心なき模倣系魔法生命体が人間を理解するまで 作:プリプリ胸筋
クリスタは遠い目で煌々と照らされた夜空を見上げていた。
先ほど聞こえた鋭い音から察するにとんでもない爆発があったことは火を見るより明らかだ。というか実際に火はでてるし森もめっちゃ燃えている。
「…………なァ、クリスタ。いっこ聞いていいか」
「わたしじゃありませんよ」
「あの爆発──」
「わたしじゃありませんよ」
「……そうかァ」
クリスタには誇りがある。爆発大好き♡クラブのメンバーとしての誇りが。
故にあの爆発をクリスタが起こしたと誤解されるのはだけは我慢ならなかった。
「……本当にクリスタではないのか?」
「ウォルターさんまで……わたしがあんな爆発をすると思ってるんですか?」
「ああ」
「そんな……」
クリスタは驚愕した。まさか仲間からの評価がそこまでのものだったとはつゆほども思っていなかったのだ。顔が赤くなってしまうの感じるが止めることが出来ない。
「……本当ですか? 本当の本当にそう思ってるんですか!」
「ああ」
「だから聞いてんだろ」
「っ!!」
変わらない仲間からの評価に思わず涙が出そうになる。しかし、爆発大好き♡クラブのメンバーとしてなんとしてでもこの誤解は解かなければならない。このままでは爆発大好き♡クラブのメンバーに合わせる顔がない。
そしてクリスタは意を決して口を開いた。
「わたしには……わたしにはあんな素晴らしい爆発……出来ません!」
「……そうか」
「流れ変わったなァ」
クリスタは吐露する。己の未熟さを。自分を信じてくれていた仲間達には心苦しいが己の誇りにかけて、あんな素晴らしい爆発を横取りする訳にはいかなかった。
「確かに! 手持ちの爆弾であの爆発を引き起こす事は出来ます。しかし、あの周りを全く顧みない爆音と爆炎を夜の森で起こす勇気が……わたしにはありませんっ!」
「ごめんなさい……! 期待を裏切ってしまって……! でも、もっと精進します! そして必ず、絶対に、皆さんの期待に応えてみせます! 思えば、最近甘味処にうつつを抜かしすぎて────」
「クリスタの犯行でないのなら、調査が必要だな」
「あと火消しもなァ」
彼らは焚き火を囲んで今後の計画を考え始める。命の危険や行動の是非によって起きる現象、様々な利害を天秤にかけ実力に見合った行動をする。彼らのリーダーが口酸っぱく言い続ける掟に従い脳を働かせていた。彼らのリーダーがこの光景を見ればパーティメンバーの成長に涙を禁じ得ないだろう。一流の冒険者は行き当たりばったりで行動しないのだ。
(犯人が爆発大好き♡クラブのメンバーならいい……いや、よくはないが、この近くには教団のアジトと思われる場所もあったことを考えると危険性が高い。魔物の可能性だってある。調査は一旦村に帰ってからの方がいいか? しかし、火が広がりきる前に消さなければ村に被害が……)
(なんか強そうで斬ってもいい奴いねェかなァ)
「そうだ! ここでカウンター爆発を……いや、でもやっぱり甘いものも食べたいしなぁ。そんなことしたらお金無くなっちゃうよ! これ以上趣味で爆弾を使うわけには……くっ、一体どうすれば……!」
「……よし、とりあえず調査だ。考えていても仕方がない。火は広がり続けている。一刻も早く火を消さなければならない」
「じゃァ、俺犯人斬る役やりてェ」
「でも、今さっき覚悟を固めたばかりなのにそんなざまでは……いや、待てよ……爆発って実は甘いんじゃないか?」
方針は纏まった。ウォルターは火を消し、ラークは犯人を斬り、クリスタは爆発の味を確かめる。彼らのリーダーがこの光景を見ればパーティメンバーの成長に涙を禁じ得ないだろう。
そして、爆心地へ体を向けると──
「「「……ん?」」」
──全裸の少女が恐怖に顔を引き攣らせながらこちらに走ってきていた。