ぶっちゃけ、好みの展開にするために先生たちの頭を固くし過ぎたかも。
キャラ崩壊と感じるかもしれないのでそこはご注意を。
雄英高校の一室。
そこに集まった試験管全員が今現在行われている各会場の実技試験の様子を見ていた。
「お!また倒したぞ!強い個性なのは予想していたがここまで使いこなせるとは!」
「まさにセンスの塊ね!」
スナイプ、ミッドナイト両名が映し出された少年の活躍を称賛する。
はやり目立つのは派手な個性で活躍する者。特に先程から大量に得点を重ねている『爆破』の個性を持つ少年はすさまじい勢いでロボを倒していく。
「索敵ができなくともこの機動力と攻撃力、そして使い手の力量でここまでの成果を出すとは」
「爆豪くんですか、推薦1位にも引けは取りませんね」
セメントスが唸り、13号が同意する。
すでに行われた雄英高校の推薦入学希望者の試験、そこで主席となった『旋風』の個性を持った少年とも見劣りしない。
「ダガ、イマノトコロ救助ハゼロダ」
「確かにな、映像で見る限り他者を顧みていない。いや、そのつもりが無いように見受けられるが?」
エクトプラズムが難色を示し、ブラドキングが隣の男に問いかけるように視線を送る。
その視線を受け止め、問題ないとでもいうように目をそらしながらイレイザー・ヘッドが返答する。
「問題ありません、恐らく私のクラスになるでしょうが、見込みが無ければ去ってもらうだけですから」
「HA!HA!HA!相変わらずキビシイな!」
No.1ヒーロー、オールマイトが教師として雄英にいることはまだ世間には知られていないが、すでにその席に着きながら妙にアメリカンな身振りで呆れるようにイレイザー・ヘッドの肩に手を置く。それはすぐさま振り払われるが再び笑いながら大げさな身振りを披露する。
そんなトップヒーローを鬱陶しそうに睨んだイレイザー・ヘッドはふと気が付く、普段ならとっくに大騒ぎしているはずなのに妙に静かにしている同期に。そちらに視線を送ると自分の席にも座らず、出入り口のすぐそばに寄りかかりながらタブレットを熱心に見ているプレゼントマイクが居た。
「どうしたマイク、帰ってきてからずっとそんな調子だが」
「おおイレイザー!俺のファンがいる会場が気になってな!」
わざわざ席を立ってまで話しかけてみればしょうもない、教師としての職務を放棄し、たった一人の受験生を追っかけていたとは。
これじゃあどっちがファンだかわからない。
「それで他の受験生を見ないつもりか?レスキューポイントの存在を忘れたのか?」
こうして雄英教師全員で試験の様子を見るのは、何も冷やかしているわけじゃない。ちゃんと見るべきことがあって見ているのだ。
それがレスキューポイント。教師が受験生の行動を評価し、完全審査制で加点するシステムだ。
当然受験生には知らせていない。
「いや待てってイレイザー!俺もさぼってるわけじゃねぇよ!」
「ならそんな小さな画面で一人の受験生を追っかけずに、メインを見ろよ」
「だから俺もこの赤髪リスナーをちゃんと評価してるところなんだって!」
「そんなに決めずらいなら、いっそその子をメインに映すといいサ!」
「こ、校長」
言い合っている二人に気づかれないうちに近づいてきた雄英高校の根津校長、その声にはっとして周りを見れば他の教師たちも言い合っていた二人を面白そうに見つめていた。
しまったと思った時にはもう遅い、普段なら少し注意すれば大人しく職務に戻る同期が今回はそうしなかったことに少々ムキになり、注意していた自分まで職務を放棄していたことに気が付いたのだ。
「珍しいわね、山田がイレイザーに食い下がるなんて」
「山田はやめろおぉぉ!!」
「すみませんでした校長、ミッドナイトさん」
にやにや笑いながらからかってくるミッドナイトに便乗するように、周りの教師もどこか生暖かい目でこちらを見てくる。
いたたまれなくなったイレイザー・ヘッドはさっさと謝罪してそそくさと自分の席に戻った。
「それじゃあプレゼントマイクの気にしていた受験生、
根津校長の声と同時にメイン画面にでかでかと映し出された紅陽、丁度助けた物間と共に3ポイントのロボを倒したところだった。
