヌンガと話をして、段々と裏世界の情報が詳らかになって来た。

 ギンヌンガの情報提供によって、現在判明している事実は次の通り。

 順番に確認して行こう。

 

 ①裏世界は〈第五円環帯(ティタテスカ・リングベルト)〉の裏側部分で作られている。

 

「エルノスの星には表も裏もないけどさ、〈廻天円環帯(リングスフィアベルト)〉には表裏があるだろ?」

「たしかに」

「他はどーだか知らないけどさっ、〈第五円環帯(ティタテスカ)〉の裏側はアイツらの〈領域〉だったんだっ」

 

 表側はダークエルフと巨人が暮らし、裏側に神々が暮らしていた。

 要するに、第五世界の静寂や安寧を成立させていたのは、裏側であり神々。

 神々は秩序や理、システムそのものと言い換えてもいいだろう。

 特に、黒白の双子巨神に関しては神話のなかでも、世界を支える、世界を廻す、という一節が出てくる。

 

 これはほぼ、第五世界の運営に関わっていたと考えていいセンテンスだ。

 

 裏側を含め、表側についても最上位の管理者権限を持っていたと考えてもいいはず。

 夜闇の王に関しては、月の神殿に棲まうとしか分かっていないが、黒白の双子巨神と同格の神だったなら、世界運営と同等の権能を有していると見なしていい。

 それに、夜闇の王はひとりだけ、行動範囲も広い。

 自分の世界である〈第五円環帯(ティタテスカ・リングベルト)〉を飛び出して、月にまで旅立っているからだ。

 

 月。

 

 月は〈渾天儀世界〉で、太陽と同じ大きさの天体。

 そこで神殿を築き上げて、移住してしまったと考えると、他の(世界)を己が〈領域〉で塗り潰した? 侵略した? とも言えるワケで。

 神格については、疑いの余地を挟み込めない。

 

「アタシがまだやんちゃだった頃、アイツらはアタシを自分たちが思いっきり好き勝手できる場所に誘い込んで、罠を張ってたんだ」

「それが、この封祠堂なんだな?」

「そうだ! アイツ、アタマがいーから、いろんな物を作れるんだよ。ズルいだろ?」

 

 裏側の世界で作られたギンヌンガ専用の牢獄。

 ならば自ずと、その構成素材は第五世界の秩序と理を成り立たせる側の物で、ここに囚われたモノは強制的に裏側の存在として監禁される。

 管理者権限を持たない=神ではないモノでは、出入り不可能になる。

 いったん、そこまでは分かった。

 

(ただし、封祠堂は最初から封祠堂だったワケじゃない)

 

 時系列に注意しよう。

 ギンヌンガは神々の暮らす裏側の第五世界で閉じ込められた。

 なら、表側に暮らしていたダークエルフや巨人が、ギンヌンガが閉じ込められているこの封印建築物を、知り得るはずがない。

 封祠堂と名前をつけて呼び出すのは、この場所が彼らの目にも留まるようになってからだ。

 

 それはつまり、巨大彗星衝突後を意味する。

 

 ②〈崩落轟〉によって〈第五円環帯(ティタテスカ・リングベルト)〉は打ち砕かれ、砕かれた破片の幾つかは表側も裏側も区別なくエルノスの星に墜落した。

 

 ギンヌンガから聞き出すまでもなく、俺も充分に承知している〈渾天儀世界〉の常識。

 北方大陸(グランシャリオ)に生きる人間なら、この超大陸が中枢渾天球(エルノス)第二円環帯(ルキフェディッテ)第五円環帯(ティタテスカ)第八円環帯(ハーディーンス)

 四種の世界要素が融合して生まれた超大陸であると、嫌でも識る羽目になる。

 

 俺はヴォレアスで、本を読んで勉強した。

 

 ティタノモンゴットに来る前、このあたりの土地がとりわけ第五世界の理を色濃く顕すらしいとも、頭のなかには入れている。

 

