~~~マイSIDE~~~
白金の鎧、ツアーがやってきた。
「お前の両親は私が殺したようなものだ。」
そう言って、私はツアーによってルージュと言う、スレイン法国の守り神に預けられた。
ネコは沢山いるから寂しくは無いけれども、話す相手が限られた場所だった。
私はここから出る事を許されてはいない。
時々来る、スレイン法国の偉い人や、特殊部隊の漆黒聖典、そう呼ばれている人達から外の話を聞くだけの生活だった。
余り変わり映えのしない日々。
このままネコと戯れながら一生を終える、そう思っていた。
ある時、スレイン法国が滅んだ。
文字通り一瞬にして滅んだらしい。
ツアーの言う父や母と同じプレイヤーと言う異世界転移者、この世界の大半の者達から見たら絶対的強者によってそれは起こった。
そんな者達が私を訪ねて来た。
その内のスケルトンの方は、私の母親の知り合いだったらしい。
アインズ・ウール・ゴウンと言うスケルトンが言うには私は姪のような存在で、一緒に来ていたダークエルフの双子からは従姉妹のような存在、と言われた。
一緒に来ていた人間のシルト、と呼ばれる人も否定をしなかった。
アインズさん(他の人は様、と言っていたけれども私はさんでも呼び捨てでも良いけど様はよして欲しいと言われた)達が言うには、ツアーを倒してここから出ても大丈夫なようにする、そう言っていた。
結局、ここから出ても大丈夫になった事を告げに来たのはシルトさんの交渉の結果だった。
「マイさん、魔導国と千年王国の勢力圏であればどこに行こうが自由です。
身の安全については、私とモモン…アインズさんが連名で保証します。
後、こちらはツアーが持っていたあなたの両親の形見になる品ですので受け取っておいてください。」
私はこの風雲にゃんこ城跡から出た事が殆ど無い。
ここから出るのが怖いと同時に行きたいところが有った。
「私の両親のお墓に行きたいのですが何処か分かりますか?」
「申し訳ありません、失念していました。
ツアーに許可を貰う必要がありますね。
と言っても理由が理由なので許可は出ると思います。」
私の両親のお墓はアーグランド評議国、つまり魔導国と千年王国の影響範囲外にあるそうだ。
数日後、シルトさんがアインズさんと先日も来ていたダークエルフの双子と眼鏡をかけた黒髪のメイドを連れやってきた。
「アインズさん達もお墓参りをしたいそうです。
場所は私が一回行ったので皆さんを送ります。」
「よろしくお願いいたします。」
一瞬にして風景が変わった
一つのお墓に二人の名前が刻まれていた。
「お父さん、お母さん、全然来れなくてごめんなさい。」
気が付いたら私はお墓を抱きしめて泣いていた。
後ろで、「こんな時も感情抑制か、くそ。」と言っている声が聞こえた気がした。
暫くして泣き止んだところでアインズさんがハンカチを渡してきた。
「これで拭いてください。」
「ありがとうございます。」
私はお借りしたハンカチで涙をぬぐった。
振り返ると、どうもダークエルフの双子と黒髪のメイドも泣いていたようだった。
一方、シルトさんたちは、せいぜい黙祷している程度だった。
「マイさんはどうされるのですか?
ぜひ、ナザリックに来ていただきたいのですが?」
「ユリ・アルファと申します。
マイさんに来ていただけるなら、ぼ…私が精いっぱいお世話させて頂きます。」
一回シルトさんの方を見たら私に話しかけてきた。
「貴女の母親のあけみちゃんさんは、アインズさんの魔導国の上層部の者達から見たら完全に身内だったのです。
逆に私は完全に赤の他人ですから、当然対応は変わります。
気になるようでしたらナザリックとエルグリラの両方で過ごしてみて今後どうするかを考えて貰えればいいです。」
そう答えて来た。
「リク・アガネイア。」
アインズさんがそう言うと、四つの武器をまとった白金の鎧、ツアーがそこにいた。
「戦闘はよしてくださいよ。」
シルトさんが双方の間に入った。
「マイ、長い間すまなかった。
ゴウン、今回はお前に用事が有ってきたわけではない。」
「私達は兎に角、魔導国の者とマイにはこのお墓から半径500M程度は常時入国許可が欲しいのですが。」
シルトさんが即座に要求した。
「ここには私やかつての十三英雄の仲間がやって来る。
その者達に危害を加えないのなら許可しよう。」
「承知した。
但し貴殿を含むその者達も我々の墓参りを邪魔しない事も約束して欲しい。」
「承知した。」
「ここを奇麗な状態で保ってくれたのは貴方ですよね。
まだ思う所は有りますが、なので許そうと思います。」
「マイ、ありがとう。」
「私からもありがとう。
マイさんが許さなかったら、魔導国が評議国に攻め込みかねなかったので。」
「え~!そうなのですか?」
シルトさんの言葉に私は驚いてしまった。
私が許さない、そう言ったら戦争が始まっていたらしい。
「ツアーによろしく言ってくださいね。」
「承知した。」
そう言うと白金の鎧が姿を消した。
その後、アインズさんと共にナザリックに行った。