「こっちの赤髪の少年が紅陽君サ!個性は『士気』!自分も周りもパフォーマンスを上げることが出来る支援系の個性なのサ!」
「自身も強化し、そして協力者も強化することで上手く立ち回れている」
「なに山田?二人で3ポイント倒したからポイントの割り振りに困ってたとか?」
「だ~か~ら~!!山田はやめろって!!」
「いちいち反応するなよマイク、さっさと本題に入れよ」
「おいイレイザー俺にだけ注意すんのか!?ミッドナイトもだろぉ!?」
「HA!HA!HA!二人は仲がいいね!」
せっかくのメイン画面にたった一人の受験生を映しているのにことごとく話が進まない。
普段から率先して喋るメンツがややこしくしている張本人だからさらに手が負えなくなってしまった。
「ん?あ、おい!0ポイント出たぞ!」
「ドウスル、コノママミルノカ?」
スナイプとエクトプラズムの発言で混沌とした空気は鳴りを潜め、全員の視線がプレゼントマイクに注がれる。
しかし、気圧されることも何の気負いもなくプレゼントマイクは笑って言ってのけた。
「当然だ!むしろここからを観てもらわねぇと!」
──────────
「なるほどな……」
呟いたのは誰だったか、しかしそのつぶやきがここにいる全教師が考えていることを表していた。
「マイクは……ああ、そうかアイツは試験終了をアナウンスしに行ったのか」
この場にプレゼントマイクはいない。件の0ポイントに対して、全受験者が立ち向かっていったのを見届けたあと、ハイテンションで試験会場へと向かったのだった。
そう、面倒な審査を他の教師に押し付けて。
「ヴィランポイントは単独だけで26、他者との協力は等分し端数は直接的な貢献度の高い者へ。それでも合否を決めるのはやはり……レスキューポイントの審査次第、か」
最後の受験生全員での救助そして撃破の流れはまさしく紅陽一人によるもの。彼の個性と行動で多くの者が自分の行動を見つめ直し、率先して救助に向かったから生まれたポイントだ。
流れを生み出したことを評価し桁違いのレスキューポイントを与え紅陽を歴代トップで合格させる、その場合彼に追従した者たちにも大量のポイントを入れるべきなので他の会場の受験生との差が大きなものとなる。つまり合格者のほとんどがこの会場の受験生で埋まる。
それを良しとせず、あくまで直接的な救助にのみポイントを与えるとすると紅陽の鼓舞にはポイントが入らず不合格となる。
極端だろうが結果は二択、中間択は残念ながら無い。
これが完全審査制なのだ、揺さぶられたプロヒーローの熱は抑えられない。紅陽が生んだあの場の熱量には、絶対に莫大な数のポイントを入れるべきだと全員が思っている。
「あれは、軍向けの個性じゃないか?」
ひとまず自分の意見をまとめたのであろうブラドキングが口を開く。そしてその発言をこの場の誰も否定しなかった。
「確かに大勢を率いるのに向いた個性だがヒーローでも十分やっていけるだろ?特に現場は混乱しやすい、そんな時にしっかり纏められる奴がいるといないじゃ被害の大きさに直結する」
そしてスナイプの発した言葉にも全員が同意する。
一見、紅陽の意思に感化され行動を制限、又は誘導されているように見えるがそうじゃない。
あくまで彼自身の高い士気に感化されて、当人が自分の意思で立ち上がることが出来るのだ。
立ち向かう心が折れそうな者の隣に立ってその背を支え、戦えないものが恐怖に屈することなく逃げるために肩を貸すことが出来る。
「被害の面でいえば一般人が彼の個性の影響を受けた時ですが……」
「それも問題ないでしょう。他の受験生が立ち向かったのは彼らが皆ヒーローを志す者だったからだ。市民が彼の個性の影響を受けたとしてもせいぜい熱心にヒーローを応援するくらいでしょうし」
「そもそも彼自身が民衆に向けてヴィランに立ち向かえと言っても発動しないでしょう、逆に落ち着くよう言えば恐怖が薄れて二次被害が格段に減るでしょうね」
13号、セメントス、ミッドナイトは特に周囲への被害へと目を向ける。
自身の個性が広範囲へと被害が及ぶ可能性がある為、それを未然に防げてしかもヒーローのイメージを損なわなさそうな個性は大歓迎だった。