「山の内側にもうひとつある世界」

「はにゃあ?」

「表と裏……ティタノモンゴットはじゃあ、その表裏の理を活かして建てられた国なのか!」

 

 暇があれば巨人の誰かに話を聞こうと思っていたが、ギンヌンガのおかげでひとつの謎が解明された。

 荘厳なる銀嶺とは、まさによく言ったもの。

 しかし、巨人たちも墜落して、すぐにこの場所を見つけたワケではない。

 

 古代ではセプテントリア王国の一員だった。

 

 国が滅んで、そこから多くの他種族と袂を分かち、ギガース高原を越えてこの銀嶺に移り住み。

 その頃には、もはや〈崩落轟〉より前の第五世界を識る者は、ごく少数になっていて。

 この封印建築物を発見しても、古代の遺跡だと誤解してしまった。

 

 遠い宙にて欠け身を晒す、今や決して戻れぬ故郷を見上げ。

 

 ああ、ここにも我らの同胞がいたのだと。

 

 ただ懐かしさを覚え、ひょっとしたら種族古来の神の気配も感じ取ったのかもしれない。

 そうでなければ、〝祠堂〟とは呼ばないはずだ。

 後に封印の封の字が頭についたのは、何か言い知れぬカイブツの気配を覚えて恐怖したからかもしれない。

 

「違うぞ?」

「なに?」

「ここが巨人たちにも封印されるようになったのは、ただ単に老朽化がすごかったからだ」

「老朽化」

「ああ。実は一回だけ、外に出れそうな時があったんだよ〜。巨大彗星がぶつかって来た時なんだけど!」

 

 もともと内側では、ギンヌンガが外へ出ようと暴れ回っていた。

 そこに巨大彗星がやって来て、表も裏も関係なくダメージが入った。

 

「後にも先にも、あの時だけだな〜、アタシの爪が表側に届いたのは! ま、それでもちょっとしか届かなかったんだけどな?」

 

 彗星衝突と墜落のダメージも合わさって、遺跡はかなりズタボロになった。

 

「それ以来、表側には一度も手出しできないんだ。アイツ、ホントにどんだけ凝り性なんだよ!」

「待った」

「ン?」

「表側には、一度も手出しできない? それはおかしいだろ」

 

 ギンヌンガは俺やクリスに、怪異的なちょっかいをかけた。

 

「ああ、そうだ。そうだよ! 手出しできてるじゃないか!」

「え?」

「〝裏側のものは表側に何も出来ない〟──これは昔の話なんじゃないか!?」

「ええっと〜……?」

「オイ、しっかりしてくれ。自分で言ったんだぞ?」

 

 世界を裂く爪。

 巨大彗星。

 エルノスの星への墜落。

 

「三つの要因で、この裏世界はだいぶガタが来てる! だから、ああやって表側にいた俺たちをからかえた!」

「おおっ! 言われてみればっ!? ……でも、アタシの爪もメランの斧も、まだまだぜんぜん通用しないぞ?」

「たしかに」

 

 視点を変える必要があった。

 考えろ。

 世界を斬り裂く斬撃でも、世界を裂くギンヌンガの爪でも、この裏世界は破壊し得ない。表側には何も干渉できない。

 しかし、ギンヌンガは事実として、怪異的な能力で表側に干渉してのけた。

 

 両者の違いは?

 

 ③無理やり出ようとしてもダメで、中に引き込もうとするのは問題ない。

 

「いや、これじゃあ外への出方が分からない」

「???」

 

 肝心なのは、なぜ怪異的な能力であれば表側に干渉できたのか?

 

「なあ、ギンヌンガ」

「なんだ? メラン!」

「オマエって、昔からああいうコトができたのか? っていうか、そもそも正体がよく分からないんだが、神じゃあないんだよな?」

「アハハハハハハハッ! アタシがアイツらと同じ神だったら、とっくにここから出られてるだろ!」

「だよな」

 

 裏側の理に利用者権限すら持っていないのなら、ギンヌンガは第五世界の神ではない。

 第五世界の、なんだ?

