ミリしらアーカイブ   作:こまごめピペット

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七人囚 厄災の狐

 何度繰り返そうが結果は変わらず、最後には苦痛と唄だけが残ってしまう。

 誰も救う術など無く、ただこの監獄にて待ち続けよう。

 型が亡くなろうとも。

 

 

 

 寝心地の悪い寝袋でモゾモゾと羽化する蝶の様に這い出でると、抜け殻だけが散乱していた。

 幾つかは綺麗に畳まれ、一目見れば誰がどれを使っていたのかは丸わかりだ。

 

 

 また……またあのクレートで起きたかと思った……また振り出しに戻ったのかと……

 

 

「っ……起こしてくれても良いのになぁ、まぁお客さん扱いだったらこんなもんなんだろうか……」

 

 

 交友関係が無くなり他人である事を再認識させられ、心が少しザワつく。

 

「……ひとりぼっちは寂しいか……よっ!」

 

 身体を起こし、対策部の部屋に向かうと甘いホットケーキの香りと聞き慣れた皆の声が私を誘引する。

 

「おはようございます」

「……あ、ホムラちゃん。おはよぉ〜。今日先生が来るらしいから準備しておいてねぇ〜……」

「あれだけ寝れば疲れは取れたわね、ホムラ先輩」

 

 ホットプレートの前にはホシノさんとセリカさんが立っていた。

 紙皿に巻かれたラップの上に焼き立てのホットケーキが乗せられており、見ているだけで涎が溢れてくる。

 

「出来たての内に食べっちゃってよ〜、ホムラー」

「先輩、早く食べないと冷めちゃいますよ?」

「ん、ホムラ……こっち座って」

 

 長机の端に座っているシロコさんが隣の椅子を引いてくれた。

 

 そこに座ると目の前にバターやメープルシロップで彩られたフワッフワのパンケーキが置かれた。

 

「ん、早く食べよう」

「そうですね……頂きます」

「おあがりよ〜」

 

 ナイフで小さく切り分けた一欠片をフォークで口に運び舌の上で転がすと、ホットケーキの優しい甘みとバターのコク、塩味が広がり思わず笑みが、そして一度ならず二度までも、正体不明の私を優しく、受け入れてくれる。その暖かさに涙が零れそうになった。

 

 こんなに人の作った料理が美味しく感じるのは何時ぶりだろうか。

 

「ん、ホムラ……? 大丈夫?」

 

 そんな私を見てかシロコさんが心配そうに覗いてきた。

 

「はい……はい、大丈夫です……」

 

 体に引っ張られているのだろうか。

 涙なんてものはもう枯れたと思って居たが、心の水は何処からともなく溢れてくる。

 

 これもきっとホルモンバランスのせいだな……。

 

 

「……ん、大丈夫。ホムラはもう独りじゃないよ」

 

 そっとシロコさんに頭を撫でられる。

 ……まさか年端もいかない少女に慰められるとは……けれど少し嬉しいのも本音だ。

 彼女達のお陰で未だ孤独に苛まれずに済んでいるのだから。

 

 

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 朝御飯を食べ終わった後、ここに居ないノノミさんとアヤネさんの行方を聞くと

 

 広い多目的室の掃除をしに行っているらしい。

 先生はそこで何かしらの準備をしているとか。

 手伝いに行くか〜なんて思ったが、丁度携帯電話が鳴った。

 

「はい、ホムラです」

『あ、ホムラ先輩。準備が出来たので、多目的室に来てください。先生もミレニアムの生徒さんもお待ちですから』

「分かりました。では」

 

 ……ミレニアムの生徒ね。

 誰だ……1番あるのはあの自称天才少女か。

 わざわざこんな所まで……まさか私を憶えている人なのか……? 

 

「ん、ホムラ、行こ」

「あ、うん。すいませんホシノさんセリカさん、後片付け任せても……」

「ん〜大丈夫だよ

 〜」

「私たち任せて!」

「すいませんありがとうございます」

 

 二人に感謝を伝えてから私はシロコさんと共に部屋を後にした。

 

 多目的室は少し離れているらしく

 移動には十分以上掛かる。

 

「ん、疲れてない?」

「いや……大丈夫です。私も体力はある方だと思います」

「そう……」

「……」

「……」

 

 会話が途切れる。さっきの事もあって少し気まずい。

 お互いの距離感も掴みかねている。

 

「ホムラの事……まだよく分からないけど、いっぱいいっぱいだと思った。だからあんまり頑張ったら駄目だよ……」

 

 不意にそんなことを言われ驚いた。

 

