心なき模倣系魔法生命体が人間を理解するまで 作:プリプリ胸筋
──ちからが……
『それ』はまだ生命として不完全であった。
再びムカデへと変形した際に明らかに自身の命が削られたことを感じたのだ。
『それ』は魔力で身体が構成されており、魔力が無くなれば存在も無くなる。魔力と命が直結しており、本来であれば変形出来ないほどの魔力しか持たずに溶媒槽という檻に保管されていた『それ』は解き放たれると同時に何もできず破壊されていた。
『それ』が生きながらえたのは危機を感じ取って無理やり変形するも虚しく自壊した先に偶然魔力の塊である魔石があり身体を再構成できたこと、そして偶然進行方向に魔石を加工した爆弾がありそれを取り込んだことで爆炎の影響が『それ』まで届かなかったからであり、まさしく奇跡と言ってもいい。
そんな奇跡を起こしても、『それ』はギリギリであった。これまでの変形は計二回。ムカデとなり崩落していない洞窟内を移動したときとたった今だ。魔石、爆弾、ムカデから取り込んだ魔力と消費した魔力を照らし合わせ『それ』は直感で残りの魔力量は変形三回分だと判断した。
──もっと……
死に瀕したことで危機感が増大した『それ』は自身の安寧のため魔力を求め、彷徨う。そうして小さく弱い虫を取り込んでいくもすぐに魔力が目減りしていることに『それ』は気づいた。
──すくなすぎる
取り込むために一部身体を流体物質に戻し、またムカデとなっているのだがその部分変形の方が取り込んだ魔力より多かったのだ。ならばムカデにならなければいいのだが……
──もどるの、こわい
『それ』は自身が流体物質に戻ることを怖がっていた。部分変形ですらあまりやりたくないくらいに。その姿には五感がないということに洞窟から脱出する際にムカデから戻ったとき、気がついたのだ。一度でも五感の利便性を味わった『それ』は五感を失うことが耐え難い苦痛となっていた。
──もっと、つよいやつを……
だから『それ』は小さな虫から少しずつ獲物のグレードを上げていった。
ミミズからダンゴムシへ、
ダンゴムシからバッタへ、
バッタからクモへ、
クモからカマキリへ、そして──
──ふえた
カマキリでようやく部分変形の消費魔力よりも取り込んだ魔力の方が多くなったことに『それ』は安堵する。なにせどんどん魔力が減っていくのでもう少しで部分変形すらできなくなるところだったのだ。あとで纏めて取り込めばいいと考えたがそれは不可能に近かった。部分変形せずにムカデの状態で勝てると言い切れるのはダンゴムシまでであり、ダンゴムシでは百匹いても部分変形の消費魔力には届かないのだから。
──あっ……
安堵から一転、『それ』は必死にカマキリを探して狩り続ける。その行為は先ほどと同じく魔力を集めるためだが、今回はただ闇雲に魔力を求めているわけではない。
『それ』は閃いたのだ。自身がカマキリになればもっと効率よく魔力が稼げると。カマキリならば部分変形せずともいろんな生物に勝てる。先ほどの纏めて取り込む戦法が実用的になり、部分変形の煩わしさから解放されるのだ。
そしてカマキリに変形するための魔力を掻き集めた『それ』はカマキリへと変形し──
──あぇ?
ネコに噛み砕かれた
流体物質→ナニカ 魔力消費あり
ナニカ→流体物質 魔力消費なし
ナニカa→ナニカb 魔力消費あり