豪華な玉座の間に信じられない量の宝物が置かれていた。
「マイ、ここにあるのはお前の伯母にあたる、やまいこさんの物だ。
やまいこさんの所在が分からない以上、お前に所有権が有る。
又、アインズ・ウール・ゴウンの名においてメンバーとして認めよう。
本来ならアインズ・ウール・ゴウンメンバーは異形種しか認めないのだが、この状況でマイであれば、かつてのメンバーも認めよう。
アルベド、マイ・ヤマー・カネーヤをナザリックの全ての者に私と互する存在である事を通達せよ。
そうだな、アインズ・ウール・ゴウン魔導国副王に任ずる。
後は…。」
何だか、とんでもないことになった。
ナザリック地下大墳墓の第8階層を除くどこでも自由に行く権利と知る権利、一室を私の部屋とする事、伯母さんの資産で足りなければ追加で渡すとか、どうして良いのか分からなかった。
要するに、アインズ・ウール・ゴウン魔導国で二番目の地位に就いたらしい…え~。
ナザリックではものすごい歓待を受け、ユリさんは文字通り付ききりで私の世話をしてくれた。
ユリさんは何でも私の伯母にあたるやまいこさんが生み出したらしい。
10日ほど経ち私はユリさんを伴ってシャンドラド千年王国の首都エルグリラにやってきた。
こちらもとんでもない事になっていた
楽団が音楽を奏で、儀仗兵が並びアインズ・ウール・ゴウン魔導国の旗がはためいていた。
えーと、お母さんもお父さんも赤の他人と言っていませんでしたっけ?
シルトさん改めシルト陛下が私に言ってきた。
「モモンガさん、ああ、アインズさんの旧名です。
モモンガさんからマイさんが副王になったと伺いましたので国賓として対応させて頂きます。
と言っても、余り緊張せずに過ごしてくださいね。」
知らないうちに外堀が埋められていたらしい。
私が魔導国副王ですか~?
ナザリックと違い、豪華な食事とかではなく、お花畑や雪遊び、海に潜ったりと言った今までにできなかったことをさせて貰った。
あの空間が外ではないと言うのは今一信じられません。
「半分は、貴女のおかげで戦争が回避されたのですよ。
モモンガさんに、結局はマイさんがどう望むのかが重要ではありませんか?
と説得したのです。
せっかく副王になったのですからモモンガさんのストッパーになって下さいね。」
と本当に感謝されました。
「あの~、アインズさんは何をしようとしていたのですか?」
てっきり、私の両親の仇を取る為にツアーを殺そうとしただけだと思っていました…いや、それでも十分にとんでもない事なのですが。
「世界征服、つまりは世界中を敵に回して戦う、ですよ。
実際にツアーと戦えばそうなっていた筈なのです。」
そこから、実際にシルトさんとアインズさんの二人が転移してきて起こった事や、私が事実上止めていなかったら、この先に起こったであろう予想を教えて貰った。
「何とかモモンガさんを止めようとしたのですけれども、この先はマイさんにお願いしますね。
ああ、少し肩の荷が下りた。
これで九曜の世界喰い対策に専念できる。」
そんな事を私に押し付けないで下さい。
少し意地悪をする為にシルトさんにこう言ってみた。
「魔導国と千年王国は仲が悪くなっている、と言われましたけれども、私がシルトさんに嫁げば関係を取り持てるのではないですか?」
「何だって~!!」
シルトさんが慌てふためいていた。
「この話を受け入れても断ってもモモンガさんが切れるのが目に浮かぶ。
真面目に撤回してもらえないかな。」
陛下と言われていても今一威厳が無いシルトさんに笑いながら答えた。
「半分冗談ですよ。
でも、良い人が居なかったらお願いしようかな。」
「本当に、少なくともモモンガさんには言わないで。
夫なら、ダークエルフの双子のマーレではだめかな?」
女の子のようなマーレを思い出し
「流石に好みではないですね。
年齢も随分差がありますし。」
ここから、私はあちらこちらに旅行をしたり、ルージュさんの元やアインズさんの元やシルトさんの元にお邪魔したりしながら過ごした。
そして、あの時の冗談が結局本当になった。
約20年経った時にシルトさんと結婚する事になったのだ。
魔導国副王とつり合いが取れる相手がシルトさん以外にはアインズさんしかいないから、と言う理由なのだけれども…アインズさんは私の事を娘と思っていたからしょうがない。
シルトさんは、「デミウルゴスとかコキュートスではダメなのか?」と聞いてきたのだけれども…あの二人は無いですよね。
10章の閑話の三話は最終話とこの1分後に公開の後書きよりも後に書いています。
原作者様感想の、
他のメンバーがいたらアインズを絶対に止めに回り、そしてアインズも方針を180度変える。
をこの三話を書いた後で見ました。(本作を書く前にも見た覚えが有るのでその記憶に引きずられたのかもしれん)
私自身、デミとマイの閑話を書いてみて、結局はシルトとマイの二人がかりでそれが起こってしまい、当初の予定の最終話からずれたのだろうとやっと理解しました。