 ……頑張ったら駄目……か。

 頑張れば報われるなんて昔は言い聞かせられたが……そうか……頑張らなくても良いのかな……。

 俺が生まれ変わり甦ったこの世界では。

 

「……ありがとうございます。シロコさん」

「ん」

 

 まだ長い廊下を歩き続ける。窓から陽の光が沢山はいり電気もいらないくらい明るかった。

 

「っ、危ない!」

 

 突然袖口を引っ張られバランスを崩し尻もちを着いた。

 

「った!」

 

 硝子の割れる音、鈍い打撃音が重なり響く。

 顔を上げると目の前の廊下には人が立っていた。

 真っ先に目に付くのは少し見覚えのある白いキツネの面。

 そして黒を基調とした着物の様な制服。

 ……モッフモフの耳。

 って見てる場合じゃない! 

 急いで立ち上がり、肩に背負った銃を構えた。

 

「……誰」

「うふふ……私、狐坂ワカモと申します。以後お見知りおきを……それでは、左様なら!」

「っいっ!」

 

 爆発音と共に何かが突き刺さる、熱い、痛い。

 銃口から煙、硝煙の匂い、撃たれたっ! 

 

「やばっ」

「ホムラこっち!」

 

 すぐ横の教室に連れ込まれた。

 

「……はぁはぁはぁ……ぐぅっ……!!」

「大丈夫、ホムラ!」

 

 血は無い。体内にも無い。俺もほんとに銃が効かないのか、この世界の人間おかしい

 

「痛いだけ、痛いだけ……っ! あんたなんなんだ! 何が目的だっ!」

 

 急いで距離を取りつつ机や椅子を倒しまくり、後ろに身を潜める。

 姿勢は低く。

 

「それは勿論……このワカモと先生の恋路を邪魔する小石を排除するためですわ」

 

 意味わかんねぇ! 

 ゆっくりと教室に入るワカモとかいうイカれた生徒。

 ガツンっと別の所の机が銃弾が木屑を舞わせる。

 

「っホムラ、伏せて……」

「っ……!!」

 

 極力声を抑え、気付かれないよ潜む。

 

「あら、あら……隠れんぼですか? お亡くなりになりなさい!」

 

 大きな破裂音と共に机がひとつ吹っ飛んだ。

 ……この教室から出ないと死ぬっ! 

 

 シロコさんは出口に近い、俺の位置取りが悪すぎる……。

 打開策は……陽動、目眩し、走り抜ける、被弾は抑えて……っ全取りは無理。

 

 陽動……ある、銀貨。持っててよかった。

 

「おーにさん、こちら手の鳴る方へっ!」

 

 銀貨を別の場所に床へ弾き、視線を誘えば1秒足らずでそこが撃ち抜かれた。

 

「今っ!」

 

 もう1枚、斜め後ろに銀貨を打ち上げ、それを目で追いかけている間に机と机の隙間を滑り教室から脱出。

 

 シロコさんと出れた。逃げないと。

 

「無事?」

「はい! なんとかっ!」

 

 急ぎ階段を降りる、多目的室は2階。

 外に出てしまった方が安全かも知れないっ! 

 

 

 だが階段を降りた直ぐ近くの曲がり角で鉢合わせた。

 

「っあんたは本当に……!」

 

 銃を構えるよりも先に触れる距離に近付いてきた。

 

「お眠りなさい、不死鳥さん」

 

 美しい脇差が、俺の鳩尾からズブリと入り込みその刃は肺にまで届いた。

 

「ぐっ、うぅ!」

「ホムラっ!」

 

 シロコは俺からその人物を遠ざけようと接近戦に持ち込もうとするが、簡単に往なされ、俺に刺さった脇差が抜かれた。

 

「……ふふ、それでは御機嫌よう」

 

 ワカモと名乗る仮面の少女は悠々とここを去っていった。

 

 

 全身の毛が粟立つ、心臓が脈を打つ度に刀傷の部分が焼けると錯覚するほど熱く感じる。

 身体が震え汗が止まらない。

 制服が血で汚れていく。

 

「ホムラ、しっかりして、ヘイローが……!」

 

 呼吸が出来ない。横隔膜が無いのか。

 崩れるように膝を付き、そのまま倒れ込む。

 

「またラーメン……食べたかった……」

 

 瞼が重たい。身体が思う通り動いてくれない。

 シロコさんの小さな手が頬を触る感触だけを感じながら意識が消えた。




感想とか疑問貰えたら……頻度上がるかもなぁ……(|o¬ω¬o)チラチラ)
まぁあっちはパッションで書いてるけどこっちは設定勉強から詰めなきゃ……

銃何使うか決めてねぇや……

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