俺のグレートマンスクール   作:鳥居幾人

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今回でヤオモモとオリ主の道が分かれます。
いろんなセリフとかシチュエーションとか考えてたら長くなった、ごめんさぁ。


6話 紅陽と百、初めてのお茶会

「ん!美味しい!」

「ふふ、気に入っていただけたようで良かったですわ」

 

 落ち着いたBGMの流れる店内でで軽い甘味と紅茶を堪能して冷えた身体を温める。

 何を注文すればよいのか分からなかったため、百のオススメをそのまま選んだが大正解だ。

 

「さて、百が聞きたいのは何かな?」

「そうですわね、まずは単刀直入にどうして雄英の受験を取りやめたのか、です」

 

 互いに一息ついて落ち着いたのでいつも通りの温度で会話を始める。

 

「校風、教師の態度、実技内容。直に感じてみて俺の進みたい道と違うと思ったから、だよ」

「……もう少し詳しく聞いてもよろしいですか?」

「もちろんいいよ」

「ありがとうございます。ではまず校風について、『自由』ではだめなのでしょうか?」

「俺の性格的にはダメじゃないんだけど、士傑の『規律』の方が俺の個性に合ってるんだよね」

 

 俺の個性『士気』は自分や周りの人間の士気を高揚させるのが得意だ。

 士傑高校は規則正しく、集団行動にも長けた軍隊の様な精強さがある。それを絶対の土台として一人一人がヒーローとしての個を高めていくカリキュラムだ。

 

「確かに士傑高校出身のプロヒーローは集団で活躍する方が多いように思います」

「でしょ?俺もこの目でプレゼントマイクを見てきたけど、雄英出身のヒーローは個人の力が突出している人が多い傾向に感じるね」

 

 百に同意を示して机の上にあるクッキーをつまみ、紅茶でのどを潤す。

 彼女もそれに続くようにカップを持つが、口をつけることなく会話を選択する。

 

「それが二つ目の理由ですか。教師の態度とはつまり、雄英出身のヒーローが指導するので個人で十二分に戦えるようなヒーローを育成するだろう、と?」

「毎年の雄英体育祭とか見ても個人で強い人しか活躍してないしね、実技試験もそんな感じだったから雄英の方針だろうね。俺は大人数のチームアップを主体にしたいからさ」

 

 そもそも雄英高校はあのオールマイトを輩出している学校だ。

 どうしたって彼に憧れる者が集うし、学校側も早く駆け付けられてあっという間に解決できるようなヒーローを輩出したいだろう。

 

「それが三つ目の理由、これだけはっきりと提示されるのですから雄英への未練など全くないのでしょうね」

「本音を言えばプレゼントマイクの指導は気になる」

「紅陽は彼のファンですものね」

「そのせいで試験前にテンション上がりすぎてやらかしちゃったけどね」

 

 実技試験の説明会場で俺に真っ向から注意してきた聡明中学のメガネ君を思い出し、それから俺に巻き込まれる形で注意されてしまった緑髪の少年に抱いていた申し訳なさから苦笑を浮かべてしまう。

 

「そうだ、多分聡明中出身のメガネ君も受かってると思うから、もし会ったら百から俺が謝ってたって伝えてくれない?」

「それはかまいませんが、一体その方に何をなさったのですか」

「いやぁ~試験説明をしたのがプレゼントマイクでさ!ついライブのノリが出ちゃった!」

「それは……はぁ、承りましたわ、謝罪は伝えておきます」

 

 呆れがこれでもかと込められた大きなため息を吐いた彼女は今度こそ紅茶に口をつけ唇を濡らす。

 冷めてしまっても美味しいのだろう、残りの紅茶を味わうように飲み切り、新しく暖かいものを注ぎ直した。

 

「ありがとね!まあ、そのメガネ君はザ・委員長って感じだったからきっといい奴だ!仲良くなれるさ!」

「……だといいのですが」

 

 カップに注がれたばかりで湯気が上がっている紅茶の波紋を見つめながら力なく呟く百。

 新生活が楽しみでもあり、新たな環境に不安も抱いていると言ったところか。

 

「あはは!そんな不安そうにしなくても、あの雄英に集まるようなヒーローの卵なんだから絶対ウマが合うって!!」

 

 受験者全員と顔を合わせたわけではないが、同じ会場で試験に望んでいた者はちゃんとヒーローを志す者たちだった。

 一時はあの巨大ロボから逃げたものの、少し奮い立たせてやれば全員がすぐに立ち向かったのだから。

 同じく高い志をもつ百ともウマが合うやつばかりだと思っている。

 

「それは、推薦試験の会場で私も感じました……ただ、その中に紅陽が居ないのは……」

 

 しかし彼女はどうしても、新たな出会いよりも今との別れに意識が向いてしまうのだった。

 

「別に道を違えたわけじゃないんだ、それぞれの場所同じ夢を追うってだけさ」

「理解はできますわ!ですが……どうしても納得したくないのです」

「それは……当然俺だって寂しいけどさ」

 

 俺だってできれば百と違う進路を選びたくは無かった。

 なんと言っても、初めて同じ熱量で夢を共有できた友人だ。この先で新しく熱を持つ仲間といくら出会えても、やはり最初の一人は特別に思う。

 そう思って口にした言葉だったが彼女は気に入らなかったようで、批判するような顔をする。

 