 

「神が直接出張って来て、三柱がかりで罠にかけるような、めちゃくちゃヤベェヤツってのは分かった」

「う、うん」

「だけど、いまのギンヌンガを見ても、そんなにヤベェヤツには見えない」

「うんうん! アタシ、反省したからな!」

「それなら、俺は今のギンヌンガを信じる」

「!」

「それに今のギンヌンガは、巨人たちから少なくない信仰を受けてるはずだ」

 

 〈ギニェルガーブの封祠堂〉

 

「今を生きる巨人たちには、ここにいるのが昔、神様に退治されたヤベェヤツだって事実は分からない」

「た、退治はされてないぞ〜……」

「とにかく、今のギンヌンガには第五世界の神々と同じような、裏側の理にアクセスする権利が備わっているんじゃないか?」

「ア、アタシがアイツらと同じ〜!? いやいやっ、ありえないだろ〜……!」

 

 モサモサがブンブン首を振った。

 だが、俺の推理はそう悪い線ではないはずだ。

 能力が能力なので、祀られ方がちょっと気になるが……祠堂って名前は明らかに祀る対象を感じさせる。

 そしてどんなカタチであれ、信仰は時を経て神を生む。

 永く永くこの世に在り続けていると、獣神がやがて擬人化された神格となるように。

 

「ただし、ギンヌンガ。オマエの神格は備わっていたとしても、だいぶ低いんだと思う」

「なっ! ……なんかムカつくぞ〜、その言い方〜!」

「実際、自分でも神様なんて気はしないんだろ? 俺だってそうだ」

「──む」

「だからさ、ギンヌンガ」

「うっ、なんだよ……?」

「俺もそろそろ、いい加減にここから出たいからさ? あんまり目を向けようとは思わなかったんだけど」

「……」

 

 ここまでの情報を整理して、ギンヌンガについて知れば知るほど見過ごせない問題がある。

 

「俺はこれでも、オマエみたいなヤツを見る目には自信があってさ」

「アタシみたいなヤツを、見る目?」

「ああ。オマエはたぶん、本当に悪いヤツじゃないんだと思う」

「あ、当たり前だろ!? 反省したんだ! ずっとここで! ひとりで……!」

「そうだな。ああ、そうなんだろうな? 嘘もついてないって信じるよ。オマエが気づいてたかは知らないけど、一晩、俺は時々わざと隙を見せてた」

 

 それでも、ギンヌンガが襲って来るコトは無かった。

 

「メ、メラン、そんなコトしてたのか〜!?」

「悪かった。これについては謝る」

「ヒドイぞ!」

「だけど、一晩かけて観察して決めたよ。俺はオマエを信じる」

「っ」

「信じるからこそ、聞きたい話がある」

 

 森羅斬伐を抜き、刃を向けた。

 ギンヌンガはひどく驚き、ショックを受けた声を出す。

 

「な──なん、で……アタシにそれを……」

「俺は聞かなきゃならない。ギンヌンガが話してくれた経緯をまとめると、どう考えても無責任にはなれないからだ」

「無責任、って……アタシたち、トモダチだろ……?」

「友だち同士でも、必要な時には喧嘩をするもんなんだぜ?」

 

 さあ、答えろギンヌンガ。

 

「この封祠堂から外に、表側に出たとき──オマエは何をする?」

「え」

 

 三柱の神々が苦労して封印を施したほどの存在。

 恐らくは神話における敵対者。

 現代では失われ、正体を推測するヒントは何も残されていないが。

 

「オマエが言う通り、俺が本当に夜闇の王・モルディガーンだったなら、やっぱりこれは避けては通れない質問だろ」

「そ、そんなの! ただ外に出たい、じゃダメなのかよ!?」

「ダメだ。閉じ込められたから外に出たい。それは当たり前の心理だけど、閉じ込められた理由に対して謝罪も反省も見えない」

「っ!?」

 

