俺のグレートマンスクール   作:鳥居幾人

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前回登場した質変幾辿佳ちゃんですが繊細な戦闘狂ということで……

例えば
目の前に化け物が出たならそれはもう驚いて悲鳴を上げた後、気絶しそうになりながら拳でボコボコにする。

そんな娘です。


10話 学級委員決定戦・集団戦の部2

「やっぱり機動力はイナサが一番かな」

 

 針向先生の開始の合図と同時、文字通り飛んで行ったイナサはあっという間に見えなくなった。

 

「もう接敵したみたいですよ、予定通り宝獣院さんを見つけたのでしょうね」

 

 自身のうさ耳をぴくぴくと動かして音を拾っている兎山さんがそう教えてくれる。索敵は彼女にお願いしておけば大丈夫そうだな。

 

「近づいてくる音も無いですし、このまま作戦通りに動けそうです」

「よっし!それじゃあ俺達はイナサとは反対方向に進んで機胴を探そうか」

 

 各陣営の初期位置は決められていたし、多少動きがあっても索敵しながら近づいて行けばいずれ接敵するだろう。

 力強く頷く女子2人とどこか緊張感の感じられない男子2人を連れて岩場に向けて注意しながら歩き出す。

 

「でもその前に『お宝』貰ってくね?」

「「「「「は……?」」」」」

 

 そんな俺達の前に満面の笑みを浮かべて現れた驚箱。

 

「うん、獅雄が持ってたのと同じだ。ありがと!じゃあね~!」

 

 そして俺の右ポケットに入っていたはずの物をその手に掴み、満足そうに頷いて足取り軽く去っていった。

 

「ま、待てっ!!」

「辿佳さん落ち着いて下さい!」

「……っそだろ、おい」

 

 ようやく動けるようになったのはたっぷり十数秒後、彼の影すら見えなくなった頃だった。

 真っ先に後を追おうとした辿佳ちゃんを兎山さんが押しとどめ、ずっと笑顔を保っていた鼓拍はあまりの衝撃にその頬を引きつらせていた。

 

「これが驚箱くんの『ビックリ箱』か~、正直舐めてたね~?」

「だね、まさかダミーが効かないとは思わなかったよ」

 

 力なさげに震える濡木くんに同意して、俺は胸ポケットからもう一つ『お宝』を取り出す。

 濡木くんも興味深そうにつついて観察しているこれは辿佳ちゃんの個性でその辺の石ころを『お宝』に見立てた偽物だ、いざという時の囮として用意していたのだが驚箱には通用しなかった。

 彼の登場により衝撃を受けた時に思考と動きが止まってしまい、頭が全く働かない状態で彼が求め口に出した本物の『お宝』を無意識に思い浮かべる。するとあら不思議、俺の持っていた本物の『お宝』はあっという間に彼の手に渡ってしまっのだ。

 

「してやられました……」

 

 落ち着きを取り戻した辿佳ちゃんの肩に手を添えながら悔しそうに俯く兎山さん。

 索敵を担いながら驚箱の接近に気が付けなかった彼女が一番責任を感じてしまうのは当然だった。

 

「まああれはしょうがないよ、完全に初見殺しだし」

「すみませんでした……私がしっかりしていなかったせいで……」

 

 彼女が次に感じたのは罪悪感、うさ耳を垂れさせて意気消沈しながら頭を下げてしまう。しかし言っては何だが、今はそんなことをしている場合じゃない。

 

「あっはっは!それで言ったらダミーを持ってたくせにまんまと本物取られた俺が一番しっかりしろって話さ!ねえ辿佳ちゃん?」

「……確かにそうです、なんで簡単に取られてるんですか?せっかく私が身代わりを用意したのに」

「いやいや、あんな急に5徹明けみたいな頭にされて抵抗するの誰でも無理だろ」

「ね~、自白剤飲まされたらあんな感じなんじゃな~い?」

 

 まだまだ試合は続いているし、この5人の中で索敵が出来るのは兎山さんだけだ。彼女にはすぐに立ち直ってもらわなければならない。

 