「こうなると知っていた紅陽が寂しがるのはお門違いですわ」

「ひどいな、そもそも最初に話した時からここで別れるのは決まってたじゃないか」

「それを自分で覆し私をぬか喜びさせたでしょう」

「実際に行ってみたら変わるかもしれないだろ?」

「ですが結局意思は変わらず、友人であり同志でもある私の期待を切り捨てたでしょうっ」

 

 何とか冷静にさせたかったが上手くいかず、ついに百はつんとそっぽを向いてしまった。

 このプリプリはさっきとは違い完全にお怒りであることの表れだ。可愛らしいのは一緒だが。

 

「それに受かるかどうかも分からないよ、僕の個性じゃ実技の結果が足を引っ張ってるはずだ」

「……そもそもどのような試験だったのでしょうか?」

「えっとね、まず受験生は会場である模擬市街地に入ってね?」

 

 何とか彼女を話題に喰つかせることに成功し、今度こそ機嫌を直せるように注意して説明していく。

 設定されていたポイント数が異なる4種類の仮想(ヴィラン)のこと。

 それをどう効率よく討伐してポイントを稼ぐかということ。

 俺がどんな戦略を立てたのかまで余すことなく全てを話す。

 

「最後の巨大ロボですが、何故終盤でしか出てこなかったのでしょうか?」

「かなりの大きさだったからね、稼働時間に制限があったとか?」

「それもあるかもしれませんが、たった10分の試験でそれは腑に落ちませんわ」

「ふむ……なら、試験の前半と後半で見る項目を変えていたとか」

 

 そうして話しているうちに、気がつけばいつも通りの考察合戦へと移っていた。

 

「ですが、試験ではヴィランポイントの多さで合否が決まるのでしょう?」

「もしかしたらそのポイントも合否を分ける要素の一つでしかないのかも」

「確かに、戦闘力が低くても優秀な受験生は多くいるはずですものね」

「他にも何かしらの項目で加点があると見たほうが自然な気がするよ」

「だとすればヴィランポイントは戦闘力・機動力・索敵能力の証明といったところでしょう」

「他にヒーローとして見るべきは体力やスタミナを含めた継戦能力、でもこれは今回の試験じゃ判断付かないか」

「ええ、流石に短すぎますわ。それよりも被害を回避する方法や拡大を抑える動きではないでしょうか?」

「負傷者の救助か!……そうなると、その巨大ロボを動かした結果、受験者に被害が出るのも想定通りということになるね」

「試験の様子をモニタリングして救助の様子を学校が審査していた」

「その内容によってポイントを付与する、二湯類のポイントの合計で合否を決めるのか!」

「紅陽もそう思われますか!私と同じですわね!」

「だね!人助けはヒーローの適性を測るのに一番大事な部分だよね!」

 

 すっかり機嫌を直した百と雄英の実技試験の仕組みを解明する。

 この場で答え合わせはできないが、お互いに結論が同じだっただけでなんだか嬉しくなる。

 明確な答えがある問題を解く快感とは違う、一つの謎について思う存分意見をすり合わせる楽しさを堪能できた。

 

「ふぅ、やはりこういう話し合いは楽しいですわ」

 

 彼女も満足できたようでやり切ったような顔で紅茶を飲む。

 俺はといえば今の会話を忘れないようにスマホに打ち込む。

 

「もし答え合わせが出来そうだったら頼むよ、それで俺にも教えてね」

 

 ざっくりと要点だけをまとめ終えた俺は持っていたスマホをササっと操作して、連絡先に入っていた八百万の名前を百に書き換えた。

 そしてその画面を彼女に向けて振りながらそう伝える。

 

「わかりましたわ、もし知ることが出来ればお伝えいたします。その代わり、紅陽にも教えていただきますわ、士傑高校で起こったこと」

 

 それをみた彼女は笑顔を浮かべながら持っていたカップを置いてスマホを取り出す。

 画面を何度か操作する動きを見せた後、その画面をこちらに向けてみせた。

 そこに書いてあったのは『紅陽』の二文字。そしてその下には俺の携帯番号が並んでいる。

 

「当たり前だよ!お互いに違う場所で学んだことを共有しよう!そうすれば俺たちは二倍成長できる!!」

「まぁ、それはいくらなんでも単純すぎませんか?」

 

 上品に口元を抑えながら、鈴の音のようにころころと笑う百。

 そうしてスマホの画面を閉じて鞄にしまい、空いた手をこちらに差し出してきた。

 

「ですが、そういう事であれば紅陽の士傑高校進学も多めに見て差し上げますわ」

「めっちゃ上からだ!?天下の雄英だからってなめてると足元掬ってやるから!」

 

 俺もスマホをポケットにしまい、百の手をがっしりと掴む。

 互いの熱量がそのまま伝わる熱い握手を交わして、まるで示し合わせたかのように同じタイミングで笑顔がこぼれた。




次回は士傑高校入学編です。
そこからはオリ主の士傑生活を主軸にして、原作の大きいイベントごとにヤオモモや湧水君と情報交換する感じですかね。


僕の中ではヤオモモは別にオリ主に対して恋愛感情を抱いてません、現時点では。
下の名前呼びに乗り出したのは、湧水君より付き合いも長くて同じ夢を追う同士であるはずのヤオモモがなんだか疎外感を感じてちょっと嫉妬した、そんな程度の行動です。
照れてたのは箱入り娘だったから。

原作では頼られるのが好きだったヤオモモですが、この話の中では中学の同級生からは高嶺の花扱いを受けており、頼られることは無かった設定です。
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