 俺はまだ、強引にこの裏世界に引き摺り込まれたコトを謝られていない。

 ギンヌンガは口では反省したと繰り返すが、一度として何に対する反省かは口にしていなかった。

 ある種、これは躾のようなものかもしれない。

 

「ギンヌンガは、どうして表に出たいんだ?」

「あ、あ……」

「何をしたくて、もう一度あっちに戻りたいんだ?」

「アタシ、は……!」

 

 言葉を待つ。

 森羅斬伐を向けてはいるが、本当に斬りかかる気なんて無い。

 あくまでポーズ。

 本音を引きずり出すために、脅しをかけている。

 きっとそれが、ここの封印を打破する最後の鍵になるはずだ。

 

 ギンヌンガは俺の斧を、おっかないと言った。

 

 それは世界を裂けるらしい自分の爪と、本質的に同じ物だと見抜いた上での発言だったよな。

 なら、コイツは過去に散々、怖がられた経験があるんだろう。

 

 ──巨大な爪のギンヌンガ。皆の嫌われモノのギンヌンガ。

 

 悲しい自己紹介は、心の傷を告白しているようなものだ。

 だから、聞きたい。

 

「その爪を持つオマエが、表側に戻ったとしても」

「!」

「昔のままじゃ、また嫌われるだけなんじゃないか?」

「そんなコト……そんなコト……言うなああああああああああ──ッ!」

 

 巨大な爪が、振り翳される。

 震える声で、涙滴を落として。

 それを、仕方なしに斧で弾き飛ばし、

 

「ひぅッ!?」

「反省を口にしたのなら、自分に非があったのを認めているんだろ!? だったらッ! もう昔の自分じゃないって、変わった証を叫んでみろよッ!」

「でもッ……だってッ……!」

「俺はオマエの昔を知らないッ! 覚えてるワケもないッ! ──それでもッ! たった一晩の付き合いだけでもッ!」

 

 充分に分かった。

 尻餅をついて倒れるギンヌンガに、斧を担ぎ上げて指を突きつける。

 

「たしかにカイブツだ。たしかにバケモノだ。オマエを見て恐怖に駆られない人間は少ないだろうな? 世界を裂く爪だって? そりゃ神様だってビビるだろうさ……けど、ふざけんなよバカが!」

「っ……な、なんでッ、さっきからそんなヒドいコトばっか言うんだよぉ〜……ッ!」

「なんでだと? 当たり前だろうが。俺がどれだけ、苦労してこの斧を持つようになったと思ってる!?」

 

 急に出てきて、お揃いとか言われても、「上位存在はこれだから」って腹が立つだけなんだよ。

 

「でも実際、オマエの爪は俺の斧と本質的に同じだ。オマエが一目で分かったように、俺にも今の一合で分かっちまった。ヤベェよ。ヤベェヤツだよ」

 

 そう。

 

「オマエも、俺も」

「……え?」

「ヤベェヤツ同士で、ちょうどいいって認めてやる。会ったばっかりだけど、俺たちは友だちだ。類友だ」

「トモ、ダチ……ルイトモ……?」

「そうだ。共通点がある友だち。そんな友だちには、遠慮しないで何でも言ってみろ。どうせここじゃ、俺にしか聞こえないんだしな」

 

 思えば最初に、どうして俺にしかギンヌンガが見えなかったのか理由が分かった。

 世界を斬り裂く斧。

 世界を裂く爪。

 魔術の世界では、似ているモノには相互作用が働く。

 類的感染、親和性。

 ムカついたけど、認めるしかない。

 だからこそ、第五世界のカイブツにもう一度問う。

 

「ギンヌンガ。この際、何に反省したかは言わなくてもいい。過去のやらかしは恥ずかしいもんな? だけど、これだけは教えてくれ」

 

 今のオマエは、表の世界で何をしたいんだ?