「皆さん……」

「そんなわけだからこのことは一旦忘れよう。今俺達が『お宝』を持っていないのはまだ宝獣院陣営全体に伝わっていないだろうし、機胴陣営が知る由もない」

 

 まだ情報は広まっていないからダミーでのはったりは効く、それに驚箱から取り返す機会もあるかもしれないし予定通り他陣営から奪えば勝ちの目はある。

 

「それよりも重要なのは驚箱がこんなに早く現れたことだ」

「確かに、彼の個性じゃ夜嵐さんのような高速移動はできないはず」

 

 少し調子を取り戻した兎山さんも今回の襲撃の異常性に気が付いたようだ。

 

「多分、開始前から俺達の傍に居たんだ。イナサが居なくなって安全に奪えるのをずっと待ってたんだと思う」

「そして私の索敵が疎かになった一瞬の隙をつかれた、と。開始の合図の前から戦いは始まっていたという事ですね」

 

 開始前に割り当てられたスタート位置から離れて行動しても許されるのなら、これから向かう機胴陣営もすでに何か行動しているかもしれない。

 むしろ事ここに至ってはそうであると考えておかないとまた痛い目を見る確率が高い。

 

「予定通り機胴の『お宝』を狙う。向かう道中は一層相手からの妨害に注意しながら、当初の計画を見直そう」

「わかりました、今度こそ一瞬たりとも気は抜きません!」

「頼りにしてるよ、兎山さん」

「はい!任せてください!」

 

 

──────────

 

 

「どうだ?」

 

 俺の個性を最大限生かせるよう、コスチュームにはエネルギー供給を担えるパーツを要望した。

 身を護る鋼鉄のスーツは取り込んである部品を組み合わせて再現したもので、それらを再度組み直せたり新たに再現すれば武器を生み出すことが出来る。選択肢の幅を広くするために、バッテリー等はほとんど外部に依存する形にした。

 

「似合ってるよ?」

 

 幼いころから変わらない、はじけるような笑顔を浮かべポニーテールが風になびくのを抑えてそう返事する彼方。

 子供の頃から俺のガジェットいじりに付き合っていたからか、彼女の趣味嗜好もそれに偏っていた。今身に付けているコスチュームは少々ごちゃついており、オレンジ色のつなぎの上にマイクやコンパクトな集音機セット、そして無線機を担いでいた。

 

「コスチュームの事じゃない、他の2陣営の動きは?」

「だよね~、ちょっと言ってみただけだって。えっと……」

 

 いつも通りの軽口を流して本題に入れば、彼女は集中しながら首元の特殊なチョーカーに手を添えて目を閉じた。

 そのチョーカーは送波器が円形に取り付けられたサポートアイテムであり、彼女の特殊な声を口を介さずに発生させることが出来る。おかげで口が乾かないし虫が入ってくることも無くて最高だとか。

 

「宝獣院と後2人は誰かと戦ってるけど近接戦じゃないね、周辺一帯の反響が変だから多分夜嵐かな」

 

 状況を把握した彼方は目を開き、淡々と情報の共有を始める。

 他の人員もいつの間にか集まっており、気がつけばブリーフィングのような空気になっていた。

 

「あとはその戦闘地域からこっちに向かう人影が1人、体格的に男でこいつが最初に私達と接敵する。それとは別に向かってくる5人組は志揮陣営だね、速度は速くない。それを追う女が1人いて逆に離れていく男が1人いる」

 

 言い終わった彼方は笑顔を浮かべているが、『さあどうする?』とこちらを試すような空気を纏っている。

 

「予定通り全員で迎撃がいいと思う、砦は完成度高いしな」

 

 ゴーグル型の視界補助具を外して声を上げる遠手(とおで)届渡(かいと)、彼はこの陣営の第2の司令塔だ。

 痒い所に手が届く絶妙な個性の使い方が持ち味で、本人も縁の下の力持ちが性に合っているらしく指示や行動が適切で助かっている。その性格を表すようにコスチュームも大人しめだ。

 

「俺も同感だな。てか、鎖作りすぎて腹減った、動きたくねぇ」

 