「それでも実際使うとなればイレギュラーは付き物です、いつかのヘドロヴィラン事件の事もある」
「市民ノナカニヒーロー志望ガ居タ場合カ」
「あ、ああそうだね」
無個性の中学生が同級生を救うためにヴィランに単身突撃する。
そんな世間を騒がした事件からまだ1年と経っていない。サポートアイテムで多少制御できるとしてもいざヒーローとして活動するには制限せざるを得ないことは多い。
合理的、冷静に意見を述べるイレイザー・ヘッドとエクトプラズム、その二人の言葉に苦い反応を示したオールマイトはただ同意することしかできなかった。
そして、この場にいる全教師が各々の意思を示した今、自然と根津校長へと視線が集まる。
「うん、彼の個性は軍でもヒーローでも輝くだろう。軍ならばすでに統率の取れた集団を導くことが、ヒーローならば強力な個性をさらに輝かせることがネ。当然市民の被害も抑えるのが最優先サ!」
誰からも否定の言葉は出なかった。軍でもヒーローでも、味方なら大歓迎なのだ。
唯一気にすべきこと、ここに訪れている以上ないとは思うが上げるべき懸念が一つ。
「もし不合格にしたとして、何かの拍子にヴィランとなって悪意の扇動者になった場合、まずいですよね」
「当たり前だろ。ヴィランが持つ個性を自由に使いたい、抑圧から解放されたいって思いを煽られたら大変どころじゃねえよ」
「なにせその行動原理が彼じゃない、彼一人止めても他は止まらない」
「普通科ハ受ケテイナイノダッタカ?」
「ええ、少なくともウチはヒーロー科のみです。他校のヒーロー科は受けてるかもしれませんが」
そんな会話を続けているうちにプレゼントマイクが戻ってきた。
しかしその姿をみた教師たちはぎょっとする。出て行った時のハイテンションではなく、一目でわかるほど落ち込んでいたからだ。
「マイク、何があった?」
声を掛けたのはイレイザー・ヘッドだったが何か不測の事態があったのは誰の目から見ても確実で、今学校の敷地内にはまだ多くの受験生が残っている為対処が必要なのであればすぐさま動かねばならない。
しかし当のマイクは口を開こうとしない。
「しっかりしなさいプレゼントマイク!何があったの!」
焦れたミッドナイトが席を立って近づき、肩を叩く。
それでようやく顔を上げた彼がようやく口を開いた。
「受験……やめるって……紅陽……」
「「「は?」」」
「だから!雄英の受験資格取り下げるから自分のポイント上手く分配してくれって!スタッフが言付かったんだと!!」
「な、なんでそんなこと!?」
「まさか!?」
それでは一体何のために受験したのかわからない。全く意味不明だ。
しかし、先程まで悪い想像を膨らませていた数人は、紅陽がすでにヴィラン側で偵察の為に合法的に敷地に入れるこのタイミングを狙ったのでは?と考えてしまった。
その場の全員が困惑する中、冷静に動いたのは根津校長だった。
「それで、彼は他に何か言っていたかい?」
「……西に、行くそうです」
「西、つまりそれは」
「アイツ、士傑の推薦受かってるらしくて……」
混乱する者も、早とちりする者も、冷静だった者すらも、全員が納得する答えだった。
ヒーローでありながら、まるで軍のように規律の厳しい士傑高校。雄英高校と双璧を成すほど有名なヒーロー科のある学校だ。
確かにあそこなら紅陽は一番輝けるかもしれないと、全員が理解してしまった。
そしてその道を選ばせる後押しをしたのは恐らく、自由が校風の雄英高校。その試験を通して、自身の道との違いを感じてしまったのだろうと。
それと同時に、この難しい審査をしなくても済むかもしれないと思っていた。
「なんでだよおおぉぉ!!アイツ俺のファンじゃねぇのかよおおぉぉ!!」
「まぁ、まだ正式に受理された訳じゃない。結果が出るまではちゃんと審査しようじゃないか」
ただ一人、最高潮から最底辺まで叩き落されたプレゼントマイクを除いて。
可哀そうなプレゼントマイク、かぁいいねぇ。
ああいう陽キャが不憫な目に合うの割と好きです。
ごめんね。
各キャラの性格とか話し方とか間違ってたりして分かりずらかったかもです。
気を付けます。
それと、次はあの娘が出る予定です。