 倒れたギンヌンガに、手を伸ばして尋ねる。

 

「! アタ、シは……アタシ、はっ!」

「うん」

「守りたい……」

「守りたい?」

「ああ、そうだ! 守りたいんだ! 壊すだけの爪でもッ、グチャグチャに台無しにするしかできないアタシでもッ! 皆を守りたいッ! どうせ皆はアタシを嫌いだろうけどッ!」

 

 感情は、堰を切ったように氾濫した。

 

「もう暴れ回ったりしないよッ、もう誰にも迷惑なんてかけないよッ! アタシは皆がスキだ! アトラミシアもアリアンノルンも、モルディガーンもッ! 最初はキライだったけど、アイツらが守ってくれた全部全部! ありがとうって思うから……! あやまりたいッ、あやまりたいんだ! ごめんなさい! だからまた、会いたい、会いたいんだよぉ……!」

 

 瞬間。

 裏世界・封祠堂に、光が射し込む。

 天井と壁が、僅かに音を発し、次第に大きくズレ動いていく。

 

 ──ゴ、ゴゴゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

 えっと……?

 

「は? ちょっ、マジか!?」

「うわあああああああああん──!」

 

 泣いているギンヌンガは気づいていない。

 だが、遺跡が崩落を開始していた。

 ……これって、封印が解けたってコトだよな?

 

(いや、そりゃ! そういうカラクリじゃないかと期待はしてたんだが──!)

 

 このタイミングで、しかもそういうやり方は無いでしょ!

 夜闇の王・モルディガーン。

 

(もしかすると、ものすごく性格が悪いのか!?)

 

 それとも、ギンヌンガが過去にかけた迷惑が、それほどまでに凄かったのか。

 ともかく。

 俺は咄嗟に、ギンヌンガを庇うため死霊術を発動した。

 

 

 

 

 

────────────

tips:在りし日の裏側

 

 パックリと、裂け目がありました。

 空っぽの裂け目。何もない空洞。使い捨てられ、意味を失った虚空の毒。

 それがアタシというカイブツのはじまりでした。

 アタシは最初、ただそこにあるだけですべてを虚ろに変えました。

 そこにとても力持ちな神がやって来て、どうにかしてアタシを閉じようとしましたが、かえって裂け目は広がるばかりでした。

 次に、とても器用な神がやって来て、力持ちな神と一緒にアタシを塞ごうとしましたが、これもかえって裂け目を広げるだけでした。

 触れれば壊れ、触れれば崩れ、触れれば意義を喪い、そんな毒性の裂け目に、神々は躊躇なく手を触れたのに。

 「阿呆ども。其れは何もかもを吐き出し終えた流██だ。空いた口を塞ぐには、カタチを与えねば話にならん」

 やがて、三番目の神が現れました。

 アタシは、名前を与えられて追い立てられました。

 「厄介者め。オマエの名は──」

 ギンヌンガ。

 巨大な爪、醜いカイブツ、皆の嫌われモノ。

 アタシに名前とカタチを与えた神たちは、口を揃えてアタシを責め立てました。

 散々追いかけ回されて、アタマに来たのでアタシも暴れて、最後にはひとりぼっち。

 なのに、どうしてでしょう?

 終わりの日、滅びの日、神々は言いました。

 「オマエは、実に厄介だったが──」

 「カタチを与えたのは、我らだ」

 「名前を与えたのも、我らだ」

 「ならばオマエが、我らと共に来る必要は無い」

 「産みの責任というヤツだ」

 「ゆえに、いつかオマエが我らと同じ場所へ至ったのなら」

 「そのときは、自由を与えよう」

 オマエもまた、我らの愛する子どもらのひとりに他ならない。

 神々は、ギンヌンガを愛していたのです。

 何もかも、置いてけぼりでした。

 言葉の意味を理解できたのは、すべてが台無しになったあと。

 アトラミシアは巨大彗星に押し潰されて、アリアンノルンは砕け散った破片を繋ぎ止めようとして、結局バラバラに。

 そしてモルディガーンは、壊れた世界に“夜”を戻すため。

 自らを全世界の秩序律に、捧げたのでした。

 

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