 面倒くさそうに地面に座り込んでぼやき始めた多鎖(たくさり)(つなぐ)は緊張感無く鉄分の補給を始めてしまう。

 罠の設置で活躍してくれたので多少は目をつむるが、じゃらじゃらと鳴っている鎖で出来たドレットヘアがまだまだ動けることを示している。その髪型と海賊のようなコスチュームが相まったその姿はまるでアウトローだが、ただめんどくさがりなだけで根はいい奴だ。

 

「ぼ、僕も、攻めるのはちょっと……」

「……私も」

 

 そしてこの陣営、いや1年1組でもっとも引っ込み思案な2人。深堀(ふかぼり)(すすむ)寝占(ねじめ)(ぼく)が籠城に同意を示したことで流れは決まった。

 とはいえ、この2人の活躍が無ければここまでの砦を築くことはできなかっただろう。

 鉱夫とモグラを合わせたようなコスチュームを土と泥に塗れさせ、献身的に働いた深堀。その占い師のような格好にふさわしく、最適な砦の候補地を占ってみせた寝占。すでに十分貢献してくれたのだ、ここからは戦える者が頑張るべきだ。

 

「みんなの言う通りここの防御は万全だ。予定通り俺達は自陣営の『お宝』を死守することを第一として動く、降りかかる火の粉を払った後に余力があれば攻めに転じよう」

 

 最初から宝獣院と戦うことはわかっていた、あの性格だ当然全ての『お宝』を集めるつもりだろう。

 しかし志揮がどう出るか読み切れなかった。個性は戦闘向きじゃないはず、だから冷静に集団を指揮するタイプかと思ったがその性格は妙に好戦的で自信にも満ち溢れていた。結果、本人自らこちらに出向いてくるまで対応を悩まされてしまった。

 

「来たね」

「来たな」

 

 全身の意思を固め終わり数秒。

 索敵していた彼方と罠に反応を感じ取った多鎖が同時に呟く。

 

「俺が出る。その間の指揮は遠手、寝占は相手を占った後に彼方、深堀と共に内部に避難。多鎖は引き続き──」

「才羽っ!!」

「おいおいやべぇっ!すぐ来るぞっ!!」

 

   SLASH   

 

「……索敵を怠るなよ」

 

 切り崩された岩や鎖が大量の土ぼこりを生み出す。

 その中に見える人影にこれ以上の被害を出させないよう簡潔な指示を残して砦を出た。




やべぇまた戦闘書けなかった。
と、とりあえず新顔の第一報ですどうぞ!

1人目機胴陣営、縁の下の力持ち、男

名前:遠手(とおで) 届渡(かいと)
性別:男
身長:175㎝
性格:縁の下の力持ち、裏方大好き
個性:『遠隔干渉』
    視界に映る範囲に手足等で干渉できる。
    干渉する力は自分の身体能力と同等。
    身に付けていても道具の効果は反映されない。

2人目機胴陣営、海賊、男

名前:多鎖(たくさり) (つなぐ)
性別:男
身長:181㎝
性格:めんどくさがり
個性:『鎖』
    身体から鎖を生み出し操作できる。
    生成には体内の鉄分を消費する。
    使いすぎると貧血になる。

3人目機胴陣営、引っ込み思案鉱夫、男

名前:深堀(ふかぼり) (すすむ)
性別:男
身長:173㎝
性格:引っ込み思案、日光が苦手
個性:『潜土』
    地面を抵抗なく掘り進められる。
    認識次第でなんにでも穴を掘れる。
    本人の性格的に土木工作員向き。

4人目機胴陣営、占いメカクレ女子、女

名前:寝占(ねじめ) (ぼく)
性別:女
身長:167㎝
性格:ネガティブ、暗闇が好き
個性:『占い』
    顔を視認した生き物を占える。
    視認した時間と比例して精度が上がる。
    未来を占うと断片的な場面や言葉が分かる。

ってな感じですね。
これで残るは入学式に遅刻しそうだった迷子男子だけかな。
彼はこの戦いが終わるまではノータッチの予定です。

ではまた次回。
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